BLEACH the Girl Dyed in White 作:ナムシャンデリア
それはある晴れた夏のことだった。大きな入道雲が風に乗って空を漂う空に、一筋の亀裂が走った。まるで空という名のカーテンを引き裂くように亀裂は大きな穴を広げ、中から白い頭蓋骨の頭部を持った化け物が姿を現した。薄緑色の外皮に覆われたトカゲにも似た化け物は悲鳴にも似た雄たけびをあげ、穴からその真下である住宅街へと落下する。
頭部にぼんやりと発光する眼をきょろきょろと動かし、住宅街を物色するように屋根を移動する化け物を虚と言った。俗に言う悪霊であり、現世に未練を残して死んだ者やあの世に長年行くことができず現世をいたずらに彷徨ってしまったものが、その負の感情を増大させ心に穴を空けてしまった存在。悲しい過程をへて生まれた彼らは、体に空いた穴である心の渇きを癒すためにさらに罪を重ねようとする。住宅街へと表れた虚は、美味しい食べ物である魂魄を探していた。
荒々しい霊圧をまき散らしながら、恐怖に逃げる浮遊霊をその大きな顎で挟み込み捕食しようとする。まさに恐怖の象徴であり、このトカゲ虚はこの場を支配していた。だが、そんな化け物の行軍もすぐに終わりを迎えることになる。この空座町が数年間平穏を保ち続けてきた理由であり、虚退治の専門家にして魂のバランサー。黒い和装を身にまとったオレンジの髪をした男が虚の背後に出現したことで、場の空気は一変する。
逃げるばかりだった魂魄達の中に一人、異質な存在が現れた。その事実にトカゲ虚はすこし動揺するが命知らずが自分の前に出てきただけだと勝手に納得し、目じりをニヤリとゆがめた。この虚にとって死神に相対するのは、初めての経験だった。本来死神は現世にあまり滞在しない、それは現世に不必要に干渉することを避けるためであり、現地にいるであろう集団組織を刺激しないようにとられてきた配慮でもあった。そういった事情もあって駐在員として居残る者を除いては、死神の数は圧倒的に少なかったのだ。こと空座町を除いては。
自分よりも強いものがいないと思っていたトカゲ虚は、そこで自分が井の中の蛙であったことを思い知ることになる。口に浮遊霊の魂魄を加えたまま邪魔をするなと不用意に伸ばした手を、オレンジ髪の死神に切断される。痛み、それはトカゲ虚にとって虚になる前に体験した恐怖を思い出させるには十分な事だった。生前の記憶が蘇り、目の前の相手には勝てないと素早い判断を下す。片手を失い戦意を失ったトカゲ虚は、口にくわえていた魂魄を開放しその場を逃げ出そうとしたが、そこはオレンジ髪の死神の行動のほうが一歩早かった。そんな動きはお見通しとばかりに胴体を頭部ごと袈裟切りに切られたのだ。完全な致命傷。金切り声を挙げながらどこか悲しそうな光を目に湛えてトカゲ虚は塵へと返る。その様子を黙ってみていたオレンジ髪の死神は、一仕事終えたとでもいうように踵を返してまた来た方向へと走っていくのだった。
ある程度実力を付けてきたオレンジ髪の死神は、まだまだ戦闘には慣れていなかった。目の前の虚退治に囚われすぎてもう一つの脅威を見逃してしまっていたのだ。トカゲ虚の口の中、その粘膜に寄生するように張り付いていたもう一匹の虚の影あった。大きな虚の霊圧に紛れて覆い隠されていたその虚は、宿主であるトカゲ虚が消えると同時に死神に見つからないようにその場にあった側溝へと逃げ込み難を逃れていた。
「アア…失敗シタ…コレデハ…マッタクタリナイ」
人の手のひらにも収まるほど小さいどじょうにも、蛇にも似た生き物。それは胴体に空いた孔と頭部にある頭蓋骨にも似た仮面が、生き物をしっかりと虚であることをしめしている。苦悶にも似た声を絞り出した虚には、無数の傷が体に刻まれていた。それは先ほどの戦いで付いたものだけではなく、あのトカゲ虚の口の中へと入りこむするまでの道程で起こった傷。その傷を癒そうとトカゲ虚を利用しようとした矢先、先ほどのことが起こり自分を護ってくれるであろう存在を失ってしまった。
「クソ…コンナ…事…ニナルナラ…モウ少シ…依存サキ…考エル…ベキダッタ」
怒りのこもった声でその虚、ファルニル・アブスブルはつぶやいた。怒りの矛先は思ったより弱かったトカゲ虚でもあり、自分の計画を邪魔してきたオレンジ髪の死神でもあり、なによりこんな情けない状況になっている自分自身でもあった。しかし普通の虚よりも明らかに小さく弱体化してしまっているファルニルは、まだあきらめていなかった。呪詛を吐きつつ確実に、少しでも生存率が上がるように出来る手段はとるべく行動を開始する。手足のない身体を器用にひねりながら蛇行を繰り返し、人間に見つからないように側溝の中を移動し、死神に見つからないように霊圧を極限まで抑えて先ほどのトカゲ虚の霊圧の残滓に自身の霊圧をまぎれさせる。虚が見える人間に見つかるならまだしも、同じ虚や死神に見つかってしまえばその時点で詰みが確定してしまう。トカゲ虚と死神との戦いがあったことが幸いし、戦闘の跡である崩れたがれきが目立つことで虚の存在をその場から立ち去るまで隠しきってくれていた。
