※この作品はR-18です。

私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!!   作:札幌ポテト

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志璇回、彼女はストーリーのモブ冒険者です。
少し重めの、世界観に対する話がありますけど是非ゲームの方で楽しんでください。

こっちは全てをぶち壊すけど、許して欲しい。
 


層岩巨淵で新人に命の重さを教えた話☆

 

 この時期の私は、過去を鑑みてもブレーキを踏んでなかった。

 

 それもそうだろう、子供が出来ないならとヤリまくっていた。絶対に手を出すはずがなかった煙緋に手を出し、可愛い教え子でもあるノエルにもしっかりと奥に注ぎ込んできた。

 どちらも私を多少は好意的に、かつ異性として少なからず意識していたから手を出した。でも騎士になりたいからと教えを請いにやって来たので試しに「私の体触ってみる?」って提案して顔真っ赤にしながら触るノエルが悪いのだ、代わりに向こうの胸筋を触ってそのままゴールした私は悪くない。

 

 ただ、一応これは同意があった。というか同意扱いできるような状況、またはリサさんみたいにやられた事をやり返すみたいな時、もしくは刻晴の時みたいに仕方ない状況でしか、私は手を出す……というか、いっぱい楽しんでいっぱい中に出すという行為をしてこなかった。

 ちなみにファデュイの女の子は中へ入れた事は無いよ? それ以外は大体するけど。

 

 でも今回は、そんな条件に当てはまらない例外の時だ。過去一で無理矢理したと言える、だから訴えられないように本気を出した。リサさんにやった本気程ではないが、それ以外の本気を出して堕としに行った。

 

 私は悪くない、全部彼女が悪い。新人特有の根拠のない自信で調子乗ってたし、視野とか見聞浅かったし、クレイトポンとずっと喧嘩しててうざかったし、自分の命を大切にしなかった。

 

 よりにもよって一回死んだ事のある私の前でそんな事を許されると思ったのだろうか。色々と苛々が溜まってたけど息子が苛々しちゃったね、その苛々を発散しないと収まらなかった。

 

 だから色々と理解せた、その後でも色々したけど反省はしてる。

 

 だって────とは思わないじゃん。

 

 ☆

 

 層岩巨淵、それは璃月に存在する深い穴。

 過去に隕石が落ちた事で出来たと言われており、貴重な鉱石が掘り出せる炭鉱夫達の稼ぎ場だ。

 

 ただそれはつい最近まで七星によって封鎖、とある旅人によって解放されるまで放置されていた。

 理由はもちろんあり、地下区画にて異常が起きていた事が原因だ。それによる被害を懸念し、七星はそれを閉じていたのだ。

 

 しかし、璃月の貴重な収入源でもあるそこをいつまでも放ってはおけなかった。故に、大規模な調査が始まろうとしていた。そんな調査に赴く1人の冒険者の名は志璇(しせん)、好奇心が旺盛で人生というものに波を求めたい、いかにもな新人だ。

 

 そんな彼女の他には七星から推薦を受けた冒険者であり海で魔神と戦い撃退したと言われる英雄、旅人の空とパイモンを含めた様々な調査員が地下鉱区に集まっている。

 

 そして、今日はもう1人仲間が増えた。

 

「新人冒険者のバンです、よろしくお願いします」

 

 16歳程に見える青年というには少し幼い少年、冒険者のバンだ。どういうわけか旅人が話しているのを彼女が見つけ、聞いてみれば彼女と同じくこの層岩巨淵に何かを見出して来たらしい。

 自分と同じ、新人だからこそ自分の人生の爪痕をここに残したいのかと思い親近感が湧いてくる。ただそれよりも先に、志璇には嬉しい事があった。

 

「先輩! 私、もう後輩が出来ました!」

 

 冒険者としてまだ数個程度の任務しか、それも単独では受けた事すらない彼女であるが、後輩ができた事が嬉しかったのだ。しかもそれが自分と同じような志を持っているのだと感じれば、その気持ちはなお大きくなる。

 

「ふふん、私は先輩冒険者の志璇(しせん)です。お姉さんとして色々任してくださいね!」

 

 年も自分より若く、それでいて冒険者になろうという考えを持つのだから志璇の心は踊る。なお旅人とパイモンが残念な目を彼に向けているのだが、それには気付けない。

 ただその視線に居た堪れなくなったのか、少年は旅人を見ないように振り返る。

 

