獣耳で未亡人で床上手な集合住宅の管理人さんに色々あってめちゃくちゃにされる話 作:ジョク・カノサ
「……っ」
「右足が特に張ってますね。立ち方や重心の移動が少し歪なせいで右足に負担が掛かっているのだと思います」
その声はどこか遠くから聞こえてきたように感じる。音は頭に入っても、内容を理解する為の思考が働かない、夢の中のような感覚。
「立つ時の姿勢と歩く時の姿勢。この二つを特に意識してください。背筋と腰を真っすぐに――」
それでも、身体を襲うその感触だけは鋭敏に感じていた。
彼女が用意していたのは香油。独特の香りを放つそれを僕の手に垂らし、ぬめりを伴った手が右足を滑り、揉みほぐしている。
太腿から膝へ、そしてふくらはぎに。じっくりと丹念に、時間をかけて行われるそれは、食材に下準備をしているようだと薄くなった思考の中で感じる。
そして彼女の手は足首を通り越し、足裏へ。香油を伴った五本の手指が僕の足指の間を絡みつくように滑っていく。
先程食事へ向かう前に汗を流した際、自分で行った足の洗浄と似てるようで異なった感触。全く予想の出来ない指の動きが、こそばゆさと気持ちよさの境にある刺激を与えて来る。
そしてその刺激は下半身の中心、尾骨の奥にある熱を持った場所が疼くような感覚へと繋がっていく。
同じ事が左足にも行われる。繰り返される奇妙な快感が、頭の中の霧を更に深くしていった。
「……窮屈そうなので、お外に出しちゃいますね」
そんな彼女の声が聞こえた。気が付けば股間を抑えつけていた感触が取り払われている。
「まあ」
見られている。例え夫を亡くした未亡人であるとはいえ、人妻である彼女に見られて良い筈が無いモノが。既に誤魔化しようのない熱を以って直立してしまっているそれを。
「……下半身ばかりじゃ、ダメですよね」
そう言った後彼女が再度僕の上半身の方へと移動し、自身の肌に香油を塗り広げ、身体を倒してくるのが見えた。
「よい、しょ」
まるで本が閉じるかのように僕の肌と彼女の肌がピタリと触れ合う。ぬめりの先に感じる他者の肌の感触。体温。
次に刺激されたのは鼻だった。香油の材料であろう植物のような匂い、石鹸の匂い、そしてそれに混ざるうっすらとした獣臭。目の前にある彼女の耳から届いたそれは、僕の下半身の熱を更に増幅させる。
「ふ、ふ」
彼女が僕の胸板に横を向いた状態の顔を置く。息が漏れるような声が聞こえる。
ぬるり、という感触が上下し始めた。彼女の淡い胸と突起が、僕の上半身に擦り付けられていく。
かろうじて動いた思考が、これはマッサージじゃない、と意味の無い答えを導き出す。
ただ肌と肌を触れ合わせる、互いの熱で寒さを誤魔化すような行為。そんな行為が、どうしようも無く僕の性感を刺激していく。
「……熱い、です」
彼女がそう呟いた理由はすぐに分かった。彼女がゆっくりとなぞるように身体を動かす中で、当然それも――いきり立った僕の陰茎も彼女に触れる事になる。
それが彼女の下腹部へ微かに触れる度、思考がおぼつかない程の興奮が更に高まっていく。
そして、時折来る硬い感触。それが彼女の陰毛である事に気づいてしまって、どうしようもなく熱が高まっていくのを感じて。
遂にはそれが、爆発した。
「……っぁ」
「あっ」
無意識に、小さなうめき声が出ていた。思考を埋め尽くす快感の大波。
陰茎が脈動する度に、そこに溜まっていた熱が下腹部に吐き出されていくのを感じる。長い、長い、射精の快感。
「そのまま、そのまま出してください。身体の力を抜いて……」
射精と同時に僕の耳元に顔を置いた彼女が、優しくそう囁いた。
快感の波が徐々に収まっていく中、少しだけ晴れた頭で僕は安堵していた。
