私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
1.フリーナ(ファーストコンタクト)
2.旅人の璃月帰省
3.窃盗少女のその後
今年最後の投稿、また来年。
1.フリーナ(ファーストコンタクト)
これはあの鯨が現れた裁判が起きる時よりも、それどころか旅人達がフォンテーヌに訪れてから日も経っていないほどの時期の事。
とある少女が救われた時の事であり、そのキッカケの始まりの話。
「やぁ猫ちゃん、どこに行くんだい?」
フリーナ・ドゥ・フォンテーヌは夜の街を散策していた。気晴らしに、いつも通りに、特に意識無く過ごしていた。人でありながら500年も生きてきた彼女はフォンテーヌが自身守る場所でありながらその身を守ってくれる場所であると分かっていたのだろう。
だからこそ彼女は神である自分を襲うような愚か者には会ってこなかった、少なくとも身の安全という点でそれが担保されていたと言って良いだろう。気軽に猫と戯れる程度には。
「ふふっ……あ、どこに……ん?」
自分を襲うという事は神を敵に回すこと、そんな馬鹿げた事をする存在は500年の間に現れなかった。
「あ、え……?」
ただ、現れてしまった。自身を害そうとする明らかな意思を、仮面で顔を隠し夜闇に紛れた黒い存在が、鋭利な断爪を片手にしながらこちらを見据えていた。猫はフリーナを毛嫌いして去ったのでは無い、その存在の異質さに怯えてさっていったのである。
「きゃっ!?」
途端に、フリーナは腰を抜かしてしまう。彼女は神を装っているだけで神の目も持たないただの女の子なのだ。長生きをしているだけの少女は、顔を青白くさせながら後退りをしている。
「い、嫌だ。お願いだから、殺さないで……」
しかし、その存在は襲い掛かろうとしていた姿から一転して立ち尽くしている。何か考え事でもしているのか、はたまたフリーナの晒す情け無い姿に違和感でも覚えられたのか。フリーナには分からない、分かろうとする余裕がない。力も無く、周りには彼女を守る者も居ない、このまま向こうの気分や事情次第でいつでも殺されてしまう、そう悟る余裕はない。
ただ怯え、懇願し、自身を取り繕う事も出来ずに死に体を震わせる。彼女の命は彼女だけのものでも無いというのもあるが、
「ひっ!?」
一歩、目の前の誰かが距離を詰めて来た。何か気が変わったのか、少なくともフリーナへと向かっていくそれに抗えない彼女は短い悲鳴をあげた。
このまま何をされてしまうのか、何をされたとしても彼女に出来ることは泣いて懇願して鳴き続ける事だけ、神を偽ってきた終わりが目の前にやって来る。
「女の子の扱いがなってないな、教えてやろうか」
そんな時だった、どこからか聞こえて来た声に目の前の誰かが足を止める。そして身構えたと同時に、フリーナの横から1人の男が現れる。見た目は向こうよりも背が低く頼りない、しかし足元から伸びた水は絡め取ろうと這い寄り迫る。
「っ!!」
「その顔、私の事を知ってる顔だな。それも一方的に」
先程まで無感情で無表情な仮面の誰かが、明確な焦燥と共に飛び退き下がる。ただそれを読んでいたかのように裏手からも水が伸びて行き、檻のように編み込まれて迫っていく。現れた誰かは一瞬で、仮面の誰かを追い詰めていた。
そして、フリーナを襲おうとした誰かは水に絡まれていき────
「……逃げたか、炎元素で今の打ち消すって事はファトゥスの誰かか?」
体から吹き出した炎で拘束を外し、何処かへ去って行った。卓越した水元素の捌き方であったが、向こうは向こうで即応した炎を的確にかつ周りに悟らせないように展開していた。フリーナ程度のただの小娘が反撃しようとも容易く捩じ伏せていただろう、それだけに危険が遠ざかっていくことで緊張していた心が冷静さを取り戻していくがまだ落ち着きそうにない。
「お嬢さん、大丈夫?こんな夜に出歩いちゃダメだよ」
「ふぇ?え、あ、いや……」
そんな中で、腰の抜けたフリーナに助けに来た誰かが手を差し出す。影になっていて顔は分からないが声からして男だろう、それも若めの成人はしていなさそうな声だ。
フォンテーヌ人では無いかもしれないが、璃月人であろうと稲妻人であろうと助けてくれたからには感謝の言葉を述べようと彼女は手を震わせながら伸ばした。
「っ!」
瞬間、何かを思い出したかのように手を弾いて立ち上がった。
「よ、余計な事をするんじゃないぞ!油断したところを僕が仕留めるつもりだったのに、逃げられたじゃないか!」
呆然とする青年、顔色は分からないが落胆しているかもしれないので目は合わせられない。
フリーナとて、感謝の気持ちが無いわけではないのだがそう言うことは出来ない。何故なら不遜で超越的な神様を演じなければならないからであり、それは自分が殺されそうになった先ほどのような瞬間でも無ければ剥がしてはいけない仮面だからだ。
「(ぼ、僕は神を演じないといけないんだ。こんな所で予言の為の嘘がバレそうだったけど、言い訳は後で考えないと)」
フリーナは立ち上がった後に、先程まで震えていた腰と胸に力を入れて目を合わせる。と言っても相手の顔は影がさしているので分からない、灯りがないせいでシルエットとして16歳から17歳程度の青年という情報が分かる程度、ただ雰囲気からして冒険者なのだと当たりをつける。
「君、押し売るつもりは無いけど助けてもらったら素直に感謝した方が良いよ?」
「僕の邪魔をした君に何故感謝するんだい?」
「また襲われたらどうするつもり?何でファデュイに狙われてたの?」
「それを調べる為の演技をしていたんだよ。凡人には真に迫り過ぎて勘違いさせてしまうのも仕方ないが……まぁ、君の善意を讃えて不問にしてあげるよ」
青年は心配してくれているのだろう。だが、フリーナは今後気をつけたら良い話であり猫との戯れにクロリンデでも控えさせたら良いので話は終わりなのだ。
仮に先ほどの襲撃者が現れたとしても今の言い訳を使えば良いし、白状しようものなら牢屋に入れてしまえば良い。
「いや、ただの女の子じゃ……」
「しつこい、興が冷める。僕を怒らせたいのか?もう帰らせてもらうよ」
「良くない。次は、殺されるよ」
「僕が死ぬわけないだろ、何故なら僕は────」
フリーナ・ドゥ・フォンテーヌ、この国の神様なんだから。とでも口から嘘偽りない嘘を言うつもりであったが、それは立ち去ろうとした彼女の肩が掴まれてしまう事で止まってしまう。
