私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
蛍回という名目の神里綾華回
稲妻編
ちなみに霧切は引けませんでした。
稲妻という国がある。とある冒険者が拠点にする璃月やモンドと異なり、神が頂点として機能しながら統治される国がある。その絶対的な存在、この国を文字通り『永遠』に繋いでいくのが、雷電将軍である。
そして、そんな存在は敵対する者からすれば絶望でしかないだろう。
「綾華様、このような男を匿うのは……」
付き人の1人が言う。ここは稲妻にある神里家の屋敷、そこには当主の代わりとして妹君の神里綾華が、兄の不在を埋めていた。異邦の民である旅人を導き、トーマに案内させて今に至る。
今のこの国は鎖国状態であり外国の者に厳しい、ただ神の目を接収する『目狩令』を撤回させるのに、旅人という璃月やモンドの英雄が渡って来たのなら反対の立場を取る神里家に歓迎される。
ただ、今目の前にいる男はとある大事件を起こしてからやって来ている。
「私を匿ってもデメリットが勝るのは確かだな。治療は感謝するけど、雷電将軍に勝てない駒は要らないだろ」
バンパー、そう名乗る冒険者は稲妻人に見えるが旅人と同じく海を渡って来た者だ。
何故ここに居るのかと言われると10日程前、突然屋敷の前に全身傷だらけの彼が居たからだ。身元は分からないが野盗にでも襲われたと考えた神里家は保護、治療をしていたのが始まりだ。
ただ、それが稲妻城を半壊させるような事件を起こした張本人であるとは誰も見抜けなかった。
「世話になった。私の出来る旅人の話はもう無いし、健闘を祈るよ」
そう言ってバンパーは皆が集まる前で席を立つ。それに対する周りの反応は『戸惑い』や『落胆』が多数を占め、中には『呆れ』すら混じっている。
ただ、まだそれ以外の目を向ける者もいる。
「お、お待ち下さい!」
綾華は呼び止める。背を向けて出口に向かう彼に、彼女は声を張り上げる。ここで呼び止められなければ、また一歩遠のくのだ。成し遂げねばならない責務が、民への圧政が解かれないのだ。
「貴方だけなのです、雷電将軍と立ち会って生き延びているのは!」
彼は、雷電将軍と戦った。だからボロボロになっていたのである。その戦いは雷電将軍という絶対を揺らがせる程のものであり、それだけの戦いをして生還した者は彼だけだろう。
その事件の報を聞いた時は神里家も雷電将軍と立ち会った存在とは認識して居なかったが、聞いた情報と噂に聞く情報、そして彼の名前を照らし合わせて結論に至ったのである。
ただ、彼はそう思っていない。
「それで言うなら旅人も生き残ってる。私に固執する理由無いと思いますけど」
「稲妻人なのは、貴方だけです!」
しかし、綾華は旅人を知っている。短い時間であったがそれでも友人になれるような関係であり、その上で彼女は理解しているのだ。蛍という少女1人で、立ち向かうには強大すぎる事を。
「私は外見こそ稲妻人だけど、育ちはモンドです。仮にここで生まれたとしても、貴方はトーマをモンド人でしか無いと言いますか?」
彼は稲妻の問題へ積極的に関わるつもりがない。正確には、関わっても良い事がないと思っている。雷電将軍と戦ったのも目の前で蛍が殺されそうだったからであり、介入は不本意であった。
その事は何度も話しているものの、バンパーとしては延々に引き下がり続ける彼らに多少は語気も強まるだろう。
「いえ、貴方の見た目が稲妻人であった事が重要なのです」
だが、綾華以外にも食い下がるものがいる。ここで引き止めることの意味を理解している者がいる。
「トーマから聞いています。あの時、異邦の民が敗れ現れた貴方は臆せず雷電将軍の『夢想の一太刀』を押さえ込んだ。今の稲妻を甦らせるには、貴方が必要なのです」
夢想の一太刀、それは死を意味する。雷電将軍に振るわれる一太刀の事だ。
彼女に直接挑んだ者は全て、これの前に破れている。これを受けて生きているなんて事例は無く、そもそも受け止めて弾くなど他に出来る者も居ないだろう。それを認識している筈の稲妻人が反旗を翻したと見られれば、稲妻という国で雷電将軍という存在が揺らぐ。
