※この作品はR-18です。

私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!!   作:札幌ポテト

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ニィロウ回

モブ男達に一撃必殺範囲攻撃を決めますが、それ以外は平和(当社比)な回です。


初心な踊り子を夢の中で味わうのはセーフ☆

 

 私は今迄の人生で後悔した事は山程ある。だがそれは前世での事で今世ではそこまでの事はない。反省をしたり嫌な気持ちになる事はあったけど、悔いる事は無い。

 何故ならその選択はその時の私に取って代え難い選択であったから、その時点の私にできる最善だったからなのだ。それを超える選択なぞ後でしか分からない、結果なんてわからないものなのだから。

 それに私はこの世界の観測者、世界の行く末を見る傍観者でしか無いからだ。運命を変える様な、大きな川の流れを変えられる程の投石が出来る事は無い。

 

 少なくとも私はそう思っている。その流れを変える権利など持って居なくて良い存在だ、だから私は川の流れに入る事は意識的には少ない。自分の信念に従って好きに生きている、その過程で川に飛び込むことはあるけど流れを変えるわけじゃない。

 

 そう、思いたかった。

 

「(マジで、何してんだろ私。変な正義感とか無くしとけばこんな事ならんのに、アホなのかな??)」

 

 ただ、ちょっと今日は違う。初めて過去に対して後悔の気持ちを抱いている。2人も楽しんで賢者タイムの軽い気持ちで調子に乗り過ぎていた自分に嫌気が凄いことになっている。

 

 まず、私はどこに居るのか。それはスメール、それもその中枢と言って良い教令院にいる。そして私は現在、とある存在と相対してしまっている。

 

「初めまして、とでも言っておこうか。バンパー・グンヒルド」

 

 目の前には仮面を付けた男、それも何処となく知性と捻じ曲がった何かがグチャ混ぜにされたオーラを放っている。間違いなく、ファデュイにおいて……いや、執行官においても上に居る存在。

 

「まさか、直々に相手して貰えるとはね。お噂は予々ですよ、『博士』」

 

 博士、それがどの順位に居るかまでは知らない。ただスカラマシュ……散兵よりも、厄介すぎる匂いがある。

 正直冷や汗が心の中で汗が止まらない。めんどくさいし、こんなのが出て来るなら私はここには来ていない。ちょっと取り立て過ぎたと思って良い事しようとしたらこれである、神様に死ねと言われている気がする。

 

「バンパー、貴様がここに乗り込んで来るほどの人間で無いことは分かっている。貴様は我々に対して特別憎悪を抱いているわけでも無いからな」

 

「私だって渦中に居なきゃ竜巻をどうするかなんて考えないし、当たり前だろ」

 

 出来る限りポーカーフェイスを崩さないが、マジで辛い。何でこうなった? いや、こいつら変な事してたのが理由だけど。それを利用して楽しんだのは私だけど!! 

 ちなみにポーカーフェイスは昨日色々あった時に相対した大賢者が凄い顔しながら見てきてるのでバレてないだろう、この手の経験は腐るほど(不本意に)あるからなぁ!! 

 

「今の貴様はその竜巻を薙ぎ払おうと棒を振り回す者と差して変わらんぞ?」

 

 ただ、気を抜ける相手じゃ無いのだ。私は今、この国の人間全員の命が握られていると感じている。

 

「その棒振り如きを警戒してるアンタは頭が悪いってことか」

 

「風に乗った棒の行方ぐらい把握して当然だろう」

 

 この時、ようやく私は察した。

 

 あー、スメールでも何か事件解決しないと生きて帰れないわ……と。

 

 ☆

 

 私がスメールに来たのは色々と理由がある。ちょっと璃月でやんちゃしてしまった事、稲妻にいる狐お姉さんのお師匠さんを限定的とは言え蘇らせた上でお礼に楽しんでヤバくなった事、モンドでバーバラに手を出した(内容はバレてない)のが露見した事と、人として生きていくには厳しい状況に陥ってしまったのだ。

 

 ちなみに璃月は語るまでも無い、例の七星や法律家から息子を搾り取られてから泣き別れする未来が見える。

 稲妻はちょっと桜の大樹関係で色々働いた御礼に狐のお姉さんから一晩徴収したのだが、ちょっとやり過ぎたので行きたくない。

 モンドは何でバーバラに手を出したのがバレたかは分からない、でも殺されると思うからしばらく息を潜めたい。

 

 なので、私はスメールに来たのだ。高跳びするのは初めてである、まぁスメールに関しては前々から来ても大丈夫な様に準備はしてきたので問題ない。

 強いて懸念を挙げれば入って早々にコレイ(以前助けた女の子)を治療も兼ねて楽しんだ事ぐらいだ、まだ喋ってない事を祈る。

 

 そして今はスメールの中枢、スメールシティに居るのだが。

 

「お、バンパーも来たのか!」

 

「あー、うん。久しぶり?」

 

 早速、飛び回るペットに見つかった。旅人もここに居るのである、まぁ層岩巨淵からそのままこっちに来るのは察してたけど。

 ただ向こうからすれば私は璃月とモンドを拠点とする冒険者なのは知っているので、ここに居る事には驚いている様に見える。

 

「ここで会うとは思わなかったけど、どうしてここに?」

 

「理由は聞かないでくれ、最悪死人が出る」

 

「死……え?」

 

 私と言う死人がな。他言すると多分一生群玉閣か騎士団の地下牢で過ごす事になる。

 ただそれは置いておくとして、旅人達の隣に見知らぬ女性が見える。

 

「それで、隣の人は?」

 

「それでで流せないけど……」

 

 旅人、私は流したいんだ。それを察してか代わりにパイモンが答えてくれる。

 

「ドニアザードだ。スメールの事とか、オイラ達に色々教えてくれてるんだぜ」

 

