ほどなくして、二人の待機場所に駆けつけた
[異界のもの]の気配にあてられ、いまだ身体が不調な
「おせーな、在宅サボリーマンなんだから秒で来いよ」
「卒論放棄してて、就活もまともにしてない奴にだけは言われたくない。なんだその格好は。今日企業説明会だったはずだろ」
「うっ」
「あと、今朝から俺のレコードコレクションが根こそぎ消えてるんだが、まさかお前――」
「っあーっと! それより、こいつ」
察しのついた灯の表情が険しくなったところで、男は彼の話をぶった切って傍の蒼矢を自分の前に持ってきた。灯は片眉を少し上げ、蒼矢を一瞥する。
「聞いて驚け。こいつは俺たちがタイムリーに噂してた、まぎれもねぇ5人目の――」
「あぁ…蒼矢、君も来てたんだな。
「…え?」
"晃司"と呼ばれた男は、灯へ向けて鼻を鳴らしながら得意気に語り始めようとしたが、さらっと流され、目を丸くする。
「…お前…、知ってたの?」
「この前、お前が参戦できなかった時に。これで二度目だな」
虚を突かれたように固まる彼に、灯は涼しい顔で言ってのけた。
「あっ…灯てめぇっ、そんなこと一言も報告なかったじゃねぇかよ!!」
「大事な時期である今のお前に波風を立てないよう、配慮したつもりだったが」
「絶対違うだろ! 面倒になっただけだろっ…」
啖呵を切りかけたところで、灯は胸元から紅い鉱石を取り出す。
「無駄話はこの辺で切り上げだ。さっさと移動するぞ」
「……!」
晃司を黙らせると、灯は二人を見守っていた蒼矢へ視線をやった。
「
「! はい。…あ、あの」
「ん?」
返答を受け、転送準備に入っていた晃司と灯が同時に振り返る。
蒼矢は二人を見比べるように、交互に視線を送っていた。
「あの…お二方は」
遠慮がちなそぶりを見せる彼からの質問に、双方は何事かに気付いたように見合ってから、同時に返答した。
「腹立たしいが、双子だ」
『転異空間』へ転送した3人は、どこまで見渡しても白く、地平線の彼方まで
「んだこの地面。鉄板かなんかか?」
黄を基調とした戦闘スーツに変身した晃司――セイバー『サルファー』は、着いて早々不機嫌そうに地をガンガンと踏み鳴らす。
「不用意に音をたてるな。…気分は?」
「大丈夫です。『この空間』に来ると治まるみたいです」
灯――『ロードナイト』に声をかけられ、蒼矢――『アズライト』はしっかりと頷いてみせた。
「鋼属性か? …だとしたら厄介だな…」
ロードナイトが独り言のようにつぶやく中、上空から彼らを取り囲うように、数体の楕円型の[異形]が降下してきた。そして、それらの一回り内側に、一体の人型が降り立つ。
一見人間と変わらない容姿に見えるが、髪の毛と両腕の肘から先が地面と同じ鈍色で、金属のような光沢を放っている。
「…[侵略者]か。大体いつもVIP登場なのに、もうお出ましか?」
侵略者――[
「おい、ジロジロ見てんじゃねぇ、見せもんじゃねーぞ!」
「――『
「あ?」
早くもメンチ切り出したサルファーには応えず、[鉛鎖]は3人を眺めながら問い質す。
思わず素の声が出てしまったサルファーと眉をひそめたロードナイトを流し見してから、無反応のままのアズライトを凝視した。
「…お前だな」
そうぼそりを漏らすと[鉛鎖]は目を見開き、ノーモーションで瞬時にアズライトへ距離を詰める。そして指の先を鋭い金属片に変えて振り被ったところを、寸ででロードナイトが前に入り、壁で受け止める。
透明な壁に刺さった爪の先を一瞥してから、[鉛鎖]は鼻の先のロードナイトへ真顔のまま語りかける。
「俺の目的は『
「っ……!」
そう言う最中、壁に喰い込む爪が徐々に赤く発光し、ずぶずぶと壁の内側まで到達していく。
ロードナイトは『
すぐさまサルファーが[侵略者]とロードナイトの間に入り、細剣『
「てめぇ…舐めた真似してくれるじゃねぇか。うちの新人にどういう了見だ?」
「そもそもお前たち『セイバー』共は[
「何言ってんだ? わかるように説明しろ!」
「…お前は『そいつ』と同類のくせして何の知識も無いのだな。加えて知能も極めて低そうだ」
「な…に!?」
「おい、落ちつけ低能」
[侵略者]の言い様に一瞬で憤激したサルファーへ向けて、ロードナイトは脳内から制する。
「!? おまっ…」
「『
「…!」
またしても怒りかけたサルファーだったが、目を見開いて止まり、アズライトへ振り返った。
さきほどの不意な攻撃を受け、強張った面持ちで佇んでいる彼を見、固まっていたサルファーはやがてわずかに口の端を上げた。
「…はっ…、そいつはすげぇな」
「ああ。でも手放しには喜べなくなった…まさか[奴ら]の方が『彼』に関して造詣が深いとはな。そしてやはり、『索敵』は奴らにとっても厄介らしい」
淡々と返すものの、ロードナイトの表情は硬い。その様子を見て軽く舌打ちすると、サルファーは[鉛鎖]へ向き直った。
「――で、その
「このまま野放しにしておく理由は無い、今回で確実に仕留める。…"搾取"はついでだ」
「相変わらずきめぇ台詞しか吐かねぇ奴らだな。細切れにして精錬屋に売り飛ばしてやるよ」
攻撃態勢に入るサルファーへ、ロードナイトが脳内から低く声を掛ける。
「俺が[
「俺を誰だと思ってんだ? お前こそ大丈夫なんだろうな」
「この面子でこれ以上の最適解は無い。超速で片付けるぞ」
「…了解」
ロードナイトは、アズライトの周囲に再び防御壁を張った。
「覚醒して早々狙われるなんて想定してなかっただろうが、俺たちの能力や装具を奪おうとする輩はたまに出てくるから、無い話じゃない。手短に終えるには『君』の能力が不可欠だが…『索敵』は出来るな?」
「はい…!」
「前回同様壁は作るが、回避行動が取れるよう身構えていてくれ。…おそらく俺の防御属性は、[
冷静な中に一握りの緊張感をにじませる彼の口調に、アズライトは固唾を飲む。
「…はい!」
手のひらに呼び出した『