私は人間(倫理観)を捨てるぞ、旅人!! 作:札幌ポテト
本番まで100とした時
アンバー:70
煙緋 :45
としたら今回は
リサ :80 ぐらいです。
ちなみにR-17.5ぐらいの気持ちでこれからも興が乗ったら書いていくんでよろしくです。
モンドを統括する騎士団、その本部には図書館も内部に存在する。モンド人ならば誰でも、モンド外でも手続きさえすれば本を借りる方ができる場所がある。
騎士団なんていう私の体質的に何かの拍子に厄介ごとに巻き込まれる場所へは行きたくないのだが、私の求める知識はここにしかないのでモンドを出て以来、たぶん6年ぶりぐらいにやってきた。
蔵書数も6年の間に多少は増えているだろう、そう期待して扉を開けると。
「あら、いらっしゃい」
知らない人がいる、モンド人のようには見えるが。
「見ない顔ね、外国の方かしら?」
「モンド生まれのモンド人ですよ、まぁここには久しぶりに来ましたけど」
どうやら司書さんのようだ。でも若い、大人びているが実際には16か17歳ぐらいに見える。騎士団で2つ年上のディルックが最年少で騎士団に入ってはいるが、最近の騎士団はジンが入ったりそう遠くない未来には恐らくエウルアが入ると思うので若い世代に交代していくだろう。
というか今の騎士団に老害が多過ぎるので、役立たないというのが本音である。
「それで、どんな本をお求めで?」
「元素、もしくは神の目関連の書籍か論文を探してるけど最新のとかあります?」
ただこの数の本を1から探すのは面倒だ、司書さんがいるのも都合がいい。昔はいた記憶が……なんか婆ちゃんがやってた気がするけど、美女が司書さんっていうのなんか良いな……いや基本的にこの世界の人間全員美男美女だけど。
私? 前世だとそこそこだけど、この世界での偏差値は40後半ぐらいになる。レベルが高いぜ……。
「神の目、欲しいの?」
「欲しくはあるけど、目的は別ですよ」
あったら嬉しい、じゃないとヒルチャールと延々に鬼ごっこをする事になりかねない。私の能力に汎用性がないのが辛過ぎる。
「その様子だとスメールへ勉強しに行くのかしら?」
スメール、まだ行ったことのない国だ。だが知ってる、知識が価値を持つ学者の国だ。気が向いたら行く高跳び候補地ではあるが、現状はそこまでやらかしてないので行く予定はない。
一度モンドや璃月以外の国にも行ったことはあるのだが、とりあえず暫くは行きたくない。
「それはどうして?」
「若いのに知識へ欲があるんじゃないの? ならあそこほど適した場所はないわ」
「若いって、司書さんあまり歳は変わらないでしょ」
精々あっても二つか三つ程度の差だろう、だがどこか達観したような印象を受ける。儚げな感じがなぜかする、この手の人間からは感じなさそうなのに。
「ふふ、そうね」
それが図書館の司書、リサとの出会いであった。
☆
図書館司書、リサの一日は長いようで短く殆ど仕事はしない。借りる人間そのものが少ないというのもあるが、彼女自身がめんどくさがり屋なのだ。やる仕事といえば自身で行う本の整理、それ以外の仕事は誰かしらに任せている。
そして彼女はほとんどの時間は本を読んで過ごすのだ、それ以外に動く事はほとんどない。
「あらジン、どうしたの?」
「顔を出しに来ただけだ、夜に食事の約束もしたかったしな」
「良いわよ、いつもの場所ね?」
来訪者でも現れない限り。
「司書には慣れたようだね」
「えぇ、適度に仕事もできるし私に合っているわね」
騎士団の新入りにして、すでに次期幹部候補騎士としても名高いジンがそこにいる。リサと彼女の付き合いは長くもないが短くもない、同期の騎士団員であるというのもあるが、女性でありかつ、ジンの家系に怯まず対等に付き合っているというのもあるだろう。
「珍しいな、バン」
「久しぶりだな、ジン。それと言われる前に言っとくが騎士団とか絶対に入りたくないからな」
「安心しろ、言っているのは私の母であって私じゃない」
そして、ここにも対等に付き合う青年がいる。
「あら、知り合い?」
「あぁ、昔からの馴染でな」