しかし、バンパーもその事実を知らないわけじゃない。
「あれは明らかに周りを巻き込まないよう抑えられた一撃でしょ。私じゃなくても防げるし……雷電将軍は、最後まで無傷でしたよ」
それをしたとしても、勝てない存在であると理解しているから断っている。雷電将軍と正面から戦って勝てるなら、まだ彼も力を貸していたかもしれない。
だが雷電将軍の戦闘能力は高過ぎる。生還はしたものの、それは彼特有の力による恩恵があるからであり、戦いそのものは即座に切り捨てて時間稼ぎに徹し、切り札すら使って逃げたのだ。
次は、助からない。
「まともに立ち会って生還出来た者など居ない! 貴方はその事実に理解が浅過ぎる!!」
「あれ目の前にしたら、殆どの人は反抗する気も失せるだろ……私は失せたよ」
いや、誰よりも理解しているだろう。むしろ理解させられてしまい、勝機を見出すというのが不可能に近い。
元素力の能力差や本来の性能差、武術に秀でているが為に隙がない。バンパーはこの全てで劣る、元素力は無理矢理同格に至れる可能性はあるが、やれる事ではない。
「話にならない。私は帰る、雷電将軍が折れるか反乱軍が諦めるかまで……もうここには来ない」
「薄情者がぁ! 我々の、それも綾華様の前でなんたる無礼を!!」
「私が今回、介入したのは知り合いが襲われてたから。それ以外に理由は無い、旅人なら君らに手を貸すと思うけど……私が貸す理由なんて、あると思う?」
徹頭徹尾で命を賭けるには見返りが無く、命をかけられるだけの何かもない。彼が参戦しない理由などそれだけだ、勝てない戦いに勝っても何も無いのだからやる意味もない。
怒りを向けられようとも、その意思は揺らがない。仮に揺らぐとするなら相応の見返りがある時だけである。
「モンドも璃月も救った旅人だ、運が良ければ稲妻も救ってくれるよ。私みたいな部外者は要らない」
そう言って、彼は去る。今度こそここに居る理由は無いと、足早に出口に向かう。治療の例は旅人の話や戦った雷電将軍の力について話した事で相殺して余りあるのだ、だが綾華の付き人は声を張り上げる。
「他の誰でもない貴方が必要なのです! 渦の魔神を倒した冒険者、バンパー・グンヒルドが!」
「ちょっと待って」
足が止まった。ただ、その止まり方は心を動かされていったものでは無いらしい。そしてその発言をした者まで出口に向かっていた時よりも早く詰め寄り、戻ってくる。
「ねえ、何でそんな浸透してるの? 私口外すんなって千岩軍にも凝光さんにも旅人にも言ったよな? 旅人は後でお仕置きするとして、グンヒルドは本当に違う。何で当たり前のように付いてんの?」
「やはり、渦の魔神を……!!」
「まさか、いや本当なのか!?」
「……あれ、鎌かけられた?」
途端に彼を非難していた者まで手のひらを返して囲ってくる。急に旗色が変わった事に彼は戸惑うが、現代で魔神を倒した存在が俗世の七執政以外に存在する事など信じられていなかったからだろう。
本人からこのような自供でも無ければ、穏便に帰れていたのかもしれないが、もうそんな事は出来ないだろう。
「お願い致します、この稲妻をどうか……目狩令の撤廃に、お力添えを」
「いやぁー……流石に……」
しかし、かと言って流されて良い話ではない。バンパーはどう言い訳をして逃れるかと真剣に考える、それだけ厳しい戦いなのだ。
神里綾華の目が本気なのも、こんな無謀を強いる事を少なからず思っているのも分かる、でも頼み込むのだから覚悟も伝わる。
だが、それではどうしようもない一線があるのだ。なのでバンパーは首を縦に振る事はない。
「私に出来る事なら、どんな事だって努力します!」
その一言が、出てくるまでは。その意思に彼は目を見開き綾華を見る、その言葉に嘘偽りのない本気を感じたからだろう。その決意に、間違いなく心が揺らされている。