これで終わりだ、僕は性欲が強い方じゃない、一度出せば満足し、すぐに復活する事は無い。
彼女と最後の一線を越えてしまう未来は無くなり、今ならまだ一時の気の迷いで済ませる事も出来なくはないと。
「そう、そう、出して……」
彼女の声と深い安堵の中で、僕は少しの間意識を飛ばした。
☆
「――でも、全部はダメですよ?」
「……え」
意識が戻ったのはすぐ後の事だった。レナさんが呟いたその一言と共に、異変に気づく。
射精が終わった筈の陰茎が全く衰えていない上、下半身の熱は未だ保ったまま。思考の霧は多少マシにはなったが、未だに頭の中を覆っている。
「なん、でっ」
疑問の声が途切れる。その理由は胸に感じた唇の感触。
唇を付けて、吸って、離す。これを何度も繰り返し、レナさんが小さなキスを僕の上半身の至るところへ施していく。
奉仕。浮かんだのはその言葉。
僕は今、奉仕されている。今更な実感に下半身が疼き、意識がふらつく。
「レナ、さん――っ」
また、唇を奪われた。再び侵入してくる舌と一緒に感じるのは、直前の行為で彼女の唇に付いた香油の奇妙な味。
「……長く、マルクさんと楽しみたくて」
そのキスは先程と比べるとすぐに終わった。顔を離した彼女が僕を見下ろしている。
「特別な香油を買ったんです」
「……まさ、か」
熱に浮かれた彼女の言葉で、僕は察した。
媚薬。もしくはそれに近い成分がこの香油には含まれている。
思考の奥底で感じていた疑問が解決する。虚脱した身体、失われた思考、そして興奮と快感。途中……彼女が香油を使い始めた頃から深度の増したそれらは、今思えばどちらも酔いの影響と言うには少し無理があった。
「口からの摂取でも、効果があるそうですよ?」
そう言って無邪気に笑う彼女が、僕の安堵を叩き潰した。
「は、は」
強張っていた身体の力が一気に抜ける。思考が再び曇っていく。それと同時に、下半身の熱は更に高まっていく。
もう無理だ。今度こその諦観が、僕の身体を支配していた。
「ふふ……あっ、もったいない……」
彼女が視界から外れていく。それに釣られて僕は視線を下半身の方へと向ける。
「――っはぁ……男性の、匂いがします」
そこでは彼女が、横に広がったベッドの上から先程の行為で僕の下腹部に溜まったモノ――精液に顔を近づけて、恍惚とした表情で嗅いでいた。そして――。
「いただきますね」
「……あ」
止める暇も無く、彼女はその泉へと舌を伸ばした。
「ん……」
一切の水音無く、僅かな吐息と共に彼女は僕の欲望の塊を舐め取っていく。
舌を見せ、精液を乗せ、口の中へ。そうして犬のような姿勢で彼女はそれを取り込んでいく。
普通であれば征服感を感じるような光景なんだろう。こんなにも美しい女性が、自分自身の種を嬉々として胃へ納めていくのだから。
でも僕は知っている。
文字通り、食べられているのは僕の方なのだと。
「……ふう、ごちそうさまでした。力強くて……濃ゆくて……素敵な味でした……」
少しの気恥ずかしさが混じった感想。それが誉め言葉どうかなのかも分からない。
僕は今、捕食されている。言葉も力も通じない、圧倒的な強者の慈愛に満ち溢れた奉仕を受けるしかない。
でも、いつまでもこれが続く筈が無かった。
「次は――お腹でいただきましょうか」
彼女は僕の下半身へと合わさるように腰を浮かせ、跨っていた。そのまま腰を降ろせば確実に一線を超える。そんな体勢。
笑っている。この時を待ち侘びていた、そんな言葉が聞こえてきそうな喜悦の表情。
でも、その笑顔と。
『マルクさん』
いつものような、朗らかなレナさんの笑顔が重なって。
「……っ!」
「あっ」
僕は無我夢中で手を伸ばしていた。
「マルクさん……」
「……ぁ……ぅ……」
