私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
蛍回
IF√は蛍が旅人の時の世界線
璃月篇
神が殺された。璃月にて行われた特別な儀式の最中、岩王帝君は命を落としたのだ。理由も目的も不明、そもそもどうやって岩神を殺したのかも分からない。璃月中が言いようのない、不安に塗りつぶされていたのも仕方ないだろう。
それの解決のため、兄の手がかりを知る為に旅人──蛍はとある人物の元に向かう。
モンドでは魔龍の事件において手を貸してくれたようだが、直接的な関わりは簡単な道案内のみの上辺しか知らない存在。ジンが頼る騎士団以外の冒険者という事ぐらいしか分からない、そんな存在の元に向かっていた。
「手を貸して欲しいって、有料だけど?」
それがバンパーという冒険者だ。
「なんでもするから教えてよ!」
「バンは凝光の部下なんだろ!?少しぐらい良いだろ!?」
「部下じゃない、顎で使われてるだけの友人」
璃月の事件において何故か凝光と共に事件の捜査をしていたのには驚いたが、まさか璃月の上層部からも信頼があるとは思っていなかった。冒険者としては大量のヒルチャールが居たら逃げの一手を取るぐらいの存在であるし、いくら旅人と異なるようだが神の目無くして元素を使えるような者でも、その強者の覇気は無い。
「でも、優秀なんでしょ!? なら教えてよ!」
「教えるって……聞いても面白くも何ともないし、君に関係しないぞ?」
「それでも!」
蛍は食い下がる、八方塞がったのだ。岩神が殺された理由も方法も意図も何も分からなかった。彼女のような権限らしい権限を持たない冒険者には、拾える情報に限界があったのだ。
「……パイモン、私ってそんな好感度稼ぐ瞬間あった?」
「え? オイラ……むしろマイナスな気がするぞ」
「だよな、自覚あるし」
「ジンに聞いたから問題ないから! 大丈夫なの知ってるから!」
ただ、目の前の存在は違う。常に凝光から情報と権限を得ていたならば、蛍にはアクセス出来ない情報を持っているはずだろう。異国で何かあれば騎士団ではなく彼を頼ると良い、そうジンからも言われているので頼っているのだ。
ただアンバーにエロい事をしたのはアンバーから直接聞いて操られてたから仕方ないという事だったので、パイモンの信用のマイナスも打ち消せるだろう。
するとあまりに食い下がるからか、この程度話しても問題ないと思ってるのか、仕方ないといった様子でバンパーは頭をかく。
「私の調査の結果、今回の事件で可能性として一番高いのは────岩神の自害だな」
そして、出した答えがそれだった。
「じ、自害?」
「倒せる勢力が居ない。アビスは無関係だったし、ファデュイが岩神殺したなら執行官が出張って来るほど調査に真剣なわけ無いし。なら死因は他殺とは思えなくてな、死体の検分したら流石にわかると思うけど」
死体の検分、そう言われてみれば岩神の死体はすぐに七星に隠された。ファデュイの暗躍があると凝光は言っていたが、そもそも七星にも動機が無いわけではない。岩神を殺せば、璃月の統治は彼らが行う事になる。
「私の仕事は調査、結論出たし調査は終わり。後は報告だけ、こっから先は関わる気ないしな。好奇心は猫も殺すし」
だとしても殺せるような存在は限られて来るはずだ。岩の槍を降らせて島を作るような存在が、岩神なのだから。ただ、もし何かしらの条件が揃ったなら話は違うのかもしれない。
「バンみたいな人なら、殺せるんじゃない?」
「私みたいな奴って、ダインスレイヴもそんなことする奴じゃ無いぞ」
「ダイン、スレイヴ?」
「知らなくていい名前だよ、私は知りたくなかった」
結局、バンパーから得られた情報から事件は自害。ただそれでも確かめたいならば、死体が隠されているであろう場所を教えてもらえた。
☆
私こと、バンパーは凝光さんに顎で使われている。その自覚はあるし後で絶対に理解させてやるつもりでもあるのだが、これ以上首を突っ込んでもダメな気はしていた。
ただ旅人はまだ事件について、神について知りたかったのだろう。特に神の心とかいうものを、私は興味はないがファデュイが興味を持つそれに。
なので旅人はファデュイの一派なのかどうなのか、その確認も兼ねて態と遺体の場所を教えて後から追いかけさせてもらった。こっそり様子を見て、ファデュイなら悪戯してから凝光さんへついでに報告、ファデュイじゃなければ仕事は終わり、そんな感じだったのだが。
「おや、お仲間さんが来るには随分と……運が良い」
流石に邪眼を使う執行官と戦い始めたら、嫌々でも参戦する。
今の私はタルタリヤの双剣を過去に風の仙人を治療した時の礼で貰った宝剣で受け止めている。一番良い剣だ、しっかりと受け止められる。
「バンパー!?」
パイモンが私に向かって驚いた声をあげているが、私だってこんな事をしたいわけじゃない。ただここに誘導した一因は私だし、それで殺されたりでもすれば流石に良い夢を見て寝れる神経はしてない。
とりあえず弾いてから吸い取った雷で押し飛ばす。軽く後ろを見てみれば私がこんな戦えるとは思っても見なかったという顔をしている旅人とパイモンがいる。
まぁうん、私弱そうに見えるからな。それはそれで油断して貰えるから構わないし。でも皆が皆その顔をするとちょっとは気にするんだよ?
