それから無事王都に戻って。門番氏にお説教をされて、リルリと別れてから、帰宅した。
「今日も色々あったわねぇ……」
「そうですね……」
「……」
「……」
元々、口数の少ないダイアナが色んな話題を降るジャンヌに相槌を打つのが主流だ。ジャンヌが特に言うこともないと静かな宅内である。でもって談話を持ち出すのもほぼジャンヌであった。
「ねぇ、ダイアナ、まだあのハーブティー残っているかな?」
「……嗜みますか?」
「うん。夕餉と一緒に頂こうかなって」
夕餉は昼から仕込み済みだったので直ぐに用意出来る。ダイアナの手は空いてたので丁度良かった。
ダイアナに煎じて貰ったハーブティーはよく効いているとジャンヌは思う。あくまでハーブティーだしなんとなくなんだろうけど、飲んだ翌日頭が冴えるのだ。余計なことを考えずに済む。自分の努力もあるけれど、きっと勝てるようになったのはハーブティーの、もといダイアナのおかげだ。……とジャンヌは誇らしくもしていたとか。
そこまで重宝されていたハーブティーの原料だが、ダイアナは困った。
(……もう切らしている)
国外から来た輸入品の茶葉は無くなっていたのだ。
(あ、確かもう一瓶分あった筈)
同じ梱包の、同ラベル。丁度隣に置いてあった。
(……こっちは、鎮静効果は無かったんだっけ)
何て書いてたのかは思い出せなかった。けど同梱の品なのだから似たようなものだろう。ダイアナはポットに茶葉を煎じて、温めたカップに注いだ。ピンクがかった紅茶がジャンヌの前に召された。
「……あれ?このハーブティー、いつもと色が違うね」
「すみません。茶葉が無くなってました。……同梱の別種を」
「そっか。……これも甘くて美味しいね」
……後で、ダイアナは説明文を確認した。そして酷く頭を抱えることになった。
『青い花』は日頃の疲れを取る為の鎮静力を与えます。
『桃の花』はどうしても必要な活力、精力を促進させます。
どうかあなたの生活を彩りますように。
※この商品は薬物ではありません。
※ですか個人差によって、過度の効用が出る場合がございます。過剰反応が出た場合は医師にご相談を。
(…………あれ……?)
体が熱くなっていた。
ジャンヌはこの衝動の正体を知っている。
(ああ……どうして……今日は、そんなこと、されなかったのに)
妖し塚での試練は苛烈だった。中には例によって彼女の命というより肌身を求める毒牙もあった。けれど、真摯なる騎士としての剣で、己の操を守り抜いたのだ。……それが原因で欲求不満になったとしたら……。
(仕方ないな……)
戦いの熱がそのまま淫蕩を求めてしまったのだろうか。すっかりふしだらな体になってしまったなと自嘲しながら、慣れた手付きで下着だけずらして自慰行為で処理しようとした。
(今日は声を出さずに、すぐに終わらせよう)
蜜壺の中を擦っておけば達する。そう体は覚えた。
(……~♥…………え……?)
しかし、指で擦れど擦れどなかなか性的衝動は解消されてくれない。寧ろ疼きがどんどん高まっていくような……。
(……?……♥…!?……~♥♥……)
声だけは出さないように、それだけ気を付けていた。
なのに達する気配がない。
乳房の頂も疼いている。花芯も触ろうと思った。
(…なんで……イカないの……♥♥♥……………あっ……!!)