「……絶望的な状況だ。ファデュイが巣食い、雷電将軍は意思を変えず、推定でもいくつかの上層部が腐っている。それで雷電将軍と戦える最低限の力を持つ奴も居るのかすら怪しい。こんなの、普通は乗らない話だ」
ため息を吐きながら肩を落とす。本当にこの選択で良いのかという葛藤を見せている。
そしてもう一度、神里綾華の目を見た。
「────ただ旅人も居るし、勝算も0ではないか」
綾華はその顔と、差し出された手を見て少し固まる。アレほどまでに頑なだった彼を説得出来たからでもあるが、同時に死地に追いやる選択とも言えるからだ。
だが、もう答えは決まっている。
「私の手を取る覚悟が、君にはあるのか? 民のために身を犠牲にして、何が起きても受け入れる覚悟が、本当にあるんだね?」
「勿論です!」
勢いよく、彼女はその手を取った。
なおその手を取った事に感謝した後に、一生の忘れられない恥ずかしい思いをする事になるのだが。それはまだ先の話である。
☆
私、バンパーは稲妻に来ていた。いやまぁ璃月であんな化け物と戦ったし、今まで以上にファデュイやアビスに目をつけられるのは分かっていたので、活動範囲外のここに来ていたのだ。
そしてまぁ旅人とパイモンを島で過ごしている時に見かけてしまい、うっかり隠れて追いかけると雷電将軍に旅人がズタボロにされていた。しかも殺される寸前、仕方なかったので全元素使って介入し……まぁズタボロにされた。
私は基本的に貧乏くじを分かってても引いてしまうのを知っている。その後に神里家に匿われ、一応は手を貸す約束をしたので今は────珊瑚宮に来ている。
そして、目の前……というか膝の上には蛍ちゃんがいるんだけど。
「んんっ、ん……んあ……んちゅ、れろ、んむ、はぁ、はぁ……」
今は小腹が空いたので蛍ちゃんの事を楽しんでる最中だ。私に色々と迷惑かけたんだ、彼女も納得してくれてるし合法だよね♪
ちなみに旅人に濃厚なキスをするの初めてではない、もう軽く10回は超えてるだろう。会った日全部どっかのタイミングでしてるな、1番長くしたのは最初にじっくり味わった時だと思うけど。
最初の頃は初々しかった。凝光さんの家で完全勝利をした次の日にグーで殴られそうになったが受け止めた後にそのまま15分程楽しませてもらった時も可愛かったし。真昼間から人通りの多い道の裏でしたのは良かった。
それから小腹が空いた時に色々と理由を付けて楽しませてもらってる。彼女は誰かに言いふらすタイプじゃないからね、キスしかしてないけど反応の推移としては。
「変態! 最低! ぶっ殺してやる!!」
↓
「変態!! もう好き勝手させないんだから!!」
↓
「負けてない! 私はずっと正気だったから!!」
↓
「ダメ! もう、おかしくなっちゃ……!!」
↓
「気持ち良くなんか無い!」
↓
「……また、するの?」
↓
「これは、仕方ないんだから……」
↓
「気持ちよくなんかないもん、さっさと済ませて」
↓
「(何も言わずに木陰で目を瞑る)」
時間はかかったが、彼女はキスをされるのは仕方ないって諦めさせる事に成功した。本当に最初の頃はパイモンが居ないところや見てない一瞬で奪っておいたけど、私にキスされるってわかり始めてからは人気の無い場所を彼女から選んできて可愛かった。
「蛍ちゃん、随分と慣れて来たね」
随分とだらしなく舌を絡めたが、彼女はもう昔みたいにキスだけで足腰が立たなくなるほどにはならなくなった。後単純に気持ち良い事に慣れたのだろう、向こうからしっかり舌を絡めてくる。
「そっちが無理矢理、何回もするからでしょ」
「その割には、良い顔してるけど?」
「してないわよ、ヘンタイ」
あ、今は雷電将軍から助けた見返りって名目でしてる。ついでに璃月の事件で私の名前が漏れ出てたからそれのお仕置きも兼ねてる。でもかれこれ30分は唾液を交換してるけど、もうこれお仕置きじゃないんだよな。
「ん、ん、ん……♡」
だって蛍ちゃん、喜んでるし。理由を付けて仕方ないって事にして気持ち良い事を受け入れてる。キスだけでも私以外じゃ満足出来ない体になってるの気付いてるのかな?