「すまんな旅人、君がファデュイと関わりがあるか分からなくてね。とりあえず、私の敵じゃなくて良かったよ」
とりあえず、旅人は七星側。もしくは中立だったので良かった。
敵だったら合法的にエロいことしてたけど。その意味では君が敵じゃなくて残念だったわ。怪我は大してないみたいだけど、邪眼を相手にここまで戦えるあたり彼女はかなりだな。
「へぇ、結構やるね。その力に名前……どこかで聞いた事があるな」
ただ、かと言って放っておける敵じゃない。それに聞いた事があるって嫌な予感しかしない、そんなやばい事私はしてきたか? 何もしてないわけじゃないけど。
「バンパー……ああ、バンパー・グンヒルドか」
「人違いで……待って、グンヒルドって何?」
グンヒルドって何? 私、苗字ないんだけど。
「謙遜する事はないさ、モンドの守り手がここに居るのは違和感を覚えるけど、君ほど俺たちを邪魔して生きてるのは珍しいからね。わざわざやってきたわけだ」
「あの、そこを聞きたいんじゃないんですが」
グンヒルドって何だよ、それグンヒルド家の人間って思われるよな!? 何なら代理団長してるジンの伴侶とか思われるよな!? なんでそんな根も葉もない噂が出回ってるんだよ!?
「さて、そんな事より。君と戦えるなんて、今日の俺は運が良いらしい」
「運が悪いの間違いにしてやるけど」
「俺に勝てるとでも?」
そんな事で流せないが、これは後でジンに確認しよう。嘘であって欲しいけど、嘘じゃなかったらどうしよ。エウルアに苗字くれって言ってみるか? ローレンス家って嫌われてるし、それで上書きするか。
「サシなわけあるか。旅人、黒幕じゃないがボコボコにするぞ」
とりあえず、こいつをしばいてから考えよう。
☆
バンパーは、想像以上だった。蛍は今し方終わったタルタリヤとの戦いの後に出た感想は、終わらせた事への安堵よりもそれが先だった。
「死体見るまえに吹っ飛ばされるし、タルタリヤは意味分かんないぐらい強いし……何で私こんな事してるの? いやご褒美の為だけど」
何かぼやいているものの、2人がかりであのタルタリヤに対してほぼ無傷なのだ。幾度か庇われたが、その実力はとてもヒルチャールに追い回されている時の彼ではなかった。
ただそれに関しては基本的に彼がヒルチャールを殺さないからかもしれないが、理由は分からない。少なくとも、あの力を使えば苦戦など起きる事は無いだろう。
「あの姿を2人がかりとは言え、簡単にやらせたつもりはないんだけどな……」
でも間違いなく、タルタリヤは強かった。蛍の自力で倒す事は出来たとしても、苦戦はしていたはずだ。それが2人がかりだった事で余裕を持って勝てている、あの邪眼の力すら超えた力を持つタルタリヤにそれを出来たのは、あり得ない事だろう。
「簡単なわけあるか、二つも元素も使いやがって……旅人、なんかこいつに聞きたい事あるか? 無ければしょっ引くけど」
するとどこから持って来たのか、バンパーはロープを手にタルタリヤへ寄っていく。元素を吸い取る力があるのだ、ただでさえあの力を使って疲労やダメージのあるタルタリヤは逃げられないだろう。
「もう、切り札を使うしかないな」
あくまでも、自分の力のみの場合は。
「あ、禁忌滅却の札!」
「え、マジで言ってる?」
パイモンが反応したのタルタリヤの展開する札だ。しかしそれが何を起こすのか、それを何故か誰よりもわかっているように、足を止めたバンパーの声が震え始める。
「ちょっと待て、そこまで追い詰めてはないだろ。待て、魔神出す気? 本気で待て、いくら何でも私達殺すのにその手は早すぎるだろ!?」
その言葉に蛍も気付く。タルタリヤが何をするのか、それがどれだけの事なのか。
「さて、今の璃月に太古の悪意を退けられるのか。君達がどうするのか、楽しみにしてるよ」
