※この作品はR-18です。

ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中   作:HK416

46 / 50

まだエロシーンに到達しねぇ!

うぅむ、でもなー、純愛だからなぁ。じっくり書きたい気もする。
あとヒロインがチョロい気がしないでもない。心理描写には力を入れた気はするが、うぅむ。
そこんとこ作者も気を付けてるけど、匙加減がよく分からんので感想で教えてくれるとありがたいです。

今週中にエロシーンに辿り着けるとよいのだがー!



サムライガールと運命の夜

 

 

 

 

 

「うぃ~……セレスティナしゃまぁ、カルラしゃぁん……どこ行っちゃったんですかぁ……」

 

 

 酔い潰れて着の身着のままベッドに身体を投げ出したタキトゥスは朦朧とした意識の中で、妻の名を呼んだ。

 二人との生活に慣れてしまい、もう傍にいないと寂しさが湧き上がってしまうのだろう。

 普段であれば性格も相俟って、決して面に出すことはない本音。セレスティナとカルラが聞けば、舞い上がってしまいそうな台詞だ。

 

 ある種の愛らしさと情けなさを同居した男の姿を見下ろしているのは、言わずもがなトモエ。

 

 

「ふぅーーーーー…………っ!」

(大丈夫大丈夫、これは自然な営み。大丈夫大丈夫大丈夫、横になっていればすぐに終わるから)

 

 

 ベッドの脇に立った彼女の姿は煽情的と言う他ない。

 

 鍛えられながらも女性らしさを損なわない肢体は、レオタード風のネグリジェに包まれていた。

 ピッタリと身体の表面に張りつき、地肌がうっすらと透ける薄紫の布地であったが、胸元から臍まで切れ込みが奔り、背中など大胆に露出している。

 長手袋で二の腕まで包まれた手を胸元で握り締め、太腿を締めつけて肉の段差を生む脚衣(ニーソックス)がハイヒールの上に乗っていた。

 

 まるで上等な娼館で待ち構える高級娼婦のような男を興奮させ、誘う装束。

 セレスティナが用意した淫らな衣装は、トモエに言えば間違いなく激昂するであろうほどよく似合っていた。

 

 しかし、他者の目を気にする余裕など彼女にはなく、また存在もしない。

 顔を真っ赤に染め上げ、早鐘を打つ心の臓腑を落ち着かせようと深い呼吸を繰り返していた。

 いま彼女にあるのは興奮――などであるわけもなく、未知に挑む緊張、はしたない真似をしているという自覚に伴う恥じらい、そして這い寄る恐怖。

 

 無意識の内に笑う膝を無理やり抑え、タキトゥスの横になっているベッドへ四つん這いで上がった。

 育ちに育った豊満な胸は、自らの重さに引かれるように形を変えるが、若さ故にか垂れているとは言い難い。

 そのままトモエはタキトゥスの肩へと手を伸ばしたが、寸前で震える指先が止まる。

 

 こんな真似をして、本当によいのか。

 セレスティナやカルラは勿論のこと、タキトゥスも喜んでくれるのか。

 これで本当に、対等の友や仲間として付き合っていけるのか。

 

 最後の迷いであったが、止まっていたのは僅か数秒。

 覚悟を決めた白い指先からは震えは消え去り、横向きで寝転んでいるタキトゥスの手をかける。

 

 

「タキトゥス殿、タキトゥス殿……」

「んぁ? ひゃぁい、トモエひゃんれふかぁ? どうかしましたかぁ?」

「そ、の……よ、とぎ……に……」

「ふぁ、その格好……」

 

 

 どくんどくん、と心臓の鼓動が高まる。

 相変わらず期待でも高揚でもなく、緊張しかない。

 その証明に、トモエが覚えていたのは腹の中身が石となったような重さと全身を駆け巡る悪寒だけ。

 

 彼女の胸中を全く知らずにいたタキトゥスであったが、振り返ってみたトモエの姿にぼんやりとしていた目を僅かに見開いた。

 

 トモエが次なる言葉を紡げずにいると、すぐにとろんとした眠たげな眼に戻り、タキトゥスは身体を起こす。

 彼は口を開くことなくトモエの頭の天辺から爪先まで観察するように不躾な視線を送っていた。

 

 自然、トモエの羞恥心は煽られ、ただでさえ赤かった顔は更に赤くなる。

 月明りがカーテン越しに差し込む部屋でなければ、リンゴを連想させたに違いない。

 

 

「………………」

「…………おぉ」

 

 

 暫くの間、両者は向かい合った状態で無言の時間が過ごした。

 