言葉にならない。その代わりに右手で何とか掴んだ彼女の手首に力を入れて、彼女の目を見つめた。
いや、実際には力なんて入ってなかったのかもしれない。見つめたつもりの視線も定まっていなかったかもしれない。
でも、こうすれば伝わるかもしれない、思い出すかもしないと思った。僕の気持ちを。レナさんが大切にしていた思いを。
「マルクさん。貴方は本当に――」
強引に動き出した僕を、レナさんは驚いた顔で見つめていた。
しかし、僕がその表情に期待したのも束の間。すぐにその表情は変わり。
「可愛い、
もういつものレナさんとは重ならない淫欲に溺れた女の顔だけが、そこにはあった。
「っ」
陰茎に来た唐突な刺激。視線をそこに移すと、根本を支えるように彼女の細指が宛てられている。
声は出なかった。出来たのは、その光景をただ見る事だけ。
彼女の茂みに隠れ、竿の先端が見えなくなる。それと同時に先端がぬめりに触れた感触がして、次に感じたのは熱。
「んっ」
今まで聞いた事が無いレナさんの声。小さくも艶のある、高い女の嬌声。
最初に感じた熱は序の口だった。亀頭が飲み込まれた辺りで感じる、火傷でもしてしまいそうな淫熱。
「……あっ、ん、硬い……」
ぬるり、ぬるりとする筈の無い音が脳内で響く。それほどまでに簡単に、僕の肉棒は彼女の秘所へと飲み込まれていった。
「入り……ました……」
全てが収まり切った時、僕は再びベッドへと倒れこんでいた。
下半身に伝わってくる確かな快感と、やってしまったという虚脱感。
「動き、ますね」
我慢が出来ない。そんな風に聞こえた。
彼女の腰がゆっくりと上がって、一度入りきった陰茎が姿を現す。その表面は彼女の中で擦りつけられた愛液で鈍く光っている。
そしてまた、飲み込まれていく。
「んっ……っ……ふっ……」
現れて、飲み込まれる。その繰り返しだった。
陰茎全体を包み込むまったりとした媚肉の感触。興奮を押し殺したような彼女の声。
「マル、クさん?」
動きを止め、彼女が僕の名前を呼んだ。何かおかしなモノを見た時のような、そんな声。
「泣いて――」
今、僕は泣いているらしい。そういえば目の辺りが熱くなっている気がする。なら、これで彼女に涙を見せるのは二度目になる。
悔しさと情けなさ。涙の原因はいつもと同じそれだろう。
決心も誓いも何一つ守れない。何も変わらない、弱さが作った涙。
「あ……あぁ……」
レナさんの感極まったような声が聞こえる。視界が滲んで顔は良く見えない。頬の辺りを涙が一滴、流れていくのを感じる。
それと同時に、その場所に生暖かい感触が走った。
「可愛い……」
涙を舐め取られた。それに気づくのにそう時間はかからなかった。
そして、陰茎への刺激が再びが始まる。
「可愛いっ……っ……あっ……はっ……!」
その背を曲げた姿勢のまま、彼女は淫らな吐息と共に抽送を繰り返す。徐々に速度が上がり、刺激もまた強まっていく。
「んっ……あっ……ふっ……マルクっ、さんっ」
快感に喘ぐ声と一緒に自分の名前が叫ばれている。そんな状況に仄暗い充足感が胸を満たしていく。
ぬちゅ、ぬちゅとハッキリとした水音が部屋の中に響き始める。香油か、僕のものか、それとも彼女の蜜によるものか。何も分からない。
はっ、はっと彼女の吐息の感覚が短くなる。
「マルク、さん……」
「……っ……」
「ちゃんとお腹に、出してくださいね」
「……ぅ」
「獣人と、人間とではっ、子供は出来にくいっ、ですからあっ、ぁっ……!」
遠慮しないで、気持ちよくなって、全部出して。火を煽るような言葉を耳元で囁かれる。欲しいモノを一途にねだるような声音で、彼女は僕の全てを吸い尽くそうとする。