突然訪れた、大きな波。
けれど少女を解放するものではなかった。寧ろその逆だった。
黒騎士の男が、触手と共になって少女の足を強制的に開き、熱で押し広げながら中に入ってきた。
その背後から、顔の知る男達が、獣達が、その手々で彼女の肌を弄ってきた。
「あああ――――♥♥♥!!!」
「……ジャンヌさま?」
階下からあからさまな喘ぎ声がして、ダイアナは寝床から覚醒する。本当なら、主人の自慰行為を無視するべきだろう。……しかし異常な声量だ。情事中の娼婦もここまで声を荒げるんだろうか。悲鳴染みてもいる声に、気が気でない。ダイアナは寝間着のままに一階のジャンヌの部屋に向かった。
「ジャンヌさま!?!」
「いや、あぁ~♥♥……っなん、で……♥」
メイドの少女にとっての主人の少女は、激しい自慰行為をしていた。下着もすっかり外し、掛け布はとっくに除けている。心配して訪れた、或いは自慰行為の途中まで気遣っていた相手の存在をすっかり忘れて気が狂ったように指で自身の蜜壺を掻き回したり、乳房を揉んだり乳首を抓って弄ったりしていた。
実際に彼女は狂乱の中に居た。一度に少女を犯したことのある者達の幻覚に襲われていたのだ。
「ダンテさん止めてぇ♥♥ もうっ、イキたくなっ……ああっ♥」
「そん、なっ、やっ……狼さ……ひぃ!♥♥」
「らめっ♥ らめなの♥♥ 熱っ♥ 熱いのぅ♥♥」
「入って♥ 来ないでぇ♥ お、おまんこ♥ 壊れちゃうぅ♥♥」
「ああっ♥メドラウドさん助けてぇ♥♥ 許してぇ♥ 許してぇ♥」
ベットの海でのたうち回り踊る少女は、Mの字に開脚したまま腰をヘコヘコと動かしていた。
「ジャンヌさま……」
なんてことだ。
ジャンヌさまが、すっかり我を失っている。
まさかさっきのピンクのハーブティーがこの淫靡な惨事の原因だったなんて、この時のメイドの少女には分からなかった。目の前の主人の少女の痴態を目の当たりにしてそれどころではなかったから。
ごくり、と唾を飲み込んでしまう。
湯浴みを同伴することもあって、彼女の体の美しさはよく知っていた。同性から見ても綺麗な肌と完璧な曲線を持っているのだ。その肢体が今あられもなく乱れている。紅潮させながら涙目になる美貌、飛び散る汗、女性器から何度なく噴出されているものは潮吹きというのか。
自分が男だったら、間違いなく勃起していた。……女の場合でも、股間は疼く。
「ジャンヌさま……」
今、きっと、ジャンヌさまは助けを求めている。
(私に、出来ることを)
そう言い聞かせながらも、きっと心の奥では、主人の少女の煽情的で妖艶な肢体に触れたかった。不浄な欲とダイアナが疎ましく思うものも、彼女自身の中にあったのだ。
「あ!?あ、ああ……♥……ダイ、アナ……」
寝台に追加される重みから漸くジャンヌは、自分のメイドの少女が目の前に居ることに気が付いた。
一部だけ冷える頭、こんな痴態を見せてしまったという自己嫌悪に快感とは違う涙が浮かんできそうだ。
「ご安心下さい。私が、鎮めます」
「へ……♥」
「奉仕、します」
ジャンヌは今度は目を丸くした。この場合の奉仕、という意味が分からない程鈍くもなかった。
何かの冗談かと思われたが、ダイアナの真剣な、かつ熱の強い眼差しからして本気だった。
ダイアナとはいうと、夜伽用の奉仕の知識ならあった。けど当たり前だが未経験だ。詰まり未知だ。
「失礼します……」
他人の女性器をマジマジと見るなんて機会は普通あり得ない。しかもジャンヌ様のだ。
「ど、どう………はあ♥………きたない、よね……♥」
「いえ、そんな!とても美しいです。朱色でまるで……えっとその……」
気の利いた喩えが出てこない。確かある貝殻だったような。だが近付けば熱気のある透明な泥濘が、脾肉が蠢動している。まるで寂しそうだ。同じ身体の指先だけでは到底満たされない。褒めるより先にやるべきこと、やりたいことをしなければ。ずぶ濡れの、大切な秘所へ舌を伸ばす。メイドの少女は、主人の少女の恥部に舌を這わせていった。
「…っ!!♥♥」
ジャンヌは声を抑えた。だが一瞬しか保たなかった。
「ああ~~~♥♥♥」
幻覚でない、本物の舌先の感触、それが蜜壺を這うのだから、簡単に達してしまった。
「…っ!」
プシャりと、また潮を吹いた。まともに顔にかかってしまった。
「ああっ♥ダイアナごめん♥ごめんなさい♥」
「いえ……」
本音で告げた。不思議と不快でない。濃厚な蜜の匂い。啜った甘露も喉が焼け付くようだった。
ジャンヌの余りにも淫靡な姿にさっきから箍が外れてきたのかもしれない。積極的になってしまったかもしれない。ダイアナは更に大胆な行動をする。
「ジャンヌ様……こちらも……御慰めを……」
汗ばんだ乳房の先端。すっかり起立して、赤く色付いた箇所に、かぷりと、食んだ。
「ひうっ!……♥あっ♥ああっ♥うっ♥あぁ♥…」
ちゅうちゅうと乳首を吸われている。メイドの少女の健気で控えめなようで、敏感な部分をちゃんと突く愛撫に、主人の少女はすっかり身悶えた。
「ダ、ダイアナ…♥歯を、立てても、いいのよ…?」