 トモエは緊張と羞恥心の余り、当初の目的さえも忘れて頭の中が真っ白になって言葉を紡げず。

 タキトゥスはアルコールでぐずぐずになった脳髄で観察を続けて、相手と自らの置かれた状況を理解しようと努める。

 

 そうして、先に動いたのはタキトゥスであった。

 握った拳でもう一方の掌を叩くと、おもむろに服を脱ぎ始める。

 ようやくその時がやってきた、とトモエの顔は先程から一転して蒼褪めさせ肩をビクリと震わせた。

 

 覚悟を決めていようが、怖いものは怖いものだ。

 況してや、それが全く経験のない男女の営みともなれば尚の事。

 指先さえも動かせないでいたトモエを余所に、タキトゥスはいそいそとシャツを脱いで、インナー姿になると手を伸ばす。

 

 その何の事はない所作でさえ、彼女の恐怖心を増大させるには十分で。

 トモエは思わず身を竦ませ、これから訪れる出来事をやり過ごそうとぎゅっと瞼を閉じる。

 

 

「これで、よし」

「え?」

「んもー、トモエしゃん、女の人が身体冷やしちゃダメでふよぉー。じゃあ、お休みなさい」

「え…………え……? …………えぇーーーーーーーーーーー!?」

 

 

 トモエの想像したような未来は決して訪れなかった。

 タキトゥスは事もあろうに、脱いだ自らのシャツをトモエの肩にかけると、一人納得したように頷いて再び横になる。

 

 困ったのはトモエだ。

 全ての見積もりが甘かったと言わざるを得ず、緊張と恐怖で動けないほどであったが、本当に覚悟だけはしていた。

 しかし、これではその全てを裏切られたようなもの。困惑もしよう。

 

 だが、それはトモエの目線での話。

 タキトゥスにしてみれば、眠る直前にどういう訳だが下着姿の仲間が現れた。

 酒に奪われた思考能力を必死で回して出した結論が、そんな真似をしている理由はともかく、風邪をひかぬようにシャツを羽織らせよう、というだけ。

 

 泥酔状態でもなお、この善良さ。

 そもそも、この男は気軽に女を抱くだの、手を出すだの全く向いていないのだ。

 セレスティナもその点には苦労したし、カルラの場合は今後の人生全てを預かるほどの覚悟で事に及んだ。

 

 トモエがどれだけ意気込もうが、タキトゥスには全く関係がないのである。彼が獣になるにはまだ足りない。

 

 

「た、タキトゥス殿、夜伽に! 夜伽に参ったのですよ?!」

「よ……とぎ……? ……って何だっけ? えーっと……あー……ん……そんな難しい言葉使ったって分かんない! 分かんないです!」

「せ、せ、性交! 交合! 交わり! 交尾! せ、セックスです!」

「ふぁ……? ……ぷー、くすくす。トモエしゃんおっかしいんだぁー、そーいうのは恋人とかぁ、奥さんとかぉ、そういう人とだけしゅるんですよぉー?」

「そ、それは……その……そうなのですが……」

 

 

 酒に飲まれた状態でこそあったが、タキトゥスが放ったのは全き正論。

 出鼻を完全に挫かれたトモエは先程までの緊張は何処へやら、ぐうの音も出ずに押し黙る。

 

 かと言って、このまま引くトモエではなかった。

 セレスティナ達によるお膳立てもある上、自らもまた覚悟を決めたはず。

 

 それを軽々しいものではないと証明するため、横寝で背を向けて肩を震わせながら笑うタキトゥスに誘いの言葉を投げかける。

 

 

「これは御恩返しなのです。タキトゥス殿には此方を好きにして頂いて構いませんので……」

「んぁー……僕とセックスするのが恩返しになるんですかぁ……? なんでぇ……?」

「それは……セレスティナ殿もカルラも、タキトゥス殿のお相手には疲れている様子なので……」

「ふぇぇ……そーだったんですかぁ…………なら、僕が我慢しましゅ……しょっかー……二人とも、いやだったのかぁ……ぐすん」

「と、兎に角! 据え膳喰わぬは男の恥と言います! 此方に恥をかかせぬためと思って……」

「……………………トモエしゃん、正座」

「は……? いえ、あの……」

「いいから、正座してくだしゃい……!」

「は、はいぃ……」

 

 

 トモエが口を開く度、男女の営みを始めるには程遠い雰囲気になっていく。

 タキトゥスは興奮した様子を全く見せず、笑っていたかと思えば疑問を口にし、疑問を口にしたかと思えば啜り泣く。

 酔っ払いらしい情緒不安定さであったが、まともに男を誘ったことなどないトモエには余りにも荷が重い相手であった。

 