ただ彼の場合は最も身近な家族以外での異性であっただけであり、そこまで深い関係でない。付き合いの時期は誰よりも早いが、誰よりも長いわけではない。
そのジンの付き合いも、主に剣の練習相手をしていた程度の仲である。将来的にはジンの付き人として育てられれても来ていたが、それを意図していた両親の離婚でそれはなくなっている。
「よくボコボコにされてたよ、勝てたのも一回だけだし」
「ん? 私は負けた事はないが……っ!?」
なお、それはジンの視点での話ではある。ただその最も特異な異性との関係は、ゼロというわけではないのだ。何を思い出したのか、顔は赤面し口元を一瞬押さえたが、すぐに受け身に回っていると感じたのか指を刺しながら睨みつける。
「あれはノーカウントだ! まさかリサに言っていたりしてないな!?」
「バーバラは知ってるぞ」
「なぜだ!? まさか……!」
「待て、私は何もしてないんだぞ!?」
「嘘をつくな、やはり君だけは消しておかなければならないようだな」
何があったのだろうか、リサ視点では分からない。だがとんでもないズル汚い戦法でバンパーがジンに納得のいかない勝利をしているのに違いはないだろう。とんでもない殺意の波動がジンから溢れている。
「ジン、この後仕事でしょ? それに図書館ではお静かに」
「うっ、それは……」
「そうだそうだ」
「貴方もよ」
「あ、はい」
しかしここはリサのテリトリーである。流石に許せない行為に目は瞑れない、ジンもため息をつきながら頭を押さえる。バンパーもまた何かを読む作業へと戻っていく。
「その手にあるのは?」
「……ちょっと神の目に興味が出て調べてるだけだよ、気にすんな」
「……そうか。済まないなリサ、私は仕事に戻るよ」
ジンは何か含みのある顔をすると、少しだけ溜息を吐く。二人の仲というのは険悪とまではいかないが、ただ同じ地区に住んでいた人間程度の仲なのだろう。
☆
「どう、半年間通った成果は」
「ない、予想の範疇というか……新しい知識は入らなかったよ」
バンパーは最初の頃こそは毎日のように図書館へ出入りしていた、しかし最近はほとんど顔を出さなくなっている。目的の蔵書、その殆どに目を通していたからというのもあるが、日増しにその陽気さ無くなっていたように見える。
「ねぇ、聞いてもいいかしら?」
「答えられる範囲なら」
「何でそんなに求めるの?」
ふとした、というより前々から気になっている疑問だった。
「……生きてるから?」
ここまで熱心に通っている人間をリサも気にかけている。だが同時に彼の行動原理そのものにも、疑問を抱いている。
「貴方がいつも読むのは神の目の機構の解析や元素の世界における役割や構造についての論文ばかりね。まるでそれに当てはまらないようなものばかり、読んでいるわね?」
当てはまらない、それはバンパーに対してだ。彼女と違いそもそも彼に神の目はない、つまり元素の力が使えるはずもないのだ。しかしそこまで求めて力を、知識を欲していく彼の行動に、リサは何か重なってしまう。
「お姉さんから一つ忠告してあげるけど……知識の欲もないなら、それ以上踏み込み続けるのはやめておきなさい。死ぬわよ」
「それは、司書さんがそうだったから?」
「さぁね、ミステリアスな魔女は嫌い?」
茶化して誤魔化している、それぐらいは付き合いが短くともリサでもバンパーでも分かる。
「心配してくれてどうも、ただ……生憎と誰よりもしぶとい事で有名らしいんで」
「……そう」
☆
「ねぇリサさん」
「何かしら、図書館で話す事なら聞いてあげるわ」
いつの間にか、付き合いは1年を超えている。疎らに最新の論文などを読みに来る彼とは、いつの間にか名前で呼び合う仲になっていた。なお彼には性は無い、その理由なんかも色々と話す程度の仲になっている。
教会の孤児で逃げ出してきたという話も聞いている、ジンとは仲良くないことも、反対に彼女の妹とは仲が良いことも、色々と聞いている。
「神の目って、何だと思う?」
「さぁ、バン君はどう思うの?」
「神の素質を持つ者に与えられる、資格……と最近まで思ってたんだけど」
そんな彼が、いつにも増して唐突に話しかけてくる。