いえ、ジャンヌさまの肌を傷付ける訳には。舌を使っているので喋れないが、代わりにチロチロと舐め上げつつ、口を大きく頬張って乳首を吸うことで返事とした。
「ひゃああ♥」
蜜壺を先に奉仕されたからか、元より全身が快感に過敏な主人の少女はまた波が迫って来るのを感じていた。メイドの少女はまるで男性器にするように、乳頭を唇を窄めて口で扱いて、乳首に舌を這わせている。
「あー♥あーっ♥ひゃああぁああ♥♥」
とうとう胸の奉仕で達した。乳からは何も出なかったが股間からまた潮が吹いてしまった。
もう片方の乳房も同じように吸い舐め上げていく。その頃には主人の少女は軽い痙攣を起こしながらも、乳房に居るメイドの少女を抱き返す余裕が生まれていた。
「ああ……♥良い子、良い子……♥」
母が子供にするような手つきで、主人の少女は慈しみに溢れた微笑みで、メイドの少女の頭を撫でていた。
「今度は、指で触れて、いいですか……?」
何処をとは、言うまでもなかろう。
対してすっかり主人の少女は淫靡な眼光で見上げていた。相手が同性であり、同居するメイドであり、家族でもある少女だと言うことも、分かっていて忘れていた。
「思いっきり、してぇ……♥」
はい……と応じてから、既に何度も潮を吹いた蜜壺に人差し指と中指をあてがい、沈ませた。
自分と同じ位かそれより細く小さいかもしれない指が、けれど奥まで貫こうと侵入してくる。技術もない勢いだけの動きだ。だが懸命な奉仕の心が籠っている。
「あぁあああ♥♥」
始めは探るようで段々と激しく掻き回してくる、膣内の指の動きに主人の少女は腰を揺らして善がっていた。気持ち良過ぎているのか舌を突き出している。主人の少女が求めているようだと感じたかメイドの少女は自分の舌で絡み付くようにしてから吸い付いた。
激しい口付けを交わしながら、肉体同士を密接しながら、指で奥を掻き混ぜながら。
上も下も溶け合うような水音を鳴らしながら、少女達は互いを求め合っていた。
なんとか終わった。
深く激しく達せられたことで、漸く熱が抜けきったジャンヌは、自ら体を起こして寝間着と下着を変えた。ダイアナは手伝わず、ただ見守っては、使用済みを回収した。
ジャンヌの着替えの終始、二人は無言だった。
「では、お休みなさいませ……」
「お休みなさい……」
その挨拶だけを交わして、ダイアナは二階に戻り、自分の寝間着と下着を替えて、自分のとジャンヌの使用済みを洗濯用の籠に放り捨てる。
(………………ああ~~~~~~~!!!!)
ダイアナは、膝から崩れ落ちた。両手でかき乱しまくった。そのまま頭を床に叩き付けようとしたが、一階のジャンヌに今度は何事と思われるのでそれは止めた。
私ったらなんてことをしてしまったんだろう!
(奉仕とか夜伽とか出してジャンヌ様の大切な個所にあんな風に触れ…どころか舐め…きゃああああああああ!!!)
(うわあああああぁぁぁ~~~~~!!!!)
ジャンヌも、自分のベットでゴロゴロゴロゴロ転がりまくっていた。
私のバカバカバカこの淫乱娘!!なんでダイアナとまであんなことやこんなことしちゃったのよおおおぉぉぉ!!!
(でもとっても気持ち良かった……。……なんて、思っちゃう時点でもう駄目だなぁ……はー……いっそ消えたいわぁ……)
((明日からどんな顔をしてジャンヌ様(ダイアナ)と合わせればいいんだろう…))
(…いいえ、ここは気にしないのが一番です!)
(明日だってどんなに嫌がっても来るんだし)
(きっと普通に、昨夜?何かございましたか!という態度を取るべきなのです!)
(無かったことにするのは、なんだか勿体ない気もするけど)
((大切な……家族だから))
♢♢♢♢♢♢
翌日。彼女達は本当に昨夜のことは一切触れなかった。いつものように騎士の正装を纏い武具の確認をする主人の少女。彼女の準備に漏れがないか入念な確認をし、整わせるメイドの少女。
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
いつものように出発と見送りの挨拶もした。彼女達は変わらなかった。……語弊になるかもしれないので、あくまで表面上は変わらなかったと述べよう。
短くも鮮烈な時間が少女達を少しだけ変えていた。欲望や悔恨、動揺に迷走、不屈、情愛、その他色んなものが濃縮されたかのような月日だった。
様々な出来事があった。何方かの、或いは両者が奈落へ足を踏み外しかける危うさもあった。……少しだけ不格好でも、少女達は納得できる顛末に至れた。
熱砂に佇むピラミッドが最下層。
其処にあるのは大異変を起こした主犯たる黒騎士が佇む決闘場。
彼に対しての、三度目の挑戦に挑む。
「幾ら来ても、同じ結果だ」
「同じじゃない。今度こそ」
「三度目はないぞ」
「だから、決着を付けましょう」
少女騎士に迷いはなかった。
妖し塚の試練も、剣と彼女自身を冴えてくれたと豪語しよう。
戦う前に脳裏に浮かぶは囚われの姫のこと。その次に不穏に苛まれるこの国の人々、そしてずっと支えてくれたメイドの少女の祈るような眼差しを。
(――――私、勝つよ)
誰にとも、或いは皆へと誓って。
少女騎士は剣を持って、魔剣を構える黒騎士へ駆けていった。