 ドニアザード、綺麗なお嬢さんだ。しかし私が聞いたのはそれが理由では無い。美人は見ただけでワンナイトしたくなるけど、理由は別だ。

 

「こいつはバンパー、こう見えて結構な冒険者なんだぜ!」

 

「初めまして、旅人さんとはクラクサナリデビ様の話で色々……」

 

 ドニアザードは話している最中にふらつく、それを隣にいた旅人は支えるが顔色は良くない。

 

「おっと、大丈夫?」

 

「すいません、今日は体調が良いと思ったのですが……」

 

 華奢な見た目だが、病弱には見えない。しかし私はそうなるだろうとは思った、私の目にはそう言う予兆として澱んだオーラみたいなのが見えるのだ。

 最初は魔神の力でも隠してるのかと思ったけど、それとは違う。

 

 最近見たばかりの雰囲気だし気付けた、とりあえず様子を見ていると。遠くから赤毛の少女が駆け寄って来る。

 

「あ、ドニアザード!」

 

 踊り子、と言う奴だろうか。スメールに来てからでもあまり見ない格好している少女がドニアザードに寄って行く、彼女の友達なのだろう。

 

「ちゃんと休まないと、無理したら……」

 

 その後の言葉は、何故か詰まっている。その理由は言ってはいけないというよりは、彼女を気遣ったものだろう。それは彼女の体調に関係しているのか。

 

「ニィロウ、ごめんね。でも大丈夫、明日の花神誕日は楽しみにしてるから」

 

「……いや、その、実は」

 

 ただ、それだけでは無いようにも感じる。

 雰囲気としては良くないし、旅人もどこか気不味そうにしている。

 

 正直、見過ごしても良い。無視してそのまま帰ればいい、でも放っておけない性格なので私はドニアザードの元に近寄る。

 

「ドニアザードさん、だっけ? ちょっと腕貸して」

 

 私は彼女の手を取る。その瞬間に確信はしたが、一応腕を捲らせてもらう。

 

「え? その、本当に大丈夫で……」

 

「医者って程じゃないけど、見るぐらいは出来……」

 

 ただ、思っていたよりも良くないらしい。今は波が来ていないから多少なマシなのかもしれないが、私は少しため息を吐きながら呟く。

 

「やっぱり魔鱗病、か。この状態で、歩き回るのも無理してないとは言えないんじゃない?」

 

 魔鱗病、黒い鱗の様な痕が体に現れる病気。何故そうなるのか、それの具体的なメカニズムは誰も知らない。ただ不治の病であるのは知っているし、そのうち人を殺す病であるのも知っている。それも苦しみもがき死んでいく、原因も医者達は知らない。

 

「ドニアザード! やっぱり無茶して……!」

 

 旅人達が気不味いのは仕方ないだろう。無理をして外に出るのは気力だけの話ではない、何かしらの理由があるのを私でも察している。私がこうなればベットの上で無理せずその時を待つ事しか出来ないが、彼女がこうやっているのは……。

 

「良いのニィロウ、私も元気なうちに見ておきたいの。まだ歩けるうちに、だから……」

 

 ニィロウ、踊り子の少女に伝える。それを彼女に言うのは、それが彼女に関わる事なのか、それとも彼女も知る様な何かの為なのか。ただ少なくとも、純粋なその意志をぶつけられたニィロウはその目尻に涙を浮かべ始めている。

 

「ドニアザード……違うの、私がここに来たのは……」

 

 これは、この世界ではありふれた悲劇なのかもしれない。いやこの世界で無くても起こり得る、人の儚さとはそう言うものなのだから。

 私ですらこの手の悲劇を、たった10年でいくらでも見て来た。そうなる時に、人は出来る事は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず消しといたから。あんまり重たい話は無しにしときなよ」

 

 まぁ、私って言うイレギュラーでかつ積極的な人助けをしない奴の前で起こらなければの話だけど。

 

「え? あ、え?」

 

 まず最初にニィロウが困惑している。それは当事者ではなく一歩離れたところから見ていたが故に何が起きたかを気付いたからだろう。とても信じられないといった目をしている。

 そしてそれは、ドニアザードも同じだ。

 

「嘘、消えてる!? え、なんで!?」

 

 彼女の体から、鱗の様な痕は無くなっているのだから。

 ちなみに治す事は出来ない、あくまでも進行状況を0にしただけだ。私が吸い取って後で適当に草元素と相殺したりして廃棄する。何故そう出来るかは分からない。アビス由来の力なのは察しているが死域を潰す感覚と似ているので、それも何か関係しているのかもしれない。

 

「秘密、君のは手遅れでは無かったから。でも治ったわけじゃないから勘違いしないでよ。減った体力を戻したわけでもないし……あ、後で支払って貰うからね」

 

 まぁ、やった理由は「重い話嫌だな……」ぐらいのもんだし。理由は後で幾らでも付ければ良いからな。

 

「支払いなら幾らでもします! 心配させてその……ごめんなさいニィロウ、私絶対ズバイルシアターに観に行く。楽しみにしてるから!」

 

 途端にドニアザードの顔色がわかりやすく明るくなる。病気が治療された事よりも、ズバイルシアターで行われる何かを見れる事に歓喜しているのだろう。

 ただ、そこで一つ違和感が出て来る。

 

「え、あ……う、うん。その……楽しみにしててね!」

 

 何故かニィロウの様子がおかしい。彼女はさっきの雰囲気や関係からして、一番にそれを迎え入れるような声を出すと思ったのだが。どこか、何か暗い部分を感じる。

 ただ私がそう考えているうちに、ドニアザードは何処かへ去っていく。

 

「バン、後で色々聞かせてもらうから」

 

