たくさん感想ありがとうございます。
翌日、登校しようと部屋を出ると、そこには一之瀬さんがいた。坂柳さんじゃなくて良かった。
いつも寮の出口にいる彼女だが、今日はどうしたのだろうか。
「あ!おはよう、神田くん!」
「お、おはよう。部屋の前まで来てるなんて珍しいね。」
「うん!神田くん、今日の放課後って何もなかったよね?」
「そうだね、何もなかったはず。」
毎日のように予定を聞いてくる彼女は、当然俺の予定を把握している。誤魔化せるはずもないので肯定する。
「そっか!今日って、プライベートポイントが振り込まれるでしょ?神田くんの部屋でパーティでもしようと思って!…どうかな?」
そう言った彼女の手にはビニール袋がぶら下がっている。中には真っ黒な炭酸飲料やポテチ等が入っている。
まぁ、それぐらいなら大丈夫だろう。たまには正面から部屋に上げてやろう。
「いいよ。そんなに綺麗な部屋じゃないけど大丈夫?」
「大丈夫だよ、そんなの気にしないから。」
まぁ、君は良く俺の部屋に上がり込んでるからね。
「それで、良かったらこれ。冷やしといて貰えないかな?」
ビニール袋を少し持ち上げ、こちらに見せてくる。たしかに、どうせならキンキンに冷えてるほうがいいよね!
一之瀬さんから袋を受け取り、部屋の冷蔵庫に入れた。
「じゃあそろそろ行こうか。」
「うん。放課後、楽しみにしとくね!」
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教室に到着すると、クラスがざわついていた。おそらく、今日振り込まれるポイントのことだろう。
席に着くと、軽井沢さんが駆けつけてきた。
「ねぇ、神田くん!ポイント振り込まれてた?」
「いや、まだ振り込まれてないね。」
「やっぱり?帰りに買い物行こうと思ってたのにー。」
残念そうに彼女は言うが、多分0ポイントが振り込まれた、ということなのだろう。
ホームルームの時間になると、茶柱先生が入室した。
「せんせー!ポイント振り込まれてないんですけど!」
いきなり山内が先生に質問をぶつける。
「いや、ポイントはたしかに振り込まれている。」
「え?でも入ってないっすよ!」
「このクラスだけ振り込まれていないと言うわけでもない。」
クラス全体に?が浮かぶ。ほとんどの生徒が先生の言っている意味を理解できていないのだろう。
「…お前たちは本当に愚かな生徒だな。」
先生はホワイトボードに、各クラスのポイントが書いていった。
一学年クラスポイント一覧
Aクラス 940ポイント
Bクラス 650ポイント
Cクラス 490ポイント
Dクラス 0ポイント
当然、俺たちDクラスは0だった。まぁ俺は965000ポイント持ってるけど。Aクラスでも結構減点されるんだね。
その後、先生からSシステムについてさらに詳しい説明があった。Aクラスが1番優秀だと聞かされた時は、幸村や堀北さんの反応が面白かった。
加えて中間テストについても説明があり、赤点を取ると退学になると告げられた。なるほど、それで契約の時に退学者を出さないって言ってたのか。
説明が終わると先生は退室していった。残された生徒たちは口数が少なく、いつになく暗い雰囲気だった。
「神田くん、昼休憩に少し時間をくれないかしら。」
「うん、いいけど。」
珍しく堀北さんに声をかけられた。そしてそのまま、先生の後を追うように教室を出て行った。
「あいつ、どこ行ったんだ?」
「多分先生に抗議しに行ったんじゃない?今誘われたのもそれ関連だと思うけど。」
「…お前も大変だな。」
これまた珍しく、綾小路にも声を掛けられた。彼の今までの行動を見ていると、目立ちたくないために実力を隠しているという線が濃そうだ。その結果、Dクラスに配属されたのだろう。
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昼休憩、堀北さんと屋上に来ていた。
「私は、どうしてもAクラスに上がらなくてはいけなくなったわ。神田くん、貴方の力を貸してちょうだい。」
堀北さんに告げられた内容は大方予想通り。
「何で俺なの?」
「悔しいけど、貴方は私より優秀よ。おそらく、1年生の中でもトップクラス。…うちのクラスで言うなら、次点で綾小路くんかしら。彼にも協力を依頼するつもりよ。」
ツンツンしてるように見えて、意外と信頼してくれているらしい。
「評価してもらうのは嬉しいけど、俺はそんな大したもんじゃないよ。」
「今朝、先生が言っていたわ。入試では全教科満点。おまけにシステムの仕組みにもいち早く気づいた。私より、貴方の方がDクラスにいることが不思議だわ。」
何喋ってるんだよあの人。今度ヒィヒィ言わせてやる!