 やがて、タキトゥスは眠気が限界を迎えてなお眠らせて貰えない現実に腹でも立てたのか、のそりと起き上がる。

 野生の肉食獣が動き出すような、緩慢さがありながらも威圧感を秘めた所作に、トモエは促されるままに淫靡な格好のままベッドの上で居住まいを正した。

 

 タキトゥスもまた正座になると向かい合い、据わった目でトモエを見つめる。

 どう見ても、どう考えても、これから一発しけ込むような雰囲気ではない。

 

 

「いいれふか、トモエしゃん! 女の人が、そんなこと言っちゃダメれふ! もっと自分を大事きゃ、めーでしょうが!」

「で、ですが……御恩もありますので、娼婦だとでも思って……」

「トモエしゃんはしょーふじゃない! しょーふじゃないもん! それにしょーふの人だって生きるために頑張ってやってるもん! 恩返しにしゅることらないもん!」

「……ご、御尤もではあるのですが……」

 

 

 始まったのはお説教であった。

 ベッドを両手でバシバシと叩きながら、呂律の回らない口調で繰り出される論調は何一つ間違っていなかった。

 その正論振りにはトモエも言葉を詰まらせざるを得ず、どんどん縮こまっていく。

 

 まるで悪戯を咎められている子供のような有り様。

 余りの情けなさに泣きそうになったトモエであったが、ぐっと堪えて顔を上げた。

 

 

「まったくぅ! トモエしゃんはまったくぅ! まったく者れすよほんとぉ! そういうのは旦那さんとしてくだしゃいね!」

「で、では……今宵限りは夫婦ということで……」

「そんなのしょーふとかわんないでしょーがぁ!」

「うぐぐぅっ…………い、いえ、アズマには夜這いという文化があるのです。夫婦(めおと)となるまえに互いの……」

「だぁーかぁーらーぁー、難しいこと分かんないれふ! それに、此処はアズマじゃなくてヴァンハイムでしょぉ! 変な文化持ち込まないでぇ! ぷんっ!」

 

 

 しかし、何もかもが巧くいかない。

 泥酔した者に理知的な説得など聞くわけもなく、何よりも泥酔した者の方が常識に沿った発言を繰り返す。

 トモエも道理から外れていると理解した行動故に、反論も要領を得ずにぎこちない。

 

 タキトゥスは頬を膨らませて、そっぽを向く。

 無理に頭を回して血流が早くなっているのか、酔いは一向に醒めず深くなる一方。仕草さえも子供っぽいものへと変化していく。

 今は感情が昂っている故に起きているが、落ち着き始めればすぐさま眠りへと落ちてしまう。

 追い込まれたトモエの脳細胞は高速で回転し始めるものの、有効な言葉などそうそう出て来ない。

 

 なんとか、なんとかしなくては。でも、どうやって。これでは御恩を返せない。何を言えばいいの。セレスティナ殿はどうやって。

 

 ぐるぐると無意味な思考が溢れ出しては、流される。

 気分が悪くなるほどの焦りに、もういよいよどうにもならなくなり―――――

 

 

「わ、分かりました。これより此方はタキトゥス殿の妻となります!」

「どーせ、今夜だけでしょー! そういうのめっ! って言ったじゃないですかぁー!」

「ち、違います。一生です!」

「ふぇぇ……? 一生……?」

「一生!!」

 

 

 ――――飛び出したのは、見え透いた嘘だった。

 

 トモエにそのようなつもりは一切ない。

 一族の仇を追っている最中。為すべきを為していないにも関わらず、未来を考える余裕などトモエには存在しない。

 

 だが、恩を返すために思わず吐いた。

 馬鹿馬鹿しいまでに稚拙で、タキトゥスが今宵の記憶を失わなけえれば大変なことになる嘘。

 

 けれど、現れた変化は劇的であった。

 

 

「えー……あー……んぁ…………うぇへへへへへ、そんなぁ? そんなにぃ? まいったなぁ、僕モテモテだなー」

「うぅ……」

「僕はまだよく分かんないのに、セレスティナ様もぉ、カルラさんも、僕のことしゅきってぇ……なんか悪いなぁ。でも、好きって言って貰えるの嬉しいでふよねぇー」

「ぐぅぅ……!」

「あ、そうらぁ、トモエしゃんは僕の何処がしゅきなんれふかぁ?」

「はうぅぅ……」

 

