私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
2万字超えてる
夜のスメールシティ、暗躍する何かの気配は感じているが動きはない。いや気付けていないのだろう、少なくとも博士と直に相対してしまった私以外では難しい筈だ。相応に闇に触れているか、教令院の中枢にいなければ無理だろう。
そんな中で、私は。
「ディシアさん似合ってるよ、もっと女の子らしい格好もしていいんじゃない? せっかく可愛い顔してるんだから」
ディシアさんに、凄くラフな格好をさせて楽しんでいた。元々の格好よりも露出は少ないと思うが、着慣れない下着をつけているせいか顔は赤い。
「ふざけた事を言うな!」
「でも、着替えてくれたって事は覚悟は出来たんだ」
同意はある。それに楽しむのはここからである、私は前もってある程度の話はしても来た彼女を見て、内心喜ぶ事は出来るだけ隠しているが、正直この格好見れるだけ貴重だし、暇つぶしになっている。
「言っておくが、私は傭兵の中でも力自慢ができる方だ! 今更無しとは言うなよ!!」
「それはこっちの台詞でもあるよ」
ただ彼女がここに来るまで、色々とあったのだ。ふと、そんな事を思い出してしまう。
☆
スメールシティで、私にとっては長い夜が明けた。寝ていないが眠気はない、ニィロウとドニアザードという両手に花状態で花神誕日を乗り越えて夕方になった。
ちなみにニィロウは『またキスしても良いよ♪』とか調子に乗って無自覚な色気を出していたので望み通りの事を花神の舞をした直後に部屋に連れ込んであげたよ?
そのまま夢以上の長さと深さのキスをして足腰立たなくさせてあげて『そんな事言う悪い子は、私みたいな紳士じゃなきゃ赤ちゃん作られても仕方ないんだからね?』とお腹を撫でながら言って別れた。
私にはやる事があったのでそこでお預けしておいたのだ。もう私以外じゃ満足出来ない顔してて可愛かった、勿論濃厚なのをした直後の涎が繋がってる状態で凄い顔になっちゃったニィロウとのツーショットは撮ってあるし、彼女に渡しておいた。次会う時が楽しみである、態とドニアザードの前でしてみるとかも良いかもしれない。
話がズレた。私のやる事は人探しだ。
「お、旅人。探したぞ」
そして、見つけた。
「探したって、珍しい事言うね。いや……ま、まさか申鶴がどこかにいるの!?」
でも、私がまた何かしてくると思って全力で警戒している。
「大丈夫だって、私だって何度も送り込まないし」
対旅人への最終兵器だからな。
あの人が搾り取ったおかげで旅人には勝てたと思うし、いやあんな搾り取るとは思わなかったけど……あそこまで旅人の事、好きになっちゃったんだなぁって。
まぁその後に突然物足りないって顔して隠れてた私を押し倒して来たのは意味分かんなかったけど。旅人で楽しんでなかったらどうなってたのか……とんでもない痴女(他人事)だった(嫌いじゃないし逆転して楽しんだ)。
「おかしいって、何であんな事されたの!? 未だに分からないんだけど!?」
でも旅人が悪いんだよ。あんな美人の気持ちを分かってないだけじゃなく無防備でいるんだから、私は悪く無いだろう。
それに旅人、私は知ってるからな。ファデュイやアビスに絡まれた時に『バンパーが魔神を撃破した』事を否定してなかったの、知ってるからね?
そのせいで私への疑念ほぼ確信に変わったの、色んなファデュイ(♀)の体に聞いて教えて貰ったからね。
ちなみに教えて貰った子とかたまに見かけるけど、夜は大体悶々としている顔してて良い仕事をしたと思ってる。放置プレイの愉しさを最近は覚えてきているな。
「お前ら、何の話してるんだ?」
パイモン、君は知らなくて良いよ。大人の階段は流石に早いだろう、旅人が顔を真っ赤にして言わないけど、この顔申鶴好きそうだなぁ……顔剛力で固定してずっーと楽しんでたもんなぁ……よし、忘れよう。
「まあ、それは置いといて。旅人、紹介したい人が居る」
旅人が凄い顔しながら睨んでるけど、無視する。この手の話をしたく無いのもあるけど、単純に時間が惜しい。
私は旅人へ、彼が恐らく一番会いたがっていた存在を引き合わせる。
『初めまして、貴方が旅人ね』
「え? 急に現れ……!?」
その為に、ちょっとした仕掛けを行う。
「彼女はナヒーダ、正確に言えば────草神 クラクサナリデビだな」
2人が目を見開く。そこには、幼いながらもどこか浮世離れした雰囲気の少女がいる。
「草神!?」
「あ、これ意識体だから。実際彼女は見れてもここには居ない、疲れるから消すよ」
アーカーシャを通じて見せたそれは解いておく。これに関しては彼女の容姿をしっかり見せた方が良いと判断したからだけど、逆に言えば私にはこれ以上は出来ない。
「バン、どうやって彼女と?」
「話せば長くなるから絶対に話さない」
私はあの夜に色々あったのだ、忘れられない記憶だらけなのだ。なので言い淀んでるだけなのに、旅人がじとったした目をしてくる。
「……また、エロい事したの?」
「ナヒーダにはしてないし今後する事はない」
「あってたまるか!」
エロい事したのは2人だけだから大丈夫だし、本人達しか覚えてない。夢の中なので訴えられても立証は不可能、問題ない。
☆
大まかな話の流れを、旅人は聞いた。真剣な話であると、スメールにおいて何が起きているのかを聞いていた。
簡単に言えば、賢者達がファデュイと画策しているという事を。
「で、賢者達は何するつもりなの」
「分からん。学者だけの楽園にしたいとかの思想はあるけど、今すぐにそれ以外の排他措置を取る気も無し、優先度が明らかに上の何かがある。ロクデモナイ事、だろうな」
バンパーはファデュイと何度も事を構えている。その彼が言うならば、何かしら嫌な可能性を頭の中に描いているのだろう。しかし、そこでパイモンが疑問を持つ。
「でも、バンはどうやってそんな企みに気づけたんだ?」
「あ、確かに。バンって、ファデュイに関わりたがらないよね?」
バンパーはファデュイに関わるのはいつも、不可抗力と言っている。予期せぬ遭遇だとしても、それで彼は基本的にその真意を覗かなければ関わらない。ただファデュイが滞在する程度では敵対しないのだ。
なお、旅人は知らないがただの駐在員であるファデュイにはよく手を出している。具体的な例としてはモンド方面にいる可愛いファデュイは漏れなく彼のシンボルを胸か足に挟まされたか咥えたことがある。なお、騎士団に相談出来ない状況を作られているし毎回写真を撮ってるので全員泣き寝入りしている。
そんな彼だ。ファデュイの悪意に、どこで気付いたのか気になっているとアーカーシャから声が響いてくる。
『彼が輪廻を解いたからよ』
「リ、リンネ?」
『スメール人は夢を搾取され、夢を見る事は無い。貴方達も、同じ日を繰り返して夢郷に囚われていたの』
ナヒーダだ。彼女はバンパーが昨晩行った事、そしてその結果としてファデュイや教令院の思惑に気づいた事を話す。ただあの時のナヒーダはまだ完全に目覚めておらず、幸か不幸かどうやってニィロウを夢から解いたかまでは知らない。