込み上げてくる射精感。でも、それをしてはいけない。そんな子供のような自制の言葉が一瞬だけ頭に浮かんで。
「――ぁっ!」
何も出来ずに、僕は全てを諦めた。彼女の極まったような声。陰茎の中を通る管がドクドクと震えて、奥底から快感と共に全てを吐き出していく。
「……っ……ああ……」
射精の瞬間、僕の陰茎は彼女の蜜壺によって完全に取り込まれていた。
彼女の中……膣肉と愛液を掻き分けた先にある最奥地。本来なら伴侶しか侵入を許されないその場所に、僕の種子がばら蒔かれていく。
「出て、ます……マルクさんの、子種が……」
恍惚とした表情でレナさんはそれを受け止める。僕はもう、何も考えられなかった。
脈動が止まり全てを出し終わった後、彼女は蕩けた笑顔でそれを告げた。
「まだ、出来ますよね……?」
☆
「……!」
目が覚めた。それを知覚すると同時に飛び起きる。
「うっ」
その衝撃が原因か、そこそこに強い頭痛を感じた。二日酔いの症状、加えてそれに色々と乗っかっているのだろう。頭痛が収まるのを待って周囲を見回す。
辛うじて残っている昨日の記憶と何のズレも無い部屋の景色。カーテンが開かれた窓からは一日を始まりを象徴する明るい陽射しが射し込んでいる。
「……」
僕が寝ているベッドの脇のテーブル。その上にはロウソクが燃え尽きた後に残った燭台が置かれている。
夢じゃない。それはすぐに分かった。
何も着ていない状態の自分、身体に残っている無数の赤い跡、微かに残った性交の
全てが現実。以外にもそれはあっさり受けいれられる。
「レナさん」
ベッドの隅に奇麗に畳まれて置いてあった新品の衣服……サイズもピッタリなそれを身に付け、僕はフラつく身体を引きずって部屋を後にした。
☆
「……おはようございます、レナさん」
レナさんを見つけるのにそう時間はかからなかった。
部屋を出て階段を降りた先、そこには花壇や物干し竿のある広い庭がある。そして彼女は一階の一部の部屋にだけ作られた縁側に腰かけていた。
「……マルクさん」
見慣れたエプロンドレスと髪を横に束ねて肩へと流す見慣れた髪型。いつも通りの彼女がそこには居た。僕の方に振り返った彼女の顔に、もう昨日のような淫靡さは無い。
気の抜け落ちたような表情に明確に感じたのは……後悔。あれだけ強大な、底知れなさのようなものを感じたその姿は、やけに小さく見えた。
「隣……失礼します」
彼女から十分に距離を空け、僕は縁側に座った。お互いが何も話さない無言の時間がしばらく流れる。
「……全て、お話します」
そうして始まった、彼女の話。
僕がここに引っ越してきた後、僕と会話したり手伝いをする中で僕が気になり始めたという事。
二ヵ月前の事件で、僕が気になっていた理由が僕の弱さだと理解した事。
シルちゃんの提案で僕との距離を強引に詰めようとした事。
ぽつぽつと、レナさんは一つずつ語って行った。
「夫……クロードさんは隙の無い
懐かしむような口調。そしてそこからは、彼女の中に未だに残る彼への想いを感じざるを得ない。
「本当に完璧でした。常にお仕事で忙しいにも関わらずしっかりと私との時間を作って、ちゃんと愛してくれました。私も出来る限りの愛を返したつもりです。……でも、完璧すぎたんです」
自嘲の笑みを浮かべながら、彼女は僕の方へ視線を向ける。
「マルクさんと会って、今になって気づきました。私は私を必要としてくれる……私が居なければこの人はダメになる。弱さを見せてくれる。そう思わせるような人が好みなのだと」
確かに僕はクロードさんとは真逆の人種だ。仕事でミスはするし、私生活も満足に送れない。でもそんなダメだが彼女にとっては良かった。