彼女も先程まで体が震えていた事もあり落ち着きには至っていないので反射的に肩が震えたが、それは長年築かれた虚勢でむしろ相手を睨む。
「なんだい?褒美ならあげな……んむっ!?」
だが、何故か睨んだ相手の顔が目の前にある。肩に置いてあった右手は頭の後ろにあり動きそうになく、少しだけ向こうのほうが背が高いので見上げるような形の彼女は蓋をされた。
腰を抱き抱えられている事で後ろにも下がれず、異性の体に押しつけられている。
そして何よりも、熱せられた鉛のようにも感じられる口元の熱が否が応でも彼女に状況を思い知らせる。
「んん!?んっ、んっ!?」
ひ弱な彼女は手を両胸に押し当てて抜け出そうとするが、当然逃げられない。喋っている最中に口を繋げられてしまったので、喋ろうにも舌を舌で邪魔されて声にならない。
「ぷはっ、はぁ、はぁ、はぁ……な、何するんだ!?僕を誰だと思ってんむっ!?」
フリーナという生娘にとって、500年を生きてきた彼女にとって、忘れられない夜が始まる。
☆
自制しようと思ったけど無理でした、どうもバンパーです。
フォンテーヌに入って数日、ファデュイが女の子を襲っていたので助けたのだが調子に乗っていたので捕まえて楽しむことにした。見た感じは育ちが良そうな家出でもしたお嬢様だろうか?随分と口調に強がりが見えていたが、その口を封じてしまえば弱々しいものである。
最初こそ『僕を誰だと思ってる!』とか『こんな事して許されると思うなよ!』とか言っていたのに、ちょっと深めに舌を入れてしまえば。
「ぷはっ!はぁ、はぁ……んぁっ……ぁ──」
こんな感じに、目をグルグルさせて互いの舌に繋がる銀色の糸を惚けて見ている。
ちなみにキスしながら移動して路地裏に連れ込めている、壁を背にさせて後ろに下がれないようにしてるので逃げれないね♪
「夜に出歩いて、次はどんな危ない目に逢う気なのか。これで分かった?」
「ま、待って……こんな事して……はむっ……じゅる!?♡」
ただ、完全に意識をやってしまったわけじゃない。少し良いとこのお嬢さんみたいだが、男遊びはしていないようだ。舌で舌を押し返そうと頑張っているが絡め取って吸ってみたり、逆にいなして舌の裏側を舐めてやると涙目になって凄くいい反応をする。
「ん、ん、ん!?んんん──!!??♡♡♡」
そして彼女の口を少し乱暴に吸い尽くしてあげると、彼女の体が今までで1番震えてしまい、足までガタガタと揺れている。頭と腰しか捕まえてないのに、口だけで果ててしまったらしい。相当感度も良いので嗜虐心がゾワゾワ掻き立てられる。
「んあっ、ぁ──……ひゃっ!?♡」
とりあえず、落ちそうになっている彼女から口を離して頬に手をやる。他人に顔を撫でられるのも慣れてない様子だ、そういう普段触らないところを他人に触られるのは気持ち良いからね♪
そもそもイッたばかりで感度が凄いのもあるとは思うがそれで目を合わせさせるように顔を向かせる。
ちなみに身バレしないように態と影とかで顔が見えないようにしてる、逆光とか色々と頑張っているのだ。一方的に誰にも見せた事無いような蕩けた顔見れるのは最高である。
「キスだけで気持ち良くなったの?あんなに強気なこと言ってたのに、情けないなぁ♪」
「ひゃあっ!?♡」
落ちそうになっていた体は股に膝を入れて上げることで落とさせない。壁を背にしてるが爪先でギリギリ立てるぐらいに持ち上げてやれば、ショートパンツ越しに誰にも触らせた事ない聖域を犯す。膝も細くも綺麗で柔らかい太腿に挟まれて幸せである。
彼女も気持ち良さに負けた情け無い可愛い声をあげているし、驚いて呆然としたその目は「な、なにこれぇ!?♡押し潰されちゃってる!?♡」みたいな感触に見開かされている。
ちなみに、こんな声を上げても周りから助けが来ないのは結界みたいなの張ってるからだ。好きなだけ鳴いてくれて良いよ、助けは来ないしその方が捗るからね♪
「ま、まっ、て!たてない!立てないからぁ!♡」
蕩けた声しながら膝に両手をやって少しでも股の負担を減らそうとしているが、少し下げてから緩急つけて上げてやると「ふわあああ!?♡♡」と全身を震わせながら鳴いてしまう。
元々お仕置きの為にやっているが、まだまだ元気なのでかなり良い。果てても心が堕ちていない子は好きだ、先に体を堕とすとその後が可愛くて楽しいからね♪
「はぁー、はぁー、もう……十分、し……んむっ!!」
ぷるぷると爪先立ちの足を震わせる彼女だが、顔への注意が弱くなったのでまた舌を入れる。やっぱりこれぐらい無知で初めての事に振り回されて目をグルグルさせちゃう子を楽しめるのが最高だ、お礼に知らない事をいっぱい教えてあげたくなる。
「くちゅ、ちゅる!?ちゅ、ちゅ、ちゅ!?♡♡」
舌を吸ってあげると胸に当ててる手が服を握りしめてしまう程混乱している。片手は股の負担を減らす為に足に当ててるけどグリグリ膝を押し当ててみるとこちらも指を食い込ませてくる。女の子らしい華奢な力だね♪でも気持ち良いことの逃げ場、どこにも無いもんね♪
「ぷはっ……どう?今夜を忘れられない夜に上書きできたかな?」
「んぁっ、あ、ぁぅぅ……♡」
「まぁ、取り過ぎたお代として今度君が危ない時に助けてあげるよ」
もう声もまともに出ないくらいには楽しめたらしい。あれだけ強気にしてた態度も見る影もなく、足を抜いてあげれば容易く腰を落としてしまう。ただそれでは逃がしちゃうので、腰を後ろから抱く感じで支えてあげる。
「も、もう、むりぃ……♡ゆるしてぇ……♡」
するとしっかり反省してくれたようで、抵抗らしい抵抗はしてないが私に体を預けたまま謝罪する。
そうそう、命は粗末にしたり強がって1人になろうとしたらいけないからね。
ただ一応、私はフォンテーヌで手を出す子は控えるって目標を今回はつくってるのでこのぐらいで終わってあげても良いだろう。処女まで取るのは色々と大変だし、身バレしないよう注意もしたから大丈夫ではあるだろう。
「許して欲しいの?なら君の名前、教えてくれる?」
「な、まぇ……?♡」
今後フォンテーヌで過ごす時に注意する為に、あと色々と写真とか動画とか撮ってるから名前は欲しい。
ちなみに毎回撮ってるカメラとかは透明にしたりして浮かせたり隠したりしてる、普通は撮らせてくれないからね。なおシャルロットとか刻晴とかは態とカメラ向けて楽しんだ、大変気持ち良かったです。
