私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
2.煙緋
3.バーバラ
この手の作品、主人公はクズにすれば良い。
便利な言葉『子供が出来たら責任を取る』
→子供が出来なかったら責任は取らない
1.ウェンティ
私、バンパーは酒が好きだ。モンドに産まれたというのも理由にあるかもしれないが、前世も割と飲むのが好きだった。なので一時期は浴びる程飲む日もあった、じゃないとやってられない日とかあったのだ。何だよアンバーを雪崩から助ける為に掴みやすいところをがっしりがっつりまぁ…………ちょっと激しく触っただけじゃん、偽アルベド倒す為に色々頑張ったのにエウルアに殺されそうなったりやばかった。
と言っても今は嗜む程度に控えている、バーバラ襲った事は割と私の中で超えちゃやばい一線を超えた事件なので本気で控えるようになった。
ただそんな私でも、ある人物を見かければ酒場にも入ってしまう。
「おや、珍しいね。わざわざ僕の隣に座るんだ」
「少しは慎ましく山奥とかに居ろよ、当たり前のように酒場にいやがるし」
ウェンティ、モンドでよくライアーを弾いて日銭を稼ぐ吟遊詩人の1人。それでいてその稼いだお金の全てをお酒にぶち込む酒カス野郎であり────自由の国の神様をしている。
「トワリンの時は色々してくれたみたいだね、まさか君がそこまで献身的な冒険者だとは思わなかったけど」
「今でもそこまでの冒険者じゃない方が良いんですけど」
何で私が彼の隣に座ったか、それは彼を神と認識したのが最近であるからだ。それまでは外見が若過ぎて酒場にいたら珍妙に写る存在第一号(第二号は私)という認識だったし、吟遊詩人として過去の事を良く勉強してるなとか思ってたけどリアルで生きてた経験談と知ったのも最近だ。こいつだけ吟遊詩人としてずるい気がするし、よく神様バレてなかったと思う。
「ウェンティ、で今後もいいのか?」
「僕をそれ以外でどう呼ぶの?」
「酒カスか年齢詐欺師もあるけど」
「そのままでお願いするよ」
バルバトスとか呼ぶ気にならん。
正直今更敬語を使う気にはならない。私にとってのウェンティは酒飲み仲間の1人だったし、たまに会えば話す程度の仲だ。友人と呼ぶほどの仲でも無いが、知り合いと呼ぶには浅くない。
何故なら私にとって、彼は最初の世界の広さを教えてくれた存在でもあるからだ。彼は吟遊詩人としては優秀だし、幼少期から聞いたおかげでこの世界の言葉にも早く順応出来た、色々な意味で助けられている。
私がモンドの民じゃない事を、分かっていても。
「そう言えば魔龍の事件、天空のライアー壊したの直したふりするの辞めてくれん? 何であんなの直さなきゃならんの?」
「あはは、直せたんだ。大変だった?」
「大変だった、慰謝料寄越せ」
モンドの事件、私は手に負えない案件だったと思ったので露払いに徹したが裏では色々とジンや旅人が手を回していたらしい。ただ私は本当に露払いをして仕事を終えたと思っていたし、魔龍も落ち着いた。
で、全て終わったと思ってたら急にバーバラが泣きついて来たのである。理由は『天空のライアー』とか言うアーティファクトだ、一度盗まれてしまったが戻ってきたので保管してたらしいのだが、気付けば壊れており自分で壊したと思って泣きついて来たのに本気で頭を悩ましたが何とか頑張って直した。
ライアーが上手く弾けるようになったけど、これ壊したのバルバトス本人だったのかと思うとバーバラ可哀想だしタダ働きした私が可哀想だ。
「えー? 僕モラはないよ?」
「モラであろうがなかろうと、私じゃなくてもいい。バーバラに一言贈るだけでもいいんだよ」
モラ以外なら幾らでも出せるだろ、別に私に還元しなくてもいいがバーバラにはしてほしい。直すまでの1週間、毎日教会で懺悔してたんだぞ。まぁ私はその時この酒カスが犯人とは知らなかったから素直に頑張ったんだけど。
そんな私の絡みに態とらしくウェンティは溜息を吐く。そして目を鋭くして、私の方を見るでもなく手に持つコップの方を見て意思を固めている。