でも心はまだ折れてないのは知ってる、キスまでは許してるけど体は全く許してない。ただ今は時期じゃないのでそれでいい、まだ熟成してないし。
今後じっくり溶かす予定だけど。
「おーい、旅人ー! バンパーも、早く飯にしようぜー!」
遠くからパイモンの声が聞こえて来る、ボーッとした顔してる旅人はその声を聞いて自分からしようとしていた口付けをやめると、名残惜しそうに私の膝から退く。
私は一足先に食べてたけど、もうそんな時間らしい。
「おー、今行くよ」
なのでパイモンに声だけかけて周りを軽く見る。私は視線とかも保護膜で感じられるから分かるから、基本的には私達の関係はバレてない。まぁバレても良いんだけど。
でもまだ蛍ちゃんがキスを許してない頃に、恥じらった反応が見たくて罰としたキスさせた時があったのだが……ちょうどジンが見てたのを思い出す。最初は誰か分かんなかったけど、私は見かけ上は襲われてるだけなのでセーフだったし、気にしなかった。
まぁ蛍ちゃんがそれに気づいた瞬間に攻守交代して貪り尽くしたけど。
ジン元気にしてるかな、聞きたい事あって家に行ったけど、何故かあの時期に体調崩してたらしいし。今度お見舞いに行こうかな。
ただとりあえず、まだキスの余韻で目の奥に何かが浮かんでいる蛍ちゃんの耳元で囁いてあげる。
「欲しかったら、いつでもしてあげるからね」
「っ、しないわよ!」
よし、まだ心は折れてない。こうやって煽ってからぐちゃぐちゃにするのが楽しいのである。クソムーブしてるかもしれないけど、私みたいな男に堕とされる方が悪いので大丈夫だろう。
……それはそれとして、雷電将軍どうやって攻略しようかな。それに頭を暫く悩ませそうである。
☆
旅人、蛍はとある人物に肩を貸す。身長差は向こうが少し大きい程度でそこまで差がないので貸した肩も悪くなる事はないだろう。
そう心配するにも理由はある、蛍に支えられているバンパーという冒険者は傷だらけなのだから。
「バン……大丈夫?」
「大丈夫なわけあるか……! 執行官相手した後に雷神相手したんだぞ!? 死ぬかと思ったわ!!」
稲妻で起きた内戦は、終結した。そこに至るまでの道のりは長かったが、結果として終わりを迎えた。
バンパーが蛍の居た反乱軍に海神島で合流したり、その後に一頻り楽しまれた後に鳴神島に行き暗躍してるファデュイや他の御三家について知り、蛍は邪眼工事に突撃して彼や八重神子に助けられたり、最後の戦いでは旅人の代わりに執行官の1人『淑女』を単身で撃破し、そのまま雷電将軍と戦った。
雷電将軍との戦いについては彼は負けてしまったものの蛍は勝ち、無事に彼女の本体である雷電影の説得に成功した。
「無茶し過ぎよ、無理矢理でも雷電将軍とも戦い始めてたのに」
「仕方ないだろ。あれは私が勝ったんだから私に生殺与奪の権利がある、それにファデュイだろうと死ぬのを見るのが好きなわけじゃないんだよ」
ただバンパーが雷電将軍と戦う予定はなかった。執行官であるシニョーラを庇い戦ったのだ、勝てないと分かっていての連戦である。それで殺されかけたが万葉が止めに入り、命は助かっている。
シニョーラについては現在幕府が捕縛しているが、炎を使った影響かかなり状態は悪いらしい。それについての治療は後々バンパーが行う予定だが、ウェンティの神の心の行方など何かしら聞き出せるかもしれないだろう。
「だからバンって馬鹿なのね」
「馬鹿で良いよ、少しぐらい馬鹿な方がモテるらしいし」
「開き直り方がキモい」
「キモ……え? そんな酷いこと言う?」
しかし、上手くいっても死んでいたかもしれない。死が訪れようとした瞬間の蛍の胸中は暗く瞬かされていた程で、いつも無理をするこの男は気にしていても仕方ないのかもしれない。
ただ、それはそれとして蛍は意外な事に彼には死んでほしくない程度の気持ちはあったのに驚いていた。気付けば色々と手助けしてくれたし、彼が居なければもしかした蛍も何処かで大きく躓いて解決まで時間が伸びていたかもしれない。
だからこそ、今は心に余裕が出来ているからだろう。そのせいか、彼と触れている部分を熱く感じる。肩を貸しているだけなのに、それ以外の事を考えないといけないのかもしれない。
蛍は少し俯きながら、稲妻に来てからの事を思い出す。色々と助けられたし、何故か彼と会ったのにされなかっただけで口元が寂しくなる異様な感覚に悩まされたものの、無事に解決した。