「神の目、与えられる理由が分からないから」
体外に置かれた器官、神の目。その存在意義そのものについて論じる者は少ない。
「調べた感じ、神の目を盗まれたりした人間はそれを得るきっかけを失っている。だからその時の意思を具現化した物だとは思うけど……」
「けど、どうしたの?」
「今のところ、何も分からない。正直お手上げ……リサさんなら知っててもおかしくないと思ってね」
神の目とは何か、なぜ存在するのか、なぜ与えられ、なぜ人の願いに呼応して現れるのか。その全ての理由を知る者は、それこそ七神ぐらいだろう。
だが、その片鱗に触れた者はいる。
「神様に過ぎた奇跡を求める時は、その代価を支払えるかどうか、きちんと考えなければいけないわ」
リサは何か、まるで用意していたような言葉を吐く。スラスラと出ているそれはまるで座右の銘のような、人生の教訓のような、彼女にとって必要な言葉であるように聞こえる。
「貴方は、神の目に対する対価を知りたいの?」
神の目がなぜあるか、彼女はその片鱗に触れて大きな代償を払っている。大き過ぎる代償、それと引き換えに得たのは知識。スメールにて200年に一度の天才と言われた彼女であっても、反故には出来ない制約の強制。
今もなお、それは彼女の体に刻まれているのだ。
だが彼女は言わない、それを知る者を新しく待っている。その気づきを得る者が現れることを、待っている。
思えば彼女が彼に対して多少なりとも関わりを持っているのはそれが理由だ。彼は資格は持っていないかもしれないが、門の前に立って開けた先がどうなっているか悩むぐらいはできるだろう。
気づきを得られるかは、当人次第であるが。
「いや、知らなくてもいいけど」
「そ、そうなの?」
あっさりと興味がないと言った。その顔を見れば本当にそのように見える、神の目そのものを調べておきながらその本体に対して動じている様子がない。
神の目は選ばれ者の証、神の目は人を超える力の片鱗、神の目は人の願望、それを本気で求めていないことに矛盾しているようにも感じてしまう。
手に入れば嬉しいとは以前から暇な時にぼやく程度の欲、それがなぜここまで彼を動かしているのか想像もつかなかった。
「神様……正確には島の管理者が何を考えてるかは分からなかったけど……知りたい事は知れたし、あとは実践だけかな」
「実践って、何をするの?」
だが、神の目がなければ真実には辿り着けない。彼の求める元素の力を調べるには神の目が必要なのだから、何を実践するというのか。
「とりあえず手頃な禁書を読んでみようかなって」
「……貴方は何を言ってるの?」
禁書、その単語は頭の中によく響いてくる。禁断の書物、内容は大抵『人の理解が不可能な物』か『人の容量を壊してしまう物』に分けられる。一言でいえば、読んではいけない書物のことだ。
そんなものを、手頃だとか言って簡易的に手をつけて良いものではない。
「いや、私の予想が正しければ跳ね返せそうだし」
「……跳ね返す? 根拠のない素人の浅知恵なら辞めておきなさい」
違う、絶対的な確信が彼にはある。
禁書は当然であるが、得られる知識に対する対価を求めてくる。本の意思とでもいうのだろうか、その機構はなぜかどれにも組み込まれている。まるで知ることすら許さないように、知った者を始末する為に。
ならば本に書き記されているのは何故なのか、存在そのものが矛盾する。だが人以外が読むなら筋は通る、人ならざる何かが読むならば対価は発生しないだろう。
「あの、辛辣過ぎません?」
「寿命が半分以下になっても知らないわよ」
だからこそ、彼女はもう残っていないのである。
「リサさんって、半分以下なの?」
彼女とて自分の命がもって数年、10年は生きられないという事は理解している。相応の対価なのだ、逆に彼女はそれだけのものを手にしているという事でもある。
「ちょっとだけ、体触っていい? 何とかできるかもしれないし」
「この流れでセクハラ? お姉さんにトラウマでも植え付けられたいのかしら」
素人目に見てみたいという気持ちはあるのかもしれないが、無駄である。彼女とて伊達に天才ではない、そんな事ができないことぐらい知っている。