ただこの子は脅しに使われちゃうと思っちゃいそうだし、そんな事はしないが楽しんだ子は色々と知りたいし顎を指であげて目を合わせる。向こうは私の顔は見えないけど、そこには先程には無い戸惑いが伺える。
「やぁ、やだぁ……♡」
彼女は拒んだ。人によってはえっちよりも大事なキスをされたのに、命よりは安いとはいえ『お尻を撫でたり』『股を膝で持ち上げたり』とライン超えの行為までされているのに。
「そっか、じゃあ」
私は、彼女が名前を聞かれたくないと思うならこれ以上聞くことはしない。彼女から自分の名前を言いたくなるほど気持ち良くさせてあげたいが、夜も遅くなってきたので彼女の家族何かの心配も考えれば時間は無い。
なので、代わりの楽しみ方をする。
「代わりに、フリーナって呼ぶね」
「ふぇ?」
呆気に取られたような顔をする少女、もといフリーナは可愛らしい反応を見せている。ただ、彼女はフリーナなどと言う神じゃないことは分かっている。ただ、私はそう扱うという話だ。
「この国の1番偉い人と同じ名前なんて、嬉しいよね?」
「ひゃぁっ!?ま、まってまってまって!!」
頬に手をやると今までに無いほど焦り出すフリーナ、ここまで反応してくれるとここで終わるのは勿体無くなってしまう。なのでそのまま、後ろから片手で腰を抱えながら支え、片手で顔を逃さないようにする。
「ほらフリーナ、逃げちゃダメだよ」
「ひぃ!?当たってる!?♡本当に、そこまではしちゃ……んむっ!?♡」
そのまま、私は彼女のお尻にアレを押し当てながらキスをする。頬を支えてた手はそのままお腹に当てて、直接お臍の部分を撫でてあげる。キスも逃げれず互いの体温を感じながらの行為だ、頭の中は大変になっているようだ。
「フリーナはえっちな子だね、とても可愛いよ」
とりあえず、もう少しだけ楽しむことにする。大丈夫大丈夫、ちゃんと処女のまま解放するから。だからもう30分だけ、唾液を交換しようね♪
☆
「お帰りなさいませ、フリーナ様。今日は随分と遅い時間で……」
結局、フリーナが正気に戻ったのは夜から真夜中に変わるような時間。路地裏でへたり込んで頭の中を支配していた熱が霧散した頃、フリーナと呼ばれながら色々された1時間後だった。
最初に頭の中に浮かんだのは帰らなければ遅くなるという事、遅くなればまた刺客に襲われてしまうリスクが現れるからだ。
次に神でないと露呈するリスク、これは刺客が襲いかかってきた時に勝手に現れた男に使った言い訳を使えば良いと納得したのでなんとか出来るだろう。
しかし、彼女はそれを踏まえて自身の護衛を増やしたり指名手配をかける事が出来ない状態に陥っていることを理解していた。
今回、彼女は抵抗したものの容易く女として楽しまれた。初めての事をいくつも教え込まれ、触られてしまった。これを訴えてしまうと『神が抵抗できなかった』という事実による神への疑念を産むため糾弾出来ないのである。
なので最後の抵抗として名前は言わなかったのだが、その時に偶然か知っていたのかフリーナと呼ばれてしまってもいるので逃げようが無い。だから彼女はもう彼が暴露しない事を祈る事しか出来ないのである。
「フリーナ様、いかがなさいましたか」
「え、いや、何でもない。遅くなったけど、夜のケーキを持ってきてくれ」
ただそんな考えはまだしっかりとは頭では考えられていない。半ば放心状態のまま帰宅したフリーナは虚勢を貼るのも忘れ気味な程に頭が疲れているのだ。なので気持ちを切り替えるためにもケーキを頼む、彼女の気を紛らわせる貴重な時間でもあるし、頭を元気にするには糖分が1番だ。
そして彼女は給仕から用意されたケーキを前にフォークを持ち上げる。アレは悪い夢だったと、そんな事はもう忘れてしまうのが1番だと、口の中を日に20個しか売られない限定ケーキで塗り替えることにする。
「んふっ、やっぱり甘……い?」
そして予想通りの食べ慣れた上品で緩やかな甘味が口の中に広がっていくのだが、何か違和感がある。
「(おかしいな、味が変わった?)」
いつもと感触が違うのだ、もしかしたら夜遅くに食べたせいで味が落ちたのかもしれない。もしくは元々状態があまり良くないものを買ってしまったのか、どちらにせよ頭に多少は糖分は回るものの気持ちを切り替えるには至らない。
「(こんなのじゃ口直せないじゃないか、さっきの方が甘……く……っ!?)」
ただ、彼女は回り始めた頭の中で変わってしまったのはケーキの方では無い事を察してしまう。途端に、冷や汗が全身から滝のように吹き出し始める。
「フリーナ様、どうかなさいましたか?」
「きょ、今日は食欲が無いようだ。明日に備えて、早く寝ることにするよ」
一方的にフリーナは伝えると、一口しか口に入れていないケーキを置いて寝室へ向かった。彼女が居る時に人を入れさせない聖域であり、1人になれる場所だ。
そして、入ってすぐに布団へ潜り込んで顔を枕に押し当てる。
「(うぅ、まだ口に残ってる感じが……!あんなに無理矢理舌を舐められたり吸われたり、お腹を撫でられ……って、何でまだ考えちゃうんだ!?)」
頭が回転してしまったが故に、冷静にされていた事を思い出してしまっているが故に、フリーナは熱を帯びた体を荒い息を吐きながらうずくまる。
「はぁ、はぁ、うぅ……ううう!!」
もう、自分の体は変えられてしまった。無垢で何も知らなかったのに、頭の中は教えられてしまった事でいっぱいになっている。
「(だ、だめ、むずむずする!足でぐりぐりされたせいでお腹の中ずっと熱い……!やめてって言ったのに、初めてだったのに、あ、あんなことずっと……も、もうされたくないのに、僕のからだ、変にされ……ああっ!?♡)」
彼女の手が己を落ち着かせようと股に伸びてしまう。だが口元の寂しさは消えるわけではなく、暫く彼女は眠れない夜を繰り返す事になる。
無理矢理されて気持ちよくなってしまい堕ちてしまった体を満足させられるのは、残念ながらあの男しか居ないのである。
☆
2.旅人の璃月帰省
予言を乗り越えてから約1ヶ月、そうなってくるとフォンテーヌの復興も大まかなところが進み細かい修繕に時間が割かれている頃。
どこぞの元水神が住まわせてもらってるからと料理を練習しているような平和な時間が過ぎていた一方で。
「いや、私は魔神じゃないって」
「怪しいが過ぎるね」
「私を何だと思ってるの?」
「現地妻製造機」
「魔神の話じゃないだろそれ!」
フォンテーヌ邸へバンパーが帰って来て数日、旅人は呼び出された彼の所へやって来ていた。