 

 トモエの嘘をゆっくりと咀嚼したタキトゥスは、にやけきった笑みを浮かべて頭を掻く。

 素面の彼であれば、自分の気持ちも分からない状態で妻を二人も娶っていて罪悪感を抱えているのに更にもう一人ぃ、と顔を引き攣らせたであろう。

 しかし、現状の反応を見る限り、誰かに好きと言われている、愛という感情を一方的に受け取ってしまう申し訳なさはあれども、嬉しくないわけではないようだ。

 もしセレスティナとカルラが居ればタキトゥスを更に喜ばすため、心底からの愛を言葉に変えて、好きっ♥ 好きっ♥ と何処に惚れ込んだのかを耳元で甘く囁いたに違いない。

 

 もっとも、トモエは顔面蒼白で挙動不審になるには十分であった。

 咄嗟に出ただけの虚言。何処が好きも何もあるわけもない。そもそもが嘘なのだから。

 

 トモエは視線をキョロキョロと彷徨わせ、大量の脂汗を流す。

 考えなしの嘘でタキトゥスの返しなど想定しているわけもなく――――

 

 

「……そう、ですね。ありきたりですが、強く優しいところが、好きだと思います」

「そっかー、そうなんれふかぁ、えへー」

「山の如く動じず、揺るがない背中を見ると何故か、安心してしまい……」

「ふんふん。ふーん。ふへー」

「ライデンと引き合わせて頂いたことにも感謝を。馬と接している時のタキトゥス殿は子供のように無邪気で、愛らしく……けれど、自信と信念を見てとれるようで」

「うぇへ、うぇへへへへへへ」

「ライデンと接する時には、タキトゥス殿もこのような気持ちなのかと勝手に共感してしまい、何やむず痒い気分に、なって……」

 

 

 蒼褪めていた頬は朱に染まり、心拍は一秒ごとに増していく。

 そんなトモエの変化に泥酔したタキトゥスが気付く筈もなく、子供のようにきゃっきゃっとはしゃぎながら喜んでいた。

 

 トモエの言葉に嘘など何もなかった。

 想定していなかった事態に直面して、すらすらと嘘を並び立てるほど器用な性格ではない。

 

 だからこそ、秘めていた本心なのだろうとトモエは納得したが、同時に驚いた。

 飛び出した言葉の数々は誰が口走っているのかと思ってしまうほどで。

 

 ――――そんな。まさか。これでは、まるで此方が……

 

 

「あ、そうらー、そうらったぁ。トモエしぁゃん、僕ねー、ずっとしてあげたかったことがあるんでふよぉ」

「……え? あ、は、はあ……一体、何を……」

「やっていいか分かんなかったけどぉ、もう夫婦ならいいれふよねー。おいれー」

「…………っ!」

 

 

 沸き上がった驚きと疑念に固まったトモエであったが、今度は別の意味で固まった。

 

 何事かを思い出したタキトゥスはベッドに再び横寝になる。

 但し、今度は背を向けてではなく、正面を向いて。そして、両腕をトモエに向かって差し出していた。

 

 明らかな誘いの言葉と動作に、トモエはたじろいだ。

 これで当初の目論見は達成したも同然。後は身を任せてしまえば終わるまで耐えるだけ。

 

 けれど、何故か泣きそうになってしまう。

 恐怖ではない、屈辱でもない。自分でも訳の分からないままに、これから起こるであろう現実に涙が溢れそうになる。

 

 トモエはタキトゥスが羽織らせたシャツを脱ぎながら、その原因が何なのかを心の深くを探り続ける。

 抱いているのは嫌悪だ。だが、自分へ向けたものでもなく、タキトゥスに向けたものでもない。

 

 

(あ、あぁ……此方は……)

 

 

 其処まで考えて、はたと気づく。

 自身が見たくないのは、これから起きる現実そのものではなく、抱いてしまうかもしれないタキトゥスへの嫌悪。

 愛無き(まぐ)わいで獣となったタキトゥスの姿を目にし、嫌ってしまう可能性そのものを嫌悪していた。

 

 何と愚かな因果応報。

 タキトゥスの立場を慮り、自らもまた仇を優先したが故に蓋をしていた秘めた思い。

 それを直視せざるを得ない状況になり、ようやく気付いたにも拘わらず、これから起こるのは全てを台無しにしてしまう望んだ状況。

 

 余りの愚かしさにトモエの涙は引いていった。あったのは諦めと納得だけ。

 抱いていた感情は忘れよう。全ては自業自得、他者が悪いわけではなく、己がただひたすらに愚かなだけだったのだから。

 

