私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
出すのが抜けてた話
フォンテーヌ編は少し待っててください。
学院祭
スメールにおける事件、人々の夢を奪いクラクサナリデビを蹴落として新しい神を立てる計画は、失敗した。
全て旅人達がナヒーダ奪還任務として、仕掛けた戦いで勝利したからだ。稲妻のような内紛が起こらぬ様に砂漠のエルマイト旅団を仲間に引き入れ、更には敵にナヒーダが逃げたと誤報をアルハイゼンが流し、孤立した黒幕である大賢者達を纏めてセノが(ボコボコにしてから)拘束した。
その上で、旅人が人造の神であるスカラマシュをナヒーダと共に撃破した事で事件は終息したのである。
ただ、いくつかの懸念を残して。
「教令院も何とかなったみたいだし、一件落着ってやつだな!」
「そうだね、ただ……」
パイモンは意気揚々と言うが、旅人の中ではいくつか引っかかる事があるのだ。それはナヒーダと解決後の話し合いで露見したものであったり、頭の中に残る彼だけが覚えているスメールの過去の神の存在であったり、ナヒーダが交わした博士との交渉、更には自分の様な存在の情報と、どれも考え続けたところで答えは出てこない。
「バンの奴、結局何もしなかったな。オイラ達が頑張ってる間にどうせスメールの美味い料理でも食ってやがったんだぜ」
パイモンは珍しく困っていたにも関わらずあまり表に出て来なかったバンパーに腹を立てているようだが、あくまでも表にはだ。ナヒーダ曰く博士と単独で交渉し互いにある程度のラインまで不干渉で行く契約を結んだというのなら、執行官の二番手を止めたのだからそれだけでお手柄でもある。
後パイモンは分かって居ないが、スカラマシュに対しての妨害を戦闘中でもしてくれたお陰で旅人は上手く倒せたのである。今回もまた、彼の手は借りてしまった。
それに、彼は一番大きな仕事もしている。
「バンは今頃頭抱えて寝てると思うよ、彼疲れてるだろうし」
ただそんな時だろう、2人が立ち話をして居たところに知り合いが近寄ってくる。本来なら事件終息後で1番忙しいのは彼だとは思うが、彼もまた気になってしまったのだろう。
「バン? バンパー・ミンツの事か?」
「お、セノ! ありゃ? お前忙しかったんじゃなかったのか?」
「忙しい。ただ素論派としては聞き逃せない名前だからな。夫か弟かは知らないが、あの人の苗字を名乗るだけはある」
セノは大マハマトラという役職に就く、知識の番人だ。今回の事件でまだ大賢者の息のかかったものがいると調査を続けているので、恐らくは今一番忙しい者の1人だろう。他にも賢者の代行をしているものが居たりするのだが、それは割愛する。
「夫……え、バンって結婚してたのか!?」
「……彼、そんな有名なの?」
パイモンは驚いているが、恐らくしていないだろう。モンド方面では彼に対する矢印の多さとその大きさを知る旅人としては、まだ1人に独占されているとは思えない。
ただそれはそれとして、スメールで名が知れているとは思わなかった。
「一部ではな、教令院から招待状が送られるほどの良い論文を書いている。素論派なら一度は目に通すぞ」
「そうなんだ……あれ、でも嫌われ者って話も聞いたよ?」
「一部ではな、教令院を出た者では無いからだろう。彼の暗殺計画も幾つかあったが、それは現在調査中だ」
本当に彼は何者なのだろうか。彼曰くスメールぐらいしか行った事が無い国で名は知られてないはずと言っていたが、この調子だとフォンテーヌでも何かしら逸話があるか作っていてもおかしくないだろう。
「……? 驚かないのか?」
ただ、セノが何か首を傾げている。どうやら旅人の反応に対してらしい。
「え、何が?」
「暗殺計画だ、普通は驚くだろう」