「…で、協力って、具体的に何をすればいいの?」
「そうね、試験でいい点数を取ってもらうことぐらいかしら。貴方なら満点を取るぐらい余裕でしょ?」
だめだ、この子はまだ本質を理解できていない。
「本当にそれだけでいいの?」
「…何が言いたいの?」
「きっとこのまま放っておけば、次の中間テストでは数人の退学者が出る。それは堀北さんも分かっているはず。」
「そうね。申し訳ないけど、高校生とも思えない輩もいるわ。」
須藤や山内のことだろう。そこまで言わなくてもよくない?
「もし他のクラスで退学者が出なかったとしたら、Dクラスだけ人数が減ることになる。それが不利に働く場合が必ず来る。」
「先生の言っていた、特別試験ね。」
「特別試験ってやつは内容が分からないから、一旦置いておこう。」
不確定要素が多すぎて、予想し出したらキリがない。
「例えば、一般的なイベントで言うと体育祭とかかな。俺や洋介みたいに、勉強と運動のどちらも出来る人間は多くない。普通は反比例して、どちらかが疎かになる。」
「…馬鹿でも使いようがあると言うことね。」
いや言い方。そんなの聞いたらあいつら殴りかかってくるぞ。
「単純に男子全員参加とかの競技があれば、数的優位を他クラスに与えることになる。」
戦いは数だよ!って俺の中の偉人が言ってた。
「まぁ最終的に、クラス全員で協力しなきゃ無理ってことだよ。今いきなりAクラスに上がっても、すぐ追い抜かされることは分かるでしょ?全員が変わらなきゃダメなんだよ。」
「たしかに、それには同意するわ。」
これが茶柱先生の真意。全員でAクラスを目指す。
「堀北さんで言えば、さっきみたいな言い方。俺は好きだけど、言われた本人達が聞いたら協力なんてしてくれなくなる。本当にAクラスを目指すなら、堀北さん自身も変わらないきゃいけないよ。」
「…そうね。気をつけるわ。」
少し反省した様子が見える。この子、こんな顔できたんだ。てっきり、余計なお世話よ。とか言われるかと思った。
「それで、改めて俺に何を協力してほしい?」
「……中間テストに向けて勉強会を開くわ。貴方にも手伝って欲しい。」
「まぁ、それが妥当な所かな。ただ条件として、堀北さんが参加して欲しい人に声をかけること。それでいいかな?」
「………分かったわ。」
今、すっごい嫌そうな顔したな。こいつどんだけコミュ障なんだよ。
ヒロイン:堀北 鈴音の好感度が上昇しました!
(25 → 30)
スキル:超イケメンの効果により好感度ボーナス!
(30 → 32)
教室に戻ると、女子生徒にポイントを借りようとしている軽井沢さんがいた。返す気はないんだろうな。
「軽井沢さん、ちょっといい?」
「どうしたの?」
「ポイント無くて困ってるんなら、俺が貸しとくよ。」
「本当に!?ありがとう神田くん!」
「うん。だから他の人には借りないこと。そんなことばっかりしてたら友達いなくなるよ。」
「…うん、分かった。」
少しは反省してくれただろうか。クラスの和に亀裂を入れないために、彼女は手懐けるに越したことはない。
俺は端末を操作して、30000ポイントを送った。
「はい、送ったよ。」
「ありがとう!…えっ!こんなにいいの!?」
「いいって。こんなこともあろうかと、地道に節約してたから。それだけあれば、とりあえず何とかなるでしょ?」
「う、うん!当分返せないかもしれないけど…。神田くんは大丈夫なの?」
「まぁ、困った時はお互い様だから。最悪返さなくてもいいよ。俺は、軽井沢さんが苦しんでる姿なんて見たくないから。」
「………ありがとう。」
少し俯き、顔を赤らめる彼女。これは好感度が上がる予感がする!