この璃月では過去に岩神モラクスと渦の魔神オセルが戦いを繰り広げていた、それは蛍も知っているが、渦の魔神が封印されていることまでは知らない。
そしてそんなタルタリヤの最終手段がハッタリではない事を、全員がすぐに察する。
「なんでタルタリヤが魔神を!? というか魔神って7神以外滅んでるんじゃないの!?」
「知るか、でも呼び出したのは間違いないと思うぞ。この雰囲気からして……いややばい、十中八九私含めて全員死ぬだろ」
あの特異的な力を持つバンパーですら死を予感している、それほどの覇気が外から響いている。あの姿のタルタリヤを見ても冷静に戦っていた彼ですら、どこか諦めが見える。それだけの何かがいるのだろう。
「想像より最悪にならなきゃいいけど」
パイモンは一足先に外へ飛び出した。建物が揺れて壊れるとでも思ったのか、黄金屋は頑丈なので大丈夫であるが蛍も後を追おうとするが。
「そうだ旅人、ちょっと耳貸して」
呼び止められる。パイモンの背中は遠ざかっていくが、すぐに追いつける距離だろう。仕方ないので彼女は止まる、もしかしたらこの状況を打開する何かについてバンパーは思い出したのかもしれないからだ。
ただ焦りから彼女は無防備に顔を近づけるのを許す、耳打ちするのだから仕方ないとして許してしまっている。
「何、今忙し……んむっ!? んん────!!??」
ただ近づけられた顔は、彼女を正面から捕まえてしまう。完全な不意打ちであり、両頬に手を添えられて彼女は咄嗟に顔を引くことも出来ない。
何が起きたかわからなかったのだろう、目が見開かれて彼の瞳と目が合い、一瞬だけ視界を明滅させたが、しっかりと口先を啄むようなそれを感じてしまい、身動きが取れなくなっている。
「んむっ、んっ!? んん!!?? ぷはっ……な、何して……!?」
そしてようやく何をされているかハッキリと認識し、無理矢理彼を引き剥がす。口の中まで舐められてはいないが、しっかりと表面は舐め取られてしまい、羞恥に顔を赤く染めながら口元を片手で押さえる。
まだ感触が残っているのだろう、それを考えないようにしている。
ただ、そんな彼女の反応と異なり、バンパーは即座に背を向けて外に駆け出す。急な展開と急な切り替えに戸惑いが止まらない蛍であるが、それを察してか彼は顔だけ向けて口元に指を指す。
「死ぬかもしれないし、前払いで貰っとくよ」
今は非常事態、それはバンパーも分かっている。蛍としてもそんな状況なのは分かっているし、だからこそあんな事をされたのは意味がわからなかったのだが。
「っ、初めてなんだけど!?」
それぐらいしか、言い返せなかった。仕方ないので彼女も彼を追いかけていく。
「そりゃ良かった、死ぬ前に初めて捨てれてよかったな」
余計なお世話をして来たクソ男、それがバンパーだった。ただ蛍はこの時に気づかなかった、彼がいくらこの状況でもこんな事をして来るような冒険者ではないと。
本当に死を感じていたからこその、行動であったと。
☆
事件は、終わった。渦の魔神オセルは撃退されたのだ。
タルタリヤを倒した後の事を、蛍は3日ほど経った今でもさっきの事のように思い出せる。
圧倒的な魔神の力を、仙人達も七星も打つ手が無くなり希望が消えた時を、今の力の戻っていない蛍ではどうしようもないと自覚させられた戦いを。
そしてそんな戦いで、群玉閣に残った彼が群玉閣を巻き込んで自爆したのを。天を貫き海を轟かせたそれは人間が行使するには逸脱した力だった。
結果的に、璃月は救われた。運良く彼も生き延びた、仙人に助けられたらしい。旅人も今回の功労者としてパイモンと共に凝光の邸宅に招かれているが、主目的は初めてを無理矢理奪うような事をしでかした彼に文句が言いたかったのである。