「ココデハ…終レナイ…マタ…アノ場所ヘ…アノ高ミ…帰ルマデ…」
トカゲ虚のような獣じみたそれではなく言葉を話すだけの明確な意識がある。言葉を介する虚はさほど珍しくはないが、死神が人生のうちに何度も遭遇することにはなるだろう。だが言葉を話せるだけ成長した虚は例外なく一般死神の脅威になるのは間違いなかった。其れだけの期間、魂魄を食べ続け知恵を付けれるまでに心を埋めることができたという証明。
今は小さな姿をしているが、その傷が回復した際にはどれ程の脅威となるかはその脈略のある言葉遣いと、生に対する強い執着に厄介さを想像するに余りあった。
真夏の太陽に照らされ、じっとりと汗をかきながらファルニルは生き残るために次の行動を始める。周囲の霊圧を探り、近くに霊圧を持った存在がいないかを確認し始めたのだ。それには二つ理由があった、一つは死神や虚が近くにいないかを調べるため、そしてもう一つは新たな依存先を見つけるためである。ファルニルは自身の小さい霊圧であれば、他の霊生物の霊圧の傍にいることで、自身の存在を隠せることを知っていた。だからこそいち早くトカゲ虚に代わる依存先を見つけなくてはならなかったのだ。
「シメタ…近クニ…美味ソウナ、魂魄ノ…匂イガスル……虚圏ノ神ハ、俺ヲ…見捨テテハ…イナイヨウダ」
戦闘の跡が残る場所からさほど離れていない少し開けた場所。側溝の中を這いまわりながらそこへたどり着いたファルニルは周囲を見回してほっと息を吐いた。死神の気配はなく、虚の気配も薄い、隠れるにはうってつけの空間。そこには白い外観の一軒家が立っていた。仄かに漂う美味しそうな霊圧の残滓に導かれるように側溝から這い出て、玄関近くに置かれた植木鉢の隙間へと身を隠す。
今は何とか傷ついた身体を癒すことに専念するべきだと判断したファルニルは、周囲の薄い霊子を吸収し始める。虚の世界である虚圏と違い、吸引するだけで小さな虚であれば生きていけるだけのものとは違い多少の傷が時間とともに癒える程度だが、それでも十分だった。
家の住人の遺したであろう特級の霊子と相まって、ファルニルの傷ついた身体は見る見るうちに再生していく。程度は大虚の比ではないが、彼の行ったそれは超速再生だった。
「ヤハリ身体ハ、モドラナイカ。逃ゲル為トハイエ無理ヤリ、身体ヲチギッタノガ、マズカッタノカ?」
吸い上げた霊子を自身の糧にしていくファルニルは、自身の身体が癒える一方でその身に何ら変化が起こらないことを残念そうに見つめていた。そして完全回復には程遠そうだと思考を切り替えより良い回復手段へと手を伸ばす。虚の回復手段とはつまり、魂魄の摂取である。浮遊霊や地縛霊、果ては霊子濃度が高い人間を捕食することで心の飢えを満たすと同時に虚は強さを増していく。だが、通常のサイズの虚ならいざ知らず、この小さな虚には人間サイズの魂魄を襲って捕食するだけの力はなかった。それは虚自身も自覚している。だからこそ捕食に頼らずに魂魄から霊子を吸い取る方法を見つけ出していた。
「理想ハ大虚ダガ、背ニ腹ハ代カエラレナイ。アイツ等ハ、滅多ニコッチニハ来ナイカラナ、ソレニ人間トハイエ、コノ気配ダ、マア現世潜伏ノ隠レ蓑ニハナッテクレルダロウ」
虚の鼻を刺激する芳醇な香り、それは一定以上の濃い霊圧をこの家の住人が持っていることを意味していた。近場にそんな魂魄を持つ人間がいたことに感謝しながら、虚は計画を新たに練り始めた。実行は夜、住人が寝静まった時に始まる。もっとも警戒心が下がるタイミングでファルニルは仕掛けることを考え始めたのだった。
ファルニル・アブスブル
手のひらに乗るような小さな虚。胴体の中心に孔が開いており、ドジョウやウナギを掛け合わせたような魚じみた身体。のっぺりとして丸みを帯びた虚の仮面は鬼頭を思わせ全体の姿としては男性器を彷彿とさせる卑猥な姿をしている。
今作の竿役として考えたキャラクターですが、映画エイリアンに登場するチェストバスターが参考になっています。仮面の形状は原作最初期登場のフィッシュボーンDが近いです。
ちなみに作者はナムシャンデリアが最高にクールでカッコいいと思っています。アイツが破面になってレスレクシオンするのを妄想してました……
凌辱される現世メンバーは誰が良いですか?
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朽木ルキア
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有沢たつき
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紬屋雨
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黒崎夏梨
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黒崎遊子