普通はそこに引っかかるだろう。一つの組織が敵対した個人に対しての暗殺を計画するのは稀有な事例であるし、それは組織力によって容易に逃げ道を防いでから実行される。権力を持つからこそ多少の荒さも揉み消せるのだ、そうなっていてもおかしくなかったのだが。
「大丈夫だと思うよ。彼、今の僕より強いし」
「おう! バンはああ見えて魔神も……え、旅人戦ったのか!?」
「うん、私情で。負けたけど」
旅人もパイモンも、驚いていないのはその信頼故にだ。璃月でも、雪山でも、様々な所でバンパーという男は窮地を脱して状況を打開している。仮に旅人が全てが手詰まりとなってしまい暗中模索する他ない様な場合、真っ先に彼を頼るだろう。
「俺の刃を止めた事のある、旅人よりもか」
「しかもこの前中々のトラウマを植え付けられたらしいから……うん、かなり強いと思うよ」
セノは旅人の実力をよくわかっている。何故なら一度刃を向けた事があるからだ、その時はアルハイゼンが割って入っていたが最初の一撃は受け止められている。
それに、此度の事件を解決した旅人の信頼する実力者にセノは何かを思案する。
「……旅人、彼に頼みがある。俺は忙しく暫く手が空いて居なくてな」
「いいよ、僕としても話したい事はあるから」
セノとバンパーの関係は直接はない。コレイをモンドで助けた時の話を聞いた事はあるが、そこでの関わりも無い。ただ今ここで旅人とパイモン、そしてリサの信頼しているであろう彼に何かを感じていたのは確かだろう。
☆
スメールを出立しようかなとか思ってた頃、マールをぐちゃぐちゃにして初めてを食べてから落ち着いて更にニィロウやドニアザードを家に誘ったら簡単に着いてきて子種をお腹に注いだ次の日だった。
「バン、教えてくれるよね」
旅人が来たのだ、パイモンもいる。私はどこか真面目な空気と、真剣な顔をした旅人を見て嫌な予感がしまくってるのだが、何かしたのだろう。
「藪から棒に、何の話だよ」
思い付かない、マハールッカデヴァータが復活した事はまだ知られていないはずだし。博士と交わした契約に関してはナヒーダが知ってる筈だが、この空気感とは違う気がする。
こんな時にふと思い出したが、旅人は別れた双子の妹を探して旅をしていたはずだ。これはどこか、それに通じた様な質問をする時の空気に似ている。
「降臨者、なんだよね?」
「……降臨者?」
どこかで耳に……そうだ、マールが私を誘惑(彼視点で)して来た時に言ってた言葉だ。うろ覚えだけど、確か『第五降臨者』とかなんとか。
「君も、僕と同じ……」
ただ、この質問はそう言う事なのだと思う。
「呼び方なんて知らないけど、私がテイワットの外から来た人間なのは確かだよ。まぁ降臨というよりは漂着って感じだと思うけど」
正確には死んで生まれ直す筈がこの世界に赤ん坊の状態で流れ着いたって感じだと思う。だって前世と顔変わんないし、純日本人顔で頑張っても雰囲気イケメンが限界の見覚えあるフェイスだし。
稲妻人と思われても仕方ないのだが、稲妻は怒りのままにお姉様3人を抱き殺したので絶対帰れない。何なら近寄りたくもない、死んだ後蘇生されてから殺されると思う。
「お前も外から来た旅人なのか!?」
「私が外から来たのは喋ってはないけど、隠してないぞ。モナを含めて何人か知ってるし」
ただ、これは隠してない。私がテイワットの外から来た存在って事はモナやウェンティ、リサさんやマールも知っている。
ちなみにバレ方はモナは占星術で占えないから、ウェンティは私が漂着したのを観測して教会に連れて行った(神バレした時に飲みながら言われたし、更には名付け親だった)から、マールは世界樹覗けたからだろうし、リサさんに関しては自己申告した。
だから、正直言って外の世界の人間だからとかの認識が薄い。あるにはあるが、部外者とか異物とかって感じでこの世界の運命とかには絡んで無いと思っている。きっと、たぶん、絡まないで欲しいです。
「バン。君は元の世界へ帰る為に旅をしてるのか」
