※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ4 -狭間に咲く蒼の華-   作:独楽 悠

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第12話_双生の攻撃手

ほどなくして、二人の待機場所に駆けつけた灯(アカリ)が合流した。

[異界のもの]の気配にあてられ、いまだ身体が不調な蒼矢(ソウヤ)だったが、ぼやけそうになる眼で真剣に灯とサングラス男の顔を見比べていた。

「おせーな、在宅サボリーマンなんだから秒で来いよ」

「卒論放棄してて、就活もまともにしてない奴にだけは言われたくない。なんだその格好は。今日企業説明会だったはずだろ」

「うっ」

「あと、今朝から俺のレコードコレクションが根こそぎ消えてるんだが、まさかお前――」

「っあーっと! それより、こいつ」

察しのついた灯の表情が険しくなったところで、男は彼の話をぶった切って傍の蒼矢を自分の前に持ってきた。灯は片眉を少し上げ、蒼矢を一瞥する。

「聞いて驚け。こいつは俺たちがタイムリーに噂してた、まぎれもねぇ5人目の――」

「あぁ…蒼矢、君も来てたんだな。晃司(コウシ)と一緒だったのか?」

「…え?」

"晃司"と呼ばれた男は、灯へ向けて鼻を鳴らしながら得意気に語り始めようとしたが、さらっと流され、目を丸くする。

「…お前…、知ってたの?」

「この前、お前が参戦できなかった時に。これで二度目だな」

虚を突かれたように固まる彼に、灯は涼しい顔で言ってのけた。

「あっ…灯てめぇっ、そんなこと一言も報告なかったじゃねぇかよ!!」

「大事な時期である今のお前に波風を立てないよう、配慮したつもりだったが」

「絶対違うだろ! 面倒になっただけだろっ…」

啖呵を切りかけたところで、灯は胸元から紅い鉱石を取り出す。

「無駄話はこの辺で切り上げだ。さっさと移動するぞ」

「……!」

晃司を黙らせると、灯は二人を見守っていた蒼矢へ視線をやった。

「葉月(ハヅキ)は遠方に外出中で来れないそうだ。影斗(エイト)は…まぁ期待できないだろう。…不安だろうが、君の力が必要だ。行けるか?」

「! はい。…あ、あの」

「ん?」

返答を受け、転送準備に入っていた晃司と灯が同時に振り返る。

蒼矢は二人を見比べるように、交互に視線を送っていた。

「あの…お二方は」

遠慮がちなそぶりを見せる彼からの質問に、双方は何事かに気付いたように見合ってから、同時に返答した。

「腹立たしいが、双子だ」

 

 

 

『転異空間』へ転送した3人は、どこまで見渡しても白く、地平線の彼方まで鈍色(にびいろ)の地表で満たされた空間へ降り立った。

「んだこの地面。鉄板かなんかか?」

黄を基調とした戦闘スーツに変身した晃司――セイバー『サルファー』は、着いて早々不機嫌そうに地をガンガンと踏み鳴らす。

「不用意に音をたてるな。…気分は?」

「大丈夫です。『この空間』に来ると治まるみたいです」

灯――『ロードナイト』に声をかけられ、蒼矢――『アズライト』はしっかりと頷いてみせた。

「鋼属性か? …だとしたら厄介だな…」

ロードナイトが独り言のようにつぶやく中、上空から彼らを取り囲うように、数体の楕円型の[異形]が降下してきた。そして、それらの一回り内側に、一体の人型が降り立つ。

一見人間と変わらない容姿に見えるが、髪の毛と両腕の肘から先が地面と同じ鈍色で、金属のような光沢を放っている。

「…[侵略者]か。大体いつもVIP登場なのに、もうお出ましか?」

侵略者――[鉛鎖(エンサ)]は、遠目で見渡すようにセイバーたちへ一人ずつ視線をやった。

「おい、ジロジロ見てんじゃねぇ、見せもんじゃねーぞ!」

「――『水使い(・・・)』はどれだ?」

「あ?」

早くもメンチ切り出したサルファーには応えず、[鉛鎖]は3人を眺めながら問い質す。

思わず素の声が出てしまったサルファーと眉をひそめたロードナイトを流し見してから、無反応のままのアズライトを凝視した。

「…お前だな」

そうぼそりを漏らすと[鉛鎖]は目を見開き、ノーモーションで瞬時にアズライトへ距離を詰める。そして指の先を鋭い金属片に変えて振り被ったところを、寸ででロードナイトが前に入り、壁で受け止める。