「はいはい、でも他言は無しな。今回は私の目の前でかつ、旅人の借りを返しただけだから」

 

 そして旅人とパイモンも、共に去っていく。

 層岩巨淵でとある冒険者をぐちゃぐちゃにした以来なのに、何か目つき悪いな。そんな悪いことし……いや、した気がする。

 

 思い出した、申鶴けしかけて旅人君童貞卒業(元から童貞かは知らない)させてからの再開だわ。まぁ申鶴は満足してたし、私は申鶴に技術を教えて巨乳とか楽しめたし、旅人も妻子持ち(未来系)になるし、皆ハッピーだしセーフって事にしておこう。何やかんや気持ちよかったのは申鶴と抱き合って寝てたらしいから間違いない。

 

 ただ本気で旅人と斬り合ったけど、ギリギリ勝てて良かったと心底思う。負けてたらどうなってたのかは気にしない事にする。

 

「……ところで、その。大丈夫?」

 

 まぁそんな事は忘れて、とりあえず私はその場で座り込んで頭を抱える少女を見る。

 

「ど、どうしよう……教令院から止められたから中止になったなんて言えないよぉ……」

 

 何か片足突っ込んでしまった側としては聞き逃せなさそうな事を言っている。

 思えば、この時から私は色々な問題の渦中に身を投げていたのかもしれない。

 

 

 ☆

 

 ニィロウは、何もできなかった。

 ズバイルシアターで踊り子をする彼女はドニアザードから多額の援助を受けて公演が出来る事を知っていた。それは彼女がそれを待ち侘びていたからで、その想いに応える為に一層練習してその日を待った。

 

 だが、その日の前にズバイルシアターの公演が却下されたのである。正確に言えば何週間も取り合ってもらえずに当日が迫り、その前に『事前許可なしの公演』という扱いで大賢者から直々に赴かれて中止、並びに撤去を命じられたのだ。

 

 理由は、芸術が彼らにとって知識の国と言われるスメールに泥を塗るものと思っているからだろう。知識と真理を追い求める者の為に作られた楽園に、芸術を持ち込む事は許されないと。

 

 ニィロウは抵抗した、花神誕日に行う花神の舞は恒例の行事であるのにと。神様も芸術は否定しない筈だと、だが言われた言葉は今も耳に残る。

 

「貴様のような学の無いやつが、私と議論する権利があると思うのか」と。何も言えなかった、言えばズバイルシアターの皆が罰せられるから。ドニアザードは舞台が撤去される、そう伝える為に向かったが元気な彼女を見て言えなくなってしまった。

 

 そして途方に暮れていた彼女の前には、1人の男がいた。

 

「バンパーさん……流石にもう、良いよ? 頑張りすぎじゃ無い!?」

 

 そして今は、教令員から次々やって来る人間をズダボロに言い負かして倒れさせていた。

 

「ニィロウが言ったんだろ? ドニアザードに見せる為にやれる事はやってみる、手伝って欲しいって」

 

「だとしても、ちょっと可哀想になって来たし……」

 

「あいつらが正論で殴ってくるから詭弁で殴り返しただけだし」とは言うが、やり過ぎである。議論をしただけと言うがそれで何人も大の大人を泣かせないだろう、地面に倒れる程言い負かすのはダメなのでは無いか。

 少なからず思う事のあった当事者のニィロウでも、ここまでやるのは想像していなかった。

 

 と言うよりも、一介の冒険者と名乗るバンパーがここまで頼りになるとは誰も思っていなかったのだ。ニィロウ以外のグランドバザールにいる者達全員が、いつの間にか彼を応援している。

 

 でも、まだ終わるとは思っていない。

 

「お、ちょっと偉そうな人来たな。アレで終わると助かるんだけど」

 

 次の学者を言い負かしても、最後には全権を握る大賢者が残っているのだから。

 

 ☆

 

 皆、正直思ってもみなかっただろう。ニィロウが連れてきたよくわからない異国の冒険者が、何故か教令院の学者達を黙らせていたのだから。

 

「公演、何でダメなの?」

「許可を取っていないのが悪い」

「審査してないそっちの落ち度じゃん? 無能を認めるの? その責任、君が全部背負えるの?」

 

 まずこれで、1人目の学者が泣いた。ただグランドバザール関係の事務関係をしていただけで責任や無能など順序立てて言われ、泣いてしまった。

 そして、次にその先輩らしき学者もやって来たのだが。

 

「意義がない、決定に従え」

「意義が無いって断ずる程の知識あんの?」

「当たり前だ」

「ふーん。物理的事象と元素的事象における相関性からエネルギーの抽出について現状技術における最高効率の手法と技術と言えば?」

「え、あ、え?」

 

 よく分からない学問的な質問をぶつけまくって答えられない青年に対して「それで学者かぁ……」と最後に言われて泣いた。年上が年下にズタボロに言い負かされている姿は、傍目に見ていても可哀想だった。

 

 そしてそれがその先輩の同僚、上司、管理者と次々と人を呼んでいき、気付けばズバイルシアターの壇上には席が設けられている。

 それを見に、いつの間にか人も集まっている。

 

「なんだあいつ、人の心が無いぞ!」

「あんな無礼過ぎる奴、教令院でも対応出来るわけねぇ!」

「まさかあんな化け物が世の中に居るとはなぁ!」

 

「熱が入るのは良いんだけど、もう少し言葉を人間性で包んでみない?」

「あ、あはは……」

 

 教令院への日頃の鬱憤が溜まっていたのか。ただ言わなくていい事も気にせず言うので、議論で打ち負かしても全く傷ついていなかった彼の良心が傷み始める。ニィロウも苦笑いをしてフォローにもならない反応をしているので、余計に傷付く。

 

「というか話通じる奴連れて来てよ。私も心を折るの疲れてきたし」

 