「……生きて、るんですか?」
だが、言えるような状態じゃなかった。
「手足の骨折、筋組織の損傷は激しいものの……彼本来の生命力のお陰か、はたまた何かしら別の特性なのか……息はありますし、傷は塞がり始めてますので、恐らく完治はします」
主治医は言うが、素人目にも彼の様子が異常なのは分かった。元素を多量に、それも人の域を超えて使っていたのは明らかだったのだが、副作用が大きく出ている。
手足は包帯で巻かれて肌は見えないが赤い斑点が多々あり、顔色も悪い。息をしているのは上下する胸の膨らみで分かるが、息をする度に苦しそうに顔を歪めている。
「最初は傷一つなかったのですが、徐々に肌に裂傷が現れ……骨も何故か折れていました。何かしらの相当な負担が体に影響しているのでしょう、ですが何をしたらこうなるのか私としても見当がつきません」
主治医は彼が魔神と戦った事を知らない、旅人である蛍が倒した事になっているからだ。だがタルタリヤとの戦いにて万能で無敵にも思えたそれも、あの時は頼りに出来たのだが、普段から彼が能力を多用しない理由が分かった。彼の能力の限界を見てしまえば、今後無茶な頼りは出来ない。
「私の不得だわ。彼に、こんな事を強いてしまった」
主治医が去り、凝光が言う。彼女はそんな負担を知らず、彼に全てを賭けた。七星として間違った事はしていないし、何かあった時の責任を取る覚悟もあった。
付き合いの長さで言えばあの戦いにいた誰よりも長い、しかし駒として扱っていた。友人ではなく知り合い、調査についてもそんな形だったのを本人も自覚していたのは知っている。なのにあの戦いで身を削っていた。
自身の浅ましさに、彼女が肩を落とすのも仕方ないのかもしれない。
「旅人、いくつか取ってきて欲しい薬草があるの。お願い出来るかしら」
だからだろう、凝光は誰に任せるでもなく額に置かれたタオルを洗い絞りながら言う。これは自分がやらなければならない事だと、考えているかのように。
「うん、私も何かしたいから」
蛍もまた、当てられてしまったのか。痛々しい彼の体を一瞥し、外に出た。勝手に治るとしても、何もしないなんて出来なかった。
☆
彼が目覚めたのは、それから更に後だった。一応目覚めたのは翌日であったのだが、そこから歩き回れる程に回復したのはここ数日である。
箸すら持てず、凝光にお粥を口へ運んでもらっていた。暇な時間など事件の後処理でない彼女であるが、昼食のその時間だけは必ず戻って彼を世話していた。
そしてそんな彼と、蛍は2週間ぶりに話す。
「おー、旅人。怪我とかは無いみたいだな」
夜中の凝光の邸宅、そのベランダに蛍はまだ居た。それは暫く自由にしてて良いと許可を貰っていたのもあるが、兄に関する手掛かりを調査して貰っていたからでもある。
残念ながら良い情報はなかったが、最後にバンパーが邸宅を歩き回れる程回復したのを見れたので良かっただろう。ここで死なれてはモンド皆に会わせる顔もなくなってしまう。
「怪我人に言われたくないわよ、さっさと寝ときなさい」
ただ蛍は少し寝付けず夜風に当たろうと考えると、外に出て芝生の上に座って空を見ていたのだが、何故かそこに彼もいる。彼女の場合は兄に対する情報が無かった事が期待してしまっただけに、叶わなかった落差で気持ちの整理が出来ていなかったようなので、整理の為にも外に出ていたのだが。彼がどうなのかはわからない。
「いやー、目が冴えちゃって。後隣の部屋が凝光さんの部屋だし、出来れば少し時間潰したいんだよね」
何故ここで凝光の名前が出てくるのか、それは分からないがとりあえず彼も夜風に当たるようなので気にしなくて良いのだろう。久しぶりの会話になるが、思っていたよりも元気そうである。
