ドラゴンのブレスがどんどん迫ってくる...。
(ぐぬぬ...!)
炎の圧力がどんどん迫ってくるのを感じるのだが、どうにかして切り抜けようとこちらも魔力を込めて壁の強化に努めた。
三重に並び立つ氷の壁に炎がのし掛かり、壁が消え去って行く。
一枚...二枚...。
(くっ...! ここが踏ん張りどころ!)
最後の一枚で耐え続ける私。
「そろそろ決まりそうですね、プラムちゃん!」
凄く楽しそうな表情を浮かべ、こちらを見やるリュイラ。
少し余裕が無くなってきた私は、こちらも召喚詠唱にはいる。
「汝我と契約せしもの...、我が問いかけに答え、その姿を表せ!!」
私が召喚せしはお城のように大きな雪だるま。
それがど〜ん!!とばかりにブレスを受け止める姿を見た彼女がきゃ〜!っと声を上げた。
「何この精霊!! プラムちゃんにぴったりで可愛い〜♡」
そう言われると確かに可愛い系のビジュアルをしているな...、とは思わされてしまいますが、見た目は関係ありません。
「今のうちに余裕ぶってれば良いのよ...」
私は雪だるまに命令します。
「キャル! あのドラゴンを潰しなさい!」
「ふんふん♪」
楽しそうな声を上げながら一直線にドラゴンの元へと走って行きます。
「ふふん!ただの大きな雪だるまじゃない! ブレスよ!」
雪だるまのキャルに指を向けブレスの命令を出す彼女。
案の定私の召喚した雪だるまは一瞬で溶けてしまいました。
「うわぁぁぁ!!!」
「キャルゥゥゥ!!」
凄い声を上げながら溶けていく彼女を悲しそうな瞳で見つめる私。
「そんな...酷い...」
潤んだ瞳で彼女を見つめていると、可哀想に思ったのか謝ってきました。
「ご...ごめんねプラムちゃん...」
少し戦意を削いだ事を確認した私は、嘘泣きをやめてキャルに命令します。
「今よ! キャル!」
「ふんふん♪」
私がそう叫ぶと、いきなり顔をしかめる彼女。
「なるほど...、そういう召喚獣でしたか...」
彼女が足元も見た時にネタバラシをする。
「そう、私の召喚獣はこの雪その物...、さっきの巨大な雪だるまはフェイクよ!」
そのまま一気に彼女の体を凍らせる私。
「参りました...」
彼女がそう宣言した後、私は結界を解くのでした。
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「ふんっ、リュイラ如きが私と戦おうなんて10年は早いのよ」
服をパッパッと叩き、埃を払う仕草をしながら言いました。
「やっぱりプラムちゃんは凄いわね」
「だ〜か〜ら...、その取ってつけたかのようなちゃんづけはやめるのよ!」
正直言ってこの子のちゃん付けにはなれません。
簡単に言うと近所にいたガキ共が大人になってから自分の事を君付けやちゃん付けで言ってくる物とでも思えばいいのでしょうか?
普通そんな事有り得ない為、やっぱりむず痒い...。
(やっぱりおかしいのよこの子...)
少し哀れみを含んだ瞳で彼女を見ていると、いきなりプイッとそっぽを向いてしまう。
「はっ!?」
「今の無効!!」
「何が無効!! よ! あんた今さっき私と戦って負けたでしょうが!」
「でもプラムちゃんの結界内での戦いだったよね? だったら次は私の結界内と普通の草原での3連戦をしないと不公平だよね?」
「そんな子供みたいなことを...」
「子供じゃない! 私ももう20後半ですし、立派な大人です!」
(立派な大人が今更駄々こねる?)
いきなり子供の様な言葉使いでそう言う彼女を見ているとなんだか呆れてきました。
「ハァ...、まあ良いのよ、じゃあ次はあなたの独壇場で戦ってあげる」
再び構え直す私を見て、子供の様に目を輝かせる彼女。
「良いんですか!?」
「ただし! 私をあなたの結界内に引きずり込めたらの話だけどね」
「それでも良いです! 結界内に引きずり込むのも魔術師としての技量ですからね!」
私がもう一戦相手になろうと言えば素直に喜ぶこの性格は嫌いではない。
向上心。
魔術師になる者に一番必要な資質。
これがない者はちょっとした壁に当たると直ぐに魔術師をやめてしまいかねない。
第1に、魔術とはその人の努力の結晶。
一晩で誰もが扱える様な代物は魔術とは言えない、それはただのお遊戯だ。
この子は私が再戦を申し込むと直ぐ様新しい方法を試せば勝てると言ってきたのだ。
無論負けるつもりは無いが、彼女のやり方を見て置くと私も勉強になる可能性がある。
魔術を真似る事は悪いことではない、むしろ真似しておかないと自分のオリジナルなど作れるはずがない。
オリジナル魔法を扱う魔術師程、他人の魔術にも目を光らせ、その良いところ悪い所をとにかく研究し尽くす。
そうして出来た研究成果が後に魔導書として世に出回るのである。
その作者になる事を夢見る魔術師もいる程だ。
自分の作った魔導書が世に出回る...。
魔術師としてこれ程名誉な事はない。
事実、私も自身の研究成果を世に何度か出している。
中には自分の研究成果を誰にも教えないという魔術師もいるが、私は前者である。
人の為になるのであれば、自分の研究成果くらいいくらでも出そう。
そう思う私だからこそ、彼女との戦いに身を乗り出すのだった。
「来なさい! リュイラ!」
「行きます! プラムちゃん!!」
二人の魔術師は、お城の中で魔法合戦を始めるのだった。