彼も生きて帰ってきた、無茶苦茶な人生を歩んでる事も分かってきた。ただ、そんな生き方をする彼に──。
「でも、その……ちょ、ちょっとだけ……」
夕陽に照らされてるせいなのか、彼女の顔は赤く見える。無理矢理してくるような変態に、こんな事を言うのが恥ずかしいのかもしれない。
ただ言い出せないでいると、彼から声がかかる。
「ここまでで良い、私は島に残るから」
稲妻の下町は超えた、もうこのまま珊瑚宮まで向かっても良いと考えたがそうではないらしい。それに蛍は野宿をして当たり前のように一晩溜まった分をされてしまうと考えてもいたので、この答えは意外だった。
「暫く神里家で療養するけど、旅人は珊瑚宮さんに会ってこいよ。事後報告を心待ちにしてると思うしな」
「……今日は、私も綾華の所に行くから」
「もう怪我は大体治したんだし……いや、行為に甘えるよ」
ボロボロと言っても立てなくなるほどでもなければ、前回のような状態にもなっていない。それに先約をどうやら取っているみたいなので、どうせならそのまま肩を貸した方が良いだろう。
「それで、その……」
そして、そのまま歩き進んで行き人気は無くなってくる。ずっと歩いてるが互いに疲労も傷も大なり小なりあるので一度木陰に背を預ける。
そして、そう言う時間にもなるのだろうと思い彼女は体から力を抜く。
「ん? どうした?」
「今回は、色々……その、迷惑もかけたよね?」
「そうか? そんなにでも無いと思うけど」
言葉は要らないという事か、彼女はそっと目を閉じる。
「(大丈夫……別に、ちょっと耐えるだけ。久しぶりだけど、激しくされたら、その……頑張ってたし……我慢してあげても……)」
胸の鼓動は速くなる。その時が来てしまうと思い体が勝手に準備しているのだろう。いつから自分の体はこうなってしまったのか、彼に勝手にされてから、不自然なことに嫌悪感が無かった。ただされている事がアレ過ぎたので無理矢理意識的に嫌悪していたが、今は違う。
むしろ最近は彼が居なくても偶に口元が変な気分になるのだが、今もその感じ方に近い。焦らしているのか、さっさとしてくれと思いながら薄く片目を開くと。
「……あれ? 今、人居ないよ?」
「居ないけど、それが?」
当たり前のように、彼はそのまま木陰に身を預けて休んでいた。かなり体力も回復しているのか、欠伸すらして余裕が見える。そしてこれを聞くのは不本意ではあるものの、蛍は聞く。
「し、しないの?」
「え? されたいの?」
「そ、そんな事ないから! 嫌な事はさっさと済ませたいだけ!!」
どうやら今日はされないらしい。いやされない事が普通なのだ、彼に毒されてされてしまうのがおかしい。その事はまだ気付けている。さきに珊瑚宮へ態々パイモンを送っていたが、杞憂だったらしい。
ただ何故か、彼女の心の中に落胆している部分がある事に気付けなかった。
☆
蛍もバンパーと共に、一晩を神里家の屋敷で過ごしていた。海神島で珊瑚宮心海にその後を話に行くつもりであったし、彼の傷もそこまで深く無いものになっていたので道中で休んでいけば問題なかっただろう。
パイモンも先に向かわせて居たので、久しぶりの事を激し目にされてしまう事も、蛍は見越していた。
ただ、稲妻に来てから明らかに彼らの関係が変わってきている。夜に目が覚めてしまった蛍は、寝付けない頭でそんな事を考え始めている。
「(最近、無理矢理されなくなった)」
以前までは、会った時は全部された。あの日以来、不定期に何処かで会っていたが、その度に蛍は舌を絡めさせられた。
最初の頃こそ何が起きているのか分からなかったものの、2回3回と回数を重ねる毎にその情報は鮮明に刻みつけられる。
そして、いつの間にかされる事が普通になってしまったのだ。蛍もどうしてそうなったかは分からないし、誰かに言えば直ぐに辞めさせるなり牢屋にぶち込むなり、色々と出来ただろう。
ただそう出来なかったのは璃月の事件にて彼に迷惑をかけた上で、傷だらけの姿を見てしまったからなのだろう。それに何度もされてしまえば5回も10回も変わらない、だから言う気も無かった。
「(……別に、されないならそれでいいし。でもまた迷惑とかかけたら……キ、キス以外もされちゃうのかな。でも、それは流石に……)」