「こ、子供は居ないからセーフだし」
「良い加減刺されなよ、世の為に。最低だよ?」
「最低?妹探すフリして
「喧嘩は買うぞクソ野郎!!」
そして何故かつかみ合いの喧嘩が始まる。仲が良いの悪いのか分からない2人だが、腐れ縁のようなものである。ちなみに暗黙の了解として能力を互いに使わない喧嘩をしている、使うと街一つ沈む事もあり得るからだ。
そして軽い殴り合いは互いの顔と腹にそこそこ良い拳が入ったことで終結、争いの虚しさが互いに鈍痛として染み渡らせている。
話の本題すら触らずに始まった喧嘩は漸く互いの頭を冷やしたのか、2人は腰を落ち着かせたようだ。
ちなみに呼ばれたのフォンテーヌの地下であり、隠れ家的な場所だろうか、その割には飲み物とかを準備してる辺り定期的に利用をしているのかもしれない。ただ人の気配はほぼしないので、パイモンを呼ばなかったのは秘密の話をしたかったのだろう。
しかし、やはり今回の予言における事件を聞かずにはいられなかったのである。
「あのなぁ……不老に見えるけど、成長止まってないからな。今年も身長少しは伸びてたし、髪とかもまだ伸びてんだからな」
本人はそう言うが水の権能を会得したどころか神に届きかねない力を持っているのだ。あのスメールで草神をしているナヒーダですら『純粋な力でも及ばない』などと言われているのだ、それは草の元素龍王を秘密裏に浄化していたと気づいた故の言葉だが、武闘派では無いとはいえ神を上回る存在なのは確かなのだ。
そして、あの鯨を権能無しで勝つ切り札すら握っている。人間の領域にはもう片足ぐらしか残っていないのかもしれない。
「諦めたら、降臨者でしょ」
「降臨者=人外なのは私以外の話だろ」
「髪、神の皆みたいに光ってたよね?」
「ノーコメントで」
ナヴィアを助けた時にしっかり髪の一部が青く輝いていたので神の力を行使しているのは分かっている。
ただ、旅人は知らないが司るのは実は結構な条件がある。彼もハッキリと認識はしていないが大きく必要な要素は三つ。
神の体液の接種・莫大な対象元素の獲得・神の本質への接触の三要素になる。
水の権能については鯨との戦闘や原始胎海の水を止めた事でクリアし、フォカロルスの領域やエゲリアの残骸に触れた事で本質も理解し、そして人の部分ではあるもののフリーナから唾液を大量に摂取したことで覚醒したのだろう。
なので彼としては『力をコピーしている』という認識であり、事実神に至ったわけではなく『人間のまま』ではあるのだ。
それに、彼自身魔神と考えていないのには理由はまだある。
「そもそも、魔神にはそれっぽい名前があるだろ。私にそう言うの無いから」
魔神には、魔神としての名前がある。クラクサナリデビがナヒーダと名乗るのとは違う、ナヒーダの場合はブエルが魔神としての名前なのだ。
対してバンパーにはそれが無い、それを意識もしていない。
「バルバドスとかバアルとか、私には無いよ。私の世界の悪魔の名前と同じっぽいけど、72柱も覚えてるわけないし」
それに何故か分からないが元居た世界の悪魔の名前と雰囲気が同じなのだ。完全な一致では無いものの、彼の考えとしては授かるような意識が現れて名乗るのだと考えている。
「元ネタがあるの?」
「いや、違うかな。私の解釈だけど、多分大元の宇宙の意識的なのが流れてるんだろ。悪意も無いけど善意も無いような一部の存在が感じられる波長。私の世界が元って言うよりは、どっちの世界にも干渉してる何かでもあるんだろ」
「あー、そういうのか」
「……適当言ったのに理解する辺り、やっぱ桁違いだよな?」
旅人はバンパーと違い幾多の世界を既に歩んでいる、妹と共に歩んで来たのだ。世界では別れた彼女を探す為に留まっているのだろう。ただ外見的にも精神的にも若さを感じるので今更畏まった関係にはならないのだが。
「知ってるのを言ってみたら、覚えててあげるから」
「……何か変じゃない?言っても仕方ないだろ、どんな奴かも解説出来ないのに」
「いいからいいから」
「えー……まぁ、いいけど」
旅人は何故か魔神の名前に踏み込んでくる、そこまで聞いてくるのも何か訳があるのか。考えても分からないので気のせいと彼は片付ける。
ソロモン七十二柱の悪魔は大体何かしらの経歴と爵位、それと司ってる権能があったりする。しかしそんなものは当然知らないので、彼としては本当に知識の中にはあまり情報は無いのだ。
「アス……ナーンデウス?モナデウス?確か『アスモノデウス』って名前ぐらいしか思い付かないな、何を司ってるのやら」
名前が合っているのかも自信はない、ただ何となく頭の中に浮かんだのがその名前だった。それ以上の理由は無いが、旅人は何故か納得したような顔をする。
「なら、君が神になったら魔神アスモノデウスだね」
「
魔神なんて力を持っただけで人間と本質は変わらない所もあるので飲んだくれやら天然武闘派令嬢やら個性が強めなだけで割と人間らしいところはあるが、それはそれとして神様らしさは本物なので彼が名乗る時は無いだろう。
中身と外側が揃って神になるのだ、そういう意味では旅人もまだ神には至れていない。ただ目指すものでもないのだ、いつか辿り着くのが神という奴らが居るだけである。
ただ、そんな魔神の話を粗方聞けたからか何処か満足しているので話は終わってくれる。彼としてもこれ以上話せる事も無いのでそこで話は終わって助かっているようだ。
なので、旅人から漸く本来の話が始まる。
「それで、今日呼び出した本題は?」
魔神の話はあくまでも旅人が気になっていたから聞いていただけで、本来の話はそれだ。そちらが長引くのならさっさと聞いておこうと考えてのものだったのだ。
「あー、それか。大した話じゃないが、覚えてるか」
「覚えてるって、何を?」
何の話だろうか、恐らく今になって話すのでフォンテーヌで起きた事なのだろう。2人で関わったことは限られる、なんの話なのかと考えていると。
「私が収監される時に大爆笑してた事だな」
「……あー、え?」
「雷電将軍からの死刑宣告、態々届けに来たよな?逃げれないの分かってから親善大使として
────八重宮司様が来るとかあのタイミングで言うかなぁ?」
瞬間、空気が変わった。彼の言葉の端々から、途端に重圧が感じられる。そんなしょうもない話なのに、何なら話の全ては聞いてないものの察すると彼が全て悪いのに、態々呼び出したのがそれというのが呆れ果てそうになるが、それ以上に『彼からの仕返し』で呼ばれた事に悪寒が走っているのだ。