「あ、とりあえず私は探索して来ますね。キノコとか調べたいので」

 

「あ、ちょっと! いきなり1人は危ないんですよ!」

 

 そして、返事を待たず暗闇の奥に消えていった。と言っても最奥に向かったのではなく後ろに戻っただけなので、今の所そこまでの危険がない後ろならば気にする事もないだろう。

 

「まぁバンなら大丈夫だよ、僕も追いかけるし」

 

 ただ旅人が一応フォローを入れておく。これは彼女を気遣ったものであるが、彼自身彼女は巻き込まない方が面倒にならないと感じているからなのかもしれない。

 

 ただ、その彼の特別な扱いをしているかのような言い回しに、志璇は一つ気になる事を聞く。

 

「先輩、バン君って神の目はあるんですか?」

 

「いや、持ってなかったと思うけど」

 

「……そう、ですか」

 

 神の目、体外にある元素器官。一握りの存在だけが手にする『特別』であり、ほぼ全ての存在が手にする事の出来ない『憧れ』でもある。そしてそれは、願うだけでは手に入らない。

 

「彼も、選ばれてないんだ」

 

 神に選ばれ認められた者だけが、それを手にするのだから。

 

 ☆

 

 志璇は、英雄に憧れる。新人冒険者として旅人の逸話は何度も耳にし、璃月では既に魔神を倒し璃月を守った英雄譚が流れている。

 そんな彼女の憧れは、良い意味で裏切られる。層岩巨淵という人が通るには危険な道を、素早く誰よりも先に踏破していく。噂通りの冒険者に、彼女は心が躍っていた。英雄が隣にいる事を、見れる事を喜んでいた。

 

 そんな彼を、地図を作る事で手助け出来たことは彼女にとって幸福だったのだろう。だからこそ元宝盗団のクレイトポンが彼の足を引っ張ると思い真っ向から反発しては諌めらていた。

 

 ただ、結果として旅人は層岩巨淵の最奥まで徐々に近づいていた。

 

「バン君って、先輩と付き合いは長いんですか?」

 

「知り合ったのは最近ですけど、どうかしましたか?」

 

 しかし、だからこそと言った思いが湧いてくる。自分では超えるのに困難な障害を何度も乗り越えて行く、それに弱音など吐かず淡々と、余裕を持って超えていく。

 

 まさしく御伽噺で聞くような存在だ、自分とは違う存在だと。

 

「あんな凄い人と一緒に居て……その、どう感じました?」

 

 だからこそ、自分がその背中に追いつかない事も分かっていた。

 

「世界は広いんだなと、彼みたいな人は今後現れるか分からない。まさしく英雄という奴です」

 

 英雄、生まれた時から選ばれたような存在。一握りの存在がたどり着くその場所は、恐らく凡人が努力した程度では指先すら引っかからない。

 冒険者として自分の名を残したい、そんな思いでここにいる志璇には、その光が眩し過ぎた。その眩しさに、気付かなかった。

 

「英雄、ですか」

 

 そんな光に認知され、尚且つ近い距離で知る彼の視点もまた気になったのだろう。

 彼女も最初は彼を慕っていた、いや今も慕っているのだがそれ以上に自身への凡人としての劣等感を感じざるを得なかったのである。

 このままでは、自分は誰からも忘れられてしまうような存在であると。

 

「神の目って、欲しいですか」

 

 この世界には明確な選ばれた基準がある。それが神の目であり、元素の力を持つことが出来る。そして死後に、天空に浮かぶ島へと昇っていく。

 神に認められた者だけが授かる力だ。元素の力が使えるものは皆等しく、神に認められているのだろう。そして誰しもが、特別でありたい。

 

 そんな分かりやすい特別な象徴について、どう望んでいるのか。同じ持たざる者であり、ここに何かを望んで来た者として、それが知りたいのだろう。

 

「原神に興味はないですけど、元素を手軽に使えるのは良いですよね。毎回焚き火に火打石使わなくて良いですし」

 

 ただ、その答えは軽過ぎる。いや、まるで彼自身の答えでは無いようなものだ。それは今の仲ではまだ話せないという事か、それとも神の目が持てていない事に対する想いを態と隠しているのか。