キスという言葉すら口に出すのも恥ずかしい少女が随分と変わってしまった。それを認識していないようだが、蛍はその認識の足掛かりへと思考を伸ばそうとした時。
「あっ!!」
何処からか、声が聞こえた。それも、そこまで遠く無いところから。
途端に蛍は布団を出た、片手はいつでも剣を握れるように空けておき、寝巻きとして借りている服でも動けると判断して声の聞こえた所まで足音を殺して向かっていく。
「(あれ、暗いのに声? 確かここは綾華の……)」
そして付いた場所は月夜の明かりだけに照らされた部屋だ。障子の奥には人影があり、過去の記憶や微かに聞こえた声の雰囲気からはして間違いなく綾華の部屋なのだろう。
何が起きたのか、悪夢にでも魘されていたのか。そう思いそっと様子を見ようと隙間から顔を覗かせると。
「(へ? なん、え、ふわぁっ!?)」
そこには、想像を遥かに超えたことが起きていた。
「慣れてきた? コリコリして随分経つけど……はい、ぎゅーっと」
「ひゃあっ!? あ、あ、強くしちゃ……!!」
寝巻きの紐が解かれ綾華の胸が曝け出されていると、その胸の頂を後ろから抱きしめるバンパーが指で弄り続けているのだ。月明かり程度のものでも綾華の顔が真っ赤にされているのは分かるし、首元に吸い付いて印を付けるバンパーの顔もよく分かる。
「こっち、顔向けて」
「ん、ん、んむっ……ぷはっ、あ、はぅ……んあっ!?」
そして、そのまま綾華の口を貪り始める。この時間が始まってからどのくらい経っているかは分からないが、彼女の汗や目に浮かぶ涙からしてそれなりにこの時間は過ごしているのだろう。
胸を弄る手を拒めないのか、袖を掴んで耐えているようだが時折強めに弄られると肩や胸が震えている。声は口を塞がれているのでそこまで響かないが、蛍にはしっかり届いている。
ただ、そんな綾華を見て蛍は体が固まってしまう。
「(あ、キスされて……あんな、綾華苦しそうに……わ、私はされなかったのに……?)」
自分にはされなかった事を、されて来なかった事以上の事を。蛍には幾らでもする機会はここ最近あったのに、それが無かった。なのにまだ会って日も浅いはずの綾華は蛍にされた事のはるか先をされている。
本当なら止めに入るか見なかった事にして忘れなきゃいけない、だが蛍は動けずに────ただ、その行為を凝視していた。
「まだ胸しか弄ってないのに、大丈夫?」
「こ、このぐらい……へ、平気です……」
「とりあえず、びしょびしょのこの下着取っちゃうね」
「あ、うう……」
綾華の肩を彼が抱く、綾華は何処か初々しいのはそういう行為に経験が無いから、そして彼と関係を持った初めての日だからなのだろう。
ただ、そんな事など知らないとばかりに彼の右手が彼女の剥がされたばかりの股の方に向かう。
そして、指先で何かを見つけると綾華の肩が大きく揺れた。
「じゃあ、ここ剥いちゃおうねー」
「へ……? そこ、そんな! きゃっ、ひゃあああっ?!」
「うん? 弄ったことないのか〜、可愛いね」
蛍には何が起きているか見えない。ただ何をバンパーがして、綾華が何をされているのかは分かる。女の子の大事な所を、それも剥かれてしまう場所など一つしかない。
「(綾華、あんな声出して……へ? キスまでして? そんな、いっぺんにしたら……私があんな事、されちゃったら……)」
途端に、蛍も同じ所が熱くなってくる。
綾華はまだ、キスをされながら股の一部分を弄られ続けている。苦しそうな顔をしているが、それが痛みによるものではなく別の物なのは顔を見ればわかる。
口を離してみれば銀の糸が2人を繋いでおり、それが途切れるとバンパーは綾華の顔を見ながら空いた手で頭を撫でる。
「いっぱいゴシゴシされて気持ちいいねー♪」
「はぁ、はぁ、はぁ……あっ!? あ、あ、あっ!! ぁっ────!!!???」
そして、またキスをする。綾華の喉から聞いた事もない恥ずかしい声を聞きながら、蛍は未だに自分が動けないでいる事に気付く。
ただだからと言って、何も出来ない。綾華が少しぐらい抵抗する素振りを見せてくれれば良いのだが、その気配はない。
「凄い可愛い声いっぱい出してるね、でも大丈夫? この屋敷、旅人も泊まってるけど? 一応言うと、旅人が見てても私はやめないからね」
そして、そんな事を知らないバンパーは更に指の勢いを強める。指先で挟まれたどこかを擦り続けて、彼女の顔を見る。そこには声が響くと言われ、一生懸命声を抑えようと両手で口を塞ぐ綾華がいるものの。