「パイモンは?」
「寝てる、元気だよ」
「あの戦い経験して元気なのは凄いもんだよ、私もう怖くて仕方ないし」
確かにあの時は璃月の兵士、千岩軍ですら気絶していたものが多くいた。その中で皆よくやっていただろう、ただその中で一番やっていたのはやはり彼だ。
「いつも、無茶するの?」
「ここまでの無茶なんか基本しないぞ、正直今迄で一番死を感じたからな」
死を感じた、バンパーがそう言うという事はやはりそれだけの相手だったのだろう。世界を知る為に七国を回る、そして兄の手掛かりを探す。それが今の旅人である蛍の考えであるが、このような困難はこの先も現れてくるのかもしれない。
ただ、そんな中で蛍はその意思が揺らいでる。そんな事を呟いてしまう。
「無茶だったのは、そうだよね……私が変に動かなかったら、こんな事にはならなかったのかな」
旅人は、この世界の存在かと言われたら違う。神の目を持たずして元素の力を使うのは明らかに、この世界の住人の特権ではない。
「渦の魔神が呼び出されたのも、凝光が群玉閣を失ったのも、バンパーや皆がボロボロになって……璃月に平和なんかないって思わせたのは、私のせいなのかな。だったら……」
自分が動いたから、こうなった。人を巻き込んだ、多くの災いを呼び寄せた。
確かに意図したものでも、悪意があったわけでも、自分が引き起こしたわけでもない。ただそれでも、その選択をさせたのは自分であり、その責任を今回取ったのは蛍ではない。
そのやり方をして、このような事件に首を突っ込み続ける。そうしていれば今回のような事はまた起こる、その責任を毎回取れるわけでもない。
今の彼女は、その責任を背負わせた相手にその言葉が漏れてしまう程の、責任を感じているのだ。テイワット大陸を自身という異物が混乱させてしまうと、そんな事が許されない事だと考えている。
ただ、兄を探す気持ちも諦められない。だから、口から漏れたのであるが。
「え? それ、もしかして遠回しに私の事ディスってる? 10年間冒険者して色んなところで厄介ごとに巻き込まれて来た私の事言ってる?」
それを聞いた彼の最初の反応は、彼女の求めているそれとはどこか違った。
叱責されたいわけではないが、自分の選択を後押しする何かを責任を負った彼から欲しかったのだ。ただそんな言葉を求めている事は、彼も分かっているだろう。
明らかに肩を落としている彼女に、何でもないことのように彼は話し出す。
「私なんか何回トラブル起こし……いやほぼ起こしてないけど、巻き込まれて来たか分からんぞ。その癖して私が居るから事件が起きるとか言う奴も居るし。ただ大抵は、私が関わらなくても事件は起きてるよ。人も死んでる」
10年あれば、出会いと別れは多くある。モンドと璃月の山や森を拠点にしている彼であるが、それでも多くの人に触れる機会があり、それだけ色々なトラブルとも関わって来ている。
人を殺したのは人を殺そうとしていたから、手加減なんて出来ない10歳の頃だった。最初こそ夢にも見たが、彼が手を出さなければ死んでいたのは襲われた人の方だった。
ただそんな運命の歯車を少し弄るだけ、流れを堰き止めるのではなく別の流れに移すだけ。そんな事しか出来ない、世界の命運なんてどうこうできないし、どうこうする気もない。
そもそもきっかけが出来ただけで、今回の事件でもタルタリヤは渦の魔神を呼び出していただろう。岩神が本当に死んでいるのかの確認も兼ねて、後処理なんてせずに、そうなれば本当に全員あの世行きだ。
「経験則だけど、結果に満足なんて早々しない。自分で考えても、自分より頭良い奴に任しても、満足する答えなんて後付けでも作れない。だからまぁ……」