「シルちゃんに言われました。いつまでも喪に服す必要は無いと。気になった相手が居るのなら遠慮はするなと。その助言を曲解して行動した結果が、コレです。本当は最初にマルクさんに了解を取って、拒否されたのなら何もしないつもりだった。……でも、どうやら私は自分で思っていた以上に色情魔だったようです。マルクさんが何も出来なくなったところを見たかった。動けなくなったマルクさんを見て、抑えが効かなかった。初めての経験でした。獣人は人間と比べて性欲が旺盛な場合が多いとも聞きますが、これではただのケダモノです」
「……」
「……本当に、本当に申し訳ありませんでした。お望みであればどんな罰でも受けます」
レナさんはそう言って深々と頭を下げた。
僕の聞きたかった事、彼女が秘密にしていた事。これで全てを聞く事が出来た。
その上で言わなければいけない事がある。
「レナさん」
「はい」
「好きです」
「は……はっ、え?」
いきなり、しかも場違いの告白に彼女はきょとんとした顔になっていた。頭上の耳が驚きを表わすかのようにピンと立っている。
「それに気づいたのは少し前なんですけど、今ならハッキリと言えます」
「そ、そうなんですか?でも、どうして今……」
「レナさんの想いを聞く事が出来たからです。自信が、持てるようになりました」
僕が今まで、彼女を好きだと感じつつもそれを表に出そうとしなかった理由。それはクロードさんと彼女の想いの不透明さからだった。
クロードさんの事は今でも見て分かるくらいに想っている。それに比べて、僕に対してはもしかしたら多少の好意を持ってくれているかもしれない、程度にしか僕には読み取れなかった。
だから尻込みした。亡くなった夫を未だに愛しているのに、大して好かれてもいない僕が独り身になった寂しさに付け込んであわよくば、というのはしたくなかった。
「わ、私、あんな事をしたんですよ?」
「大丈夫です。今なら素直に幸せな時間だったと言いきれます。最後の方はちょっとしんどかったですけど」
「また、昨日みたいな事があるかも。」
「頑張ります」
「既婚者で……マルクさんにとって清い身体とは言えませんし……それに私は、あれだけの不貞を働いたのに、まだ彼の事を……」
「問題無いです。僕の事を好きでいてくれるのなら」
「人間で……もっと若い娘が……」
「種族も年齢も気にしてません。レナさんが良いんです」
否定はさせない。全ての反論を突き返す。
「ほ、本当に?」
「本当です。好きです」
「……私も、好きでした。こんな、私で、良ければ」
「はい」
それ以上の言葉は無かった。レナさんが顔を覆って、静かに泣き始めたから。僕は恐る恐るではあるけど、彼女の頭を腕で覆うようにして抱きしめた。二ヵ月前、彼女が僕にしてくれた時のように。
思えば、僕の恋の本当の始まりはあの時だったのかもしれない。
「寂しかったんですね」
「はい……」
「我慢したんですね」
「はい……!」
「こちらこそ、こんなに情けない僕で本当に良いのなら」
「マルクさんが……良いんです……!」
僕が好きだと言ってくれてるし、多分それは本当なんだろう。でも夫が死んで独り身になって、寂しい思いをしていたのは事実だ。そして人の弱いところが好み……この場合は性癖だろうか。それを存分に発散する機会もこれまで無かった。
こう見えて、この人はかなり我慢をしていたという事だ。
こんなに優しくて、強くて、美しい女性でも、弱さを抱えている。そしてその弱さをクロードさんに顔向け出来るようなちゃんとした形で埋められるのであれば、それ以上の事はないだろう。
何よりその弱さがあったからこそ、僕達はこうして想いを告げ合う事が出来た。
これもまた、尊ぶべき弱さというヤツなんだと思う。
「落ち着いたら、朝食にしましょう。たまには僕に作らせてください」