なお、ニィロウを現実でガッツリ貪った事は知っている。
「朝起きた時にちょっと頭痛がしたけど、もしかして?」
「私も夢に閉じ込められたけど、閉じ込められたのは1発で気付けたからな。アーカーシャ弄ってた時にナヒーダに話しかけられたのはビビったけど」
バンパーの能力は特殊だ。ただ知っている者がいても元素の吸収と放出ぐらいしか把握していない、それ以上に出来る事が多過ぎるのだ。
旅人が本気で起こした喧嘩で辛くも負けたのも、彼が本当の本気を出していなかったからに過ぎない。
『私だって驚いたわ。夢郷の原因だからと言ってアーカーシャのフィルターを破って発狂する事も無いなんて、そこまで意識体が丈夫な人を見るのは初めてよ。こういうのを面の皮が厚いというのかしら』
「あの、知恵の神様? メンタル褒めるのにはそれ使わないから、後私まぁまぁ気持ち悪かったからね? カフェイン中毒みたいな感じですぐ治ったけど」
「バンパーって、人間?」
「どこをどう見ても清純派な冒険者だろうが」
「オイラ前から気になってたんだけど、清純派ってなんだ?」
「化粧みたいなもんだ、気にするな」
旅人がバンパーをいよいよやばい奴を見る目をしてくる。ただ、そこに彼がナヒーダの言う通りの事をしたのには驚かない。
『もし彼が止めていなければ暫くは輪廻が続いていたでしょうね。そうなれば助からない人も居たわ』
バンパーが輪廻を解いた事には疑問は持たない、何故ならバンパーだから。色んな女の子に手を出してる事は璃月やモンドで彼の名前を出した時の色んな女の子の反応を見ればわかる。
しかし、それとは別に今日のパイモンはどこか鋭いようで問いかける。
「でも輪廻ってそんなやばいのか? 病気になってるドニアザードも今日は普通に花神誕日を楽しんでたぞ?」
『彼女の魔鱗病は彼に禁忌の知識による歪みをエネルギー体として変換吸収された事で安定している。でも根本的な治療にはならないのは世界樹が汚染されているから、死域も同じ原因。もし彼が3日で止めて無ければ意識は摩耗し、彼女の自我は最初に消えていたでしょうね』
パイモンと旅人は絶句し、バンパーは「なにそれ知らないけど」と呟くが無視される。
バンパーが態々介入して来た理由が、そこにあったと知ったからだろう。
「それ、教令院って無茶苦茶やばい事してないか?!」
「そう言う事、私もここまでの大事になるとは思ってなかったし」
「でも、賢者達はどうする気なんだ? 今後夢郷に囚われても、絶対に解かれるわけだろ?」
「そこは時間でカバーするつもりなんだろ。私がスメールシティに居る限りは解けるし、私と事を構えるのは面倒だって認識してるみたいだからな」
分からない事が多い。目的もその輪廻を使う事そのものも分からない所がある、だからこそバンパーが頭を悩ませているのだろう。
旅人は彼を見る、これからどうするのかと問いかける目を向ける。
旅人は幾度と彼に策を講じられてきたので頼りにしているし、敵に回した時の脅威は申鶴の件で気持ち良…………痛いほど分かっている。
しかし、その彼に対して。
「とりあえず、旅人。後は任せた」
バンパーはお手上げのポーズをしながら、その場を去ろうとする。ただ旅人としては共に行動をするものだと思っていたので、呼び止める。
「どうして?」
「今回の件で、私はナヒーダを紹介する以上の事は出来ない。というか私に頼らなくても何とか出来るだろ? 妹を探すのに、一々私の力なんか借りてる場合じゃない」
煽っているように聞こえたその言葉に、パイモンは「お前、そんな感じ悪い奴だったか!?」と言うものの、この世界に来てから作られてしまった素の性格はこんなものである。パイモンが子供ではなく絶世の美女であればその口は体を弄って黙らせられているだろう。
ただ、旅人はバンパーのその言い回しなどに疑問が残る。
「何にもしないつもり?」
「いや、後片付けぐらいはするよ。スメールシティからは動かない予定だから、何かあれば声をかけてくれ。相談には乗ってもいいからな」
「後片付けって、何するつもりなの」
彼は手助けをしないと言っているだけで、何かをするつもりではあるのだろう。でなければ、ファデュイの居続けるスメールシティに居座るはずがない。
バンパーが出来ることは文字通り、スメールシティに居続けて夢郷を拒み続けることなのだろうと。だがそうだとしても、後片付けとは何なのか。
全てが終わった後に、何が出来るのかと。
「何もしないで済めば良い事だな、気にしなくていい」
ただ、隠し事の多い彼ははぐらかして去って行った。
☆
私がスメールシティに旅人と別れてから滞在して、三日が経った。依然として私は、ただスメールシティで借りている家の中で寛いでいる。
「思ったより、暇だなぁ」
ただあまりに動きがなく、暇だった。ちなみに動きとはファデュイや教令員の事で、何も起きていない。アーカーシャ端末は付けていても私に影響は無いので付けているが、そこからそれらしい情報も抜き取る事は出来ていない。
と言うかナヒーダと連絡が取れたのは奇跡なのである。私とてアーカーシャを弄ると頭を使うせいか副作用の類なのか気持ち悪くなるし、万が一にも私のせいで旅人達の邪魔をしてはいけない。今回の事件で私は完全に役に立たないのだから。
何故なら私と言う駒が止まる事で、敵の駒が止めるという事しか出来ない。
「博士さえ、居なけりゃなぁ」
博士との話し合いの結果としては、私の武力介入を封じる条件として博士の武力介入を止める事で合意した。私が当事者とならない事に対しては私は手を出さないし、博士は旅人が乗り込んで来たとしても目的物の作成が完了するまでは戦闘行為を自発的には行わないと言う条件だ。
私と博士がぶつかってどちらに軍配が挙がるのか、博士の自身からして不利なのかもしれないが向こうの判断としては『今の時期に面倒事は回避したいし、万が一にも目的の何かを壊されたら困る』と言う結論に至れたらしい。
私が本気で暴れたら多分、スメールシティ消し飛ぶからな。流石に巻き込んで戦いはしないが、相応の二次被害は出る。なので全部旅人とナヒーダに丸投げしたのだ、そこに託すしかない。
「どうするか、ニィロウに会いに行くか? いや、もう少し焦らしたいし……」
どうしたものかと考える。すると、扉の方からノック音が聞こえてくる。
「バンパー、あんたに用がある。入れてくれ」
一瞬ファデュイか何かだと思い身構えたが、この声は違う。ドニアザードの護衛である傭兵だ、夢の中では何度か顔を合わせている。現実では一回だけだけど、下手な事したらボコボコにされそうな感じのする人だ。
「ディシア、さん? 1人ですか?」
「ああ、話がしたい。出来れば内密に」
「まぁ、どうぞ」
中に招くとそこには長身の女性が入ってくる。少し肌が浅黒いのは砂漠の民の出身だからか、ただ至る所に古傷らしきものも見える。噂にはベテランの傭兵、それがディシアさんだ。
「……護衛の一人もいないのか。そのなりであんな事を出来るなら、危ないだろ」
「傭兵の営業ですか? あと、私は冒険者ですけど」