「いや、その、冗談だよ?まさか、僕と君の仲だろ?」
正直に言うと、彼は喧嘩は出してはいけない本気を出してこないので怖いわけではない。流石に良識があるのだ、しかしそこにしか無いとも言える。
言えてしまうのは、手心を加えなくて良いと判断する事においては比類なき嫌がらせをしてくるからである。
「そうだな、分かるよ。でも、私だって君を理解してるつもりだ」
「だよね?今回の事はフォンテーヌだけに水に流してさ」
「だから、私からもお返しをしたくてな」
彼が何故か、手を2回叩く。何の合図だ、彼が本気で旅人に手を出す時はやる事と言えば面倒事を押し付けたり濡れ衣を着せたりだ、ただそれでも十分にヤバいので避けれるなら避けたい。
だが、何をしてくるか想像の上を行くのが彼であるので身構えても仕方ない。かと言って割り切れないので、旅人は全力で頭を回す。
「言っておくけど、僕だって強くなってるんだよ」
「ああ、知ってる」
何が襲いくるのか、あまりにあまりなものなら返り討ちにしてやる、そんな意思を固くしながら背後の扉から人の気配を感じる。かなりの強者だ、恐らくは個人的な恨みを態々見つけてけしかけてきたのだろう。それならば返り討ちにして対話の道を見つけるだけで良い、そう思い扉が開くと同時に構えを取る。
「だが、お前はもう負けてるよ」
「どういう意……っ!!」
誰が来ようと構うものかと、見据える先には背格好が旅人よりも大きい存在。見覚えのある長い白髪が揺らめき、その瞳が旅人を見据える。瞬間、旅人の体へ体温が消え去ったかと思う程の寒気が襲う。
「感動の再会だな」
「し、ししし、申鶴!?」
申鶴だ、璃月じゃ留雲借風真君という仙人の弟子で甘雨の姉妹弟子でもあり、かつては渦の魔神の眷属を倒すのに協力してくれた存在だ。
そして、旅人に対して本気で恋心を抱いており童貞を半ば無理矢理食い尽くして来た存在でもある。その手引きは目の前の男によってなされているのも忘れられない。
「というわけで、君には璃月に帰ってもらう」
「どういうわけで!?」
この世界において、肉体関係を結ぶことは避妊の概念が無く忌避されるような事のせいで『其方の子供が出来ても構わない、というか欲しい』というプロポーズが含まれているので結婚とほぼ同義の意味合いを孕む行為である。
そして旅人と申鶴はそれを結んだ、というかバンパーに結ばされた。
しかし一方的な行為であればそれは犯罪であり、婚姻とはならない。だが途中で旅人もやられっぱなしにされるかと反撃したおかげで『合意』のような形になってもいるので、ありたいに言うと2人はかなり特別な男女の関係、1番近い言葉なら恋人と言えてしまう。少なくとも申鶴は旅人とそのような関係でいたいと想っている。
そしてそんな恋人が何故か悲壮感を漂わせながら目の前に居るのだ、嫌な予感しかしなかった。
「旅人……私以外に親しい間柄の令嬢が出来たと聞いたが、真なのか……?」
「へ?」
「も、もう我の事は不要……そう、なったのか?」
「そ、そんなわけないよ?そんなわけ……」
そして、それは的中する。別に申鶴とは付き合ってないし、本当に童貞を奪われただけなのだが、この世界でそれは罷り通らない。
なんとか言い訳を考えなければならない、幸い前回は出来なかったようだがいつまでもそうとは思えない。流石に子持ちになるのはやばいだろう、再開した妹からゴミを見るような目で見られるのは間違いない。なので絶対に避けなければならない、申鶴の誤解をどう解くかと思考を巡らせるが。
「『どう?私の料理、好みに合うかな?』」
「『うん、僕なら毎日食べたくなるよ』」
「『そう?うふふ、ならもっと試したいのあるんだ♪付き合ってね、相棒!」」
「『勿論、楽しみだね』」
「バンパアアァァァ!!!」
バンパーが手で掴めるぐらいの大きさの録音機から音声が流れる。フォンテーヌという国で科学力は他国に優っているが、そんなものまであるとは旅人は知らなかった。
そして当然というべきか、親しげな女性の声が響いてしまう。申鶴の顔から、すとんと表情が抜け落ちる。代わりに、凍てつく視線が彼の体に突き刺さる。
ちなみに音声はナヴィアが料理を練習する為にアドバイスを録音していたので預かれている、旅人の為の料理ではなかったりするが申鶴の知るところではない。
「分かった、空には私にとって『相棒』どころじゃない事を知ってもらおう。大丈夫だ、満足して貰えるように我も以前より長く出来るように頑張る」
「前よりも長く!?」
以前、旅人は凄いことをされた。バンパーと一緒に学んだとかいう巫山戯た背景もあるが、何度も絞られて捕まり続けた。そんな責め苦が以前よりも長くなる、考えるだけでも体が震えてしまう。
申鶴には悪いが倒させてもらおうと、逃げさせてもらおうと元素を構えようと構えを取る。流石に申鶴より旅人は強い、本気で行けば勝てる。なのでどんな行動を仕掛けてくるかと身構えていると。
「ふふっ」
「へ?」
一瞬で、正面から両肩を掴まれてから裏返されて抱きつかれた。彼女の豊満で起伏の大きいものが、背中から感じ取れてしまう。
全く反応出来なかった、いやそんな筈はないのだ。いかに彼女が力を持とうと旅人の本気はそれを行く、そもそも『向こうが早い』というより『こちらが鈍かった』のだ。
「あれ!?なんで体が熱……まさか!?」
そして、そんな事をしでかせる奴は1人しか居ない。
「じゃ、申鶴。前より強めのやつ、
「分かった、色々と助かる」
先程の飲み物に恐らく媚薬でも混ぜられたのだろう。彼も飲んでいたので安心していたが、解毒ぐらい容易く出来るのかもしれない。
ただ今考えることではない、重要なのは去っていった彼や後々口移しで飲まされる大量に棚へ並ぶ媚薬ではない。
今、ベッドに押し倒されて手を押さえられているこの状況だ。
「ね、ねえ申鶴?その、強引なのはよく無いよ!僕だって傷つくよ!?」
バンパーは居なくなった、ならば申鶴を説得するしかない。体に力が入らず申鶴に触られている部位が異様に熱を持つが、まだ理性が働けている。
なので、彼女の良心に縋る。俗世と溶け込むにも段階を飛び越え過ぎなので落ち着いてくれと。
「確かに、空が傷付くのは嫌だ」
すると、彼女と目を合わせられる。ただ、手は離して貰えない。
「でも、我を刻んだら忘れないで貰えるから」
「わ、忘れないから!だからしなくても良いんじゃないかな!?」