だからだろう、蛍の欲しい言葉とは、後押しする言葉とは何なのか。自分の考えを押し付けるものでも、真っ当な考えからくる正論でもない。彼女が求めていたのは、そうではない。
「旅人の────蛍ちゃんの、やりたいようにやれば良いんじゃない?」
「私の、やりたいように?」
「責任なんか自分の行動に乗るものだけど、自分のやりたい事も出来ないで押さえ込む人生、満足出来ないで死ぬだけだし。ヤらずに後悔したくないでしょ?」
自分を、世界の歯車として認めるような一言。満足のいく結果なんてそもそも自分の行動で手に入るとは限らないのだから、自分の思うがままにひた走るのも悪くないと言っているのだ。
選択するのは蛍でありその選択の全てを考えた上でも、自分のやりたいようにする。そうしなければそもそも、満足する結果など存在出来なくなるのだから。
ただ、思っていたよりも真剣に、尚且つしっかりと蛍を考えた言葉に彼女は顔を背けながら言う。
「意外だけど、いつもこんな風に女の子を口説いてるの?」
「いや、いつも口説いてもあしらわれるし。え、いまの口説いてることになるの? もしかしてドキッとした?」
「してない、するわけない。馬鹿じゃないの、寝直しなさい」
蛍は少し嘘を言いながらも否定する。ドキッとはしたがそればバンパーが言わないと感じた求めていた言葉が出て来たからだ、彼が異性だからではない。
でも、今この瞬間の不安は解消されているので、蛍は背けてる間に落ち着いてくれた顔を向けながら、悪戯をした後の子供のような顔をしながら笑う。
「でも……うん、私これからも旅を続ける。バンにも迷惑かけちゃうかもしれないけどね」
そんな言葉をかけて自分の考えを動かしたのだ、彼の選択に責任が乗るという話ならば、これから先にどれだけ迷惑をかけても構わないだろう。そう言う想いも込めた笑みである、どこか清々しいのはそのせいだろう。
「あれ、もう迷惑かけてるの忘れてる?」
「そうだっけ?」
この質問程度、迷惑でもないだろう。そんな笑みを浮かべるが、彼の顔はどこか困り顔に見えてくる。意識はしていなかったが幼さがある顔立ちなので可愛らしさがある顔なのだなと、自分はちょろい女では無いがこういう事を何度かされてしまえば靡いてしまう気持ちがわかってしまう。
そんな所に、ジンや騎士団の者たちは惹かれてモンドで慕う者も少ないないんだと。
「旅人、覚えてないの?」
ただ、どこか様子がおかしい。
「……え? 何を?」
どうやら質問の事ではない事で迷惑をかけていたようだが、記憶にない。そもそもバンパーと知り合って日も浅いのに、迷惑のかけようもないのだが、その答えは彼の口から出る。
「お代、情報料の」
情報、そう言われて当て嵌まるのは事件の彼なりの推察についてだ。しかしお代と言われると思い出されるのはそれを聞いた後、あっさりと奪われたものがある。
「っ! そうよ、貴方私に勝手して……!」
あの時、蛍は初めてを奪われた。本当に大切な初めてではないが、十分に乙女の心を鑑みない事をされた、それを思い出しそもそもここに居たのはそれを詰問する為であったのも思い出す。
そう思い、彼女は立ち上がろうとするが。
「いや、今から貰うから」
それより早く後ろから肩を掴まれ、立ち上がれない。その肩に置かれた両手は彼女の肌を滑るように彼女の手を恋人繋ぎのように絡ませて抑えられてしまう。
その行動の速さ、明らかな声音の変わりよう、背中にから感じる彼の鼓動、そのどれもが冗談ではない事を教えている。
「へ? いや、あの時」
「前払いしてもらっただけ、流石に死ぬと思ったし。ちょうど良いから徴収するよ」
耳の真横からくすぐったい声が響いてくる。激しい身動きは取れない、もうここに至るまでの準備が整ってしまっているし、驚いて拒んでいない彼女もある意味失敗しただろう。