「いや、旅は趣味。前の世界に未練は無いよ。強いて言えば美味い飯が偶に恋しくなるぐらい、こっちの世界の方が充実してる」
旅してるのは旅が好きだからだし、定住して足ついたら死んじゃうからだし、女の子と出会いたいからだからな。ただそんな充実した人生も、命を狙われたり大事件に巻き込まれたらプラマイゼロだ。ぶっちゃけ美少女を食べまくってなかったら余裕でマイナスである、そんぐらい危ない橋は渡っている。
何なら雷電将軍の一件は精神が死にかけたし、悟り開く寸前迄追い詰められて……思い出すとやばいタイプの頭痛がしてくるので記憶に蓋をしておこう。
そんな事を考えていると、旅人は少し柔らかくなった雰囲気がまた強張る。
「なら、君は会ってないんだね」
「妹さんはな、美人なら忘れない」
「ははは、君が手を出してたら息の根を止めてるよ」
「冗談きつ……やめろ、その目で見るな。マジな目じゃん」
ただ、旅人が言っている『会った事がない』と言うのは妹ではないのだろう。それが本題にも思えてくる。
「最後に改めて天理の調停者、何か知ってる?」
「……前も聞いたか? どんな奴?」
「ナヒーダ曰く、最初の降臨者」
心当たりはほぼない、そもそも私は降臨者って単語もよくわかってない。
「そもそも、降臨者ってどんだけいるの?」
「僕が4人目、ナヒーダが言うには妹の蛍はその範疇に入ってないけど」
「……で、私は20年前とかに来たわけだけど」
「僕は500年前だね」
成る程、妹さんも同じく外からの来訪者ではあるが降臨者ではない。降臨者とか何かしらの条件があるのだろう、ナヒーダが情報源って事は……世界樹、引いてはテイワットそのものとの関係かな?
てか旅人、君さらっと500歳越え宣言してね? いやこの世界じゃ驚かないけどさ。降臨者って私以外人を辞めたか人じゃないようなやばい奴らの集まりなのか、怖い。恐らく天理の調停者……天空の島の管理者も。
でも、私の知識の中じゃ第一降臨者は『淵下宮』で見たパネースって奴ぽいんだよな。この存在が天理とやらかも分からないし裏取りする気もなくてうろ覚えだけど、恐らく神が統治する前の時代だし世界樹に記録が無いのかもしれない。
「知らんよ、私に降臨者としての知識なんてほぼ無い」
「……ほぼ?」
ただ、旅人も鋭いな。パネースに関しては私は全く話せない、けどそれとは別で可能性というか……外の事を認識する存在はいる。
「1人だけ、心当たりはある」
私はときたま、大冒険者と呼ばれる。しかしそうではない、彼女がいるから。私はそこを目指しているわけではないが、彼女を超えない限りは名乗る事はないし名乗られても否定する。
「大冒険者・アリス、あの人は降臨者かもな。本人じゃないとしてもその知り合いに降臨者は居る」
恐らく間違いない、彼女なら有り得なくはない。と言うか他に該当者が思い付かない程に、彼女が条件として当てはまり過ぎている。
「名前は聞いた事あるけど……」
「わかりやすく言うと、クレーの母親だな」
「クレーの母親って……大丈夫なのか?」
パイモンはそう言うが、その不安は的中だぞ。あの容易く山火事起こす爆弾幼女の母親だ、大丈夫なわけないだろ。
ちなみにクレーはモンドの騎士団で飛び回る太陽だとか火花騎士なんて呼ばれる爆弾の申し子だ、よくジンに反省室に連れて行かれている。
「私は20年前、旅人が500年前。あの人はそれ超えてておかしくないし、まぁ間違いないだろ」
「間違いないの?」
間違いない、アリスさんは外からやって来たか外からやって来た存在と関わりを持った存在だ。私の事も一瞬でテイワット外の存在と看破してたし、ただ私が確信を持ったのは見破られたからじゃない。
「旅人は『アイドル』って知ってるか?」
「えっと……バーバラの事?」
「バーバラは厳密には牧師をしてる可愛い女の子だよ。アイドルって言うのは人前で歌って踊ってキラキラ光る夢を見せる仕事」