ヒロイン:軽井沢 恵の好感度が上昇しました!
(94 → 99)
スキル:超イケメンの効果により好感度ボーナス!
(99 → 101)
ついにこの時が来てしまった。彼女は51%の確率でストーカーになってしまう。神様!お願いします!たまには1人ぐらいまともな女の子がいてもいいじゃないですか!?
ヒロイン:軽井沢 恵が〈純愛〉状態になりました!
…一瞬、ストーカー発生アナウンスかと思った。
純愛?何だこれは。ただ単に俺のことが好きってことなのかな?ストーカーにならなかった場合はこの状態になるのか?
初めてのことに戸惑いを隠せない。
「あ、あのさ!今日の放課後って暇だったりする?」
「今日か。一応予定はあるけど、どうかした?」
「うん、大事な話があるの。神田くんの部屋で話せないかな?」
どうしようか。当然、今朝の一之瀬さんとの予定がある。しかし、軽井沢さんの純愛と、大事な話には興味がある。
「大事な話か。…分かった、空けとくよ。」
「ありがとう!じゃあ放課後ね!」
おっと、一之瀬さんに断りのメッセージを送らなくては。
『ごめん、今日の放課後無理になった!』
『そっか…。Dクラス大変そうだもんね。また明日にする?』
『そうしてくれると助かるよ。』
『分かった!じゃあまた明日だね。あ!お菓子とジュース、全部無くなってたら怒るからね!』
どうやら、彼女はDクラスの0ポイントを知って心配してくれているようだ。こうして見れば普通のいい子なのに残念だ。
それより、今は一之瀬さんよりも軽井沢さんだ。
純愛。…純粋な愛か。今までストーカーからの歪んだ愛しか受けて来なかったから、それが何なのか分からない。
俺はモヤモヤした気持ちを抱えたまま授業を受けた。
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放課後になり、軽井沢さんと俺の部屋まで来た。普段はお喋りな彼女だが、ここまでくる道中、かなり口数は少なかった。
「お、お邪魔しまーす。」
「ごめん、急だったから散らかってるけど。」
「ううん!全然あたしの部屋より綺麗だよ!」
それはそっちの部屋が汚いだけなのでは…。今度見に行ってやろう。
「良かったら何か飲む?」
「うん。貰おうかな。」
「飲み物は、…あ。」
冷蔵庫を開けてみると、未開封の飲み物は一之瀬さんから貰った炭酸飲料だけだった。流石に俺がラッパ飲みしたのを飲ませるのは気が引ける。
まぁ、ちょっとぐらい飲んでも怒らないだろう。コップにジュースを注ぎ、彼女の元へ戻った。
互いにジュースを飲んで一息ついたところで本題に入る。
「それで、大事な話って?」
「えっと、その前に確認なんだけど、本当に一之瀬さんとは付き合ってないんだよね?」
「色々噂はあるみたいだけど、ただ仲が良いだけだよ。」
「わかった。…神田くん、あたしと偽の恋人になって欲しいの。」
「偽の恋人…?彼氏のフリをするってこと?」
何でそんなことをする必要があるのか理解できない。
「うん。って、意味わかんないよね。ちょっと長くなるけど、ちゃんと一から話すね。」
そう言った彼女の顔からは、何かを決意した強い意志を感じた。
軽井沢さんが語ったのは、その壮絶な過去。中学時代、ひどいいじめを受けていたようだ。そのトラウマもあってか、入学当初からクラスのカースト上位に立つことを徹底していたらしい。
しかしそれだけでは不安なため、カースト上位の男子の彼女になることで、その地位を確立しようとしている。その相手に選ばれたのが俺だったようだ。