 

「…………っ、あの……?」

「よーしよし。いっぱい傷ついちゃったけどぉ、いっぱい頑張りましたねぇ」

 

 

 尤も、全ては杞憂。

 事此処に至ってなお、トモエはタキトゥスという男を甘く見ていた。

 

 待っていたのは、どうしようもなく甘く優しい抱擁。

 男女の行う愛と欲に満ちたそれではなく、親兄弟の情に近い感情が両腕には籠っていた。

 

 そうして、数多の戦場を越えて多くの命を奪いながらも、命への慈しみを失わなかった傷だらけの無骨な手が、トモエの頭を緩やかに撫でる。

 

 

「ずーっとねぇ、こうしてあげたかったんですよぉ。トモエさんと初めて話した時から、無理してるなぁ、大丈夫かなぁ、って思っててぇ」

「…………や、だ」

「でも、トモエさんも自分で決めたことを否定したくないし、僕が首を突っ込むのも違うかな、余計なお世話かなー、って」

「だめ。だめ、です。お願い、します。やめて、やだ、だめ……!」

「でもでもぉ、もういいれふよねぇ? 僕はもうトモエしゃんの旦那しゃんれふからー。だから、トモエしゃんも頑張り過ぎたり、我慢しなくていいれふからねぇー」

 

 

 ずるい。

 どうして、このような真似をなさるのですか。

 どうして、太い腕は何処までも力強く、安易な逃避など許さしてくれないではないですか。

 

 

「…………う、うっ、ぅ」

「トモエしゃんがやりたいことは、頑張り過ぎて壊れないように手伝いましゅ。れもヴァンハイムの騎士なんで、間違ってたら僕が止めましゅ。やり過ぎても絶対止めましゅ」

 

 

 ずるい。ずるい。

 どうして、今のこの時に、そのような甘い言葉を呟いてくれるのですか。

 どうして、傷ついた心に沁み込むような甘い優しさ(どく)を打ち込むような真似をなさるのですか。

 

 

「うぁ、ぁあ……あぁ……うぅ、あぁ……!」

「我慢しないれー、悲しかったら泣いちゃいましょうれー。仇討ちしたい気持ちは正直よく分かんないけろぉ、僕がんばりましゅ! トモエしゃんが泣きたくなったらよしよしして慰めてぇ……ふぇぇ、あげなきゃいけないのに、なんか僕まで悲しくなってきたぁ……」

 

 

 ずるい。ずるい。ずるい。

 どうして、酔いも回っているのに、そんなに暖かな光を瞳に宿すことができるのですか。

 どうして、此方の気持ちを分からないと言っておきながら、共に涙を流してくださるのですか。

 

 

「う、うぅ、うわぁぁああぁ――――!!」

 

 

 昏い憎悪と嚇怒で堰き止めていた悲しみが、タキトゥスの優しさに溶かされて涙となって溢れ出す。

 川が氾濫すれば、人は脅威が収まるまで耐え忍ぶしかないように、一度でも溢れれば、もう止まらない。

 先程までタキトゥスの腕から逃れようとしていたトモエは、今や胸に顔を埋めて泣き腫らしていた。

 

 ごめんなさい、お母様。

 此方は、トモエは、何もできませんでした。

 弱っていく皆を救うこともできず、見ていることしかできませんでした。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。トモエは、駄目な娘です。

 

 どうしてですか、お父様。

 何故、天子様の御所であのような凶行に及んだのですか。

 優しかったお父様が、親友であったお方を斬り殺したのですか。

 こたえて、答えて、応えて、堪えて。トモエはもう、貴方を仇として討つ他ないのです。

 

 

「うぅ、悲しい気持ちは吐きだしゃないとダメですよ。それから一緒に頑張りましょうね。僕は役に立たないかもしれないので、その時はセレスティナしゃまやカルラしゃんに頼っちゃいます。夫婦れすからー」

 

 

 そうして、トモエとタキトゥスは同じ褥で共に涙を流した。

 溢れる悲しみを吐き出すように。妻の悲しみを和らげようと肩代わりするように。

 

 トモエは泣き疲れた果てに眠り、タキトゥスは優しく抱き締めたまま頭を撫で続け。

 

 そうして、運命の夜は幕を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

地の分のエロ表現はどっちがいい?

  • 官能小説的に頼むぞ!(肉棒、淫裂等)
  • 下品な方がええやん!(チンポ、まんこ等)
  • 全てはバランス。そう、肉と野菜のように
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。