私の見た目は弱いとかよく言われるけど、着痩せしてるだけだから。まぁ油断させる為にわざとそうしてる所もあるし、フィッシュルとか私を押し倒した時『か、かたっ……ひゃわ、あ、すご……』とか言ってずっと服の上から胸板触ってたしね。
まぁその後に彼女がどうなったかは置いておくけど、ディシアさんは何やら暇つぶしでここにやって来たようには見えない。
「単刀直入に言う、雇われてくれ」
「はい?」
ただ、傭兵に雇用の話をされるとは思わなかった。
☆
ディシアは、ドニアザードの護衛を務める傭兵だ。ただその力は熾鬣の獅子の異名を持つ程の存在であり、傭兵の中でも屈強な戦士であると認められている。
そんな彼女とドニアザードの関係は傭兵と護衛対象に止まらず、親しい仲にある。それこそドニアザードにとっても、ディシアにとってもかけがえの無い関係であると言える。
そんなドニアザードの為に、彼女は動いている。
「お嬢様の病気を治す方法は、無い。だが素論派の異端児バンパー・ミンツ、アンタを除いての話だ」
魔鱗病は不治の病。それどころか延命療法も大人しくしているぐらいしか無いほど、精々痛み止めの処方程度しか対処のしようのない病気である。ドニアザードはこれに罹っており、余命は幾許も無いと彼女も理解していた。
だがそれも、バンパーという謎の男が現れる迄の話だった。
「ある程度は内緒にしてって話はした筈だけど」
「常日頃からお嬢様の護衛をやってれば分かる、聞き出した私を責めてくれ。うちの雇い主も相応の待遇で迎え入れる準備がある」
ディシアはあからさまに元気になったドニアザードを気遣い病気の進行について軽く検診をしたのだ。別に彼女が医者として精通しているわけでは無いのだが、無理をしているのではないかと感じたのである。
だが見てみればウロコの痕が無くなっており、治ったわけではないと言うものの、何をしたのかと聞いてみれば彼の名前が出て来たのである。
「待遇、ですか」
バンパーという男について、ディシアは調べた。モンドや璃月を中心に活動する冒険者で、それ以外についての情報は精々10年以上冒険者として活動している最年少記録を持つ男である事ぐらいだった。
しかしそこから更に調べるといくつか論文を出しているバンパー・ミンツという学者に辿り着き、教令院と討論会が行われた際には本人が認めていたと聞く。
そんな男であれば、魔鱗病について何か出来てもおかしくない。そこからディシアは雇い主であるドニアザードの父親と話し、ある程度の条件を抱えてやって来たのである。
「モラならある。冒険者とライセンス料で間に合ってるし、私はどこかに縛られる気は無いよ」
だが、条件についての話をする前から乗り気ではない。
「定期的に回診へやって来るだけでいい。その際の旅費や滞在費は勿論、滞在場所なんかの提供も出来る。滞在中の護衛や現地での伝手として私も居る。勿論守秘義務は条件に盛り込む、悪い話じゃ無い筈だ」
だが具体的な資料を渡せば、違う筈だ。そう思いディシアは資料を渡す。中には具体的なモラの額や日程、提供する保養施設などやれるだけの事を短期間でまとめ上げたにしては完成度の高いモノになっている。
事実、彼もその内容に対して感嘆の声をあげる。
「間違いなく良い話だな。得体の知れない奴に出すには破格だと思う、これを払う資金力があるのは驚きだけど」
「名家だからこそだ、納得してもらえたなら母印を押してくれ」
一人娘の為にやれる事を全てやろうとしている、その熱意を感じたのだろう。ディシアの仕事はその熱意を必ず成就させる事であり、傭兵としてでは無くドニアザードの友人として、彼女の親から信頼された代理人として来ている。
「私が今考えてる事、分かる?」
だが、そう簡単にはいかない。
「どうやって、私のやった事を隠せるかって事。正直言って、私はこんな事をする為にドニアザードを助けたわけじゃない」
バンパーという男がやった事は、ティワット全土を見ても成せる者は居ないと言える。非合法で倫理的にも逸脱した物、ディシアは知らないが魔神の残滓を入れる事で中和する方法はあるが、それを除けば間違い無く彼にしか出来ない芸当である。
「お嬢様に対して『支払って貰う』と言った筈だ」
「もう徴収したよ。あんな美人なお嬢様と手を繋いで花神の舞を見れるなんて、贅沢だよな」
「……お嬢様は人徳のある方だ、必ず気にいる。その上で、印を押してもらえないのか?」
ディシアは少しだけこめかみが動くが、冷静を保つよう心がけて言葉を紡ぐ。彼女の本来の仕事はこんな事では無いのだが、仕事して受けている以上冷静になれている。
ただ、それでもバンパーは首を縦に振らない。
「押せない。この条件は互いに生きてる限り『私が一生縛られる』事になる」
バンパーは言っていた、魔鱗病は治せないと。彼に出来るのは一時的に進行度をゼロにする事であり、ドニアザードは病魔に患う事は変わらない。
つまり死ぬ迄続くのだ、彼はそれを理由にこの条件ですら飲めないのである。ただそれだけでは無い、彼女が魔鱗病に罹っている事は相応の人達に知られているが、同時に彼女が遠く無い未来に死ぬ事も分かっているだろう。
一番な理由は、彼女以外の病気を見る未来がある事だ。
「彼女の不幸は分かってる。でも、不幸なのは彼女だけじゃない。私はその全てを、救う事は出来ない」
ドニアザードだけを救う事は出来ても、他を救わなければならないとなるならば、彼は誰も助けない。平等な不幸を選ぶ、何故なら彼は本来この世界の存在ではない異物であるから。
その自覚があるからこそ、彼は目の前で起きた事は対処しても世界の裏側で起きる戦争には目を向けない。
「だから、お嬢様も救わないつもりなのか?」
「……こんな不幸、世の中にありふれてる」
言い訳、なのだろう。間違ってはいないが、これは人の命に関わる話である。
ディシアは反射的に胸ぐら掴んだ。彼の体が少し浮き足になる程の、剛力で彼を掴み上げた。彼女が交渉役として選ばれたのは最悪な考え方ではあるが、こう言った方法も視野に入れてのモノだったのかもしれない。
ただディシアとて赤の他人の為にここまでしない。ドニアザードの為だからこそ、ここまでするのである。
「アンタには、力があるんだろうよ。知識や知恵なんかも見かけ以上にあるんだろうし、冒険者としての修羅場は多少は潜って来たのかもしれない。でも、アンタにしか出来ない事を! そう言われて諦められるわけないだろ!」
ドニアザードへの想いからだろう、ディシアの声が響く。一般人はこの覇気を受ければ気絶してしまってもおかしく無いほどの圧力がある。ただ、バンパーの顔色は変わらない。
「手、離してもらえます?」
心に響いていない、というよりは落ち着き過ぎている。冒険者として多少の修羅場を潜っていたのかもしれないが、ディシアはそこまで気を回せない。
ただ彼女に出来るのは、懇願する事しかない。
「お嬢様は幼い頃から死を覚悟して生きて来た。延命の為に家からは出ず、花神誕祭を見る事が人生の最期と迄考えていた程だ。私とて傭兵として命を賭して仕事をする事がある、だが私のそれとは違うんだ」