「なら神様らしく、言葉を贈ろうか──
──君、僕達にかなり近づいたけど。そのままだと人間じゃなくなるよ」
言霊、なんて言葉があるように言葉には力がある。彼のそれもそうだ、さっき迄の陽気なものと違い上位者としての警告、現実を神の視点から私に教えた。凡人では分からないかもしれない事でも、神ならば見抜けるのだろう。
「あー、やっぱり?」
ただ、その答えは何となくわかっていた。神様らしい支払いだけど、予想が確信に変わっただけ確かに支払いとしては適切か。リサさんはなんかそこら辺何かしらの根拠を探してたし。
ただ私が魔神か……『性欲の魔神バンパー』とか言われたら泣くけど。
「驚いてないね、分かってたんだ」
「思い当たる節というか、私はかなり異端な力持ってるし。使えば使うほど、人間から離れていくのも仕方ないか」
前世の記憶があって、変な力を使える。何なら30秒限定で誰にも負けない(勝てるとは言ってない)状態とかなれるし、そんな力を人間が使えていいわけがない。そういった力に体が順応すれば、その体は人間ではなくなる。
「それを使わないって事、考えないの?」
「考えた、割と考えた。でも、私には神の目が絶対に現れないからな。短い人生、思うがままに生きる予定だし」
ただ魔神になれるとは思ってない。そんな事になる前に、どっかで私は息絶えるだろう。どこまで行っても私は人間だ、私の体が能力に完全に適応した時が私が死ぬ時だ。
概算では短くて後5年、長くても10年程度が私の残った時間なのかもしれないが、その生き方を変える気はない。
「私にとって最初に世界を教えてくれたのはバルバトスでもなく、とある吟遊詩人だからな。そこは感謝してる、そのおかげで『魔物が居る危ないけど綺麗な世界』を見て回るっていう人生の目的も出来たし」
ウェンティとは長い付き合いなのだ。そのおかげでこの世界を生きる覚悟が決めれたし、そう言った意味で神などという絶対的な存在など信じていないが、私の人生の指針を作ってくれたのは間違いない。
これから先も、私は自由な神様に倣って自由に生きる。
ただ私としてもこんな神様に言いたい事はある。
「でも、自由過ぎるのもやばいと思うぞ?
────何で璃月いんの?」
ここは璃月の酒場だ、モンド領域じゃない。
何で璃月にいんだよ、せめてモンドにいろよ。
「僕は吟遊詩人だよ?」
「
後に稲妻でもこいつに会う事になるのだが、少しは民を鑑みてやれとは思った。
☆
2.煙緋
煙緋は璃月で活動する法律家だ。これは何でもない日だった、ただの仕事もなく何となく仕事が落ちていないか璃月を歩き回るだけの日だった。
この次の日からが、彼女を変えてしまう日であったが。
「さてと、今日も何も起こらない日常を送れるのは良い事なんだが」
ふと人気の少ない場所を意図して歩き回っていたが香菱を見つけた。ちなみに人気の無い場所を歩くのは押し売りがしやすいというのもあるが、一番の理由はこういう所で何故かバンパーと会いやすいからである。
バンパー、時折屈んだ時に胸板が見えてしまったり足を組んだ時に見える太腿など意識してしまうが、そんな不純な目で見てしまう外見は16歳程度の冒険者。
本人に自覚はあるのか知らないが、彼はそういったところによく赴いている。その理由までは知らないが、前触れなく現れる彼に会えるかもしれないと期待を胸に彼女は出歩いている。
「おや、香菱じゃないか」
ただ、今回は思わぬ人物と会う。
「ひゃわっ!? あ、えっと」
ただ後ろから声をかけると顔を真っ赤にして何かを見ていたのか、その余韻に浸っていた香菱を見つけた。顔に手をやり内股になり屈んでいた彼女であるが、煙緋の声に気づくと急いで立ち上がる。
「き、今日は食材を探しに行かなきゃだから──!!」
そして彼女を認識してすぐにどこかへ行ってしまった。何をしていたわけでもないみたいだが、何かに驚いたまま頭を混乱させていたのだろう。ただ仮にそうならば、少し分からない事もある。
「ふむ、どこか様子がおかしかった気もするが……」