対価はもう払っているのだ、今更払い戻しができるわけでもないのだから。
「っ!?」
その、はずだった。しかし彼女は自分の体から明確に何かが抜けていったのを認識する。何が抜けたのかも何をしたのかも分からない、だが即座に彼女は自分の体に起きた異変に気づいてしまう。
「な、何をしたの……?」
何かを解いた、彼女でも辿り着けない何かに至った。天才魔女と言われた彼女よりも先……いや、彼女が行くことすら諦めた場所に。
「今のが呪い? か……やっぱり書き換えるとか誤魔化すみたいな事も出来るみたいだな。私って、本当に何者だ……?」
何かブツブツと呟く彼の目はリサを見ていない、少しの間であるが頭を整理しているようだ。その後思い出したかのように、彼女の顔を見る。
「リサさんって、奇跡の代償がどうとか言ってたよね」
200年に一度の天才、それを彼は知ってか知らずか手を伸ばしてくる。
「私のこと研究してみない?」
☆
能力について自発的に人に話したのは、リサが初めてであった。彼の能力の性質上、信じられないという事もあるが、言う必要もなく言って得られることなぞ無いと言って過言ではなかったからだ。
事実、彼の性質を知ったからと言って彼の利になった事はまだない。
だが、彼女は違った。中途半端な認識であった能力にメスを入れられる、数少ない魔女だった。それによって彼専用の濃縮された元素のエーテルが作られ始める、彼に力が宿った瞬間である。
しかしタダではない、その対価はもちろんある。
「だいぶ治ってきたか」
「もう4割ぐらいは寿命が戻ったのかしら……何だか、不思議な気分だわ。こっちとしてはマッサージされてるだけだし、セクハラしてるとしか最初は思わなかったわよ」
「こっちは針の穴通すような真剣な作業してるんですけど……1ヶ月ずっとそんなのしてたんですけど」
奇跡の力、存在すること自体が異常なそれにより彼女は払っていた対価が戻りつつあった。だだ無償とはいかない、代価を戻した影響により彼女の中にあった知識は何故か喪失している。
得体の知れない何かからの干渉なのかもしれないが、今の彼女にはそれが何かはもう分からないでいる。
「そうね、急に襲ってくるような身の程知らずでもなさそうだし」
「(流石にそこら辺のブレーキはあるよ、だってお互いに楽しくないし)」
「……何か変なことを考えてる?」
「何も、まったく」
だが、あと6割も今日で終わる。
「それでその……やっぱり、直接触らないとダメなのよね?」
そう言って、彼女は自分の胸を抱えるように手を組む。その顔は少し赤みがかっており、表情は羞恥の色に見える。
「……私の能力、体の表面にある膜を触らないとダメだって調べたのはリサさんですよ?」
バンパーの体には薄い膜がある、皮膚の上にもう一枚あるそれが彼の能力の正体である。まるでこの世界の原理を拒絶するように纏われたそれに触れた魔法、呪術、元素エネルギー、そのどれもが彼への侵略を阻むのだ。
そして、それが触れたものは吸収される。吸収されきれない時は弾かれたり押し出されたりするが、過去にいたどの特殊な人間にもくくれない存在であった。
だからこそ、分かってはいたが彼女は少しだけ抵抗したのだろう。背に腹はかえられないと。
「後回しにしてきたけど……仕方ないわね」
☆
今、リサさんの部屋にいる。と言っても騎士団の彼女の部屋だ、しかし普段彼女の部屋に来る人間はいない。そんな場所で男女が2人、今から人に見せられない行為をする。
ちなみに童貞を卒業するという事ではない、そんなことすればリサさんに灰にされてしまう。一言で言うなら治療とか解呪だ、だが正直やることはあまり変わらない。
彼女の胸部、正確には心臓部にある呪いのようなものを解くのだ。正確に何かは分からない、私には理解できないものなのかも知れない。そして私は能力の性質上、直接触れなければならない。
なので、私は今からリサさんの大事な所を触診するのである。正直こんな事になるとは図書館に通っていた時は思わなかったが、1年前の私グッジョブ!!