ドニアザードとディシアの歳は殆ど変わらない。ドニアザードは死を間際にしていても、明るく生きれている。その理由は神による眼差しのおかげであるが、それでもディシアはそこまで前向きに生きれる自信はない。
ありふれた不幸なのかもしれない、だがディシアは救われて欲しいのだ。今迄苦しんできた彼女に、現れた救いを消したくない。
「頼む、お嬢様を……明日も来年も、何十年も先がある事を見せてくれ」
ディシアは掴んでいた手を離す。そしてポツポツと、呟いていく。
「普通に恋愛をして、普通に暖かい家庭を作って、普通に幸せになって欲しいんだ」
傭兵である彼女とは違う人生を歩んでいるのだ。そう、生きて欲しいのである。普通の女の子としての将来を考える、そんな人生をを
ただここで初めてだろう。そんな想いを正面から受けたバンパーが、少しバツが悪そうな顔をしながら溜め息を吐く。
「……なら、ディシアさんの覚悟は決まってるんですか?」
そして、そう聞いて来た。
「私の覚悟、だと?」
今迄、話していたのは正確にはディシアではない。ディシアが代弁したドニアザードの両親の想いである。確かにディシアもそういった想いはあるが、親のそれはそれ以上になるのは言うまでも無い。
ディシア自身の覚悟、そう言われてしまえばそこには介入していらゆところが無い。精々あるのは護衛役の任を受けることぐらいであり、覚悟と呼ぶほどのものでは無い。
だから聞いたのだろう。ドニアザードに対して、ディシアという友人はどこまでの想いを持っているのかと。代理人ではあるがここにいるのは彼女だ、その想いを計りたいと。
「今日の夜、20時ぐらいに来てください。そこで貴方が勝てば、私はさっきの条件……は少し弄りますけど、ドニアザードを死ぬ迄治し続けると約束しますよ」
それならば、仕事を受けると言い切った。
「ほ、本当か!?」
「はい。とりあえず、後でこれ着てくださいね」
ディシアは思わず声を高くする。しかしそう甘い話ではない、先程までまったく首を振らなかった男が、そう易々と動くはずがない。それを分かっていない。
「ん? 着る?」
ディシアは渡されたものを見る。見てみれば普通のハーフパンツとシャツ、それに自分が着たことも無い赤い下着が入っている。今の問答の間にいつの間にか用意していたようだ。
しかし、これが何を意味するのかピンと来ていない。
「野球拳って知ってます?」
そのルールを軽く聞いて、初めて理解したようだ。
☆
「この、変態が!」
話は冒頭に戻るわけだが、ディシアさんはラフな格好で私の借りてる家に来た。ハーフパンツにシャツと下着、それに薄い上着とかなり似合ってる。ちなみになんでそんなのあるのかって話だけど、ハーフパンツとか服は行きずりの冒険者の女の子に貸したりしてそのまましたりするから用意している。雨宿りで貸す服は脱がせやすい方が良いからね♪
それと赤い下着の方だけど、これは私がこの世界でブラジャーもパンティーを普及させたので待っている。実はライセンス料だけで食うに困らないのだ、逆に言うとこの貯金を一回無くしたモナには相当鬱憤をぶつける正当な理由になる。もう3回抱いたけど後5回は抱くつもりである。
と、そんな事を考えているとディシアさんは動揺し始める。
「こんな変態だとは……いや待て! お嬢様に手を出して無いだろうな!?」
出してるけど夢の中のでセーフです、とは言えないが鋭い。まぁ処女だからセーフだよ、心の処女は完全に食べ尽くしたけど。無理矢理したのと甘い言葉で押し倒したの、どっちの反応も楽しめたのお得過ぎた。まぁどっちも最後は同じ顔してるんだけど。
とりあえず、ディシアさんは暇つぶし兼ニィロウやドニアザードといった子と違った属性なので楽しむ為に呼んだのだが、可愛い反応をしてくれるだろうか。
「それじゃあゲームだけど、勝敗は負けを認めたらね」
ディシアさんは身構える。一体どんな事を言われるのかと、あまりにあまりな内容……この場で奉仕をしてくれなどと言われたならば半殺しにされるのは分かっている、一応はちゃんと勝負はする。
ただ、それは私の世界にあった野球拳に近いものになるのだが。
「お互い着ている服は5着、その状態で腕相撲をする。負けたら一枚脱いで、裸になるかもしれないけど……その状態で負けたら、これを1杯飲んでもらう」
テーブルにはピンク色の液体がある。見るからにぶどうジュースではない、嫌な雰囲気がある。
「な、なんだそれは? 毒か?」
「毒じゃないよ、媚薬」
「び、びや……!?」
そして、その嫌な雰囲気はディシアさんも勘づいていたようだ。テーブルの上にはそれだけ、後は互いに座る椅子があるだけだ。一応頑丈な石製の机であるので、壊れる事も無いだろう。
ただこれで彼女は乗らない。彼女には明確な勝ちの道筋を、有利な条件にしなければならない。
「覚悟が出来たら席に座りなよ。ちなみに私は負けを認めるか5回脱いだら負けだから、5回勝てばそっちの勝ちだよ」
私は必ず負けがある。そう聞くとディシアさんは席に座った。
私が無効試合にでもすると考えていたのか、だが私はそこを気にしない。
「やってやる、吠え面かくなよ」
あくまでも暇つぶし、剣を握っている硬く厚い手の感触を感じながら、私は用意を始めた。
☆
「よーい、どん」
バンパーの掛け声で、それは始まる。ディシアの方が背も高く腕も長いので組みにくさは多少あるが、そんな事は関係無いと言わんばかりの顔をしてバンパーは手に力を込める。
彼とて冒険者、並の存在よりは遥かに力がある。
そして、勝負は一瞬でついた。
バンパーの組んだ右手が石の机に叩きつけられた事で。
「痛ってぇ!! 最初から元素力も込めた本気で腕壊しに来る!?」
机が壊れると思うほどの音が鳴った、その表現が出るほどのダメージを右手に負った彼は手を振り回しながら呻いている。あまりにあまりな呆気なさに、勝負を本気で挑んだディシアの顔が引き攣っている。
「わ、悪い。その、見た目通りの弱さとは思わず……神の目も無いのか?」
ディシアは自分に対して少なからずエロい事をしてくる為に今回の事を計画してきたと思っている。だが実際はその覚悟がこの程度のもので歪むのではないかとテストをされていたのではないかとさえ考え始めてしまう。
それぐらい、呆気なかった。
「……一回、普通の腕相撲していい?」
バンパーがあまりにあまりな結果だったせいか、元素力抜きの勝負を頼んでくる。ちなみにこの腕相撲にルールがあるとすれば被人道的な行為、目潰しや閃光玉を投げ付けるなど余程なことをしなければ良いだけなので、元素力を使う事は問題無い。
だからこそ、純粋な筋力での勝負を挑んだが。
「痛い! さっきよりマシだけど、痛い!」
普通にディシアが勝った。少し拮抗した後、直ぐに押し倒された。
「……なぁ、負けを認めたらどうだ? その腕、壊れるぞ?」
「良いよ、本気でやるから。ここまですると思わなかったけど」
ディシアとしても弱いものイジメをしている気分にはなりたくない、ただバンパーは辞めるつもりが無い。そうなると仕方ないだろう、バンパーを最短で負かすしかない。
「その前に、服を脱げ」