香菱は言い方を選ばなければ、かなり異彩を放つ調理師だ。ゲテモノ系も躊躇いなく手を出すのでその彼女が顔を真っ赤にして呆然とするような事態となれば、想像が出来ない。
ただ、そんな事件の匂いを感じながらも煙緋は新たに見えた知人に意識を向けた。遠く離れた所に、腕を引く女性と腕を引かれた男性を目にする。すぐに見えなくなってしまったが、その2人を彼女はよく知っている。
「あれは、バンと……刻晴?」
この日はそれ以上の事は無かった。璃月に訪れているのがわかったのだから後日会いに行けば良い程度の認識だった。刻晴に対しても交友関係が広いのだな、その程度に考えていた。
ただ、その考えは次の日に改める事になる。首に虫刺されのような赤い斑点をつけながら現れた刻晴が、バンパーと共に彼女の事務所へやって来たのだから。
そして、意味のわからない……いや、わかりたくない書類を携えてやって来たのだから。
有り体に言えば、婚姻届のようなものを。
「(な、何だこれ。七星の権限で、これを? え、バンと子供が出来たらって、そういう事をするって事で、嫌、なん、え? もうそういう事をする仲って事? お互いの母印があるから同意? え? 私、出遅れた? いつの間にか全部、え? あ、へ? 私がさ、き……ふぇ?)」
煙緋は出来る限り顔に出さない努力をした、声は漏れてたし表情も隠せていなかったし受け答えもチグハグだったが、彼女はまだギリギリ正気を保っていた。そして、聞いてしまってはもう後に引けないような事を聞いてしまう。
「その、2人は付き合いが長いのかい?」
「ここ一月程度よ、でもまぁ……誰よりも、深い仲かもしれないけど」
「へ、へぇ〜……」
仙獣と人間の混血である法律家・煙緋、彼女の初恋と呼ぶにしては始まり方が不純で、一途というには純粋過ぎたそれは、ボロボロと崩れていく。1月程度の仲とは思えない程に近い距離を、1月程度とは思えない程の想いを寄せる彼女を見て心の中が冷めていく、視界すらぼやけてしまう程に。
「バ、バンはどうなんだ?」
一縷の可能性を信じてバンパーにも聞いた。これはある意味最後の希望だった、その答えによっては彼女は自分の心を殺してこの仕事をしなければならないのだから。
そして、答えは。
「まぁ、その……出来たら責任は取らないとダメかなって」
出来たら、つまりもうそこまでしている。自分には一度手を出してはいるものの、それ以来一切そのような情欲を向けられていないのに。自分から情欲を向けてしまう女にされたというのに、彼との食事はあらゆる事情を後回しにしてでも時間を取っていたのに。
「その、こんな事貴方にしか頼めないから。お願い出来るかしら」
でも、隣から掻っ攫われた。どう誑し込んだのか、彼を絡め取られてしまった。ゆっくりと育んできた関係を、あっさりと上から踏み潰して先に行った。
手段なんて選んでいるから、取られてしまった。ただそうわかってしまっても、彼女には手段を選ぶような事しか出来ないだろう。彼女からはそういう一線を超えることが出来ない。
「あ、ああ……私に任せてくれ」
この日、彼女は仕事を休んだ。自分を文字通り身も心も慰める為に、そして失恋と向き合う為に。もう彼の事を思って慰めるのは最後にしようと、彼を想って最後の夜を過ごした。
そしてそれを乗り越えて彼女は仕事を完遂した。彼の幸せの為ならばと、出来る限りの力を尽くして仕事をこなした。それが彼に寄せていた想いとの別れであると。
なお、その仕事をした3日後に彼女は普通に食べられた。ベッドに押し倒されて濃密な口付けを至る所にされ、普通に全部された。彼女も最初は「ダメだ! 君にはもう刻晴が居るんだろ!?」と抵抗した、でもそのままされた。彼女も数日前まで想い続けていた相手にそこまで求められて拒めなかった。
彼曰く「前から無防備に男を誘って、そういう態度をとって来た煙緋が悪いんだからね?」と無茶苦茶な事で抱かれた。吹っ切れた後に貪られてしまった。心の準備もないままに、されてしまった。
「刻晴には内緒にしないとね♪」と全てをされた後に呟かれてから情緒もぐちゃぐちゃにされている。自分の踏み止まらせていた想いを無理矢理動かされ、不貞行為を行うなどという事に彼女は答えられない不安を心に感じ、彼の胸の中で雑念塗れのまま温もりを得ていた。
