やるべきことはセックスです、と彼女は言った。 作:にゃあたいぷ。
「やるべきことはセックスです」
桃色の園児服を着た萌え袖の幼子が、無邪気な笑みで卑猥な言葉を口にする。
見知らぬ四畳半の部屋。女の身体になったボクは、余りにも突然で、唐突な出来事の連続に頭を抱えた。
情報が整理し切れない。とりあえず、こうなった状況を整理する。
朝、目覚めると女の子になっていた。
この時点で、どうしようもなく頭の悪い展開を口にしているのは理解している。
しかし、なってしまったものは仕方ない。身長は目に見えて低くなった。肌は白くて、四肢は細い。肉付きは丸くなり、声は甲高くなった。まるで別人のようになった声は、この何もない部屋によく響いた。部屋の壁紙は白で統一されており、床はフローリングとなっている。
部屋にはベッド、これにボクは寝かされていた。
他にはパイプ椅子がひとつ、そこに桃色の園児服を着て萌え袖の女の子が腰を掛けている。
「あ、起きた?」
と幼子はボクを見て微笑んだ。
此処は何処だとか、君は誰だとか、訊きたい事はたくさんあった。
しかし幼子は、そんなボクを手で制する。
「色々と言いたい事はあるだろうけど、先ずは話を聞いてよ。言ってしまえば、チュートリアルみたいなものだよ」
そう前置きをした後に「お兄さんには、この世界を救って欲しい」と軽い調子で言われてしまったのだ。
ネット上では、よくある異世界TS転生物語。
その当事者に自分がなるとは、思っていなかったけど、その事はまだ良い。全然、よくはないけども今は棚上げする。
異世界転生と聞けば、よくあるパターンなのは中世ファンタジー。しかし目の前の幼子が言うには、この世界は自分が元居た世界よりも遥か未来に位置する世界線であるようで、人間が文化的な生活を送る為に必要なライフラインの全てを機械化する事に成功していた。機械のメンテナンスには機械を用いる。人間の代わりにロボットが働き、ロボットがロボットを生産する。
労働者が必要とされない世界、人類が夢見た極楽浄土。到達すべき理想郷がそこにはあった。
この完成された生活は人類から生きる活力を削ぎ落としていった。それではいけない。と人類が打ち出した救済プロジェクトが娯楽関係、即ちサブカルの発展であった。極少数のクリエイターの手によって、人類は僅かに息を吹き返した。しかし、それは明日も生きてみようか。という即物的な希望に過ぎず、子を産む必要性に駆られる事はなかった。遺伝子交配は続いている、今や試験管ベイビーは最もポピュラーな生殖行為だ。そんな努力も虚しく、人類の生殖能力は年々衰えていた。
クローン技術は発展したが、それは一時凌ぎに過ぎず、人類からクローン人間に成り代わるだけに過ぎない。
終焉は間もなくだ。既に人類の滅亡まで、秒読みの段階に入っていた。
そこで、この世界を管轄する神と呼ばれる存在が、最後に悪足掻きをする事にした。
必要なのは人一倍に性欲の強い人間、行うべきは現存する全人類の性欲を復活させる事。日夜、センシティブな妄想に意識を割かれてしまうような、ナチュラルボーンエロキッズに全てを託す事にしたのだ。選別には苦労した。あの世界には、性欲の強い人類は五万といる。しかし性欲の強い人間に限って、性癖が偏っていることが多かった。偏見を持たず、全ての性癖に深い見識を持つような人間が極々僅かだ。知識だけではいけない。ちゃんと全てをオカズにできる逸材が必要だった。
百合で抜いた後に薔薇に興奮するような、SとMの両方の性質を併せ持つ逸材を求めた結果────
「──お兄さんが選ばれた、という訳だ」
「……ボ、ボク、実際に性行為をした事は、ないんだよ?」
「例のあの御方が云うには、どうせ、あと数世紀で世界も終わっちゃうから趣味に生きたいって言ってたよ」
「どうして、そんなとこで思い切りが良いんだよ! 世界の命運がかかっているんだぞ!」
パンパンとベッドを叩いて抗議するも「正直、男がハーレム作るよりも気丈な女が輪姦される方が抜けるよね」と幼子は取り合ってくれなかった。この子、怖い。というよりも、さっきから気になっている事がある。
「貴女は、月読アイ……さん?」
桃色の園児服、彼女の容姿はボイスロイドの月読アイと酷似していた。
「アイちゃんダヨー」
そういって、にこやかに笑って手を振った。その声は舌足らずなところはあっても流麗であり、所謂、生きた声になっている。
「そういう設定として生まれただけだけどね。神様がキャラメイクが面倒だからって君の部屋にあったシリーズのパッケージを参照したらしいよ。たぶん、好きだろうからって」
君がイメージする月読アイに似せるように作られた存在だよ、と彼女は付け加えた。
「ボイスロイドのイメージは配信って意味でも都合が良いからね」
早く他の子も呼んで、一緒にゲームとかしたいね。と彼女は笑ってみせる。
「他の子もいるの?」
「今は私だけだけど、すぐに呼べるのが二人。残りは成果に応じてってことらしいよ。君の身体が保たないだろうし」
「……保たない?」
ボクが首を傾げると、アイはペロリと唇を舐めた。
「やるべきことはセックスです」
話は、冒頭に戻る。
「この世界の人類には、性欲が足りない。人類に性欲を呼び戻す為に君は、この世界に呼ばれました」
そこまではわかった。過程は理解できないけど、ボクに求められている事はわかった。
「そこで我らが神様はひとつのプランを、お兄さんに提示します」
彼女は、萌え袖の中で指一本を立てながら続く言葉を口にする。
「シコリティの高い動画の配信を続ける事。人類に生命の誕生の悦びを教えて、性行為へと駆り立てるのです」
つまりはAV撮影、もしくはエロ配信です。と彼女は無邪気に笑ってみせる。
此処は一戸建て、最終的に二十人近くが共同生活する事が想定されている。
今はまだ生活の基盤になるものは何もないが、配信や撮影をする為の機材は揃っており、動画を編集する為の環境も整えられていた。ちなみに性行為を促進する為、秘部にモザイクといった処理を施すと逆に犯罪になるらしい。狂ってやがる。
早速、撮影しよう。と彼女は云う。
撮影場所は地下にあり、外側からしか開けられない扉の場所があるのだとか。通称、セックスしないと出られない部屋。倫理観が狂ってやがる。
兎にも角にも、ボクはとんでもない世界に巻き込まれてしまったことだけは確かなようだ。
本作は、こんなエロゲをプレイしたいという気持ちが九割以上で執筆されています。