「あ、はい」
そのまま組もうとしていたのでそう指摘すると、彼は上着を脱ぎ出す。そのまま2着目のシャツも脱ぎ出し、2敗として考えていたらしい。ただそれについて2敗目は勝負外の話だとディシアが指摘しようとしたが。
「……意外に、締まった体だな」
意外な体を見て、少し戸惑う。十分に鍛えられた体だ、学者と考えていたのでそこまで仕上がっているとは思わなかったのだろう。
「最低限鍛えてるからね。一応聞くけど、辞める気は?」
「あるわけないだろ」
だが、まだ続けるならさっさと剥かなければならない。仕方ないのでディシアはもう一度、腕を組む。
「言っとくが加減は出来ない、怪我しても知らないからな」
そして今度はしっかりと元素の力を込めて、掛け声と同時に腕を押した。ただ口では加減出来ないと言ったものの壊すわけにもいかないのでさっきの半分程度の力で押した。
だが、何故か右手の甲に感触があった。
「はい、私の勝ち。じゃあ、一枚脱いで貰えるかな?」
気づいた時には、勝負はついていた。
☆
私の力ってどれくらいのものなのか。少なくとも腕力について、私はかなり自信がある。私の知る限りでトップの腕力を持つのは申鶴であるが、それを条件付きとはいえ組み伏せる事ができる。
組み合わせられる申鶴は可愛かったなぁ、旅人にしてたみたいに無理矢理キスして黙らせるとか楽しかったし。半端なSを攻めるのが一番楽しいんだよね。
それで条件の話だが、単純に岩元素の力を使うだけだ。後日筋肉痛が出るけど、使用中は片手で岩を割れるし握り潰せる。最近は多少の量じゃ副作用が出なくなる程『進行』してるみたいだけど、気にする事ではないだろう。
そしてそんな私と腕相撲をしているディシアさんなのだが。
「どうする? 辞める?」
「ま、まだ3敗目だ!」
下着だけになっている。健康的な褐色の肌と鍛えられた体に赤い下着な似合っているし、恥ずかしさで頬とか朱色に染まって来てるのも良い。強気な人を脱がせるの、最高に楽しいよね♪
「はい、また私の勝ち」
なので容赦なく勝つ。わざと拮抗させて勝った時も良い反応してたが、これはこれで良い。ディシアさんは本気でやってるし頭の中で遂に下着すら脱がされる事に頭をぐるぐると回しているのだろう。傭兵で露出の多い服装をしていたが、やはり最後を見られるのは恥ずかしいようだ。
「辞めてもいいよ? ドニアザードさんの話は無かった事にするけど」
なので煽る。ここまでして帰ってもいいが、その程度の覚悟だったら話は受けないと示す。彼女の意思は本物だろう、託されたものもそうだ。
なら、逃げれない。
「う、うるさい! 少し後ろを向いてろ!!」
なのでディシアさんは後ろを向いて下着に手を掛ける。下の方を脱ぎ始めた、綺麗なお尻がよく見えるしこういう脱いでる瞬間って凄くいいよね。
彼女のそれを私しか見ていないという背徳感、やはりこのゲームを提案をした私は天才らしい。
「ぬ、脱いだぞ……って、何見てんだ!」
勿論後ろなんか振り向かずにしっかり見てた私の前に、大事な所を手で隠しながらディシアさんは座る。座れば股は見えないからだろう、だけど私はその程度で許す程今は優しくない。
頑張っていこうね♪
☆
また、負けた。最初とはまるで違う、ディシアとて傭兵として恐れられる程の獅子だ。しかし、全く歯が立たないのだ。腕から感じられる圧は、先程までとは全く違ったものに見えている。
ただ、目下の問題は自分の胸を隠す赤い下着のことだろう。
「はい、脱いで。まぁ脱がないならそれはそれで好きにしたらいいけど」
バンパーは、いつでも辞めれば良いと言う。ディシアを辱めているのは明らかであり『脱ぐ程度で揺らぐ覚悟なんて生ぬるいね?』とでも言いたげな目をしている。
ただディシアは、引く事は出来ない。彼女はブラのホックを片手で外し、肩から順に紐を外していく。そして大事な部分が見えないように、片手で隠しながら器用に外した。
「ぬ、脱いだ! これでいいんだろ!?」
恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。ディシアは人前で肌を見せた事がない。いや傭兵としてそんな事を気にしないで戦っているし、動きやすい格好で露出は多い服ではあるが、ここまで見せた事など無い。
そして、その恥ずかしさを消す為か睨みつけながら叫ぶ。
「な、なんでこんな強いんだ!? 学者なんだろ!?」
「いや、本業冒険者なんだけど」
10年も冒険者をして来たと言うが、そこまでの偉業を成した話は聞かなかった。最年少の冒険者と聞いていたとしても、実績も無い冒険者という肩書だけを持つ学者と考えていたのだから仕方ない。仮に冒険者として確かな力を持とうとも、10年程度では測れない部分もある。
「(ありえない! 私だってそれなりの修羅場は潜ってるんだぞ!? こんな奴の名前が、なんでスメールどころかテイワットには響いていないんだ!?)」
その認識の甘さが、今の彼女を表している。
彼女は片手で胸を隠しながら、片手で彼と腕を組ませる。本気でやっても勝てなかったのに、片手では勝てるはずもない。
「っ、あ、くそっ……!」
だから当たり前のように、彼女は負けた。
そして、それを惑わす言葉が耳に入ってくる。
「辞めても良いんですよ。誰も貴方を攻めない、流石に媚薬と分かっていて飲める覚悟なんて普通は無いでしょうし」
目の前にあるのは媚薬だ。人間の三大欲求の一つを活発化させてしまう薬だ、それも服一枚も着ていない彼女がそれをすればどうなってしまうのか分からない。
だが、ディシアは小さなガラスのコップに並々と注がれたそれを手に取る。
「う、ううう……飲めば良いんだろ! このぐらい!」
そして、一気に飲み干した。妙な清涼感を感じながら、喉に少し引っかかるそれを、コップを机に置いて飲み干したと示した。
しかし、彼女は思ったよりも効果のない事に疑問を持つ。
「(あ、あまり大した事無いな。精々少し頭がぼーっとするぐらいだ、問題無い!)」
なのでそのままてを組み直そうと、手を出した。このままでは勝てないが、何とか勝つための方法を頭の中で考えなければならないだろう。
媚薬が大した事がないならむしろ水の補給が出来るぐらいの気持ちでいける、それならば向こうが諦めてくれると考えるが。
ふと、ディシアは気づく。
「……疲れて来たのか?」
中々、バンパーが手を組んでこない事を。
「え? まさか、まだまだいけるよ」
そう言うが、バンパーの顔色には余裕はあれど完全に油断しているそれではなかった。これほど圧倒しているにも関わらず、それが少ないと感じる。
思えば、彼は突然強くなったのを思い出す。そして、それは先程よりも少し時間がかかって倒された自身の右手を見て、確信する。
「(さ、さっきより力が弱い。ドーピングか!? なら、効力の消えたどこかのタイミングで、私は勝てる!)」
ドーピングをするな、何てルールには無かった。いやそれ込みでもディシアは圧倒して勝つつもりだったのだ、だがこんな力を引き出すなり生み出すなりするには、相応の代償が必要であると考えられる。