ただこの温もりを離したくないと、彼女の心はそれを満たす為に強く抱きついていた。良心と欲望の間で、心が欲望の方に傾いていくのを彼女はまだ気付けていない。
☆
3.バーバラ
バーバラという少女は牧師である。モンドのアイドルと謳われるだけあり、抜群の歌唱力と可愛さがあり、慈愛がある。
そんな彼女を育てた人間の中には、2つ歳が上の兄のような存在がある。
「こらバン、おべんきょーしなきゃだめ!」
バンパー、そう名付けられた孤児だ。教会の前に彼が捨てられていたらしい、そして今では教会一番の問題児でもある。勉強は殆どしない、お祈りも忌避し、シスターには手伝いは色々するものの皆で集まって何かをする事を殆どしたがらない。
「いやー、今日もバーバラは可愛いな。おやついるか?」
「もうそんなのじゃ、だまされないもん!」
そしてそんなシスターに迷惑をかけているバンパーを叱りつけていたのが、バーバラである。
「はい、今日のドーナッツ」
「ありがとう!」
そして手懐けられていた。バーバラが幼かったというのもあるし、バンパーが年に不相応過ぎたというのもある。もきゅもきゅ可愛らしい音が聞こえて来そうなほど一生懸命にオヤツを頬張る彼女を膝に乗せ、優しく頭を撫でるのもいつもの光景だ。
「バーバラは大きくなったらどいしたい?」
バンパーはどこまで行っても、大人だった。サボっているのも別に勉強が出来ないからではない、むしろ色々な事を教えてくれるしおやつもくれる。時折何処かへふらっと出向いてはシスターに怒られていたが、それでも本気で怒られるような事はしていなかった。
そしてそんな兄を、バーバラは家族だと思っている。
「え? うーんとね……みんなを笑顔にしたい! だから、ボクシさんになるんだ!」
だからこそ、素直な気持ちも夢も語れる。彼ならば受け止めてくれるし、彼ならばいつでもバーバラの味方であったから。
「バーバラなら世界一可愛い牧師さんになれるよ」
「うん! そうなる!」
彼の膝の上での景色も、暖かさも、バーバラはボンヤリとであるが覚えている。幼いながらも彼女の指針となり、いつでも変える場所となっていた彼の胸の中は、心地の良いものだった。
☆
いつしかバーバラが人目を憚らず素直に家族として呼べる者は、彼だけとなっていた。
「あ、お兄ちゃん! お帰りなさい!」
「ただいま、元気にしてたみたいだな」
「うん! 撫でてくれても良いよ!」
「はいはい、相変わらずだな」
10歳から冒険者となり、外で色々としていたみたいだが彼女にとって彼は純粋な想いをもって抱擁をすることの出来る兄であった。最初の頃は寂しくないようにと色々と食べ物などを持って頻繁に帰って来ていた彼であるが、7年も経つと戻ってくる頻度は激減していた。
モンドには酷い時は1年も戻らず、戻ってきた時は酷い傷を携えて来た時もある。それでもバーバラは、いつでも彼の帰りを待ち遠しく思っていた。
何故なら、彼は実の姉であるジンの恋人であるのだから。
「(お姉ちゃんとお兄ちゃんが一緒に居たら私も嬉しいし、ずっーとモンドに居てくれるもんね)」
と言ってもそれは彼女がそう思っているからだ。バンパーがモンドに帰って来たタイミングでジンが見習い騎士になったばかりの時期に、こっそりと覗き見た時に2人で口づけをしていたからそうだと思っている。事故かとも考えたがその後にずっと見つめ合い、ジンが顔を近づけられて顔を逸らしたのを見て恋人であると確信に変わっている。
なおキスは事故、目を合わせていたのは『目を逸らした方が負け』という恥ずかしがっていたジンを煽って始まった勝負である。
ただそれはそれとして、バーバラは好きな2人がくっつく事はこれ以上なく喜ばしい事だったのだ。
「ねえお兄ちゃん、今日はいつ帰ってくるの?」
「あー、ジンに呼び出されてるからなぁ……夜遅くなるかな」
「お酒は飲み過ぎちゃダメだからね!」