透明な壁に刺さった爪の先を一瞥してから、[鉛鎖]は鼻の先のロードナイトへ真顔のまま語りかける。

「俺の目的は『アズライト(そいつ)』だけだ。…労力の無駄になる、邪魔をするな」

「っ……!」

そう言う最中、壁に喰い込む爪が徐々に赤く発光し、ずぶずぶと壁の内側まで到達していく。

ロードナイトは『紅蓮(グレン)』を呼び出し、壁越しに[侵略者]の腹部へ一閃する。装具が壁を突き抜けて体に入る直前、[鉛鎖]はひと跳びに後退した。

すぐさまサルファーが[侵略者]とロードナイトの間に入り、細剣『閃光(センコウ)』の切っ先を向ける。

「てめぇ…舐めた真似してくれるじゃねぇか。うちの新人にどういう了見だ?」

「そもそもお前たち『セイバー』共は[異界のもの(俺たち)]にとって妨げになる存在だが、中でも『アズライト』は害悪でしかない」

「何言ってんだ? わかるように説明しろ!」

「…お前は『そいつ』と同類のくせして何の知識も無いのだな。加えて知能も極めて低そうだ」

「な…に!?」

「おい、落ちつけ低能」

[侵略者]の言い様に一瞬で憤激したサルファーへ向けて、ロードナイトは脳内から制する。

「!? おまっ…」

「『アズライト(彼)』の能力は『索敵』だ。どうやら[異界のもの(奴ら)]の致命部位が見えるらしい」

「…!」

またしても怒りかけたサルファーだったが、目を見開いて止まり、アズライトへ振り返った。

さきほどの不意な攻撃を受け、強張った面持ちで佇んでいる彼を見、固まっていたサルファーはやがてわずかに口の端を上げた。

「…はっ…、そいつはすげぇな」

「ああ。でも手放しには喜べなくなった…まさか[奴ら]の方が『彼』に関して造詣が深いとはな。そしてやはり、『索敵』は奴らにとっても厄介らしい」

淡々と返すものの、ロードナイトの表情は硬い。その様子を見て軽く舌打ちすると、サルファーは[鉛鎖]へ向き直った。

「――で、その害悪(・・)をどうするって?」

「このまま野放しにしておく理由は無い、今回で確実に仕留める。…"搾取"はついでだ」

「相変わらずきめぇ台詞しか吐かねぇ奴らだな。細切れにして精錬屋に売り飛ばしてやるよ」

攻撃態勢に入るサルファーへ、ロードナイトが脳内から低く声を掛ける。

「俺が[侵略者(こいつ)]をやる、[異形]はお前に任せた。正直、周りにかまけている余裕はないからな…撃ち漏らすなよ」

「俺を誰だと思ってんだ? お前こそ大丈夫なんだろうな」

「この面子でこれ以上の最適解は無い。超速で片付けるぞ」

「…了解」

ロードナイトは、アズライトの周囲に再び防御壁を張った。

「覚醒して早々狙われるなんて想定してなかっただろうが、俺たちの能力や装具を奪おうとする輩はたまに出てくるから、無い話じゃない。手短に終えるには『君』の能力が不可欠だが…『索敵』は出来るな?」

「はい…!」

「前回同様壁は作るが、回避行動が取れるよう身構えていてくれ。…おそらく俺の防御属性は、[侵略者(奴)]と相性が悪い」

冷静な中に一握りの緊張感をにじませる彼の口調に、アズライトは固唾を飲む。

「…はい!」

手のひらに呼び出した『水面(ミナモ)』を握り、大きく見開く両眼の前に構えた。

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