「何か目の色変わったけど、諦めてなさそうだね。じゃあ、また飲んで」
そう言われるまでもなく、ディシアはコップに注がれたそれを飲み干す。
しかし、今度はコップを割らない程度に叩き置く事は出来ない。一気に飲んだ瞬間に、自分の体を電流が走ったかのような感覚があったからだ。
「さ、さっきより濃っ……んっ!」
まだまだ頭で考える事が出来る程度の異常だ、しかし少しだけ体が熱くなってくる。部屋を抜けてく風が体を撫でていく感触を、しっかりと感じてしまう。そんな異常の理由を、分かっているのかバンパーは答える。
「水割りにしてたけど、どんどん原液に近づいていくからね」
「なっ!? べ、別に……平気だ!」
これは、根比べである。ディシアが頭を回せなくなるほどに媚薬を飲まされるか、その前に向こうのドーピング効果が切れるかの、その勝負だ。
去勢でも彼女は張る、まだまだ元気で余裕があると見せる。
「ふーん。乳首、見えてるよ?」
「っ!? み、見るんじゃない!」
しかし、そんな彼女を嘲笑うように指さされたところには褐色の肌の頂が見えていた。手から溢れていたのだろう、慌てて隠し直す。薬のせいで汗をかき、薬のせいで反応し始めたそれが溢れたのだ。
「眼福眼福。良いもの見れたね」
精神的な有利は、絶対に取れない。
「でも、隠してる限りは私には絶対勝てないから」
そう宣言する通り、彼はそこから更に勝ち続けていく。
ディシアにとっては長い悪夢である。最初は飲んでも大して影響も無かった薬も、回数を重ねていくほどに体の熱さは吐く息を感じてしまうほどになっていく。
「6杯目、そろそろ限界じゃない?」
だが、まだドーピングが切れる気配はない。
「んぁ、あ、まだ、まだ……!」
ディシアは、まだ考える力は残っている。体が熱いだけで、彼女自身はまだドロドロに溶かされてはいない。
しかし、溶かされるのは時間の問題であるとは感じていた。この調子では5杯も飲まされれば、抵抗する力すら無くなってしまうと。
「かなり精神的な強さがあるね。正直驚いてる」
だが、バンパーもここまでディシアが抵抗を見せてくるとまでは考えていなかった。彼の考えでは、下着を剥がれる時かその直後に諦めて終わるつもりであったのだが、ここまで本気である事には少なからず感嘆の声が出てしまうのも仕方ない。
ただ、それで彼は自分は負けないと思っている。
「でも大丈夫? まだ原液の5%ぐらいなのに」
バンパーとて、確かに能力に限界はある。しかし、腕相撲程度で副作用が出る程の体では既に無いのである。
無論、少しずつ人間である証明とも言える老いが遅滞していく。そしてそれが止まれば死ぬと考えている、ただ死ぬ事はどうでも良く使う事そのものには忌避はない。
ここで死んだとしても、誰にも見られた事のないディシアを楽しめているので良いとか考えている。
そんな軽い気持ちで、彼は暇つぶしをしている。
「ま、けない」
ディシアが勝るとしたら、その部分だけだろう。
「わ、私は、勝たなきゃいけない!」
瞬間、ディシアは隠していた方の手を机にやる。当然、彼女の健康的で豊満な胸が露わになってしまう。
薬により主張をしてしまう丘の頂きは興奮している証だ、しかし彼女はそれを見られるのを諦めたのである。
彼女の覚悟は、頭を薬で惑わされ始めてからようやく、ねじ伏せるように決められたのだ。
「胸を見られたぐらいでなんだ、命が取られるわけじゃない! 私は、お嬢様を絶対に救ってみせる!!」
そして、腕を組ませた。あまりに男気ある行動に、バンパーも反応が遅れたが、全力で加えられた圧力で慌てて力を込め始める。
それは間違いなく、今までのどの瞬間よりも力がこもっていた。
「私が、勝つんだ!」
ディシアの想いの力が神の目と呼応して限界以上のものを引き出したのだろう。負けられないと、ドニアザードを救う為に自分の全てを出し切るつもりで。
「……本当、私じゃ真似出来ない」
彼が思わずそう呟く程の力は、凄まじいものだっただろう。このまま行けば、岩元素の力が徐々に減っていくバンパーは敗北する。そう彼自身が確信してしまうほどに。
「私も敬意を示すよ、使うつもりは無かった」
「あ!? やってみろよ! その上で、勝……え? あ、え?」
途端に、だろう。彼女の体から力が抜けていった、炎元素によって強化された自分の力から、それが消えていった。
「あ、あ、ま、まだ……私は、まだ」
同時に、彼によって手は落とされていた。完全な敗北である、何をしたのか最後になってわかったが、彼は元素を吸収したのである。ディシアからそれを吸い取り、腕相撲での勝負を絶対に負けないものとした。
ここまでされてしまったのだ、勝てるはずがない。そもそも彼には神の目はないのに、元素の力と張り合うドーピングなど早々あるものではない。彼には、その特異的な力があったのだ。
力無く机に倒れる上半身は、筋肉の疲労により中々起き上がれない。やれる事は全てやって負けた、羞恥などどこかに消えていった。ただディシアは、成し遂げられなかったことに、弱々しく口からそれを溢すしか出来なかった。
ただそんな彼女を見ながら、彼は席を立ち上がると彼女を横目に呟く。
「仕事の件、受ける事に決めた」
そして、その意思を明確にしている。
「へ?」
ディシアは今聞こえた事がまやかしではないかと顔を上げる。そこには半裸で頭をかきながら意外そうな顔をする彼女を意外そうに見るバンパーの顔があるのだが、何故そうなのかわからない。
しかし、これは彼にとっては暇つぶしではあるものの『ディシアの覚悟を確かめる』のが目的であったのを彼女は思い出す。
「ディシアさんの想いは本気だったし、ここまでふざけた事して申し訳なかったね。君の想いを理解した」
彼女の覚悟は、バンパーに認められたのである。
「負けだよ、私は勝てない。ドニアザードが治るか死ぬ迄、私は生きてる限りは治療をする事を約束する」
「ほ、本当か!?」
そして言い切った。彼はドニアザードの治療をすると、絶対に了承しなかったそれを了承したのである。嬉しさで体を持ち上げて剥き出しの上半身は晒してしまうが、それはすぐに隠す。
顔を赤くして見られた事を恥ずかしがっているが、それでもディシアはバンパーに目を向けて今日の自分の行動は無駄では無かったと、仕事をやり切った事にようやく安堵する。
「まさかここまでとはね。あ、胸綺麗だったよ」
「言わなくて良い! 誰にも見せた事は無かったんだぞ!?」
「私が初めての男か。ドニアザードに言ったら面白いかな?」
「ぶっ殺すぞ変態!!」
途端に、先程までの緊張した空気が無くなる。あくまでも対立していた関係であるが、これからは共にドニアザードを守る役目を持った事によるものだろうか。
ドニアザードにそんな形でセクハラをするなら今度は容赦なく殴り倒せるだろう。ディシアにとって腕力など彼女の傭兵としたの力の一部でしかないし、戦闘であれば内容も変わってくる。
「冗談きついなぁ」
「私の裸を見た分だけ殴るからな」
「……あ、マジ?」
「マジに決まってるだろ」
なので、後で裸を見た分の締めはするつもりだ。そうでもしないと示しがつかない。