ただそんな普通の日に、2人の関係に変化が現れる。バンパー17歳、バーバラはまだ14歳。この日は忘れられない日になってしまう。主に、バンパーのせいで。
☆
この日、バンパーが教会にやって来たのは夜遅くであった。教会(の宿舎など)で寝泊まりすることの多い彼は前もって連絡し、荷物を置いて部屋を一つ借りていく。教会側も多くの寄付を貰うので無碍にしない、そしてその世話や管理などは親しい仲であるバーバラの仕事になっていた。
そして今日は珍しく、酔っ払いながら彼は帰って来ている。
「もう、飲み過ぎちゃダメって言ったじゃない!!」
「あれ? バーバラ? 天使かと思った」
足取りすらおぼつかず、お酒の匂いをさせる彼の体を彼女は支える。背丈は成長が止まったおかげで彼の方が少し高い程度なので支える事は難しくない。そんな彼を、彼女はベッドの近くまで連れて行く。
「ほら、お水。お酒臭いの駄目なんだから着替えてからベッドに入って」
「あー、うん」
そしてベッドに座らせ、彼にコップ一杯分の水を飲ませて落ち着かせる。ここまで飲むのは珍しいのだが、バーバラとしても付き合いなどで飲まなければならない時があるのは知っているので強くは怒らない。
ただそれはそれとしても、こんな状態の彼をベッドに寝かせられない。
「もう、手をバンザイして。ほらちゃんと……」
まずは服を脱がせる、そう思い彼女は彼と目線を合わせて服の裾を握る。そして彼もそれに合わせて手を上げ始める、上げ切るのを待っている彼女であるが、その手は何故かバーバラの両頬に向かっていく。
「お兄ちゃん……?」
そして優しく、彼女の頬を包み目を合わせる。薄く暗い黒曜石のような目に少しだけバーバラは自分すら写すそれを見つめてしまう。咄嗟に合わせられてしまったが、その目は間違いなく彼女を見ている。目を離さないよう固定された彼女の顔も体も、止まってしまっていた。
「どうし……んむっ!? んん────!?!?」
そして、一気にその距離が無くなる。彼から近づき、手で寄せられて彼女の顔と彼の顔の距離はゼロとなった。無防備な彼女は口の中に入り込んでくるそれを感じるまで、目を明滅させぐるぐると回し続ける。
「ぷはっ、はむっ……んん!! ぷはっ、はぁ、んむっ!?」
そして離れようとしても、直ぐに捕まってしまう。体制的にも逃げれないというのもあるが、口の中を自分以外の何かが蠢く感覚に頭が追いつかないバーバラには今の状況をどうしたら良いかなど分からなかったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……な、なんで……お兄ちゃ……んむっ!!」
唾液を交換し、お酒の匂いが彼女の頭を酩酊させ始めた頃、遂にバーバラの腰が砕け始める。そのまま落ちてしまいそうになるが、それは反転して抱き抱えられ、後ろから抱きつかれる形で収まる。
ただ、それでは終わらない。終わってはくれない。
「バーバラも可愛くなったなぁ、おっぱいも大きくなったし。まだ成長途中かな?」
「や、やぁ……そんな、揉んじゃ……」
バーバラの格好は就寝前なので寝衣姿だ。薄い衣とその下のキャミソールだけであり、彼の両手は容易に服の間を滑り抜けて彼女の双丘に辿り着くだけでなく、その頂きを弄りながら揉み上げていく。
今迄誰にも許したことのない肌を、初めてを、容赦無く楽しんでいく。身じろぎしても抜け出せない快感は、徐々にバーバラの体力と心を消耗させていく。
「きゃっ、お兄……ひゃん!!」
そして抱き抱えられていた彼女は、そのままベッドに倒される。そして上から押さえらるように胸を揉まれていく。抵抗をしても、その感覚からは逃げられずにただ汗で寝巻が張り付いてしまい扇情的な姿になっていく。14歳の少女には少し激しい経験だろう。ただ一頻り楽しんだのか、そのまま手を外すとその手はまた頬に当てられる。
「や、足当たっ……! だめバン、だめ、だめ……!?」
そして足を股の間……どころか股を巻き込むように置き、そのまま逃げ場のない彼女の口を楽しんでいく。彼の両腕を掴む彼女の手も抵抗には弱く、唾液を一方的に飲まされては舌を絡め取られており、口を離す度に銀色の糸が2人を繋いでは途切れていく。足もまたグリグリと押し付けられて、彼女の中の昂りを高揚させていく。
