そして、お待たせしました。最新話投稿です。
「お前がこの家の魔女か?」
「ん?ああ、そうだが」
目的の魔女と思われる若い女性はこっちを見ると机から立ち上がって俺達の方へ近づいて来た。
女性はやや明るめの茶髪であり、青い眼をしている。それと、中々刺激的な物を着ているな。
「おい、何処を見ている」
「……ゼロさん?」
「おっと悪い」
どうやら無意識に魔女の胸を凝視していたようで、アイリスと魔女にジト目で見られてしまった。
だが、俺だって男なんだ。異性の目立つ物に眼を奪われる事だってあるさ。
「まぁ、いい。それよりも下にいたガキ共はどうした?」
「……」
魔女が言う下の階に居たガキ……恐らくは俺達が戦ったヘンゼルとグレーテルの事を言っているのだろう。
俺が最初に家に入った時には既に魔獣化していたから元がどんな姿をしていたのかは分からなかったが、魔女の言葉が正しかったらあの二体はまだ子供だったってことか。
「……さあな。俺が家にお邪魔した時には魔獣しか居なかったさ」
「ふぅん……まぁいい、知らない子達だったし」
俺がヘンゼルのグレーテルの事に対してはぐらかすと、魔女は二人がどうなったのか察したようだったが、それについて深く追求する様子はなく、あの二人に対しても特に拘りがある訳じゃあ無いように見えるが、一瞬だけ申し訳なさそうな表情をした。
「……ん?お前の持っているそれ」
俺がそんな事を考えていると、魔女は俺の持っている本に気が付いたらしく、それに対して眼を向けてきた。
「これか?これはさっき言った魔獣を倒した時に手に入れた物だ」
「そいつを少し見せてくれないか?」
「別に構わないが……」
俺が持っていた本を魔女に手渡すと、魔女はその場で本を開き、パラパラとページを捲っていく。
「ふむ……一見、子供向けの童話に見えるが、これは召喚魔術の本だな」
「そうなのか?」
俺とアイリスが本を手にした時にそれぞれドス黒い怒りを感じたり、辛いと感じたから何かしらの力があるとは思っていたが、まさか召喚系の本だったとは……。
「ああ、これは俺でも唱えられない物だがな。どうやら、これで召喚された者は一度倒されるとこの本へと還るみたいだ」
つまり、ヘンゼルとグレーテルは俺達で倒しはしたが、完全に死んだ訳じゃあ無くて戦闘不能になったから本の中に戻ったと言う事か。
それにしても、召喚が出来る本があったなんてこの世界はつくづくヤーナムとは……
(いや、待てよ……)
確か、ヤーナムと言うかブラッドボーンでも召喚出来るアイテムが幾つかあったな。
例えばエーブリエタースの先触れはみんな大好き星の娘こと、エーブリエタースの一部を召喚する物だったし、古人呼びの鐘も敵対していなければ他の狩人を召喚する事が出来た。
特に古人呼びの鐘で召喚した狩人はその時にやられてもさっき魔女が言った召喚した者が本へと還るのと同じように元の世界に帰るだけであり、その人物を直接殺さない限り生きている。
と言う事は、何かしら召喚方法が分かればヘンゼルとグレーテルを召喚する事も可能なのかもしれない。
(まぁ、俺はその辺の知識はさっぱりだが……)
ソウルシリーズのゲームだと俺は基本的に上質のビルドを好んで使っている事が多く、ブラッドボーンでも他の作品で言う魔法に当たる神秘を俺はほとんど使った事はなかった。
ヤーナムに転生した時だってゲームをプレイしていた時と同じように上質をベースに神秘武器や秘儀が使えるようにする為に必要最低限にしかステータスを振ってなかったからな。
まぁ、他の転生系の作品に度々あったステータス画面なんて無かったから、どれだけ力を得たかはほとんどなんとなくの感覚でしか感じられなかったが。
「それにしても、魔獣を召喚獣として扱うなんて聞いたことないが……」
「そうなんですか?」
「ああ、魔獣なんてどう考えても召喚者の手に余る者だからな。制御なんて出来た物じゃない」
「確かに、あれの言う事を聞かせるなんて普通は考えないだろうな」
実際にあの二体の魔獣と戦ったからこそ分かるが、あんな奴らを使役するなんてどう考えても不可能に近いだろう。
(まぁ、あれを使役するのが目的ならこんな所に放置なんてしないだろうが……)
「どうせこの術式を作った召喚者はろくでもない奴だ。大方、魔姫かその当たりだろう」
そう言いながら魔女は俺に本を返してくると、そのまま俺達の方を見てくる。
「ところでお前ら、俺に何か用か?」
魔女に本を貸してその話に夢中になっていた事で忘れそうになっていたが、本当の目的の事を言わないとな。
「ああ……俺達はロストエンパイアに行きたいんだ。お前ならその方法を知っていると聞いてな」
俺がそう言うと、何故か魔女はじっと俺達を交互に見つめてきた。
「……お前ら、よく見れば不死者か」
(お前ら?まさかアイリスも俺と同じで不死者なのか?)