 

 少なくとも、話す気が無いというのは分かった。

 

「長々とごめんなさい、私また地図を書いてこないと」

 

 彼も何かしらの意志を持ってここにいる。ならば彼女も、彼のそれについて一方的に聞くのではなく、その言葉を受けれるだけの気概があると見せるしかないだろう。

 

「(大丈夫、まだ体は動かせる)」

 

 この、黒い泥に覆われ始めた世界で。

 

 ☆

 

 黒い泥、それがこの地下鉱区を封じるに当たった原因である。なので元素知覚や冒険者としての経験値によって察知する人とかは入っても大丈夫だが、殆どの人は入っては危険だ。ちなみに元素知覚という神の目持ってる人は足跡を辿るみたいな事を出来るけど、私にはそんな物は無い。

 ただ代わりに私の纏う保護膜、視線とか微弱な違和感とか感じられるから気付けるんだよね。でもそれはどういった類の物かは経験しないと分からない、なので本来であれば黒い泥とか知ってたら行ってない。

 

 でも、ここに居る。何故なら知ってるから。

 

 だって来たことあるし。そもそも封じられている時は勝手に入って『ここなら安全じゃん!』とか思ってたし。

 

 まぁアビスやら当社比まだ友好的なファデュイやら宝盗団やら後ろ暗い奴らばっかだから出来る限り奥に行って休もうとか考えるぐらいにずっと戦ってたけど、奥は奥で気味の悪い場所もあれば変なヘビ型の遺跡ロボも居たし、あまり休める場所では無かった。

 

 でも、地上はダメだ。モンドではノエルに手を出した事は悟られて無いけど、ノエルならうっかり話してもおかしくない、エウルアに殺される。

 璃月は魔神を撃退した影響で旅人に行く筈のファデュイやらアビスの悪意を受けている、その癖旅人は英雄扱いだけ受けている。何故私の方にその両者が襲ってくるのか意味不明過ぎる。

 

 後本命として夜蘭に見つかって捕まったから逃げたかった、でも理解せてしっかり処女も食べておいたので、多分殺される。

 なので、消去法でとりあえずここに来たのだ。まぁ本当にダメな時は稲妻かスメールに行きたいと思う。

 

 それでここに来た理由を仮に付けるなら、調査が始まった事だ。私は身分を本気でではないが会ったことのある人からしかバレない程度に身分を偽って地下に行った。

 旅人が来ている事は分かっていたので、後は後ろから付いてくだけの時間を過ごしていた。というか熱りが冷めてくれると願っての時間稼ぎだし、なので特に何もせずに時間を過ごしていた。

 

「凄い、ですね。もうそこまで……」

 

 ただ、そんな旅人以外にも冒険者はいた。その1人が志璇(しせん)であるが、旅人を前にして明らかに何かが折れようとしている。いや正確には折れそうなので、新たな決心をして作り直そうとしているといったところか。

 

「また、地図を書かないと」

 

 現状を再認識し、改めて自分の道を歩もうとしている。それが並の冒険者には過酷な環境である層岩巨淵だとしても、というよりはだからこそと言ったところか。

 

 何が彼女を突き動かすかは分からないが、少なくとも何か求めている。正直それだけなら私は動かなかっただろう、冒険者とは命懸けの職業でもあるし、そういった手合いはよく起こる。

 

 しかし、死ぬと分かっていて見過ごせるほど私は非常になれない。

 

「休んでください、泥に埋もれて危なかったんですよ」

 

 彼女は黒い泥、その正体は────多分カーンルイアの獣の残滓というか漏れ出た物だと思うけど、そんな物に埋もれていたのだから非常に危険な状態にある。

 医者ではないが分かる。冒険など以ての外、まだ進度が低いので適切な治療を受ければ冒険者としてやり直せるが、このまま先に行こうとするのであれば、間違いなく命を落とすだろう。

 

 層岩巨淵は、容赦無く平等な試練の場であるのだから。

 

「でも、私が足を引っ張るわけには」

 

 仕方ないので、私は少し彼女の体を掴みその体内の黒い泥のバランスを崩して足を崩させる。かなり吸っていたようで、これで地図を作ろうなどと気概があるだけ大したものだろう。

 