だからだろうか、彼は気を逸らそうと机に目をやる。
「あ、最後に1杯飲んでね、負けとは言ったけどそれは一応ルールだし。それで終わるから」
そこには並々注がれたグラスがある。最後の一杯は飲む前にゲームは決まった、無論飲む必要など無いのだが幾分か時間が経って落ち着き始めてかつ、バンパーの逃げ場をなくすために彼女はそれに手をやる。
「ああ? はぁ……んぐっ、ふぅ。このぐらい、大して変わらな……あっ!?」
それが、悪手であったとも知らずに。
「ん? どうしたのかな?」
途端に、今までとは比にならない体の熱さを感じる。ただの微風ですらくすぐったい、頭が呆然と思考が停止し始めてしまいそうな感覚が湧き出してくる。
それは仕方ないだろう。ここまでしておいて、彼が逃すはずが無い。
「あー、そう言えば。最後は原液で出しちゃったな」
彼は最初から、この子猫を貪るつもりだったのだから。
☆
ディシアは、容易く寝室に連れ込まれた。抵抗する力が無くなるほどの媚薬を飲んでしまったのだ、移動の時は胸と股をいじられながら連れて行かれたので廊下には汗等彼女の液体が寝室までの線を描いており、それだけでも耐えられないものだったのがよく分かる。
そして、ベッドではそれ以上だった。
「あ、あ、あああ!? そんな、乳首ばっか弄るな!! ひっ、いや! あ! いやぁ!!」
前から押し倒す形で、彼女の乳房を弄り続ける。主張されたそれを指で弄び、引っ張っては滑らすように外していく。痛みはない、そんなのは経験から完全に管理され一番彼女に行く並が大きくなる力加減とタイミングを合わせて楽しんでいる。
「こんな熟れた体で外に出たら危ないし、スッキリしてった方が良いもんね?」
そう言って、彼はまだまだ続ける。
「いや、あ!? ひゃめ、ひゃだ、そんなしたらダメになる! お願い、せめてゆっく……んぁっ!? あああっ────!!??」
ディシアが懇願しても、それは余計に彼を昂らせるだけである。
「コリコリされるのどう? 触って欲しそうに硬くなってるし、聞くまでもなく喜んでるか」
彼女は体をのけぞらせる。しかし逃げれない、彼の両手を持って止めようとしても力が入らないので意味がない。彼女の汗を揉み込まれて妖艶に写るそれに、バンパーの手は緩められない。
「ひゃ、あ、舐めるな! 吸っても、なんも……あ、いやだ、また、あっ!!」
そこから暫く、30分は胸だけを攻めていく。途中から吸い付いては舌で転がしてやり、軽く噛んで痛みの出ないギリギリの強さで感度を確かめていた。彼女の顔はとんでもない感覚が与えられていた事が分かる。
そして、その頃には彼女の体は出来上がっていた。
「はぁー、はぁー……んぁっ……あ、う、ん……ん……」
バンパーによって開発され、メスとしての機能を理解させられたディシアがいた。今の彼女を見ても、逞しい傭兵であったとは感じられないだろう。
しかし、バンパーはそれを見てどこか満足そうに頷いた後に。
「さて、そろそろ……こっちもほぐしておこうか」
「へ……? な、に……ひやっ!?」
彼女の無防備な股を、指が貫いていた。
「な、え、なん、ふわぁっ! あ、わ、あ!」
「さっきも触って思ったけど硬いなぁ、普段弄ってないでしょ? 膜は無いみたいだけど運動してたら無くなることもあるし、まぁそれはそれで良いか」
「へ、変な事、言うな! あ、あっ────!?」
既に出来上がった彼女の体では、彼の指なんて簡単に受け入れてしまう。その証拠に、淫猥な水音が絶え間なく彼が股を弄るたびに鳴り続けている。
「でも安心して良いよ? 今日でちゃんと、馴染んで絡むぐらいほぐしてあげるからね♪」
もはや、ディシアに出来たのは諦める事だけだった。
「ひゃ、あ、んぐっ……ん、あ、おっき……」
彼のそれが、ディシアの体に入り込んでいく。ゆっくりと彼女の誰にも許したことのなかった場所へ、ズカズカと土足で入り込んでいく。だが残念な事に、彼女の体そのものはそれを受け入れる準備ができてしまっていた。
「あ、入って、あ、熱っ……ん」
しかし、今回の彼は一気に貫いて痛みを一瞬のものにするいつもの時とは違う。
ゆっくりと、根元まで入るのに数十秒をかけて挿入していた。だからだろう、ディシアの体は先程までの無茶苦茶に体を弄られている時よりは幾分かマシに見える。
しかし、マシなのは今だけであるのは分かっていないだろう。根元まで入り軽く押し込んでから、彼のそれはゆっくりと引き抜かれていく。痒い所をギリギリまで耐えてから撫で、そしてまた耐えてから撫でられる、そんな感覚を性行為でされてしまうなぞディシアに分かるはずが無いのだから。
☆
その行為が始まってから、どれだけ経ったか。少なくともディシアに分かるのは、分からないほどに時間が経っているという事だろうか。
しかし、ディシアはまだ精神を保てていた。ただこれは彼女の精神が強固であるから、というよりは別の要因だろう。
「あ、や、もう、良い加減に……!!」
彼はゆっくりと、何度も彼女の奥にぶつけては引いてを繰り返していた。1回の往復で30秒は経っているだろう、その分彼女の精神は削られてはいないのだが、徐々にもどかしさが湧き上がって来ている。
「(あ、さっきから、ずっと……! お腹が、もう……さっさとしないと、あっ! あ、頭の中変にされ……んっ、んっ!)」
彼だって苦しい筈だろう、なのに動きが変わらない。徐々に昂りは大きくはなっているのだが、その昂りの状態を維持され続けているせいでディシアは歯を食いしばらざるを得ない状態にされている。
「(さっさと、動け! ずっと気持ち良のが、もう辛い……!)」
でなければ、直ぐにでも変な事を言ってしまう。だがそれは彼に体も心も許してしまう事になる。だからディシアは言えない、激しく動いて欲しいなんて言えるわけがなかった。
「私の形、覚えて来た? 中は随分と絡んでくるけど、動いて欲しい?」
「し、知るか! さっさと抜け! そんで殺……んむっ!?」
口先だけの抵抗、なのでその口すら彼は閉じる。彼の方が背は低いのでお腹の奥にズンッと甘く重く貫いて来たのに肩を震わせたが、直後に舌を入れられている事に気付く。
「ん、ん、んん!? ぷはっ、な、なにして……!」
しかし、それは直ぐに離れる。それどころか、彼は彼女の股から彼のものを引き抜いてすらいる。
ディシアは弱々しくも睨み付ける、この程度で終わらないのはもはや分かってしまうのだから。だがそれはそれとしても、彼女の熟れた体はまだまだもどかしさが残っているので抵抗する力なんてものはない。
容易く、押し倒される。
そして、何かを決心したのか。バンパーが少し背伸びをした。
「少しやりづらいな。リサさん以外に使うの初めてだけど……まぁいいか」
「何を、し……?」
そして、体が大きくなる。背伸びで大きく見えた、などではない。現代で言えば彼の中学生から高校生程度の体が、急に大学生程度にまで成長したのだから。
その体躯は、ディシアよりも大きい。そしてそれに応じてではあるが、彼のものも大きくなっている。