「ん、ん、んんん! んん──!! んっ!! んんっ!!」
彼女の許容値を超えた感覚に目を明滅させているし、声は押し殺せていない。蛍の距離であれば十分に聞こえる距離であり、体を何度も震わせ、感覚を誤魔化そうと逸らしている。
「(あそこ、あんなに……)」
そして、一頻り終わったのか彼の指が止まる。匂いも汗やら何やらで凄い事になっているし、蛍まで頭をやられかけている。綾華はそれ以上なのは言うまでもないし、息をするので精一杯といった様子だ。
「頑張ったね、でももう少し頑張らないと────次は大変だよ?」
でも、終わらない。
「ひゃ、そんな所舐めっ!!?? ふわああああああ!!??」
先程まで指で弄っていたところに顔をやり、吸い付いている。蛍も何が起きているのか分からないが、綾華はもっと分からないだろう。蛍も初めて深いキスをされた時は頭がパンクして情けない顔と声を晒していたのだ、綾華はそれ以上である。
「ん、んー……んぁっ……あうう……」
そしてある程度楽しんだのか、顔を股から離すとそのまま綾華とキスをする。綾華は分かっていないようだが、とんでもない行為をしている。優しいキスを続けており、少なからず綾華の体力への意識はあるようだ。
ただ、もはや出来上がっているのだ。
顔を離した時、綾華は完全に雌の顔をしている。そんな彼女の手を、彼は持っていくと。
「少し休憩だね。代わりに私の触って」
蛍も見たことの無い所を、触らせていた。
「ひゃ、熱っ……その、こんなに……」
綾華の声が情けなく響く。
「(へっ!? 初めて見……嘘!? 男の子ってあんな事に……!?)」
ただ綾華がそれを握り始めると、片手で収まらないので両手でいじらせる。あの綾華ですら両手で弄りながら凝視しているそれは、酩酊した頭の中ではとんでもなく、求めてしまっているものなのだろう。
「優しくしてね、慣れるまでゆっくりで良いよ」
「あ、その、わ、あう……」
綾華は彼の前でゆっくりと弄り続ける。普段結えている髪を下ろし、その頭を彼に撫でられながら彼女も撫で続ける。そこでバンパーが、彼女の頬を撫で始めると。
「綾華ちゃん、可愛いお口だね」
「ふぇ……? んぶっ!?」
その顔を引いて綾華の口にそれを咥えさせた。ねじ込まれていく様を、彼女の口の中に消え行くそれを、蛍はしっかりと目にしてしまった。
「(あ、綾華ずっと……見てたら、ダメなのに……)」
そこで彼女は気付くだろう、自分の指が勝手に動いている事を。友人が無茶苦茶にされているの、いつも口付けをしてくる男がそんな事をしているのを。
蛍は明らかに、それを見て興奮して自慰をしている。
「噛んじゃダメだよー、ちゃんと形を覚えてね」
「ん、んむっ、ん、ん!? んん──!?」
「それと、吐いちゃダメだから」
そう言うと彼の綾華の目が見開かれる。そして甲高い悲鳴が口を塞がれながら響くと、小さな喉がゆっくりと動き始める。それは10秒ほど続くと、ゆっくりと彼女はそれから口を離す。
「ふぅー。ほら、飲んだかどうか見るから口開けて」
「ふぁ、ふぁい……」
そして口を開けさせられて、確認される。彼女は今、自分の体の中に彼の子種を注がれたのだ。子供が出来るわけではない、だが今の彼女は間違いなく彼のものであると分からされている。
綾華もそれが分かっているのか、素直に開いた口を見せるが、どこか満足そうに彼が笑うと。
「頑張ったね、じゃあもう一回頑張ろっか」
容赦無く、彼は彼女の前にそれを突き出していく。
「へ!? ま、待ってくだっ……!! んむっ!?」
そしてまた、それが始まる。蛍が見ている事など知らずに、それは続いていく。
「綾華ちゃんの口の中、あったかくて気持ちいいよ。ちゃんと舐めてるの可愛いし、小さいお口で頑張るねー♪」
また彼女の中にそれは出されるのも変わらず、それを綾華は飲み干す。それを嫌悪する事もなく、それをするのが当たり前といった体にされているのだろう。名残惜しそうに、口から離れていくそれを眺めている。
「ふぅー、気持ち良かった。綾華ちゃんだけ気持ちよくしたら不公平だもんね?」
「はぁ、はぁ、はぁ……苦っ……うう……」
ただ少しずつではあるが、正気に戻ってきているらしい。恥ずかしさが大多数を占めた涙目の視線を彼に向ける。そしてそんな彼女と目を合わせると、屈託の無い笑みを浮かべながら彼は言う。