外から持ち込んだ概念を話せるのは、外の世界に気づくだけじゃ無理だ。その世界を理解してないと出来ない。
「アイドルなんて概念、この世界には無いんだよ。私のいた世界ぐらい文明が発達して娯楽の一つとして見られる事でもないとな。バーバラは厳密にアイドルって気持ちで働いてるわけじゃないし、他にもあの人の作った通信機器とかも外から持って来た技術概念だしな」
アリスさん平気な顔して思いついた事を色々やる、クレーを大人にして頭を良くしたが好奇心が何故かそのまま育った様な人だから。そして外の世界から持ち込んだ事を隠してないし、平気で『お、バンも知ってる? アイドルユニット組みたくない?』とか言ってプロデューサーに組み込んでこようとしたからな。
「アイドルって概念をバーバラに話したのがアリスさん。過去にウェンティに喧嘩売ってるし、私の事を外からの人間ってのも理解してるし能力の限界を見てみたいとか言って海に重し付けて沈めて来たのもこの人。いや普通に殺人未遂だろ、危うく死にかけたんだが?」
言ってて思ったけど、マジであの人やばい。私はこの世界で一番敵に回したくないのは自分自身だけど、それを除けば間違いなく彼女だろう。
「とりあえず、降臨者とかについて知りたいならアリスさんに聞いてくれ。私はまともに話せないと思うし」
「……どうして?」
ただ、もうしばらく会ってない。と言うか避けられている、恐らく私と会うと好奇心に負けて約束を守れないから。
「これ以上私に実験するなら、クレーに大人の悪戯するって脅したから。あれ以来会う事すら無い」
「「うわあ……」」
旅人とパイモンがドン引きしている。
いや、ドン引きするのは彼女の所業だろ。私に爆弾投げて笑ってる人やぞ。飛距離調べようかなとか言ってモルモットにして来たんだからな。
私がクレーに手を出すとでも? 幼女は対象外だわ、合法ロリのディオナも酔わせて剥いたことはあるけど、いつもより息子がやる気出なくて苦労したからな。
まぁ目を瞑って胸をいじった時の声とかの反応で興奮させてから頭の中を『この子はお酒飲んでるし、まあ合法か……♪』って暗示かけて楽しませてもらったけど、これに関しては抱きたかったと言うよりは煽られたからやり返したかったのがほぼ理由だし。
私を『お酒なんかに溺れるから、アンタみたいな変態が産まれるのよ』とか煽ったのは許せねえ、酒の力と勢いを舐めるなよ。にゃーにゃー玩具で喘ぐ事しか出来ない彼女は可愛かったです。
後々キャッツテールで会う時に突っかかって来ても「随分と大人面してくるんだね、私が大人にしてあげたからかな?」って煽った時の顔とか色々思い出して言葉を詰まらせてて最高でした。
その後に「次は、ママになってみる?」って個室だったし囁きながら後ろから抱き付きついてお腹を撫でたら黙り込んじゃって、耳元に軽く息を吹きかけて正気に戻してあげたら凄い声と顔しながら腰抜かしてたし。
そのまま抵抗も出来ない彼女に「ま、待って……♡」とか言ってる間に両頬押さえて優しめのキスしてから会ってない。あんな強気なのにベッドじゃ弱々で舌は絡められるがままにされちゃって、ちなみに『ママにされ……む、無茶苦茶にされちゃう……♡』って涙目で顔真っ赤にしてたけど、流石にそこで事に及ぶと騎士団に反省室どころではない場所に連れて行かれるので何もせず店に放置してから会ってない。でも次にキャッツテールへ行ったらどうなるのか少し楽しみである。
ただ個人的に外見年齢は14歳ぐらいは欲しい、そこから下は難しい。中身と外見両方幼い場合は絶対無理だろう、だからクレーもメスの顔をさせるとかは嫌だ。一応はったりだけど、嘘でも言わないとアリスさんに何かされるし、それは嫌だから。
なので脅すついでに『孫の顔、見せてあげようか?』って言葉もつけたことがある。むしろ脅しただけで実行してから宣言する彼女よりはマシだ。