「な、なんだそれ? お前、意味がわからない……学者だからどうこうじゃ……」
「気にする必要無いよ。でも、今からキスしながらさっきの続けるから」
そして、容易く組み伏せられたディシアの体を支配する。
「ま、待て! そんなの、入ったら……ひゃっ!? あ、あっ、なんで!? さっきと全然……!!??」
ディシアの股に、先程までの彼によって解されたそれが上書きされていく。先程までは広げられなかった事を、先程までは届かなかった所を、意識してしまうのも仕方ないだろう。
「いやぁ、あ……んむっ!! ん、ちゅる、ひゃ!? した、んちゅ、ん、ちゅ、ん、ん!!」
そしてその動きのまま、口元を貪っていく。容赦無く舌を絡め、彼女に唾液を飲ませていく。頭に回す酸素すら奪われ始めたのだ、いよいよ彼女は限界が近くなっていく。
「い、イッ……!!」
そして、ついにその波が最高に達しようとした時だった。彼の動きが、完全に止められたのは。
「へ? なん、へ?」
ディシアは困惑した顔を先程まで自分に唾液を飲ませ続けて目の前にあよ彼に問う。だが、どうして止まったかなど分からないわけでは無い。
「動いて欲しい?」
「っ!!」
ディシアの心を折るためだろう。
もうかれこれ、1時間はこの行為やそれに準じた行為を受け続けているのだ。彼女はもう、この苦しい時間を早く終わらせたいのだ。
そして、彼女の心を支えていた当初の目的も無ければ、欲望には抗えない。
「……動いて、欲しいです」
弱々しい呟きだった。彼の両肩に手を回し、俯いたように目を逸らしながらの言葉だった。
「ん? はっきり言って欲しいな」
だが、そう言われて彼女は吐き捨てるように睨み付けて言った。
「私の体を無茶苦茶にしていいから、さっさと動いて!!」
彼女は、堕ちてしまった。ただそうされるようにされてしまったのだから仕方ない、傭兵で多少は自分の思うがままにこの手の経験が起こるとは思っていなかったのもあるが、彼女はもう彼によって刻みつけられてしまったのだ。
「ひゃ、あ、凄っ、ん! あ、そこ、ばっかり狡……!!」
ディシアを跨らせ、突き上げる度に彼女の声が高くなる。胸が揺れ、彼女も恥ずかしさでどうにかなってしまいそうな顔をしながら、欲望のままに腰を動かした。
「あ、あ、あ、ああああっ────!!」
長い夜は、明けても日が高くなるまでそれは続いていた。
☆
ディシアが解放されたのは、お昼前になる時だった。今はゆっくりと、よく分からない場所の筋肉痛を感じながら歩いていた。
「う、うう……まだ、感触が……」
そして出来ないからと彼の子種をお腹の奥に注がれ続けていたのだ、歩く度に違和感はしっかり感じられる。万が一の可能性では出来てしまうのだ、そう考えてしまうと気が気ではなくなってくるが、その時は『責任取るよ? ディシアさんの子供なら、可愛いに決まってるし』とまで言われてしまったので別の意味で顔が赤くなる。
全てをした後のシャワー中ですら壁を背にしながら中に注がれたのだ、その前には意識が朦朧としていたのだうろ覚えではあるが、写真を撮られていた気もする。
なのでディシアは眠気や疲労感よりもその初めてな感覚で頭の中はぐちゃぐちゃである。
「本当に出来たら、こき使ってやる」
幸いなのは、契約は結べた事だ。自分の体で手に入るには安過ぎるのだが、それでも自分の全てを貪られた上で許してしまった事は取り返しがつかない。
ただ出来たら出来たで彼を亭主にして尻に絶対敷いてやると覚悟は決まっている。それだけのことをしたのだ、それに彼の外見は大人の時が好みに近かったのは行為中に気づいてしまったので、モノにしたとしても絶対に言わないだろう。
「はぁー……ん?」
ただこの憂鬱な気持ちも、護衛対象であるドニアザードに報告する為に動かしている。だが、運が良いのか目的地より前田彼女が見える。そして彼女も気付いたのか、逆に駆け寄ってくる。
「ディシア! あれ、疲れてるの?」
「はは、大丈夫ですよ。お嬢様こそ、お元気そうで」
ドニアザードは今の彼女が少し眠そうにしているのに気づいたようで、顔色を伺う。しかし少しだけディシアの言葉にバツを悪そうにする、駆け寄って来たことを咎める時によく『元気』と言われていたからだろう。
しかし、彼女はだからこそ今を生きている。
「今のうちしか動けないんだから。暫くはめいいっぱい体を動かしたいなって……ちょっと、子供っぽいかな?」
彼女よ魔鱗病の進行は、リセットされた。逆に言えばまた動けなくなる日も遠く無いだろう、そしてその後は死を待つのみである。
ならば今しかないのだろう、彼女が出来なかったことをする事は今しか出来ない。だから彼女は今、軽く駆け足で寄っていったのだろう。今の自分が、一番元気なのだと。
それを察したディシアも、柔らかく微笑んだ。
「これからも、動かせますよ」
その言葉に、ドニアザードが止まる。白昼堂々と言うのはバンパーにとっては良くないのかもしれないが、そこは色々と伏せて話せば良いと考えての事だ。
ただその言葉だけで、彼女は察するだろう。
「そ、それってもしかして……!」
「はい、バンパー・ミンツが定期的にお嬢様の回診に来ます。もう、大丈夫です」
もう、死を意識して生きる必要は無いと。自分の人生の終点は、間近には無いのだ。それに対して、ドニアザードはディシアの両手を取って目を合わせた。
「ありがとうディシア! 夜通し話し合ってたの? だから眠かったのね!」
「ま、まぁ、そんな所です」
少し気まずいので目を逸らすが、ドニアザードはそれが無茶な事で叶わないことと分かっていたのか目尻には涙が浮かんでいる。
そこでようやく、何故彼女の父親である雇い主ではなく彼女の所へ向かっていたのか自覚する。
「(……喜んでくれてる。私がした事は、無駄じゃなかったんだな)」
そう自覚すると無茶をしたが、忘れてしまえば一応は丸く収まることになる。ただ忘れるには彼に調整され目覚めさせられた体を落ち着かせる方法を考える必要はあるのだろうが、そればかりは今は考えられない。
そこでふと、ディシアがドニアザードを見る。手を握りながらもじもじと、何かを考え込んでいるのだ。
それも、何かを恥じらないながら。
「と、ところでディシア……その、相談したい事があるんだけど良いかな?」
「はい、私に出来ることなら」
もちろん、そう答える。話の流れからして体の動かし方を教えて欲しいと言ったところか、傭兵である彼女ならばそんな事を教えるのは造作もない。なので快く応えたのだが。
「その、男の人って手を繋いだら意識とかしてくれるのかな?」
「……え?」
それは、ディシアの管轄外だ。
「バンパーさんって、どんな人がタイプだと思う? その、やっぱりディシアみたいな、体が強い人が良いのかな……?」
「お嬢様、悪い事は言いません。考え直しませんか?」
彼女に出来るのは、精一杯説得する事であった。
過去一出すか迷った回でした。
コミケについて
-
毎回行く
-
行った事あるし、よく買う
-
行った事ない
-
行った事あるけどR-18は買えない
-
特定の人のやつを買うだけしてる
-
製本されたら買う