「でも、それなら普通に彼氏作れば良いんじゃないの?」
わざわざ偽にする必要性が分からない。
「…え?でも、…あたしなんて相手にされる訳ないから。」
…そうか、彼女の根底にあるのは圧倒的な自分への自信の無さ。いじめられていた自分が釣り合う訳がないと思い込んでしまっている。ましてカースト上位の男子になら尚更だ。
「…でも、何で俺だったの?うちのクラスなら、洋介でも良さそうだけど。」
「そ、それは…、神田くんの方が、いざという時守ってくれそうだったから。」
たしかに、洋介は誰か1人に肩入れするようなタイプじゃない。彼女なりにそれを悟ったのだろう。昼休憩のポイント譲渡が決め手になったのかもしれない。
それでも、やはり偽の恋人というのが引っかかる。
好感度は100を超えており、純愛という状態になっている。にもかかわらず、俺に偽の恋人関係を要求している。
ストーカー2人の様子を見ると、この状態というものは呪いに近い。それまでの行動理念を捻じ曲げて、感情さえもコントロールしてしまう。
純愛ともなれば、普通に交際を迫ってきそうなものだが。
「…な、何かこの部屋暑いねー!」
何も言わない俺に対して、気まずさもあったのだろう。制服の胸元を掴み、パタパタと空気を送っている。たしかに、ちょっと部屋が暑い気がする。
…そうか、分かった。
彼女がかかった純愛という呪い。その呪いでも支配できないほど、彼女は過去のトラウマに支配されている。
逆に言えば、そのトラウマに抗って絞り出したのが、この偽の恋人という提案だったのだろう。自信がないから告白なんてできない。それでも何とかして関係を持ちたい。
彼女は常に戦っているのだ。そんな彼女に、俺は応えなければならない。
気がつくと俺は、軽井沢さんを抱きしめていた。
「きゃっ!!きゅ、急にどうしたの!?」
「…なろう。偽の恋人に。俺が絶対君を守るよ。」
「…いいの?」
抱きしめていた彼女を離し、肩に手を置いて話す。
「うん。…ただし、条件がある。偽の恋人だとしても、ちゃんと恋人のように過ごそう。普通の恋人達がすることを全部しよう。」
「…うん。ありがとう、あたしなんかの為に。」
見つめ合う俺達の距離は、次第に縮まっていく。気付くと、唇が触れてしまいそうな位置まで迫っていた。
「…ち、近いってば!」
「…いいんだよ、もう恋人なんだから。」
「…んっ。」
彼女は目を閉じて、俺の唇を受け入れた。触れ合うだけのシンプルなキス。それでも、俺たちの心はこんなに満たされている。普通の恋人達よりも、何倍も充実している。
「……んんっ!…そんないきなり、……だめだよ。」
「ごめん。軽井沢さんがすごく可愛かったから。」
「…その、今からすごいこと言うけど、引かないでくれる?」
「うん。なに?」
彼女はもじもじしながら俯いている。なんだか様子がおかしい。
「…うん。さっきから体が熱ってるっていうか、その…ムラムラするの。たぶん神田くんのそれも、…そうだよね?」
彼女の視線の先は俺の股間。そこは巨大なテントが張っていた。あれ、いつの間にこんなに勃起してたんだ。何かがおかしい。
「ハァ、ハァ、…ねぇ。あたし達、偽の恋人なんだよね?…だったら、そういうことするのも普通だよね?」
頬を上気させた彼女は、明らかに発情している。
おそらく媚薬。一之瀬さんから貰った飲み物に入っていたのだろう。それで部屋に上がりたがっていた訳か。
「…ねぇ、いいよね?」
俺もこの湧き上がる性欲に勝つ自信はない。四つん這いで迫ってくる軽井沢さん。もう諦めよう。
長くなったので、エロシーンは次回にまわします。