でもあの人を芸の出来る猿ぐらいにしか思ってなさそうな時もあるアリスさんですら、即座に土下座して来た。割と切羽詰まった感じで、何なら敬語になってたし。
……もしかして、本気で手を出すと思ってる? 物申した上でしばき回したい。
「で、それ聞きに来たのか? なら答えたし、私これからモンドに帰るんだけど」
「いや、実はセノから……」
☆
学院祭、それは教令院が主催する催しである。大きく分けてフェスとトーナメントにわかれるそれは、6つある学派が競い合う場であり、同時に成果を見せて学派の宣伝をする少ない機会でもある。
中でもトーナメントは各学派から選ばれた代表者が競い合うので、ここでチャンピオンに選ばれればこれ以上ない宣伝になり、門徒を広く集められるだろう。
他にも賞金や七星召喚の限定カードにプロジェクトのリソースなど、様々な景品も目を引く。
中でもチャンピオンの景品である『才識の冠』を被ることは知恵者としての証として知られてもいる。
ただ、それはとある思念が残っていた。
『(終わらない、悪くなるばかり。歴史とは、人とは……)』
サーチェンは、過去の偉人だ。そしてこの冠に意識の一部を写し、財産と研究を託そうと考えていた。
『(何故だ、何故こうも歴史を繰り返す)』
それが、人を救う事である。そう思い立つだけの事が、そこにあったのだ。
防砂壁の外で8年も過ごした彼であるが、そこには心が擦り減るような不幸が絶えず続く世界しか無かったのだ。キャラバンへの襲撃と略奪、水源の奪い合い、民衆に対しての搾取、どれも1日足りとも止まらなかった。
当然彼は異論派の学者であったので、歴史に答えを探した。しかし、その答えは非常としか言えない。歴史は繰り返す、人とはそのような生き物である、そんな答えしか無かったのだ。彼にとって、それは絶望であっただろう。
『(それ以外の答えは、無いはずがないだろう)』
だからこそ、彼は託すことにしたのだ。20年前に教令院に対して寄贈したこの冠に仕掛けを施し、莫大な財産と共にその時を待っていた。
そんな時だろう、冠の前に1人の男が立つ。少年というには幼さはなく、青年と言うには少し若い見た目の男。素論派の代表として、元々の代表者の代わりに選ばれた者である。
ただ欲に溺れでもしたのか、冠へと手を伸ばしてくる。
『(気が早い奴も居たか。さて、お前は一体どのようなああああああああ!!??)』
「はーい、除霊除霊っと」
それがヤバいやつであると気付くのに、時間はかからなかった。
☆
セノの代わりに選ばれた、トーナメントの代表者として。セノから旅人を経由して少し時間は空いたがそこに出てくれとお願いされたのだ。何でも七星召喚の限定カードは欲しいが大賢者しばいたお陰で忙し過ぎるからだと。ちなみに彼の事はリサさん経由で知っている、コレイの中にある魔神の残穢みたいなのを封印をしたのも彼だからね。
そして私が草龍をしばいてから戻って直ぐに、この教令院の学院祭が始まったのだが。
『待て! 待たぬか! いや頼むから待ってくれ!! 消える、ワシが完全に消え去ってしまう!!』
「……しょうがないな、今際の言葉ぐらいしっかり考えろよー」
何か冠に老人が憑いていたので祓っている最中だ。まぁあまりに悲鳴をあげるので少し止めてるけど、これ知識とか意思を冠に残してる感じだな。まあ問題無く消し去れるけど。
『なんじゃ貴様は!? ワシの思念が消え去るところだったぞ!?』
「消え去って良いじゃん。こんな曰く付被りたくねぇもん、じゃあ消すから」
『待て! お願いだから話を聞いてくれ! いや聞いてください! 一生のお願いですからぁ!!』
「いや、死んでるじゃん」
『まだじゃから! これから人生の研究の結果を見るのじゃから!! 頼むから強制消去はやめろおおおおおおおおおお!!!!』
いい年した上で貫禄ありそうなオッサンが泣き喚いているのでドン引きする。たぶんこれを寄贈したサーチェンって奴の意識なのだろう、後腐れ無く消してやるかとちょっと力を込めた時だ。