「はぁー……はぁー、はぁー……」
今迄は頼りにしてきた兄だった、誰よりも身近にいた家族だった。だが血は繋がっていない、最も身近な異性であった事をバーバラは理解していなかった。
たった一時の時間、今迄の関係の全てを塗り替えられてしまうほどの衝撃がある。そのまま布団の中に連れ込まれ抱き枕のように抱きつかれる。
「バ、バン……変だよ……あたし、もう……」
そしてそんな事をされ続けてしまったバーバラには、もう兄と呼ぶ事は出来ない。自分と彼は血が繋がっていない、ただの異性であるとはっきり認識してしまったのだ。新しくこじ開けられてしまった扉が、抑えられない欲望が、バーバラの瞳に映る景色を変えてしまう。
「バン、バン……ダメなのに、バンのせいで……!!」
強く抱きつく。彼の胸な顔を埋め、擦り付け、今迄は気にした事も無かった彼の匂いを深呼吸をしながら覚えていく。今迄自分にとって大切な人が自分にとって唯一の人に変わったのだ、荒い息を整えながらも彼女は覗き込むように彼を見上げる。
「バン、もっと……もっと……あれ?」
ただ途端に彼の抱擁の力が弱まっていく、どうしたものかと見てみれば寝ているようだ。思えば最初から彼の様子はおかしかったのでお酒のせいなのだろう。ただここまでしておいて放って置かれているというのは虫が良すぎるし、許し難い事だろう。
「ズルい……起きないなら、私だって考えがあるんだから」
だから、今度は彼女から彼の両頬に手を重ねる。
「私からしても、許してくれるよね」
翌朝、彼が起きた時の口周りはベタベタだった。本人は寝ていた最中に涎を溢したと考えたが、直後に隣で寝ているバーバラを見て全てを思い出し青褪めることになる。
☆
「バーバラ、楽しそうね」
珍しい事に、バーバラはロサリアに話しかけられる。あんな夜を過ごした翌日、今朝にバンパーから土下座をされたのに対して『昨日の事はずっーと忘れちゃダメだからね』と約束させて許したのもあるが、一晩中恋人のように口付けをし続けた事もあり、彼女の体は高揚感で溢れ疲れはなかった。
むしろ有り余る元気な姿を見てロサリアは話しかけたのだろう。
「うん、私将来なりたい事が増えたの!」
それに対してバーバラは答える。牧師として皆を笑顔に、バルバトス様のように有たいと思っていた彼女の人生の目標に、新しい項目が作られたのだ。
ただ何になりたいかまでは言わない、願い事は口に出したら叶わないというのもあるが、必ず起こす未来の為に暫くはその気持ちを自分の中で整理したいというのもあるのだろう。
バンの事がもう異性としてしか考えられない、ただバーバラは彼の事を姉の恋人であると思っている。彼女の両親からして横恋慕は出来ない、ただここは自由の国である。自分の責任さえあれば、何をしても基本的には自由の国だ。
重婚は、良識の範囲で許されている。
「(バンとお姉ちゃんが結婚して、私も結婚したら本当の家族に戻れるもんね♪)」
姉妹に戻るのに、大好きな2人と家族になる為に、バーバラはこの気持ちを跳ねさせながら今日も牧師として皆の笑顔を守っている。ジンとバンパーが深い仲でも自分にした事の責任は取ってもらうつもりなのだから、その意思が変わる事はない。
昔から関係を持つ1人の異性によって、恋する乙女となった彼女は誰にも止められない。人前であろうと気安く抱き付き、擦り付き、深く彼の胸で深呼吸もする少女になった彼女は、当たり前のように頬へキスまでしてくる。
その恐ろしさと自身のしてしまった過ちをバンパーがしっかりと認識するのは、先の話だろう。
このSSを書くにあたって、影響を受けた偉大な先人達。共にR-15です、私はR-18になっちゃったのが心残りではある。
『とある少年が、全ジムリーダーのおっぱいを揉むという夢を抱いたそうです』
https://syosetu.org/novel/22409/
『健全魔導士目指します』
https://syosetu.org/novel/115563/