「はい、目隠し」
そう言って、彼女は私へ黒い帯を渡してくる。
「私もするわ、だって変な気分になったら大変だもの」
「……あの、そんなこと言われると踏み込みづらいんですけど」
「大丈夫よ、大変なのは死体の処理だから」
「死ぬんですか!? 私が!? 用済み!?」
こんな冗談を言える仲にはいつの間にかなっている。それだけの信頼があるのだろう、騎士団の人間だから手を出してなかったけど昔の私グッジョブ!
ん? リサさんが帯を巻いてくれるが心なしかめちゃくちゃ締め付けが強いな……さっきの死体云々、冗談だよな?
「さてと……」
もう、私の目は暗黒に包まれている。この時のために準備した魔道具なのか、全く視界はない。透けてワンちゃんとか思ってたが、そうはうまくいかないらしい。
すると目の前でスルスルと衣擦れの音が聞こえ始める。なぜだろう、目という大きな情報を失ったせいで他の五感が研ぎ澄まされている。いまの彼女が私の前で半裸になっていると考えると、昂ってきてしまう。
「……それじゃあ、お願いね」
仮眠用のベッドの上、いつも枕を置いているであろうそこに腰掛ける彼女。その声は緊張しているのか、少しどもりがある。
ただ少なくとも、残念ながら、私にはこの状況を楽しむ余裕は無くなってくるだろう。
彼女の了承を得て、私の両手は彼女の体へと吸い寄せられていく。
「ひゃっ……!」
少しだけ、手に吸い付く感触の後に沈んでいく感覚がある。手に収まらない、指の隙間から柔らかいものが溢れているのが分かる。
が、本当に残念ながら楽しむ余裕はない。
「(このバイパス塞いでこのバイパスは繋げて……こっちもか!? ここは吸ってここは弾いて……やばいやばい終わらん終わらん終わらん!!)」
仕事量が多過ぎるのだ、私程度の脳ではマルチタスクなんてできるはずもない。やる事が多く、しかも同時並行で場合によっては時間の制限も出てくる作業もあるのだ。
楽しめる余裕は、あるわけがなかった。
「ちょ、強くし過ぎて……ふわぁっ!?」
「我慢しててください!!」
「そう、は言っても……っ!?」
正直、今だけは優しくするとかエロいことをするという事が出来ないし、そんな気分にもなれない、なったら最悪の場合もう2度と解けなくなるかもしれない。だがリサさんの声で集中力が途切れてくる。
「声を抑えて、こっちは集中してるんですから!」
「ふっ、ふっぅ……!! んんっ、んっ……!!」
手で口を押さえているのか、声はだいぶ抑えられてきた。だが逆にエロい、経験豊富そうな人見えたが実際は初心であったようだ。
だが楽しむのは後である、ここ少し繋げてやれば……!!