まずい、圧力が高い。このままではまた大変な事になる、申鶴の胸に挟まれて何度も果てさせられる。男としての尊厳が大変な事になることは避けなければならない。
「我は、空と婚姻を結べなくても構わない……我では共に生きてはいけないから」
「し、申鶴……!」
「其方の子を孕めたらそれで良い」
「それはそれでだよ!?」
だが、もう無理だった。誰だって目の前に手を伸ばしたら届くようなものがあれば伸ばしてしまう。
「それに……誰にも見せられない其方の顔を見ると、我は昂ってしまうのだ、それが堪らなく欲しい……♡」
故に、長い夜は始まる。
「や、やめっ!ちょ、いきなり手を入れたらあああ!?」
「もうこんなに、ん……嬉しい♡」
片手で両手を押さえながら申鶴は旅人の股に手を入れる。体を反らしても掴まれてしまっているので逃げられない、一方的な我慢比べは語るまでもなく申鶴に軍牌があがる。
そしてその程度で終わるはずもなく、旅人は翌朝まで搾られるのであった。
なお、パイモンと合流した後に彼はそのまま璃月に連れて行かれて更なる夜が待ち受けているがそれはまだ先の話である。
☆
3.窃盗少女のその後
リリアはモンド人でありフォンテーヌには浮かれた観光客を目当てにスリを働く盗人だった。ちょろい仕事だと、多少バレても蹴り飛ばして有耶無耶にも出来たので彼女も浮かれていたかもしれない。
「ひゃら……♡私、貴方の子供なんて欲しくない……やぁ♡」
だから、彼に捕まった。
「ごちそうさまリリア。もし出来ちゃったら泥棒にならない良い子に育ててね♪」
「そ、そんなぁ……赤ちゃん、やだぁ……♡」
口に下着を入れられ封じられると、処女を奪われるだけで済まず種を何度も植え付けられた。懇願し、泣いて謝り続けるが余計に彼を昂らせて貪られた。最後の方は下着を抜かれた口に舌を捩じ込まれて文字通り全てを奪われてしまい、代わりに残ったのは奪った筈の『マジックショーのチケット』に『幾ばくかのモラ』と『情けない姿を晒す自身の写真』であった。
しかし、それだけでは済まない。彼が去って鳴き疲れた体を起こしても彼が残っている。『お腹に残された種』の異物感がそう語っている。
「(全部初めてだったのに……!いつかは、恋人が出来た時に……好きな人との子供が欲しかったのに!!)」
散々されてしまい、彼女はやるせない気持ちになってくる。当たり前だ、先に窃盗を試みて意識を刈り取ろうと蹴りまでしたが赤ちゃんを産まされる迄はいかないだろう。それに堕ろすという行為は信心深いこの世界においては忌避されたものであり、生まれてくる命は迎えるというのが普遍的だ。堕ろすというのもその影響か酷く金がかかるとも言われている。よって産まれてしまうものは仕方ない、泣き寝入るしかないのが現状である。
それに痴態を晒した写真は渡された一枚で済まないだろうし、先に犯罪行為を働いていたのは彼女ではある。なので彼女は法的に裁くのは難しいと悟っている。
だから、泣き寝入りをする前に手を打つしかない。
「(ぜ、絶対に許さない……確かに凄く、凄かったけど!あ、あんな事したのにヤリ逃げなんて許さないんだから!!)」
彼女は産まれてくる我が子は仕方ないにしても、それを養わせなければ気が済まなかった。行為の最中で体は堕とされていたので、心までは堕ちきらずとも、態々渡された証拠を使った自爆特攻には至らなかったのである。
なお、それは向こうに計算されていたとは気付いていない。このような事例を何度もやっておいて一度も取り沙汰にされていないクソ野郎なだけはあった。
そして、そのクソ野郎の名前が『バンパー』である事は分かったし裁判でメロピデ要塞にぶち込まれた事も分かった。後は出てきたタイミングで捕まえて認知させて金をブン取れば良い、処女は失ったが相応のモラを奪う算段をつけていただけ彼女も狡猾ではあったのだろう。
しかし、彼女とバンパーは根底の部分が違った。それはとある偽証裁判の時に明らかになった。
リリアとしてはフォンテーヌの予言はモンド人なので溶けないだろうとたかを括っていたので滞在を辞める理由は無く、噂にある裁判という事もあって物見遊山の軽い気持ちで審判を見ていた。
彼から口止め料で渡されたモラがそこそこあったから盗みを働くほど困窮もしていなかったのもある。
そんな訳で噂にあった裁判を見に行った、内容は分からず誰もが知る存在の公判となれば足は伸びても仕方ないだろう。少なからず彼女の中で鬱憤を吐き出したかったのもあるのだ。
そして、水神フリーナが神でないという裁判は予想よりも楽しめた。
「(あーあ、泣きそうな顔しちゃってるし。500年生きてても普通の人と変わらないし、大した事な……ん?)」
神という存在が弱っているのを、他者に虐げられているのを、神という存在をモンド人では感じ辛いので見ていて飽きなかった。他人を笑うことでストレスが発散され、ひと時の楽しみを傍観していた時だった。
そんな時である、扉が勢いよく開きずぶ濡れの男が立っていたのだ。それも見覚えのある背格好で。
「(バ、バンパー!?何であの変態がここにいるのよ!?)」
何故か牢獄に閉ざされた筈の彼が裁判へ現れた。水元素を扱える姿を見て不覚にもただの人間でしかない彼女は格の違いを感じさせられたが、そのままフリーナを庇う姿を見ると本当に無理矢理エッチをして来た男と同じなのかと疑う気持ちにすらさせられたほどだ。
「(あ、あの男……変態な癖に、割と気障ったらしい女誑しなのね。あの水神完全に女の顔してるじゃない)」
フォンテーヌの全てを敵にしながら、たった1人の女の子を守ったのだ。しかし、この時は内心では嘲る。あんな顔をしてるが自分には欲望を向けてくるような男にころっと堕とされたフリーナや群衆を、哀れんですらいた。
「(馬鹿ばっか。でも、これで世間体を守ろうとするだけモラをせびれるわ。私の初めて奪ったんだから、絞れるだけ搾り取ってやろうじゃない)」
ただ好都合な事にバンパーを脅せるだけの世間体が生まれたので、彼女はほくそ笑む。これでモラには困らなくなると、バンパーという男を調べてみたがランジェリーという下着の特許やライセンスを持つ金持ちなのはすぐに分かったのだ、一生遊んで過ごす事も難しくない。ただ、彼女としても破滅まで追い込んでやる気だった。
「(ふふ、泣いて懇願しても許してやらないわ!だってそっちもそうだったものね!良い顔出来るのも今のうち……っ?)」