「それじゃあ最後は、一緒に気持ちよくなろうか」
そして、彼女の足を持ち上げて股を開いた。
「ふわぁっ!? そんな、足開いちゃ……! ひゃっ!?」
彼女の一番恥ずかしい所が丸見えとなる。無防備に誰にも見せたことのなかった場所が、容易に開かされる。色々とされてしまった綾華であるが、まだまだ恥じらえる場所は残っているらしい。
そんな場所に、彼は片足を持ち上げながら空いた手を彼女の股にやる。
「凄い濡れてる、初めてなのに指がすぐ入るよ。でも狭いねー、どこが気持ちいいかすぐ分かりそう……こことか?」
「あ、あ、なんで?! そんな、分かりま……ああっ!?」
直ぐに自分の弱点を見抜かれたことへの戸惑いか、綾華は自分の股から響く情けない水音に頭を酩酊させて喘いでいる。一番大事な場所すら、彼女はこじ開けられてしまったのだ。
「大丈夫だよ、ここは大事な人に取っておかないとね。でも私なら今日やったどの事よりも気持ちよくしてあげれるけど、それは綾華ちゃんから捧げてくれたらにしないとダメだもんねー♪」
指先で突っ込みながら言う言葉に信用など無い。ただ彼はそこから手を引き抜く、足は開いたままであるがもう片方の足も持ち上げると彼女の股に先ほど咥えさせた自分のものを載せる。
「だから、この綺麗な足を借りるよ」
そして両足を閉じ、彼女の股の上で腰を動かし始めた。男を知らなかった彼女の柔肌に挟まれて、彼はその欲望を晴らしに向かっている。ただ脚でされているものの、彼女も股の上でされているので感じないわけではない。
「ふわ、そこ、擦れて……! ひゃ、ん、あ! や、あ、ひゃ!!」
しばらくその動きは続いていく。5分か10分か、彼女の股の上で彼のものが動き続け、時折彼女の体が震えるもののその動きは続いていく。
「(どうしよ、指止まんない……私には、あんな事されないのに? 綾華にはして、私にはそんな事……キスもしなくなったのに……?)」
蛍の目にもそれがはっきりと見える。今起きている事に自分が情けなくなるが、彼女は興奮しているとハッキリ自覚している。
そして少なからず、彼に無茶苦茶にされる綾華を羨んでいる自分がいたのにも気付いてしまう。少なからず友人として彼に好意はあったしそこから転じたモノになる事はあるだろう。
「(な、なんで? 私の事、好き勝手してこんな体にして……そんなの狡いのに、私もこんなの見て……あ、ああ……)」
ただ彼女の初恋と呼ぶには彼が狡く、失恋と言うには蛍が狡かったそれは、綾華にかけられた白い何かを見て終わってしまう事が分かった。
「またしたくなったら、教えてね♪」
彼のそんな囁きを耳にしながら、蛍は部屋に戻った。最悪の気分になりながら、情けない気持ちのまま、眠りに着いた。
これからは彼に求められる事はない、そんな事が彼女の中に嫌な記憶として今日が残り続ける。彼女に出来るのはそれを思い出す度に、自分の体を慰める事だけだった。
☆
綾華ちゃん、美味しかった。
ちなみに写真を撮っているので万が一の訴えられても逃げ切るだけの時間稼ぎは出来るだろう。彼女の方にはピースをして胸と股を隠した写真をあげたからね、まぁ隠してない方は私の四次元ポケット(そう呼んでるだけ)の中にあるので大丈夫だ。
私にしては珍しい事をしたが、初心で民を思う無垢なお嬢様、汚したくなったのだから仕方ない。あんな約束するなんて綾華ちゃんが悪いのだ、これも大人の階段を登るための試練として乗り越えて欲しい。
まぁ騙す気満々でしたし、あそこまで楽しめるとも思わなかった。軽く掃除してから私は部屋を出たけど、次の日私に会って直ぐに顔を赤くする彼女は最高だった。
もう私は稲妻いないけど、去り際に恥じらいながらも彼女が『簪』を渡してくる辺りまだ無垢で可愛い子だ。これから先悪い大人に色々されないか、私は心配である。
そういえば、蛍ちゃんが最近冷たいし距離がある。まぁ私と綾華ちゃんがしてたのを見てたのは知ってるし、それが原因だろう。私の事を気持ち悪いとかそう思ってるのかもしれない、まぁそう思われて仕方ない事はした。
でも綾華ちゃんと私がしてるのを見たお代はしっかり徴収する予定だ。あの子、今度スメール行くらしいしそこら辺で楽しませてもらおう。
違う世界線のバンパーは珊瑚宮さんに同じ事をしています。