「(よし、これで解決だな……生命力の循環も良好みたいだし)」
解呪完了、というよりは元の彼女へ戻したというのが正解か。やっとこさ終わりである。ポケットにからまったイヤホンを解く作業の超進化版みたいな作業という事もあり、私の神経もなかなか擦り切れている。
「(さて、ここからは少しだけ楽しんで……)」
だからこそ、私にはご褒美が必要だと思う。今息も絶え絶えであるが、少しだけリサさんに頑張ってもらうのも、私が頑張ったのだから良いだろう。
のだが、少し違和感がある。
「(……ん? なんか吸ったエネルギー、私の体に循環してるな。さっさと排出し……あれ?)」
そこから、意識が朦朧としてくる。こんな良い瞬間に、頭がぐらついてぼーっとしてくる。
「(あ、これ炎元素吸った時のパター……タタタ……?)」
思考回路が大きく逸脱していった。
☆
認識として、甘かった。リサはもはや手遅れな考えを頭の中で巡らせていた。ただ胸を触られるだけ、体を洗っている感覚と同じ、目隠しをすれば恥ずかしくもない、そんな甘い考えがあった。
「(そ、そんな強くしたら……っ!?)」
目を隠した事で、確かに目の前の異性を考えづらくはなっただろう。彼女の予想通りだ、しかし逆に他の五感が研ぎ澄まされてしまったのだ。
人の得られる情報量の殆どを、目によって集めているがその割合は実に八割と言われている。逆に塞いでしまえば残りの二割が100%に変わってしまうという事である。数字上の感度は5倍どころの騒ぎではない、他人に肌を触られるというのはそもそも自分で触る時の感度の2倍大きいと言われている上で、普段気にしないような互いの息遣いまで神経が尖ってしまうのだから。
「(お、終わった……?)」
しかし、その時間はそこまで長くはなかった。時間にして十数分程度だろう、治療自体はそこまでかからなかったのだ。
それはリサ自身の知識の喪失と感覚でわかる、バンパーの腕が良かったというのもあるかもしれないが、やはり彼の性質そのものが異質で特異過ぎたのだろう。
「(やっぱり彼は、何か……根本的に違う何かが……)」
今後、このような存在は現れないと断言出来るだろう。少なくとも只人では、そう考えを巡らせていると。
「へっ?」
触診がまだ続いているのだ、しかも先程までのような相手を気遣う余裕のない荒々しいものではない。
「ちょ、ちょっと待っ……!?」
上手いのだ、明らかに。意識して行われている、意図して行われている、彼女の体を楽しんでいる。
「良い加減に……!!」
だが、流石に許すわけもない。触らせていたのもあくまで治療の一環としてだ、それが終わった今そこまでさせる気なぞ、さらさらない。
「ダメだよ、リサさん。暴れちゃ」
のだが、あっさり振り回した腕は掴まれた。しかも声の雰囲気からして少し変だ、普段よりキザったらしいとでもいうのか変である。
何故そうなったかと言えば女体に触れたからと決めて良いのかもしれないが、彼の場合そうと一概には決められない。
「まさか、さっきので……?」
1年以上、彼と過ごして来てある程度の人間性というのをリサは知っている。
少なくともここまでハメを外してくる人間ではないのだ、なぜならその後の関係が修繕できない可能性が高いから。騎士団には関係者が多くいる、そこで不埒な行動に走れば牢獄に入れられるだけで済むはずもない。
ただでさえ築いて来た信用を、たった一度の過ちで崩してくる真似はしてこないのだ。
「うん、こればっかりは自分で制御出来なくてさ」
彼の能力には副作用がある、その一つに炎元素を吸収したパターンがある。
ここ半年で彼をある程度研究していく中で得た情報でもあるが、彼自身既に得ている情報だ。他の元素では主に身体に不調が起こるという場合が多い中、これだけは少しベクトルが異なる。
一言で言えば今おこっている状況、詰まるところ彼が欲情してしまうのである。生存本能の過剰発現とでも言うべきか、少量ならば少しの発熱程度で済むこれであるが、今回の場合は例外的に起こってしまったのだろう。
