TS勇者は取り戻したい 〜 TSFのFはふたなりのF! 〜 作:亜星
TS勇者と旅の仲間(3/3)が先に公開されてしまっていました。
本来のTS勇者と旅の仲間(1/3) に差し替えましたので、
(3/3) を先に読んでしまった人はひとつ前からお願いします
「眩しいな、陽射しが目に刺さる…」
天幕の外は初夏の日差しでずっと寝ていた身には少し目に痛い。手をかざして空を見上げてみると、陽射しはまだ天辺を超えたくらいみたいだ。近くにいるはずの仲間の姿を探してくるりと周囲を見てみる。いたいた、ちょっと離れたところで火の番をしている少し背中を発見。座り込んでいる、ゆるい癖毛の栗色の髪の男にオレは後ろから声をかけた。
「おはよう、エリク! 生きてたみたいで安心した!」
魔王とさんざん闘った後だと言うのに、身体の調子はそう悪くはない。しっかり休息が取れたおかげかも知れない。余計な心配を掛けないようにオレは出来るだけ明るく声をかけた。草色の
「おかげさまで生きていますよ。
クリスが頑張ってくれたおかげで、このとおり元気なものです」
「それはお互い様だよ!
エリクが魔王の前まで送り届けてくれたから、全力で魔王と戦えたんだし」
「クリスを万全の状態であそこに立たせるまでが私の仕事でした。
そして災厄を滅するのはクリスの役目。
お互いやるべきことをやり遂げたということですね」
英雄譚の
「でも随分とゆっくりのお目覚めでしたね。
もうちょっと寝てるようだったらキスしてでも起こしに行くところでした」
「それは勘弁してほしいってか、こら。
まじでキスしようとすんな!
や〜め〜ろ〜!」
「いや、そんなに嫌がることないじゃないですか。
いまさらキスくらいで恥ずかしい仲でもないでしょう?」
腰を抱き寄せられて唇を塞がれそうになったけど、手を突っ張って咄嗟に体を離す。普段はそこまで全力で拒絶しないのだけど、いまはちょっと事情がある。腰をピッタリ引き寄せられでもしたら、オレの下半身に起きた変化がバレてしまう。その事自体は隠す気もないし、そのうち話そうと思っていることだけど、そのタイミングは自分で決めたい。
「いやがるよ!
てか、いつも嫌がってるのにエリクが強引にしてるだけだから!
オレはね、どうせキスするなら可愛い女の子としたいんだよ!」
「クリスは相変わらず自分は男だとかそういうのにこだわってるんですねぇ。
私はクリスが男でも女でも同じように愛せますけどね。」
「いや、お前… それ言ってて恥ずかしくないのか?」
「いや全く。
それに結局のところ、最後に恥ずかしい目に遭うのは
私ではなくいつもクリスの方ですからね」
「うっ、そういう事言うのずるいぞ…」
こいつが言うところの「恥ずかしい目」をつい思い出してしまって言葉をつまらせるオレ。頭に血が昇って頬がカッと赤らむのがわかる。じつのところエリクとは何度も肌を重ねている仲だった。旅を続けるためにオレはこいつと肌を重ねる必要があり、こいつもそれを拒否しなかった。その関係は今も普通に続いていて、男とキスが嫌だとかそんな話は、少なくともこいつとの間にはとうに無くなっていた。だからこそ、さっきのオレの態度が引っかかったのか、体の調子を今更のように聞いてくるが、オレはそれに空元気で応えて、別の話を振った。
「ところでブライは?
軟弱なエリクが無事なんだからブライだってもちろん無事だよね?」
「私が軟弱というのは聞き捨てなりませんけれど、ブライも無事ですよ。
今は食料調達がてら周囲の警戒をしてもらっています。
ここは魔軍の勢力圏の只中のはずですから、
用心するに越したことは有りませんからね。」
「そういうことか。
じゃあ待ってればそのうち帰ってくるよな。
早く帰ってこないかな。」
姿の見えないもうひとりの仲間、聖騎士ブライアンも無事だと聞いてホッと胸をなでおろす。エルリックとブライアン、そしてオレ。この3人が旅の仲間の全てだった。勇者として魔軍に立ち向かう事になったオレを常に支えてくれたのがこの二人。これまでに行動を伴にして力を合わせて戦ってきた人間はたくさんいたけれど、気心が知れた一番の仲間と思えるのはこの2人だけだった。ブライアンが敵を押し留め、エルリックが
「クリスが目を醒ましたとわかれば、ブライも喜ぶでしょう。
最初のうちは衰弱が酷かったので、
ずいぶんと無理して治療していましたからね。」
「まじか、なんかそう聞くと申し訳ないな。
回復とか治療は苦手って言ってたのに、そんなにしてくれるなんて」
「あの堅物にしては珍しい感じでしたよ。
自分の手でクリスの着ているものを全部脱がせて治療はじめましたからね。
ほんとにあなたのことが心配だったのだと思いますよ」
「あー、
いつも言ってるもんね、ブライ」
実の所、ブライアンの
「その辺りは私とは全然意見が合わないんですよ。
女性は愛を注いでこそ、より麗しく花開くと言うのに。」
「そこは少しはブライを見習えよ。
具体的にいうならお前はいつも距離が近すぎる」
芝居がかった様子でオレの
「クリス殿っ!お目覚めになったのですなっ!!!!」
「ちょっ、ブライっ!そんな、抱えあげないでっ! 」
それはもうひとりの仲間、ブライアンが上げる歓喜の声だった。オレの姿を目にした途端に突進してきた彼にあっという間に抱え上げられてしまう。小柄なオレが相手とは言え、こんなに軽々抱えあげられる
「はっはっはっ!
もうすっかり元気ですな!
いや、よかったっ!本当によかったっ!」
「子供じゃないんだから、こんなくるくるしないでっ!
みえちゃう、みえちゃう!!!」
そのままオレを抱えながらぐるぐると回り始めるブライアン。どこが、女性に触れるのが苦手なんだ、というばかりのはしゃぎようだが、それだけ心配をかけていたということだろう。そのままにさせてあげても良かったのだけど、
「いやいや、失礼いたしました。
吾輩としたことが取り乱してしまいまして。」
「いいよ、それだけオレのことをブライが心配してくれたってことだものね」
「それはもう、本当に心が砕けるかと思うほどに、心配いたしましたぞ。
いくら魔王を討ち果たしても、貴女が還らぬのでは皆が悲しみましょう。」
「オレはほら、このとおり大丈夫。
ブライやエリクを心配させたりなんてしないよ」
「クリス殿… 吾輩、うれしゅうございますぞっ!」
愛用の剣と盾を放り出して跪くと、オレの手を取り感極まって涙を流すブライアン。節くれだった漢らしいその大きな手、それに見合った見上げるほどの長身と、それを太い筋肉で鎧った精悍な肉体。オレはブライアンのことを尊敬していた。自分の目指す漢らしい漢の理想像として。そんな漢がオレにすがりついて無事を喜び涙を流してくれる。それ少しばかりの幸せをオレの胸に運び込んでくる。ブライアンが落ち着くまでそばにいてやろう。彼の前に同じようにオレは膝を付いて、その手を両手で包むように握り直した。