 一応、これを私は吸収して治療する事は出来るがそれはしないでおく。痛い目を合わなければ人は学ばないからだ、処女膜破られてからみんな明らかに私への態度が変わるのとおなじだね。

 

 とりあえず、彼女は運んだ方が良い。適切な場所で休ませる方が良いので、どうしようかと思案したいのだが。

 

「今なら、聞いても良いの?」

 

 頃合いを見計らって、旅人がパイモンと共に現れた。

 

 ☆

 

 身分を隠したがっていたみたいなので、パイモンと旅人はあくまでも知り合いである新人冒険者のバンとして扱った。渦の魔神を倒した者であり、更にはその追従者も撃退しているのだから、それに関係して敢えて身分を隠したがっているのだと考え、敢えて距離をとって様子を見ていた。

 

「バン、どうしてここに?」

 

 そして今、その真意を聞ける状況にある。志璇はバンパーによって気絶させられているので問題もないだろう。

 

「最近忙しかったからな、とりあえず避難。私の場合……今は物資の供給路も確立されて、ここはかなり安全だからな」

 

 バンパーは、何もしていない。探索を手伝うというよりは、探索済みの地域の調査を行っている。明らかに安全な仕事を、新人冒険者のような仕事をしていた。

 ただ、ここを安全と言い切れるあたり底は知れないだろう。確かに泥は効かないとしても、この地下という閉ざされた空間で精神が侵されている者も居るのに、平気な顔をしている。

 

「七星からの依頼じゃないの?」

 

「むしろ七星から逃げて来たんだよ……」

 

「バンパーが居るとそれだけで怖いんだぞ?!」

 

「パイモン、人を疫病神みたいに言わないでくれない? めっちゃ気にしてるから」

 

 ただ少なくとも、厄介方でここにいると警戒していたのでそこは安心出来るだろう。パイモンもその手の厄介な奴が出て来ると思いビクビクしていたのでホッとしている様子だ。

 新人として来たのも、名前をバンパーと名乗らなかったのも、自分の都合だっただけに、良かった。

 

 しかし、そんな彼らの様子を見てバンパーの様子は少し変わる。

 

「でもそうだな……気を付けろよ」

 

 あくまでも、層岩巨淵は彼にとってそこまで危険では無いだけだ。他の者たちには、殆どの者達には、危険な場所になる。そして、彼だけがその真なる危険すら見通してすらいる雰囲気がある。

 

「釘の刺さりが甘くなってるのか、老朽化でもしてるのか。嫌な雰囲気がずっとするからな」

 

「く、ぎ? 老朽化?」

 

 パイモンが聞き覚えのない単語に首を傾げる。ただ釘、に関しては旅人は心当たりはある。ドラゴンスパインに同様の物があるからだ、しかし仮にそうだとしてだ。

 

「本気でやばかったら手を貸すけど頑張れ、雷神ぶっ飛ばしたお前なら問題無いと思うけど」

 

 なぜ『釘があるのを知っているのか?』は分からないし、それがどのような存在理由があるのかを、分かっているかのように話している。

 

 そもそも、封印期間も長いここの事情をどうしてそこまで知れているのか。

 

「とりあえずこの子、運ぶの手伝ってもらえない?」

 

 未だに思う、旅人は考える。このバンパーという存在は自分以上に、世界という物を外側から見ているような感覚がある事を、それでいて何も思っていないような事を。

 いつか、その重荷を代わりに背負わせるのではないかと。

 

 それは、志璇が姿を消した時も頭の中に残っていた。

 

 ☆

 

 志璇は姿を消した。正確には見つかれば絶対に咎められるので、意図して彼女は姿を消した。

 その目的は最初から変わらない、ただ地図を書く為に、彼女は奥に向かっている。今は休憩中であるが、少し休んだ後に奥に向かうつもりだ。

 

「その先に行く気ですか」

 

 だが、その前に彼に見つかってしまう。

 

「バン君、凄いですね……ここまで追いかけられると思いませんでした」

 

 バンという冒険者は、一度としてここには来ていない。いや正確に言えば黒い泥が大量に湧く場所には殆ど顔を見せていないのだ、それこそ志璇が泥に覆われた時は珍しく前に来ていた。

 少なからず心配され想われているのは先輩冥利に尽きるが、ここに旅人や他の者たちが現れていない事に安堵する。

 