「良心が痛むからじゃないんだ……」

 

 ニィロウが少し引き気味に言うので更に心が傷み始めるが、色んな美少女の処女をあの手この手で食べ尽くして来た彼はまだ耐えれる。あの観衆はいつか別の意味で泣かせると決めながら、とりあえず彼は席でだらけている。

 

 頭が疲れて正直周りが煩いのも静かにして欲しい所なのだ。しかし、それを察してか急に当たりが静まり返る。

 ただそれは、彼を労ってのものではないのがすぐに分かる。

 

「ふん、愚者に道を教えてやるのも賢者の仕事になるが……私が態々出張るとは、少しは誇らしく思うと良い」

 

 うつ伏せていたバンパーは顔を上げる。そこには立派な顎鬚と明らかに今迄の学者とは雰囲気の違う壮年の男が居る。

 彼もようやくかと、体を起こして伸びをする。

 

「やっと話できる奴が来たかー……とりあえずズバイルシアターの明日の公演、これの中止は撤回してもらいたいんだけど。アンタならその権限があるよね?」

 

「無論だ。しかし、私が許可する事は無い」

 

 周りが明らかに先程までと雰囲気が違う。それは呼び出された存在の事を誰もが知っているからだ。スメールにおける中枢、教令院のトップである大賢者であると。

 

「踊りをして何になる、何を生み出せる。知性を持つ存在としての意味を放棄するとは情け無いばかりだよ、時間の無駄は人間の無駄だ」

 

「ならアンタは無から何かを作るとでも? 知識は経験で出来る物であって、そのきっかけは芸術から生まれるかもしれない。少なくともその機会を奪う権利は無い筈だけど」

 

 席には付かず、賢者は話し始めた。まるですぐに終わるとでも言いたげであるが、バンパーは席を立たない。長引くだろとでもいいたげである。

 

「私はスメールを正しき未来に向かわせる責任がある、権利も勿論だ。それに、芸術から知識が生まれる事など無い」

 

 しかし、今迄の学者と違い筋道を立てて否定してこようとして来る。いや正確には他の者達も筋道を立てているのだが、それを誘導するように話す事は無かった。

 

「でも証明は出来ない、じゃないの?」

 

 なので、彼はあえてそれに乗った。

 

「芸術は無駄だと言う証拠も無ければ証明も出来ない、ならアンタ達は『気に食わない』って言う私情で止めた事になる。知識の国のトップともあろう存在が、随分と人間らしい勝手をするんだな」

 

 皮肉を言いつつ、賢者の言いたい事を探っていく。どこかで仕掛けて来ると、向こうも同じ考えをしているのだろう。ため息を吐きながら、侮蔑の色を載せた目で見下ろし言う。

 

「中止は決定している。それを覆そうというのが非常識では無いのか?」

 

「その思考停止があるから、威張る割に成果を出せないんじゃないの?」

 

 バンパーが、ここで仕掛ける。その言葉に明らかに周りが騒つく、それは今迄の攻め落としていたやり口と違うからだ。

 対面する個人ではなく、彼はここでその組織を完全に敵へ回したのである。

 

 ☆

 

 スメールのトップ(神様を除く)が出て来るのは聞いてないわ。正直私が言い負かせてたのは揚げ足取ったり論点ちょっとずらしたり、前世でストレス発散にネットやってた経験があるからだ。

 

 でもさ、話の通じない頑固ジジイ(大賢者)は流石に相手した経験はない。

 

「貴様、教令院……引いてはそれを纏める賢者全てを愚弄するか」

 

「事実でしょ。革新的な理論や技術が、ここ500年で産まれてない」

 

 なので煽って怒らせて思考力を奪ったりするのも多分効かない。論点は向こうから常に『芸術は不要だから』と言う所をずらし辛い、他の奴らは規則とか知識とかだったからどうとでも出来たけど。

 

 どうしたものかと思いながら話してるが、私の言葉に言い負かす致命的な穴でも見つけたのか、大賢者はニヤリと笑う。

 

「成る程、貴様はそれで他の者達を言いくるめたのか」

 

「ディベート力無いだけじゃない? 悪意ある素人と話し合った経験って無いだろうし」

 

 どの切り口から来るか、私は身構える。単純に向こうは私より頭が良い格上と想定しているので先に先に思考を回さなければ勝てない。そして、賢者の口が開かれる。

 

「『元素生物の属性変換によるエネルギーの抽出実験』」

 

「ん?」

 

 ……ん? 

 

「『草元素による治癒能力に特化させた自動元素変換機器の制作』

『元素の衝突によって生まれる空間の歪みの調査記録』

 まだまだあるが、これを聞いて尚技術や理論が育って居ないとでも?」

 

 なるほど、知識で攻めて来たのか。私はリサさんから色々教わって来たから浅く広く、ある程度のものは答えられるか答えられない問題を知っているかのどちからかで、答えのある複雑な問題は答えられない。

 

 現代風に言うとフェルマーの最終定理が存在する事やその定理が証明された事は分かるけど、その手法を答えられないといったところだろう。私が口先だけの愚者であるのを、賢者は直ぐに察していたようだ。

 

「口が達者な奴を黙らせるのは、揺らぎない現実だ。貴様の頭では理解出来ない類のものなのだからな、これら全て芸術との接点など無い物だぞ」

 

「あー、え? いや、芸術との接点ゼロは言い過ぎだろ。アンタが書いたわけでも無いのに」

 

 こうなると、私の打つ手は明らかに弱くなる。向こうから揺らがない証拠として突き出されたものを、根底から揺らがす何かが無いとダメなのだ。

 

「貴様が知る必要は無い、話は終わりだ」

 