「リサさんのせいでこうなったんだから、責任……取ってもらえるよね?」
「せ、責任って……その、ここまでは……」
つまり、これは治療に伴った弊害である。そしてそういった副作用が起きた時に対処をするというのは彼と彼女の間で結ばれている約束ではある。
治療による事故でバンパーが再起不能となってしまう可能性も加味しての約束だ、しかしその約束の範囲にこれは含まれてしまっているのをリサは考えていなかった。
「ひぁっ!?」
そして少しの間にあった無言の間が了承と取られたのか、腕を掴んでいた彼の手は、別のところへと伸びていた。
「リサさんって普段は大人っぽくしてるけど、今出てる声は年相応に可愛いよね。色気があるって感じじゃなくて、本当にかわいいって感じで」
「そんな事、今言わな……あぁっ!?」
「仕方ないじゃん、リサさんがかわいいんだから」
歯に着せぬ言葉で責められる。普段の彼からは想像できない言葉に体が支配されている。いつもはどちらかといえばリサの方が色々と強い、そのギャップの影響か彼女の頭はぐらついてくる。
「ふわぁっ!? そ、そんなところ吸っちゃ……や、やぁぁ!! んぁっ!?」
そこから暫くは、知らない感覚を与えられ続けた。
「そこばっかりもう弄らないで! 私、おかしく……ぁぁっ!?」
「でも体は欲しがってるよ、じゃないとここはこうはならないんじゃないかな」
「ひゃぁぁ!?」
懇願の声は、むしろ彼を昂らせる事しか出来ていなかっただろう。どれだけの時間がかかったのかも分からない、どれだけの汗を流したかも分からない、ただ肩で息をすることしか今の彼女には出来なかった。
声を抑えようにも、抑えられないだけの感覚が常に流れ込んでくれば不可能だった。明晰な頭も経験も想像もしたことの無い情報を処理する事に手一杯だった。
「はぁ……はぁ……んぁっ……」
「大丈夫?」
「だ、誰のせいだと……」
後ろから優しく抱き締められる。体が包まれるのにまた違った安心感に似た感覚を覚えてしまう、先程まで自分を酷使して来た相手だがその心音も直に伝わってくる。
そして不意に、彼女の目隠しが外れる。
「(……あれ? この目隠し、勝手には取れないようにしたのに……?)」
この目隠しはリサにしか解けないように作られている。何故なら勝手に取られて裸体を晒したくはなかったからだ、しかし勝手に取れたのか。ふと彼の方に目を向けてみると。
「……っ?! い、いつから外して……っ!?」
「いつからかなぁ、でも可愛いリサさんはたくさん見れたよ」
「っ!?」
目隠しが外れていたのだ、今まで見られていなかったからという僅かな羞恥心の逃げ場すらなくなってしまった。リサの乱れた姿は一方的に収められていたのである、しかしそんな羞恥の顔はすぐにまた変えられてしまう。
「へ……? ふわぁっ!?」
腰の辺りに何かが当たるのだ、無論それが何かは聡明な彼女にはすぐにわかってしまう。そしてそれが意図的に当てられていることもわかる。
「も、もしかして……」
恐る恐る、彼女は聞こうとすると。
「うん、するよ?」
無慈悲な宣告がされていた。
「ま、待って。もう十分で……ふわぁぁぁぁ!?!?」
そんな彼を優しく退かそうと立ち上がろうとするが、そんなことは許されなかった。突然訪れた今までで一番の感覚に頭が瞬いてしまったのだ、少し遅れて何が起こったのかと感覚の根源に目をやると。
「こっちは準備できてるみたいだけど?」
「んぁぁ!? そ、動かさなっ……あぁ!? あぁぁぁぁぁ!!?」
彼の手があったのだ、それが彼女の一番大切な場所を下着を飛び越えて侵入していたのである。
「(ムリ、ムリ! このままじゃ、このままじゃ……!?)」
彼女はこれまで体を弄られていた、無論体もそんな雰囲気にされてしまっている。強く拒む力も残っていない、むしろ頭の片隅ではこのまま快楽に身を委ねてしまえばいいと考え始めてしまう、それだけ処理出来ない感覚なのだ。
「ぁ、ぁぁ!? んあぁぁぁぁ──ー!!?!?」