そんな計算をしつつあの時の仕返しをしてやろうと考えていたリリアであったが、不意に歌劇場の空気が変わった事を察する。それは彼女だけが感じたのではないらしく、中には険しい顔をつきをした者もいる。
ただ、彼女は凡人の域を出ない少し体を動かせるだけの盗人だったのでそれ以上の事は分からない。それが分かるようになるのは、突然空間が割れた時だった。
『ぶおおおおおおんんん!!!』
人の何十倍もの大きさを持ち空を遊泳する災害の獣、呑星の鯨が現れたのである。
「ひぃっ!?(な、なによこの化け物!?)」
リリアを含め、殆どの者たちは息を飲む。こんな化け物が存在してしまうのかと、絶対に敵わない生物としての存在の大きさに気圧されてしまう。
だが次の瞬間には、その咆哮に震えさせられた正気が恐慌する。
「きゃあああああ!!」
「魔獣だあああああ!!」
「どけよ!早くしろ!!」
「(なによこれ!?こんな所で死んでられ……っ!!)」
パニックとなった観衆は、途端に全員が後ろの出口の方へと向かっていく。リリアも同様に怪物からの逃亡をはかろうとするが、不運が続く。
彼女が他の者よりほんの少しだけ怪物に対して正気であったが故に体が少し固まり、逃げ出すのが遅れてしまったのだ。更に彼女を気遣える程周りに余裕があるわけもなく押しのけられ、体勢を崩されその場に転び傾斜であった事も祟り落ちてしまう。
元々身のこなしは出来る方だったので致命的な怪我には至らないものの、無理に体勢を維持しようと踏ん張り足は捻ったようで赤く腫れ上がっている。
「痛っ、うう……」
「大丈夫ですか!?」
そこへ避難を支援していたシャルロットが駆け付ける。周りを見ればナヴィアの率いる棘薔薇の会、執律庭の警備員達、クロリンデやシグウィンといった周りを助ける余力のある者たちが動き回っている。
シャルロットもその1人として彼女を見つけたのだろう、ただ似たような者は他にも居たので気付けたのは彼女だけだったらしい。
状況も状況だ、すぐに立ちあがろうとリリアも足を立てようとするがうまくいかない。
「だめ、痛くて動け……ひっ!?」
しかし、彼女を怪物は待ってくれない。リリアの前にはヌヴィレットから弾かれ、次の標的として見定めた鯨が体制を整えていたのが見えた。そして、光の見えない深淵を覗かされたような大口と喉の奥を見せながら『リリア達を狙って』飛び込んで来た。
「こ、こんなの……」
「た、立って下さい!私が肩を貸します、行きますよ!!」
シャルロットも直ぐに気付き、声を掛けて腕を引っ張る。しかし、リリアは動けない。見てしまったのだ、この世には存在してはいけないナニカを。気付いてしまったのだ、何をしようと無駄であると。刻一刻と近寄ってくるそれがスローに見える程、彼女は頭の中に情報が飽和していく。
絶対的な死が、存在すら残らぬ程の咀嚼が、自分に向かっているという絶望に、彼女は折れてしまった。
「いや、嫌だ、死にたくない!死にたくない!いやあああああ!!」
シャルロットの声など届かない、絶叫しながら蹲り現実から目を逸らした。ただの女の子でしか無かった彼女には死は遠い存在だったのだ、受け入れ難いそれに抗えなくなっていたのだ。
人生が走馬灯のように流れていくのだ。スリをしていたが本当は女の子らしく恋人の愛し合って家庭を築き、いつかは幸せを享受したいと思っていた。だが叶わない、そんなのは望めない、目をつけられた彼女に明日はない。
そして、その口が2人を飲み込もうと唸らせた。
「……あぇ?」
だが、来るはずの衝撃は無い。それどころか庇ってくれているシャルロットの感触が感じられる、死んでいない。しかし、鯨はそこにいるのが目を向けずとも分かる。何が起きたのかと、リリアは泣き腫らした顔を前に向けると。
「重っ……!!」
鯨よりも大きな水色の盾が、その大口を無理矢理塞いでいた。更には鎖で鰭を捕まえており、身動きは目に見えて悪くなっている。確かに恐ろしい事は変わらないし体の震えはまだ収まらない。しかし鳴き叫ぶそれが、目の前にあった死が遥か遠くに戻ってしまったような、心の中に小さな安堵が、生還への希望が産まれる。
「バ、バン……!?」
そして、それをしていたのはバンパーだった。その横顔は2人が誰かなど関係なく、危険を顧みずにそこにいた。あのどうしようもない怪物を、押さえ込んでいた。
「早く行け、長くは……!!」
しかし、長くはもたないのは盾に入っていく亀裂と一つずつ千切れていく水の鎖を見れば明らかで、壊されてしまえば今度こそ助からないだろう。
ただ、そんな状況であっても彼は逃げない。リリア達が居るから、ただ呆けて座り込むことしか出来ない彼女が居るから。恐らく彼には彼女が誰かなんて見えていない、ただ危ない人間だから助けたのだろう。
今、目の前に居るのはリリアの知らないバンパーという男だった。鯨を前にしているというのに、彼女は何故かそれとは違う鼓動に体が震えていた。
「ふぇ?」
そしてその震えを自覚する前に、景色が変わった。周りには怪我をした人達が少なからず居るが、大半はあの怪物を見たショックで気が動転して逃げれなかった人たちだと分かる。
ここは歌劇場の玄関口だ、鯨から逃げれはしたが追いかけて来られたら逃げられない場所。だから何人かはそんな場所に居られるかと大声を出していたりもするのだが。
「後はお願いします」
リリアを高速で運んだ女性、クロリンデはまた劇場へ行く。あの怪物と戦うのだろうか、逃げ遅れた人を助けに行くのだろうか。しかし、そんな隣に戦場があるのに彼女は取り乱していない。あの危険から脱したという事実に呆けているだけではない。
「お姉さん、大丈夫?直ぐに運んであげるからね!」
「う、うん……」
担架で運ばれるリリアは、朦朧とした頭の中でヤケに煩い拍動に邪魔されながらも、途端に妙な熱を感じたお腹の中に意識が向く。幸いにも手足の怪我で胴体には傷も痛みもない。なのに暑さがあるのは何故かは分からない。
ただ、少なからず目前の死から解放された彼女は小さな安堵をしつつ意識を手放していく。隣では鯨がまだ居る、そんな場で寝れるのは彼女のメンタリティをしても中々にあり得ないが、あの彼の横顔と背中を見た後だと自然と意識を手放せてしまったのだろう。
なおその安らぎを自覚するのはそれより数日程後、フォンテーヌの窮地を救った新たな水神が紙面を飾る時を待つ事になる。
☆
最近になって無事に囚人を卒業した私ことバンパーは、旅人を璃月に送還したりしつつも落ち着いた日々を取り戻している。