 賢者は背を向けた、付き人らしき学者もそれについて行こうとする。私が言い負かした何人かも元気になったのか、口々に「ざまあみろ!」だの「学の無い奴が調子に乗って」とか色々言っている。

 反対に勝手に集まった観客は静まり返ってるし、お通夜ムードだ。何人か背を向けて帰り始めるし、ズバイルシアターの人達も頭を抱えている。

 

 うーん、こうなったら仕方ない。

 

「いや終わらないけど。それ書いたの私だし」

 

 私の言葉に、賢者陣営が全員振り返った。と言うか賢者が真っ先に、しかも信じられないと言った顔で振り返って来た。何ならさっきまで元気になってた学者達、絶望した目をしている。

 

 まあ実際、あれは全部私が出した論文だ。

 

「というか全部私が書いたやつじゃん……賢者って肩書き代わってあげようか?」

 

「ふざけるな! 出鱈目を、これは天才リサ・ミンツから……」

 

 私はスメールに高跳びする準備を昔から進めていた。元はスメールで学院に在籍していたリサさんから色々と話を聞いていたし、こっち側の論文は分かる範囲で読み漁ってもいた。ただ、私が自主的にしていた準備なんてその程度である。ただある日、リサさんから言われたのだ。

 

『発想だけはあるし、論文でも書いてみる?』と。あれは私がリサさんから暇つぶしにとか言われ、私にテーマだけ決めさせてその他諸々の事を全部宿題として時間をかけてデータを取って書いたものなのだ。

 今思えばそうでもしないと私がモンドに戻らないとか定期的に私の能力についてのデータが集まらないと考えたからなのだろう。

 

 そして、何度も添削を……ヘタしなくても20回以上書き直してリサさんに渡したのがそれである。教令院に出しておくとは言われたが、まさか革新的な何かとか言われているとは思わなかった。

 

 でも、納得できる部分はある。

 

「その理論、全部実験方法の一部……非検体の部分隠してるでしょ? 私がやってたからだけど、分かってくれた?」

 

 だってこれらの技術、元の世界の知識が下地にあるか私固有の能力で得た知見で作られているからね。

 ただあまりに信じられないのか、賢者はリサさんの名前を出してから初めて大きく顔を歪めながら言う。

 

「貴様が、バンパー・ミンツか!?」

 

「人違いです」

 

 知らない人です。いや私なんだろうけど、いや私なんだと思うけど! 

 

「いや、私だけどリサさん苗字なんか付けなくても……え、なんでつけたんだ?」

 

 これらの論文はどうせ誰も思い付かないから纏めて出したと言っていたし、出した時期は……リサさん襲った時期だな。意趣返しですか? その時限爆弾、リサさん自身も傷つくのよ? いやある意味キズモノにしたと言うか、もう私がいっぱい刻みつけたと言うか。

 

 ただ、ここまで来たらあとはこっちのものだろう。向こうからすれば私は勝手に世紀の大天才とか思われてるだろうし、その私が芸術を擁護する立場だ。教令院側からすれば学のある奴が正しいのだから、そこで私を揺らがす事は現状出来ない。

 

 なので私はここで、優しく声をかけてやる。

 

「別にさ、私はこの国で全員公演を見ろって言ってるわけじゃ無いし、全員踊れとも言ってないじゃん。秩序は乱してないし、風紀も犯してない。犯罪を啓発もしてない。アンタらに不都合は無いんだから、無視しとけば良いじゃん。それで解決だろ?」

 

 教令院側に損害は無い。無視しておけば良いと言ってあえて教令院側が権力を持った機関である事を尊重しておきつつ、したてに出て言葉を引き出しに行く。

 今の討論は私が有利でかつ、向こうは人も多く最高権力者まで出張って来ている。ここで断ればまた私が全力で叩き潰しに動くと思ってくれれば、得られるものに対しての労力なんか釣り合わないだろう。

 

 ちなみに武力制圧の可能性だけど、何か3人目ぐらいを言い負かした時に衛兵を5人ぐらいけしかけて来た学者が居たから大丈夫だ。感謝してしているよ、今は全員仲良く気絶している。

 ここで大賢者がその手を取るとか考えたらその倍以上を初手でぶち込んでくるから、その手を潰すとまで言わないが消極的にはさせてくれるだろう。

 

 そして、それら全ての私の考えをわかっているのだろう。ようやく、賢者が口を開いた。

 

「良いだろう、明日は好きにしたら良い。私はこんなところで時間を取られているわけにはいかぬのだ」

 

 向こうの捨て台詞を聞く。どうやら今回は引き分けとするらしい、まあ私達の勝ちの条件は公演を開く事で向こうの負けない条件が権威を落とさない事だろうし、双方を鑑みれば引き分けとはなるか。

 

「貴様の嘲笑った革新的な転機が、スメールに起きるのだからな」

 

 ただ、そう呟いて賢者たちは去っていく。同時に観客達の方が騒ぎ始めているが、頭を使いまくったせいで余計に響いて来る。それだけ教令院に嫌な思いでもさせられて来たのか、でも私コイツらの為に働いわけじゃないんだよな。

 

 と言うか、好き勝手言って来たし泣かせるからね? 血涙的な意味で。

 

「ありがとうバンパーさん! 明日の花神の舞、私頑張るから!」

 

 ニィロウが寄って来る。他のズバイルシアターの人達も寄ってはこないが私達を見ている。そしてニィロウは興奮しているのか、かなり私との距離が近い。

 

 好都合だった。

 

「えへへ、バンパーさんって凄い人だったん……んむっ!?」

 

 近寄って来たニィロウを抱き寄せて、そのまま彼女の唇を奪っておく。みんなのアイドルみたいな感じなのはもう知ってるし、少なからずそう言う男の目を何人か彼女に向けていたのも知ってる。