「そこから先に行くにしても、万全じゃない貴方が行けば……」

 

「私は力尽きる迄、層岩巨淵に挑み続けます」

 

 彼ならば、自分を理解してくれるのではないかと。自分の想いを無碍にはしない側の冒険者だと。

 

「バン君、私はあなたの事は知りません。新人と言ってましたが先輩のご友人であれば見かけによらず冒険をして来たのかもしれません。身分を隠しているのかもしれません。

 

 ────でも、神の眼差しが届いた人じゃない」

 

 彼もまた、ただの人の1人だ。

 

「貴方に聞いてみたいです。私達は毎日を、志を持って生きています、コツコツと生きています。

 断崖絶壁に立って作業する薬草採り──落盤という危険と隣り合わせの中で毎日働く鉱夫たち──建物何階分もある巨大な船に釘を一本一本打ち込む作業員、日々を生きる為に身を賭してる。

 もし、そのような人たちの苦労が、平凡なもので、記憶するに値しないものとされるなら、私たちの願いや尊厳に優劣をつける神々に、疑問を感じずにはいられません」

 

 神の目が存在するという事は、神の眼差しが届かなかった者達が多くいるということだ。特別とそれ以外、それ以外である彼女を特別は苦しめている。

 何も出来ない、ただの人でしか無いと言われているから。

 

「私と同じく、ただの人であるバン君はどう思いますか。目の前に冒険の余地のある場所を見て、ただの人は危険だから逃げ帰りますか? 私は、そうしたくありません」

 

 ただの人だから、諦めろ。特別な人に任せて、ただ眺めている事は出来ない。少しでも、認められていなくとも、彼女は自分の価値を自分で示したいのだ。

 

「神の目なんて人の身に過ぎた物は理由があって与えられる物です。そんなご褒美であげられる程、優しいものじゃないと思いますけど」

 

「それは、持っている人の言葉です! 私達は、持っていない!!」

 

「……その有無で人は変わりません。それを考えるから、志璇は意固地になってるんでしょ」

 

「なってません!」

 

 バンは、今の在り方に疑問が無い様子だ。むしろ受け入れている、受け入れているからこそ、諦めている。

 神の目がある者を見て、英雄を間近にして影響されてしまっているとは彼女も理解はしているものの、そこを踏み込んでくるとまでは思っていなかった。

 

「私は、層岩巨淵に身を投じます。制覇するだとかそんな尊大な言葉は使いません、でも後に続く誰かに地図を残したい。私という平凡な人の名前を、編纂者として残して────普通の人がどこまで行けるのかを、誰かが見せないといけないんです」

 

 だが、彼女のする事は変わらない。自分の限界に挑戦する、その姿勢は変わらない。

 ただ、その挑戦の場である層岩巨淵に同じ特別でない者がいる。

 

「私は必ず、自分の人生の爪痕をここに残します。凡人としての名を刻む為────貴方も一緒に来ますか?」

 

 そんな彼に、彼女がそう提案したのは引き込む為というのもあるが、同志であるならば来る機会を一方的に取るというのが誠実ではないと考えたからか。

 ただ一番の理由はここで引き留められ、この奥に行く機会を奪われたくないからだろう。

 

 しかし、今までの彼を見て来てついて来るとは思っていない。

 

「私は、自由に生きたいから冒険者になりました。危ない橋を渡りたいからじゃないです」

 

 バンという冒険者は新米らしく、常に後方にいた。確かに探索はしていたが、それは新しい何かを探すようなものではない。地上には無い世界がある、地上には無い発見がある、でもそれ以上の何かを探しているとは思えなかったのだ。

 

「なら、どうしてここに居るんですか」

 

 だからこそ、彼女には分からない。

 

「ここには、未知がある。未開だからこそ、謎だからこそ、私みたいな冒険者が集まります。何の大義や意思もなく、来れる場所じゃありません!!」

 

 こんな危険な場所に、何の理由もなく来れるはずがないと。ただそんな言葉すら見透かされたような目と言葉が向けられる。

 

「志璇は、誰かに認められたいのか」

 

「っ、そんな言葉だけで! 私を知った気になって纏めないでください!」

 