そして、その感覚が最後まで到達した。体が大きく震え、もう抑える事も考えられない声が溢れ出ていき、頭の中が真っ白にされた。残っているのは指を引き抜かれたという情報くらいで、それ以外にはもうこれから起こる事に思考を割くぐらいの余裕しかない。
「(わ、わたし……今から……)」
これから更にぐちゃぐちゃにされてしまうのだろう。想像で体が疼いてしまう、もう抵抗する力も残っていない彼女に出来るのは身を委ねる事だけだろう。
だが、この先の景色に不安と同時に期待している自分がいることにリサは気づいていない。
気づかないだろう、ただ彼が何もしなくなっただけなのだから。
「(……え? してこない……の?)」
今、彼女の女性としての生存本能を無理矢理呼び起こされている。意識していなかった異性とはいえ意識せざるをえない。
彼女が落ち着くのを待っているのか、彼は後ろから抱きついたまま動かない。それが焦らされているようで、むしろ彼女の体に疼きを大きくしていく。
「(だ、だめよ……そんな、抱きつかれて安心するとか思ったら……でも、何か変な気分に……)」
最後の瞬間からずっと抱きつかれているだけだ、そのせいか同性とは違った体の大きさや硬さを変に意識してしまうのだ。匂いも女性とは異なり、酩酊感に似た感覚が彼女に現れ始める。
彼女が異性にふれたのは今回が初めてである、慣れていれば何かしらの対処のしようもあったのかもしれないが、慣れていない彼女にはこの疼きを止める方法は一つしか思いつかない。
「バ、バンくん……わたし……」
その原因そのものに、か細く羞恥に塗れた声が漏れ出ていく。そこから先は口に出すことは出来ないが、もはやそれだけで彼女はどういう状態なのか一目瞭然である。
その言葉を聞いたからか、彼の体が少し横にズレる。リサも次が始まると思い、体が硬直する。しかし、それは始まらない。
「……え?」
そのまま、バンが横に倒れたのである。見てみると失神している、恐らく彼の能力の影響なのだとは推測はできる。
「……バ、バンくん?」
そうして1人で勝手に楽しんだ男はそのまま続きをすることはなかった。
☆
「なぁリサさん、私あの後何したの? 全然おぼえてないんだけど」
リサさんの治療後、意識を失っていたのは数時間程度だったらしい。そんな私は気づくと、騎士団の牢屋にぶち込まれていた。
ちなみに騎士曰くリサの部屋から声が聞こえていたから不審に思ったジンが突撃して私をそのままぶち込んだらしい、いくら気絶していたとしてもいつも話し合う時間はあるのだが何故か今回はなかった。
それだけ何かをやらかしたという事なのだが、何も覚えていないのである。
これは炎元素を大量に吸収した時によく起こることで、気付いたらファデュイの女の子が涙目でこっちを睨みつけていたりするので正直1番、記憶が残らないという点で嫌いな副作用でもある。
その間の私がどうなってるのかも分からないのだ、そして牢屋に入っているのだから恐ろし過ぎる。
「本当に覚えて……ないの?」
「え、あぁ……うん。本当に」
目の前にいる当事者であろうリサさんの私をみる目が明らかに違うのとかも含めて怖いのである、何をしたのか私は、ただ突っ走っていったならゴミを見る目でそのまま断頭台に送られていると思うのでそこまではしていないと思う。
だとしても怖い事には怖いのだが。
「あーあ、お姉さんお嫁に行けないかもなぁー」
「え!? 最後までしたんですか!? 知らない間に経験したんですか!?」
そう、こんな怖いことが起こるのである。最初の一回はどんな物事でも記憶に残る大事な事だ、その一回が知らず知らずのうちに終えてしまえば正直悲しさの切なさで人生をリロードしたくなる。
「してないわよ、許すわけないでしょ。自信過剰にもほどがあるわね、まだ頭は冷えていないのかしら」
「……ま、そうですよね。知ってますよ、私程度ぶっ飛ばすと思いますし」
だがやはりそこまではしてないようだ、ただ彼女が少し早口だったのは何故だろう、気にしない方がいいのかもしれない。
もうネタ切れが近い