 途端にズバイルシアターが静まり返り、困惑の声が聞こえて来るけど……まぁしっかりと彼女を楽しんでおく。

 

「ん、ん……ぷはっ……え、え……?」

 

「じゃ、約束通り貰っといたから」

 

「ふぇ……? その、今……!?」

 

 何が起きているか分かってないみたいだけど、私がこんな事をタダで働くわけが無いだろう。何でもするとか言ったのだから、ナンデモしてもらうに決まってる。何なら私はこのまま砂漠まで高跳びするつもりだし、好きにしても大丈夫だ。

 とりあえず2回目を軽くしてから、私はここから逃げる準備をし始めるのであった。

 

 ☆

 

 ニィロウが突然2回もキスをされてから、場は荒れに荒れた。

 血涙を流す男が何人も居たし、バンパーを締め殺そうと明らかな殺意を持ったニィロウを見守る保護者達が襲いかかった。

 しかし、バンパーは容易くその場から逃げ仰せていた。いや正確には誰も逃げ方はわからない、雷電将軍との戦いなどで使っていた瞬間移動をしていたのだから分かるはずなど無い。

 

 ただニィロウも最後にキスをされた後に「タダ程高いモノは無いよ」と耳元で囁かれたので、そこは自分の考えが甘かったと思っている。初めてを奪われたのに純粋な子だったのだ、なのでキスされた事はそう言う約束だったと皆に言って落ち着いて貰っている。

 そこから暫くは自分の体は大切にしなさいと説教を貰うが、次の日は花神誕日の日だったのでそこまで長引かなかった。

 

 そして、その当日。

 

「はぁ、はぁ……えへへ……」

 

 無事、公演は盛況に終わった。周りでは皆が花神誕日を祝えている、その中には旅人やドニアザードと、この日を待ち侘びていた人達の顔もある。

 

 ただ、ニィロウは一生懸命に踊り疲れながらもその光景を見て満足をしつつも────どこか、既視感を感じていた。

 

「(……あれ? ドニアザードって、あそこら辺から見てたっけ?)」

 

 そして、その既視感と違う所も感じていたのである。既視感そのものに違和感は無かった、ただドニアザードが公演を見ていた場所が右後ろから左後ろに変わっていることに違和感を感じたのだ。そしてそれが全体的な違和感に変わっている。

 別にドニアザードは今日、見ている場所はずっと左後ろの方で変わっていない。しかし、ニィロウには右後ろで見ていた記憶がある。

 

 それどころか、ここに居ない筈の誰かが観客に居た記憶まで湧き出て来るのだ。

 

「(うーん……気のせいなのかな? でも、花神の舞をちゃんと踊れて良かった! クラクサナリデビ様も見てくれたかな?)」

 

 しかし、ニィロウは直ぐに考え過ぎだと思い考えるのを辞めた。気のせい以上の答えは無かったのだから、それ以上に考えが及ぶ事など……同じ日が3回も続いているなどと、思う筈が無いのだから。

 

 そして、ニィロウが舞台の裏に行く。疲れているのもあるが、この後の片付けがあるからだ。しかし踊り疲れているだろうと気遣われ、彼女はそのままズバイルシアターを後にする。

 ドニアザードや皆に感想を聞きに行く為だった、それはどの日の彼女もそうだった。

 

「お疲れ様、ニィロウ」

 

 そしてそれは、バンパーも知っていた。

 

 ☆

 

 私は気づけば、夢の中にいた。いや正確には限りなく現実に近い虚構とでも言うべきなのだろうか。とりあえず、夢の中だと意識をしながらスメールシティの中を動いていた。

 

 明らかに人為的な何かを感じていたし、それが夢というものを何かしらの形で利用するのが狙いとも直ぐに考えへ至った。でも同時に、私がいつでも起きれる事にも気付いた。私の能力のおかげである、単純に私が受け入れているから私も夢の世界に囚われているが、拒絶すれば檻を出れるだろう。

 

 なので私は、すぐに行動に移した。

 

「ひゃ、もうチューしたら……んんっ!?」

 

 私の膝の上で、ニィロウが気持ち良いのが苦しそうにしている。上の服だけ剥ぎ取って胸を揉んだり摘んだり弄ったりしながらキスをずっと……1時間くらい? してるから仕方ないだろう。

 

 はい、速攻で女の子に手を出しました。そんな法に罰されずに夢の中だから何をしても良い環境が作られて、私が手を出さないわけが無かった。

 ちなみに彼女は2人目です、1人目のドニアザードも男を知らないお嬢様って感じで楽しめました。

 

「ニィロウは可愛いなあ、肌も綺麗で柔らかいし。もっと楽しませてね♪」

 

 そしてニィロウはドニアザード以上に踊り子って事もあるし体力もあるので少し激し目に楽しめています。感想を聞きにやって来るのは知ってたし、そこで捕まえて誘導して部屋に連れ込んでキスして脱がすのは簡単でした。

 でも、こんな可愛くて純粋で無防備なエロい格好した踊り子なのが悪いよね? 