魔女の判断が正しければアイリスも俺と同じく不死者らしいが、一緒に行動していても全くそう言う感じはしなかった。
とは言え、危険地帯とされている場所から魔獣に追われていたと言うのに多少服が汚れていただけで、特に怪我が無かった事にも説明が付く。
「過去の不死狩りで絶滅したと思ったが、まだ生き残りがいたんだな。あの魔城に何の用があるかは知らんが、行くのは辞めておけ」
(なるほど……)
この世界に来て不死者の存在は認知されているが、俺やアイリス以外の不死者の話を聞いたことが無いなと思っていたが、どうやら不死者に対して壮大な狩りが行われた事が原因らしい。
化け物に対して恐れるのは何処も一緒と言う事か……
魔女はロストエンパイアが危険な所だから警告はしてくれているが、俺達の目的はこの霧の原因を探る為にもそこへ行かないといけない。
「警告は有難いが、それでも俺達は行くつもりだ」
「……女を巻き込んでもか?」
そう言うと魔女は一瞬だけアイリスの方を見ると、俺に対して軽蔑の目を向けてきた。
確かに話だけでしか聞いたことが無いが、アイリスをそんな危険な所へ一緒に連れて行くなんて普通は考えないだろう。
だからと言って今さら彼女を聖森に置いて行くなんてあんまりしたくはないんだが。
「あの、魔女さん」
「ん?」
「あなたが私の身を案じてくれてあのような事を言ったのは嬉しいです。確かにこれから私とゼロさんが行こうとしている所は危険な所かもしれません!ですが!ゼロさんが頑張っている間、私一人がただ安全な場所で待っているだけなんてできません!」
「おっ、おう……」
俺がアイリスに対してどうしようかと考えていると、俺の横にいた彼女は突然魔女の前に立ったかと思ったえば魔女だけでなく、俺でも引くくらいの勢いで話始めた。
おとなしい子だとは思っていたが、意外と度胸があるんだな……。
「それに私だってゼロさんほどの力はありませんが、自分で自分の身は守れます!見くびらないでください!」
「わ、わかった!わかったから!落ち着け!」
アイリスの勢いにすっかり押された魔女は降参と言わんばかりに両手を上げてアイリスを落ち着かせようとする。
と言うか、このままほっと言ったら延々と喋りそうな勢いだ。
「あっ……えっと、ごめんなさい」
「いや、俺も悪かった……」
魔女の言葉にアイリスは落ち着きを取り戻すも、お互いに気まずい雰囲気となってしまう。
まぁ、アイリスとしても魔女の言葉にどこか思う所が有ったからあったからああ言ったんだろうが……。
とは言え、いつまでもこうしている訳にもいかないので、無理矢理にでも話を進めないと。
「まぁ、本人もこう言ってるし、いいんじゃないか?」
「みたいだな……」
俺の言葉に魔女はバツ悪そうに帽子を目深にすると、はぁ、とため息を吐いて俺とアイリスを交互に見た。
「そこまで言うなら俺はもう何も言わない。行きたければ行くと言い」
そう言って魔女は先程作業をしていた机の方へ向かうと、引き出しを開けてその中から鍵の束を取り出してもう一度俺たちの方へ来る。
「ついて来い」
どうやら彼女は俺達にロストエンパイヤまでの道筋を教えてくれるらしく、一緒に着いて行くと、そのまま一階に降りて家を出ると裏手の方へと案内された。
案内された先には頑丈そうな鉄の扉があり、魔女はそれを先程取り出した鍵で開場すると、そのまま扉の中へ入って行ったので俺達も一緒に中へと入る。
そこは家の中と同じく色んな物が置かれており、恐らく此処は魔女の物置なのだろう。
「こっちだ」
魔女に倉庫の奥へ来るように手招きされたので、それに二人で付いて行くとそこには何やら地下へ続きそうな梯子があった。
「ここから降りて下水道を進めば淫腐街に出る。その先にあるアイバーン砦を抜ければロストエンパイアに行けるはずだ」
こちらに背を向けながらも魔女は俺達にこの先へ進むべき道を告げる。
確かにあの青年が言ったようにやや捻くれた印象はあるものの、根は優しいようだ。
「ありがとうございます。魔女さん」
「ドロシーだ」
「えっ?」
「俺の名前はドロシーだ」
そう魔女……ドロシーが言うと、彼女は俺達の方へと振り向いて来た。
そう言えばヘンゼルとグレーテルの本やアイリスの言葉責めで忘れていたが、俺達はまだ自己紹介をしていなかったな。
「……俺はゼロだ」
「私はアイリスです」
「ゼロとアイリスか……覚えておく」
ドロシーはそう言うと、俺達の横を通り過ぎて行き、物置から出て行こうとする。
「改めまして、ありがとうございます。ドロシーさん」
「ああ……お前もちゃんとアイリスを守ってやれよ?」
「分かっている」
彼女と別れる前にアイリスは改めてお礼を言い、ドロシーは俺にアイリスを守るように言って来たので、俺はそれに返事をする。
そして俺は安全を確認する為に先に下水道へと降りていくのだった。
実は原作ではドロシー師匠自己紹介していないんですよね……
万能鍵「俺の出番は?」