 新人ゆえに読まれやすいというのがあったとしても、どこかこの冒険者は見ている場所が違う。そんな感覚を彼女は感じるが、これ以上の問答は無駄である事は何となく察している。

 

 彼女と彼は、そもそも相容れない者だったのだと。ならばと思い、彼女は決別の言葉を吐く。

 

「もういいです、私は私の道を選びます。命を落とそうとも、どれだけ苦しもうとも、私はここを進むんです!」

 

 ただ、その言葉はある意味地雷だったのだろう。彼女は振り向いて気付いていない、その言葉が紡がれていく最中から彼の瞳が明らかに淀み始めていた事を。

 

「よりにもよって、私の前でそんな事言っちゃうんだ……言っちゃったね?」

 

 出発をしようと、簡易テントの荷物を纏めようとしていた彼女の背後に彼は立つ。その言葉の雰囲気の変わりように、彼女は漸く違和感を感じて振り向く。

 

「バ、バン君?」

 

 そこには、今迄の後輩としての彼は居なかった。新人冒険者として、彼女をそれなりに尊重していた彼は、どこにもいなくなっていた。

 

「身勝手だな、周りの心配も気にしない。思ったより決心も固いし、もうこれ以上言える事もない。

 

 ────だったら私も、勝手にさせてもらおうか」

 

 彼は手荷物などをそこに落とすと、軽く周りを見る。ここは層岩巨淵の探索された中での最奥、人は誰もいない。

 

「君とか普通の人は知らないけど、私って自分だけがどうにか出来る面倒くさい選択肢があるの嫌いなんだよね。目の前で素通りさせて死にに行く子を、見過ごすのは夢見が悪いから、無視するなんて出来ない人間だから」

 

 居るのは彼と彼女のみ、広大な空間の一角で、2人だけ。

 

「勝手って……えっ!?」

 

 そして、何らかの方法を使ってか彼は一瞬で彼女の隣に移動する。

 

「死の辛さとか、命の重みとか分かってない。どうすれば分かるのか────こればっかりは()()()宿()()()()()()、分からないんだろうね」

 

 そして、お腹に手を当てながらそんな言葉が耳元で囁かれた。

 

「命を宿っ……へ!? その、何言って……きゃっ!!」

 

 急に体を触られたのも驚きであったが、それ以上に何が起きているか分かっていなかった。テントの中に押し倒され、優しく上に跨がれてしまう。

 何が起きているのか、突然後輩の雰囲気が変わったかと思えば押し倒されて『命を宿す』なんて言葉が出て来たのだ、わけもわからないだろう。

 

「安心してよ、死ぬのが怖くないなら────怖くないでしょ?」

 

 ただ、そんな状況は嫌でも分からされてしまう。そうなる事を、徐に上着を脱ぎ始めた彼を見るまで気づかなかった。

 

 ☆

 

 志璇が消えた、そう聞いて旅人は直ぐにその意図を考えた。

 彼女は冒険者として名を刻む事に固執していた、ならばあの体であっても危険を犯してもあり得なくない。

 

 向かうならば最奥、この層岩巨淵という世界の奥を目指すだろうと。そう考えた彼は、直ぐに『天の釘』が打ち込まれた最奥に向かった。

 

 間に合うかもしれないと、自分を慕っていた後輩が死にに行くのを止めなければならないと。

 

 そう思い、彼が向かった先で見たのは。

 

「んあっ……あ、あ、あ……あうう……」

 

 散乱した衣服と小さな簡易テントの中で毛布一枚の下、何とも形容し難い状態にあった志璇であった。

 毛布の下からはみ出た生足や肩などからして、毛布一枚の下は想像に難くない。周りを見てみれば下着もあり、本来下着があるべき胸元では毛布の下で何かがうごめていており、揉み込まれている事が分かる。

 

「あれ、旅人。もう来たのか」

 

 そして、このような状況でありながら、当たり前のように彼女の後ろからバンパーの顔が見えてしまう。無論、彼も半裸なのが分かる。それどころかそれ以上かもしれないが。

 

「彼女は大丈夫、ちょっと調教……説得してるだけだから。もう少し時間はかけるけど、先に帰って報告だけ頼める?」

 

 結果として志璇は助かっている。そして恐らく止めたのが彼なのだろう、時間からして旅人では間に合わなかった。

 その兆候は旅人どころか他の者たちも感じていたのだが、あの体では向かわないだろうと勝手に思い込んでいた。

 