 それを食べるのは悪い事では無い。教育です、そう言う事にしてじっくり楽しませてもらいます。

 

「ひゃら、そんな……ふあっ! あっ……!!」

 

 胸を吸いつつ、彼女の大切な場所を下着を通り抜けて弄ってあげる。ずっとキスして興奮させた甲斐もあり、ちゃんと気持ちよかったのが確認出来る。

 

「ニィロウはえっちな子だね? ほら、糸引いてるよ?」

 

「んぁっ……ち、違うもん……私、えっちじゃ……んぶっ!?」

 

 そして、弄った手を彼女の前で見せてあげるけど違うと言うので口の中に指を入れてあげる。ちゃんと味わって、えっちな準備をしてる事を分かって貰わないとね♪ 

 

「ん、んあっ……んむっ!? んんっ────!!??」

 

 指を味わってもらったらそのままキスしてあげる。もちろん指はちゃんと胸と股を弄ってるよ? 股はほぐしておかないとね、まぁ胸はどうされたら嫌……と言うか大好きと言うか、分かっているので優しく引っ張ってこねてあげる。こねる度に肩が跳ねてたけど、今は別の弱いところを探してる最中なのでずっと肩が震えてる。

 

 ドニアザードの時もそうだったけど、同時に攻めると初めての子は頭の中がパンクしちゃうんだろうね。目が凄い良い、ぼーっとしてるようで気持ち良い波が来た時に瞬いて光が戻る瞬間とか、何でこんな事をされてるのか分かってないのをわかろうとしてる感じとか、凄い好きである。

 

「さて、そろそろ……えっちなのに嘘をつく子にはお仕置きしないとね」

 

 と言うわけで、そろそろ初めてを食べようと思う。実はこの世界、ある一定期間でループしてるんだよね。だからその時間までしか楽しめない、まぁまた後日楽しめたら良いんだけど。

 ちなみにドニアザードは2回した、初めてを2回も楽しめるとかお得感ヤバかった。この世界最高かな? 

 

「はぁー、はぁー……ひっ!?」

 

 とりあえず、腰を抑えて私のモノを彼女の大事な所の入り口に当てる。その瞬間に目に色が戻っており、最高の状態が整った。

 

「あ、その、そこ……ひやああああああああっ!!??」

 

 そして、一気に貫く。血が出るのもリアルだが、それは私の能力で痛みを消してあげるので大丈夫だろう。でも痛みのおかげで正気に一瞬とは言え戻ったみたいだ、ゆっくりと動いて指で調べた弱い所を突いておく。

 

「あ、ううう……ん、ん、バンパー、さん……なんでぇ……」

 

「ニィロウが可愛いからだよー♪」

 

「可愛い、なんて……んあっ! あ、そこ、だめ……あっ」

 

 初めてを食べられているのは分かっているらしい。ゆっくりしてるから恥じらいながらベッドシーツを掴んで声を抑えている。

 声も可愛いし仕草も可愛い、顔を見られるのが恥ずかしいから目を合わせないで逸らしてるけど、それが良い。

 手を重ねて絡ませてみれば私の手を握っては何かを確かめている、でもそのまま握られて絡むのに抵抗がない。

 

 うん、やっぱり女の子は最高である。

 

 ☆

 

 バンパーがニィロウの処女を奪ってから、数時間が経った。

 

「ひゃ、あ、あ!! また、来ちゃっ……!!」

 

 夕方前から始まったそれは、まだ続いていた。

 

「(わかんない……またお腹いっぱいにされて、あ、また熱いの来……!?)」

 

 ニィロウは最初こそゆっくりと突かれていたが、途中から激しく抱かれていた。そして何度もお腹の奥に注がれ、溢れては注がれてを繰り返し、ベッドも彼女もドロドロにされていた。キスをされながら出された事は何回もあった、その後には口の中に3回出されて飲み干しもした。胸に挟ませて顔にかけられてもいる。

 

 ただ、そうされても彼女がまだ考える力が残っていたのは理由があった。

 

「(あ、撫でられ……くすぐったくて、暖かくて……)」

 

 彼女は頬を撫でられている時や手を重ねている時、優しくキスをされる時や抱き合う時に言いようのない幸福感が湧いて出て来ていたからだ。

 

 気持ち良い事は初めてなので分からないし、処理しきれて居ない。でも優しく胸にキスをされたり顔を埋められたりした瞬間に、彼女は人の温かさを感じてしまったのである。

 

 気持ちいいので堕ちる人は多くいる、と言うかバンパーはそうやって来た。なのでニィロウにも遺憾無く、その能力が発揮されニィロウは快楽の沼の中に浸っているのは間違いない。体がいつの間にか触られてしまう事に諦めてしまって受け入れているのも気付いていない。

 

「(お腹撫でられ……気持ちいい……あ、熱いの入って……)」

 

 だがそれよりも、彼女は純粋な女の子過ぎた。人間の本能的な気持ち良い事よりも、人間の精神的な気持ち良さの方で心が安らいでいたのだ。だから彼女は未だに正気を保てているし、お腹の奥を叩かれても意識が混濁しても気絶まではしない。

 

「バンパー、しゃん……あ、待っ、あ、ん……」

 

 彼にゆっくりと突かれながらニィロウはもう隠す必要もないほど見られてしまった顔を向ける。初めてキスされた時は驚いたし、その前にどうしようもなかったズバイルシアターの公演をどうにかしてくれた彼に少なからず少女としての何かを感じていたのかもしれないが。

 

「どうしたの? 苦しいなら、少し休む?」

 

 そんな彼に、今は全て許せてしまう。

 

「その……するなら、ぎゅっと、して……」

 

 彼女はゆっくりと手を伸ばす、疲労感からか少し震えているがそれは彼を受け入れると言っている。ここまで好き勝手して、彼女の初めてを食い散らかした者に対して、彼ですら動きが止まる。

 

「……どうしよう、初めて……したいとか思ったかもしれん。え、止まらないよ??」

 

「うん……私にしたい事、して良いよ……?」

 

 その後の事をニィロウは覚えている。どれだけされたのか、喰み痕を大量につけられたのも、お尻や足を触られながら突かれたのも、何度彼に囁かれたのかも。

 

 それは、目を覚ました後も同じだった。

 

 ☆

 

「ん……ん? あ、バンパーさ……ん?」

 

 ニィロウが目覚めた時、少しだけ頭の中に疲労感を感じた。だが起き上がり周りを見てみるが、何故か居る筈の愛を確かめ合った相手が居ない。

 