特に自宅に腰を落ち着けるというのが久しぶり過ぎて中々外出の気を削いでくる。
ちなみに今はフリーナと同棲してるけど、彼女も外にあまり出ない。1人の時間も割と好きなことというのもあるが根っこが陰属性なんだよね……でも怖い夢でも見るのか寂しがってるのか1人じゃ寝れないと薄手の格好で部屋に来るので同じ布団で寝る時が最近増えてきた。
役得だね、女の子の柔らかい体は抱き枕に凄く良い。だからこそ違和感があるしブラとかは外すんだけど。寝る度に脱がして抱きついてたけど、昨日から漸くつけてこなくなったんだよね。胸元から角度で見えちゃうの、普通に見るよりラッキーな気がして好きです。
ただ、一応今は彼女が安定してないので手を出す気はない。ちなみに、ここで手を出して依存されてヤンデレになるって意味ではないぞ。それなら手を出してる、ただ今は無理というのが分かったらOKだ。
さて、故に私の日常はほのぼのとしている。ナヴィアとエッチしてからリネットと3回ぐらいエッチしたぐらいの平穏。そしてその時間を利用して、私は街を散策することにしたのである。
「バンパー様、是非うちの店に来てくださいよ!良いカボチャが入ったんですぜ!」
「ありがとう、帰りに寄らせて貰うよ」
ただ、街を歩くとよく声を掛けられる。ヌヴィレットから貰った服が何着もあるし着て歩いてくれたら色々と便宜を図れると言われたので着ているのもあるのか目立っており、更にはフリーナの裁判で顔が知れたのか知らない人から話しかけられる事がかなり多い。
「バンパー様、あの、その、私達の子の名付け親になってもらえませんか?」
「嬉しいけどフリーナに頼むと良い、彼女の名前の方が縁起も良いよ」
「バンパー様、サインしてください!」
「バンパー様、フリーナ様との生活について一言だけでも!」
そう、凄く多いのだ。1人話しかけられて答えてる時に2,3人が声掛けてくる事もあるほど、なぜか分からないが予想よりも顔が知られているのだ。それになんか皆恭しい、こっちも言葉遣いに気を遣っちゃうので気疲れしてくる。
こういう時はカフェでコーヒーでも飲んで落ち着くに限る、そう思い横目に入ったカフェの方へ足を向けた。
名前は《カフェ・リュテス》と程々に人が集まる雰囲気の良さそうな場所、テラス席も目を惹くがやはり豆を挽いた芳ばしい香りが目を向かせてくれる。
「おぉ、バンパー様!うちのコーヒーに御興味があるとは!」
「飲むのは久しくてね、出来ればスッキリした後味のモノと爽やかな風味のものを頼みたい」
「ではモカかコナをブレンドしましょう。在庫を見て参りますが……他には?」
「砂糖とミルクは別で、有りと無しで一つずつ。有りの方はテイクアウトで……ついでにお勧めの豆を一袋」
「承りました、少しお時間を頂きますよ」
気前の良い店長は豆に自信もあるようで頼もしい。思っていたよりも気疲れしていたのか、途端に肩の力が抜けてくる。周りもコーヒーを純粋に楽しんでいるかコーヒーを飲みながら作業をしているからかで視線もあまり感じない、最近は人の視線に過敏に反応できてしまうのでそれで疲労感も出て来ているのだろう。
とりあえず店主さんが来るまではゆったりと至福の時を待とうと考えていると。
「へ?」
背後から、私に向けた意識を感じた。
「バ、バン、パー……様?」
振り返ると、見覚えのある顔がある。いや体もか、何せ異性では私しか見たことがないであろう素肌を晒して楽しんだのだ、体付きは見覚えがある。顔も体もゼロ距離で人に見せられない姿にしたのだ、写真もあるし忘れるわけもない。
「久しぶりだね、リリア。元気そうで何よりだよ」
そこにはフォンテーヌに入ってすぐに食べたモンド人の盗人、リリアが居た。格好を見るに私服だが、彼女もフォンテーヌに住んでいるのだろう。私があげたモラも役立ったのかもしれない、ただやはりエッチした男と会って緊張しているのか顔は赤く明らかに動揺している。
ただ私は彼女の恥ずかしい写真を持っているのだ、ここで大声で犯罪者と罵る事は出来ないだろう。
「あ、あなた私に……その……」
ちなみに、会うのはこれで3回目だ。あれを邂逅にカウントするかは分からないが。
「鯨の時は構えなくてごめんね、余裕があったら足の怪我も治せたんだけど」
「っ、あ……覚えて……?」
鯨の時に庇った子、あれがリリアだったのだ。シャルロットに助けられていた彼女を守るのに精一杯で怪我は治せなかったが、見る限りは後遺症も無さそうで良かった。
何か私がそう喋ってから動揺が大きくなったけど、脅しと思われちゃったかな?そっちから暴露しない限りは脅さないし、何ならまた気持ち良い事教えてあげて口を噤ませてあげるけど、ここら辺の塩梅は人によって難しい。
とりあえず、私は店主がそろそろ戻ってきそうなのでカウンターの方に向かわせてもらおう。
「体の調子が悪かったら教えてよ、今度は治してあげるからさ」
「あ、え、その……」
「あー、一方的に話されても嫌かな?ごめんよ、邪魔しちゃったね」
「ま、待って!」
なのだが、振り返ろうとした私を彼女は少し大きな声で呼び止める。周りのお客さんも話し声で意識を散らしたのかこちらに目を向けてくる。
「わ、わわ」
「わ?」
訴訟起こされたら確実に負けて前科がもう一つ着いちゃうので困るのだが、流石にこんな公衆の面前で言うことではないだろう。彼女は自分が1番可愛いくて守られたい典型的な乙女の1人なのだから、そんな事はしない。なので、逆に何を言いたいのかと気になっていると。
「わ、私!1人でも良い子に育てるからっ!!」
……。
「そ、そういう事だから!」
「……」
彼女はそう言って、足早に店の中に入って行った。従業員専用の入り口を使ったと見るに、今はここで働いているのだろう。都合が良いの悪いのか、入れ替わるように店主が豆の袋を片手にやってくる。
その後ろには要望して焙煎されたコーヒーから良い香りがするのだが、今は全然気にならない。
「お待たせして申し訳ない。どちらをテイクアウトでしたかな?」
「あ、どっちもテイクアウトで」
周りの視線がやべー奴を見る目をしているのもあり、抱えるコーヒーとは真逆の冷え切った空気の中で私は帰ることにする。砂糖とミルクはフリーナの為に貰ったが少し分けて貰おうと、情け無い背中を晒しながら家路に着くのであった。
この男を誅伐する裁判については被害者がまだ多くでます、その後に○しますのでお待ち下さい。