 しかし、体調の不調らしきものは見えない。恐らくバンパーが何とかしたのだろう、明らかにそれ以上の事をしているみたいだが。

 

「ふわぁ……あれ? せ、先輩?」

 

 ただ、蕩け切った彼女の目と旅人の目が合う。見ないようにはしていたが、バンパーの声が彼女の後ろから聞こえていたのだから仕方ないだろう。

 

「どうして、ここ……ひゃあっ!?」

 

 ただ、そんな事は許されない。胸元で動いていた手の片方が、今は別の所で動き始めている。

 

「誰が他の男を見て良いって言ったの? 君は今、私のものなんだよ?」

 

「ひゃ、あ、あっ!!」

 

 旅人が居ようと手加減せず彼女が攻められる。バンパーがこういう男なのは珊瑚宮心海の日記をうっかり読んだ事があるので知っている。

 何なら『バンパー様に一晩中えっちな事をされた +&¥#点』と一部塗りつぶされていたが、相当やっていた事はパイモンに読み上げられた時の彼女の反応と『とんでもない写真』から察している。

 その時は後で咎めてやろうと思ったものの『バンパー様が居なくなった -50点』と書かれていたので一応辞めておいた。同意の上なら仕方ないと。

 

 その上で、やり過ぎだとは思っているが。

 

「返事は?」

 

「ひゃ、ひゃい! ごめんなしゃい、だからもっと休ま……あああ!?」

 

 彼のおかげで彼女はここにいる、それは間違いない。恐らく治療もしている、そのお代を徴収しているのもあるのだろう。旅人としては止めたい気持ちは勿論あるのだが、遅れて来た自分が止められる立場じゃないのではないかと思いつつ結論を出せない。

 

「口ごたえするの? 今、君に決定権ないんだよ? 

 ……返事は?」

 

「ふぁ、ふわぁい! や、ああっ!?」

 

 その間に、彼女は蕩けた悲鳴をあげ続けている。あんなに旅人を慕い、旅人の側にしか立たなかった程の彼女が、恐らく年下だと思っている男に蹂躙されているのを、見ている事しか出来ない。

 

 そんな葛藤を他所に、バンパーは彼女の首に吸い付く。

 

「このマーク、隠しちゃダメだからね。隠したら今日と同じ事3回するから」

 

 どうすべきか、旅人は悩む。正直この場に居続けたくない、何か声が聞こえたからとパイモンを置いてここに来ているのだが、パイモンがやって来たら色々と面倒どころの話ではないだろう。

 

 そしてようやく、結論を出した。

 

「旅人、改めて頼むわ」

 

「あ、ああ……その、なるべく早く帰ってこいよ?」

 

 見なかった事にしよう。面倒どころの話ではなかったので、それが一番丸く収まる。彼女は体を治してもらった上でお仕置きをされて戻って来るだけで、バンパーはそれを連れ帰って来ただけだ。

 

 パイモンは適当な事を言ってはぐらかそう、これは色々と見せて良いものじゃないし話したくない。そう思い、一応の注意の言葉だけ告げて旅人はそこを離れた。

 

 途端に、後ろから声が聞こえて来る。

 

「はーい、しせん。休憩は終わりだから、溢れちゃうけど────また奥で受け止めてね♪」

 

「や、あ、また入って……!? んあっ!? さっきよりおっき……!! ひやああああああああ────!!??」

 

「気持ちいいのダメ!」とか「奥いじめないで!」など聞こえて来たが、聞こえないことにしておこう。ただ旅人は一応、後で事情聴取をする心の準備だけは済ましておこうと誓った。

 

 なお、ここから層岩巨淵には7日ほど滞在していたが拠点で頬を赤く染めて涙目の明らかに何かされた後の志璇や、バンパーが急いで離れたと思った所で口元に涎が伝って目の奥に何かを浮かべている志璇、衣服の明らかに乱れた志璇を見たりしたが見なかった事にした。

 

 ただ拠点でしたのを軽く諫めたら今度は2人で探索をしていたので深く考えないようにした。ただ少なくとも、彼女が最奥を目指すような危険を犯す事は何故かなくなっていた。

 





よし、ハッピーエンドだな。

to be continued.
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