 それどころか、ここはニィロウの部屋である。あの後は互いにした後でそのまま眠った筈なのだ、なのに自分の部屋にいる。それに自分の格好を見てみれば寝巻きであり、衣装のまま抱かれたのに衣装は壁に綺麗な状態でかけられている。

 

「あれ? 何で……」

 

 花神誕日の日に忘れられない思い出が出来たのだが、どこか違和感がある。どうしてだろう? と考える彼女であるが、その悩みは外から聞こえる声に遮られる。

 

「ニィロウ、早く起きなよ」

 

「あ、うん。わ、分かったけど……いつもより早いね」

 

「当たり前でしょ、今日は花神誕日なんだから」

 

「……え?」

 

 そう言われ、ニィロウは思考が止まる。バンパーとしたのはその日だ、初めての記憶を忘れる筈がない。しかしその日は今日の夕方前から始まるのだ、時間がズレている。

 

「もう、しっかりしてよー? 花神の舞、楽しみにしてるからね」

 

 ズバイルシアターの仲間の声が遠ざかって行く。だがニィロウはそんな事を考える余裕は無いし、思考はぐるぐると同じ所を周回している。

 整理しても昨晩バンパーとエッチな事をした、その日は花神の舞をした日、花神の舞をするのは花神誕日、でも花神誕日は今日である。

 

 なので、ニィロウなりに導き出される答えは一つしかない。

 

「(わ、私……バンパーさんとえっちな事する夢を見てたの!? しかも、全部覚えてるし、好きとかいっぱい言って……え、え、え!? 私ってそんな……夢とか見た事ないのに、初めて見るのがそれなの!?)」

 

 途端に顔が熱くなる。スメール人は夢を見ないと言われているし、それが一種のアイデンティティでもあったが……彼女はあまりにあまりな夢を見てしまったと思い顔を赤くしている。

 

「ううー……わたし、えっ……なの……?」

 

 あんな事を夢の中でしたが、口に出すのはまだ恥ずかしいらしい。ただ夢の中で出て来てしまったのはそれだけ前日にキスを唐突にされた事やちょっと救われてしまったからなのかもしれないと思うと、頭の中に彼が思い浮かぶだけで恥ずかしくなってしまう。

 

「(チューされたのに、チューされ……あ、何か口が……)」

 

 少し考えて変な気分になって来たので枕に顔を埋めて考えないようにする。それに今日は花神誕日だ、彼女なそのまま無理矢理に着替えを済ませて身なりを整え、準備を済ませた。

 

 まだ公演まで時間はあったのでニィロウは外に出ると、会う人皆が「頑張れよー」やら「楽しみにしてる」「あの男は誰だ?」「待ってる」など、声を掛けてくれる。

 本当に花神誕日の日なのだからそうなる、ニィロウもその頃にはある程度夢のことは忘れて踊る為の準備を心の中にしていた。

 

 そして、そのままズバイルシアターに向かおうと思っていた時だった。

 

「あ、ドニアザー……ド?」

 

 ドニアザードを見かけたのだ。しかし、声を掛けようとして止まってしまう。何か様子がおかしいのだ、それに隣にはディシアは居ない代わりに朝までニィロウを悩ませた男が居る。

 

「その、やっぱり私って払うとは言ったけど親から出して貰うのは違うと思うし……でも払わないといけないのは分かってるから、ちょっとぐらい、その……」

 

「いや、だから私は……」

 

 ドニアザードが、彼に手を繋いで何か話している。恥じらいながら、握る手を意識しながら話しているのはすぐに分かった。そして男付き合いなど人生でした事のない彼女のなりのアプローチである事も、ニィロウには分かってしまった。

 

「別に、嫌とか誰でも良いとかじゃなくて……バンパー、君なら……その分私の事は好きにしても良いし……暫くは、体調が戻る迄は満足して貰えるか分からないけど……」

 

「秘密にして欲しいからそこまで頼まないって。あの、これディシアさんに聞かれたら私殺され……」

 

 そうだった、ドニアザードは命の恩人が彼なのだ。ニィロウ達を救うように、目の前で彼はドニアザードを救っていた。誰にも出来ないと思っていた事を、医者ですら匙を投げるそれをやってのけていた。

 昨日のやり取りでは感じなかったが、ドニアザードが少なからず彼に対して、想うような事があってもおかしくないのかもしれない。

 

 ただ、それを見ているとニィロウは何か言葉には言い難い気持ちになってくる。

 

「あ、ドニアザード! 元気になったんだね!」

 

「え、あ、ニィロウ……うん、今日の公演楽しみにしてるね」

 

 気付けば、ニィロウは割り込むように彼の隣を取った。ドニアザードも突然の事で少し言葉が詰まっていたが、顔の赤さは残したままにいつも通りの彼女に戻る。

 

 ただ、なぜかは分からないがバンパーは戸惑っている。でもニィロウには関係ないことだ、そのまま彼の手を恋人のように握り引いていく。

 

「早く行こ? 良い席で見て欲しいもんね」

 

 本来の彼女なら手を引かず、引くとしてもドニアザードの手を引いていたのかもしれない。

 

「あ、そうだ」

 

 ただ唐突に、彼女は立ち止まる。ドニアザードとわざと距離を取る為だった、そして一瞬だけいつもの顔ではなく夢の中の彼に教え込まれた事で覚えた顔を耳元に持っていく。

 

「昨日は凄かったね。またキスしても良いよ♪」

 

 そう囁き顔を離すと、顔を真っ赤にしたバンパーが居る。その顔を見てどこか体が騒つく感覚も触れている手の部分が熱くなって来る。

 

 ニィロウという少女が恋を知ったのは、そんな日からであった。





ループ期間は3日です。

ドニアザードは目が覚めて処女奪われた事を2回とも覚えてます。
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