「おやおや、随分と面白そうな事をしてるじゃないか」
聞き慣れない、いや反射的に身が強張る声が聞こえてくる。過去に一度死にかけたせいで、この声に体が警戒してしまうのだろう。まあ、今後はそう言う事は無いと思うけど。
「なんだよ、笠っち」
「君からその呼び方は辞めてほしい」
笠っち、元スカラマシュだ。旅人に聞くと世界から一度消えたからファデュイとしての存在は消えたりしてるらしく、私が過去に壊した腕や足も元通りになっている。
ちなみに何でここにいるかというとナヒーダに淫乱派……じゃない、因論派の代表としてトーナメントに出るからだ。
ただ笠っちは嫌らしい、仕方ないので旅人に名付けられた名で呼ぶ事にする。
「で、
私はトラブルの元となりそうな厄介事を消してるだけだ、恐らく彼もそれを認識してる筈。なのに割り込むのは何故かと聞くと。
「それ、泳がせても良いんじゃないか?」
「……メリットあるか?」
「死人のソレが何か仕掛けてるならソレを消しても意味は無い、むしろ何か起きた時の保険にもなる。そうやって直ぐに敵を屠る癖、無くした方が良いんじゃない?」
なんか納得できそうな事を言われた。確かに冠を調べた限りは体を乗っ取るとかは出来ないだろう、ただこれが意識を繋ぎ止める媒体で他に乗っ取る方法があれば別だ。それならこれを壊した方が楽だろう。
「放っておくと面倒なんだよ。後腐れはない方が良いだろ」
どうしよう、めんどくさくなって来た。別にコレそのものに問題は無いし、万が一乗っ取りとかあっても私がコレだけ消し去るぐらいは出来るだろう。
そもそも、これの検品にナヒーダも少なからず関わっている筈だ。あの子人の心読めるし。私の場合は効かないけど。
なので正直もうどうでも良いのだが、李景がかまって来たのはそんな善意からとは思えないので引っかかる。
「というか李景、お前私と戦いたいだけだろ」
いやまぁ、理由はコレなんだと思うけど。
「最後迄楽しもうじゃないか、君もこの前の混乱で物足りないだろ?」
「人を戦闘狂みたいに言うな、不本意90%なんだよ」
確かに私は多少の敵ならどうとでも出来る力はある。魔神には能力の弱点さえバレなければ逃げ切りも出来るだろう、ただそれで勝てるかは話が違う。現に雷電将軍とかは歯が立たなかったし、今でも初見殺しでも交えなければ勝てない、良くて相打ちといったところだ。
「楽しみにしてるよ、あいつとの修行の成果とかね」
そう言うと、風に乗って去っていく。戦いたくねえ、と言うか私が雷電将軍達とトラウマ修行したのバレてんのかよ。今回はセノから七星召喚のカード頼まれただけだし……もう考えるまでもなく、気持ちが決まってる。
「(よーし……逃げるか)」
その後、学院祭トーナメントで優勝を譲る代わりに限定カードをもらう事を交渉して回ってなんとかセノのカードは確保出来た。ファルザン先輩はキスして頷かせたけど、それを見てたレイラも同じ事をしたら頷いてくれた。
ちなみに笠っちからは逃げ切った。
砂漠やフォンテーヌまで追って来ない事を祈る。
次回は稲妻の子、その次ぐらいにフォンテーヌの子
☆
時系列・イメージ(喰った人)
モンド(トワリン襲来)
↓
璃月(岩神死亡事件)
↓
稲妻(目狩令)
↓
モンド(帰省)(リサ・モナ・ノエル)
↓
璃月(群玉閣再建)(刻晴・凝光・煙緋・香菱・夜蘭・雲菫)
↓
璃月(層岩巨淵)(志璇)
↓
璃月(修羅場)(申鶴)
↓
稲妻(二度目)(狐斎宮・八重神子・雷電影・雷電将軍)
↓
淵下宮(珊瑚宮心海)
↓
モンド(帰省)(ディオナ)
↓
スメール(コレイ・ディシア・マール・ニィロウ・ドニアザード)
↓
砂漠(ファルザン)
↓
スメール(二度目・学院祭)(レイラ)
↓
モンド(帰省)(フィッシュル・シャルロット・エウルア)
↓
砂漠(二度目)
↓
フォンテーヌ