「ちょ、ちょっと待っ……んんっ──!!??」
容赦無く、彼女の口に異物が侵入していた。
☆
凝光さんと良い夜を過ごしたが、私はまだ悶々としていた。もっとキスして虐めて楽しみたかったのだが1時間という短い時間では完全に満足する事は出来なかった。もう3倍ぐらいはないと私は満足出来ない、仕方ないので夜風に当たって頭を冷やしつつ、凝光さんの頭が冷える事を祈っていたのだが。
「や、もう、くちにしちゃ……んむっ!?」
ちょうど良い所に旅人、蛍ちゃんが居た。彼女には情報料として徴収する予定だったので良かった、彼女の悩みとかもしっかり解消してから楽しませて貰っている。
もう30分くらいは経ってるかな♪ ずっと可愛い蛍ちゃんを楽しめてるね♪
「はむっ、ん、ん、ぷはっ!? はぁ、はぁ、んむっ!? んんん──────!!??」
最初の頃は抵抗も強かった、と言うか驚きが大きかったみたいで胸を逸らしたり顔を逸らしたりしてたけど、まあ……経験が違うので逃がさないでいたら耐える方に頑張っている。
恋人繋ぎみたいに手を絡ませてるけど、最初こそ力強く握られる時が多かったのに今じゃ握られるがまま、偶に気持ち良さがピークに立つ時に握られるけど、やっぱり女の子の手も体も柔らかいね、凝光さんとも違った感じなのも食べ比べしてる感じがして良い。
ちなみに今は抵抗されて口が何度か離されてるけど、その度に口を引っ付けて舌を楽しんでる。舌を絡ませた事無い子は慣れるまでされるがままにされちゃう事が多いけど、彼女も例に漏れず舌の裏を一方的に舐めたり絡ませたりして楽しませて貰ってる。
口を離す度に銀の糸が引いてるけど、何度でも繋いであげるからね♪
「ん、ん、ぷはっ! んむっ!? ん、ん、ん、ん!? んぁ、ひゃめ……んん!!!!」
ただ、そろそろ彼女も限界らしい。初めてでここまで激しくされて大丈夫そうに見えてたけど、目がずっと明滅したりグルグルしたりしている。
もうちょっとしたら新しい扉を開けそうではある、純粋無垢な子を自分の色に染めるのって興奮が凄いよね。この世界身持ちが固い子が多いけど、それをこじ開けるの楽しい。
「はぁ、はぁ、んぁっ……んぷっ!? ひた、すって……!?」
最後の仕上げとして、私はだらし無く少しだけ飛び出た舌に吸い付いた。私の舌を口から押し出そうと頑張っていたが、毎回絡め取って力の差を見せてあげたのに、最後まで足掻いていたみたいなのでトドメを刺しておく。
「ん、ん、ん、んっ!! んん!? んーん!! んんんんん──────!!??」
舌を優しく吸い、啄み、包んであげる。そしてチュポンッて音が聞こえそうな形ではあるが、舌を吸い上げて離してあげた。舌を出しながら何が起こってたか分からない……いや、起こっていた事を脳で処理しきれなかった蛍ちゃんが凄い顔をして私の胸に頭を預けている。
「んぁっ……あ、はぁ……」
完全勝利です、口直しというよりはおかわりみたいな感じで食べたけど、美味しかった。なのでしっかりと感想を言ってあげる、忘れられない記憶にしないとね!
「好きでも無い男のキスだけでここを濡らすなんて、蛍ちゃんもえっちなんだね♪」
「ひゃっ!? あ、ううう……」
そう耳元で囁いてあげると、顔が更に赤くなる。まぁ服の上から彼女の大事な所の筋をなぞってあげてるからね。気持ちよくなってたなら何よりである、でもここから先をしちゃうと子供できちゃうから辞めておく。
責任はまだ取りたく無いからね!
なお蛍ちゃんの責任を取ることになるなんて、この時の私は知らなかったのである。
次回の予告(やるか未定)
空、申鶴に逆レされる!
香菱、一番ゲスく抱かれる。
ノエル、何故か抱かれる。
蛍、他の襲われてる子を見ちゃう。
の四本です。
次回は稲妻編!まだ処女だよ!