※この作品はR-18です。

転生狩人箱庭世界へ   作:髑髏丸

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遅くなりました。次話投稿です。


第十三話 下水道を進んで

「はぁ……分かってはいたが、結構キツイな」

 

「うぅ……臭いです」

 

魔女と別れ、下水道を通っている俺達だったが、そこで下水道の異臭に二人で悩まされていた。

俺はヤーナム市街でループ中に何度も下水道を通った事があるから平気だと思っていたが、よくよく考えれば上位者になってからはループする事が無くなったのでヤーナム市街の下水道の臭いもほとんど忘れていたから、この臭いは普通に辛い。

だが、こう言う場所は俺よりもアイリスの方が間違いなく辛いだろう。

普通、女性はこんな所なんて通らないだろうし、訪れる事もない。

おまけにこの下水道、そこら辺に魔獣が生息しており、その戦闘の際にドブ水の中に何度も体が浸かってしまい、自分の体にも臭いがついてしまっている。

幸いにも排水路自体はそんなに深くなかったが、それでもドブ水に体を浸けたくはない。

 

「ああ、くそったれ!こりゃ、下水道を出たら一度森に戻った方がいいな」

 

「そうですね……」

 

流石にこのまま下水道を抜けて街にたどり着いたとしても、こんな臭いがついたままロストエンパイアになんて行けないだろうし、何より精神的にキツイ。

それにアイリスだって体を洗いたいだろうし、俺だってそろそろ休憩をしたい。

街に着けばもしかしたら風呂があるかもしれないが、その街はロストエンパイアの近くにあると言う事は霧の影響を受けやすい場所だと言える。

つまりそれはヤーナム市街や旧市街の様に街に魔獣化した人間が蔓延っているかもしれないのだ。

そんな何時襲われるかもしれない場所で風呂なんて入れるはずもない。

それに俺達は森を出発してからまともな休憩を取っていなかったのでお互いに疲労感が表れて始めていた。

 

「その為にもさっさと抜けるぞ」

 

「はい、私もこんな所に長居したくありませんし……」

 

「だな……じゃあ、行くぞ」

 

下水道を早く抜ける為に二人で襲い掛かってくる魔獣を蹴散らしながら異臭の強い通路を先へ進んでいると、その途中の分かれ道で俺は妙な気配を感じ取り、そっちへと視線を向けた。

 

「ゼロさん。どうかしました?」

 

「いや、少し気になる気配を感じたんだが……」

 

「気になる気配ですか?」

 

「ああ……」

 

微かにではあるが、俺が感じた気配はヘンゼルとグレーテルと似たような物ではあるが、あの二人よりかは強敵と感じる物じゃないが……。

 

(放っておいていいと言う訳でもないな……)

 

このままこの気配の主を無視して先に進んでもいいが、俺と同化した魂の感情なのか、この先に居る存在を放って置けば取り返しのつかない事が起きると思ってしまう。

 

(確認だけでもしておくか)

 

この先にいる者が本当に放って置けない存在なのか、それとも俺達には関係なく放っておいてもいい存在なのかはそいつを見てみないと分からないので、危険かもしれないが、俺はそこへ行く事にする。

 

「アイリス、少し此処で待っていてくれるか?」

 

「はい?それは構いませんが……」

 

「すまない。不安ならこれを使うといい」

 

この下水道の魔獣はそんなに強くは無いが、それでもアイリスを一人にするのは不安なので俺は粉の入った袋をアイリスに渡す。

それは聖森から出る時に黒兎から渡されていた物であり、黒兎が言うにはこの粉を使えば魔獣がこっちを感知しなくなる物らしい。

恐らくだが、ヤーナムで時々拾っていたが、余り使って居なかった青い秘薬のような物なのだろう。

 

「分かりました。気を付けて下さい」

 

そう言ってアイリスは自分に粉を振りかけると、俺からは姿が見えなくなる。

だがその直後に「くしゅん」と可愛らしいくしゃみが聞こえたので俺はそれに苦笑いすると、気配のした方に進ん行った。

 

「これは……」

 

アイリスを残して先へ進んだ先にはドロシーの家の前でも見た霧が発生しており、この先にヘンゼルやグレーテルのような強敵が待ち構えているかもしれない。

 

(どうする……アイリスを呼ぶか?)

 

ヘンゼルとグレーテルの時は霧がこの世界で初めて見るものであり、霧の先に何があるのか分からなかったから俺が先に行ったのだが、その結果がああなら彼女と一緒にこの先へ行くべきなのではないかと考える。

だが、何故か俺はこの先はアイリスがいなくても大丈夫と言う結論に至り、彼女には悪いが少しだけ待ってもらう事にし、霧の中へと入って行った。

 

「くくく……さぁて、次はどうしましょうか」

 

すると、そこには緑色の衣装を着た男がおり、その足元には何やら黒い物体が幾つも蠢いている。

おまけにドブの臭いとは別に異臭が周囲に立ち込めている。

これはヤーナムで散々嗅いだ事のある臭い……死臭だ。

 

「おい」

 

「ん?なんですか貴方は」

 

男に近づいて俺が声をかけると、男はこちらに振り返ってこっちを見ると、俺に対して少し鬱陶しそうな表情を向けてきた。

男の顔は白塗りの顔をしており、服装も相まってその姿はまるでピエロのようだ。

 

「此処で何をしている?」

 

「ああ、これですか?餓鬼の死肉を鼠に与えているのですよ。異教徒狩りと言って私の家族を殺した教会が支配していた街からさらってきたのをね」

 

「……」

 

どうやら男の足元で蠢いていたのは鼠だったようで、その鼠を使って何をしたのかは今の言葉で理解した。

こいつは生かしておけないと……。

 

「しかし、これほどまでに上手くいくとは思いませんでした……。このまま鼠の王国を作り、支配者になるのも悪くありませんね」

 

最初は間違いなく家族を殺された事による復讐だったのだろう。

それに対して俺は否定しないし、止めるような事もしない。

だが、それによって関係の無い者を悪い意味で巻き込むことは俺にとって許せるものじゃあないし、その教会がやっていた事をこの男はしようとしている。

 

(なら……容赦はしない)

 

「まぁ、見ての通り、私は忙しいのです。これをあげますから私の気が変わらないうちにさっさと消えなさい」

 

そう言って男は懐からここに来るまでに何度も手に入れていた、ソウルシリーズで何度も見た事のあるアイテムであるソウルと呼ばれる物、それもそれなりに質のいい物を取り出し、俺に押し付けるような形で渡すと、こっちには興味がないかのように再び背を向けた。

恐らく、この男は俺に賄賂を渡してこの場を見なかったことにして欲しいのだろう。

しかし、この男がやったことを考えればたったこれだけの物で無視できることではない。

もっとも、どれだけ賄賂を渡された所でこいつを見過ごすなんてことはしないが。

 

(……やるか)

 

剣を音を立てないように鞘から抜き、賄賂を渡したことで完全に俺から意識が逸れた男の側へ俺は近づいている事を悟られないようにゆっくりと近いて行き、その無防備な背中へ剣を突き刺した。

 

「がっ!?」

 

俺に背後から不意打ちを受けた男は突然の出来事に理解が追い付いていない様だったが、俺はそんな事を気にすることもなく、男に突き刺した剣を思いっきり捻ってから剣を男から引き抜く。

 

「あ、ああ……血が、血があああああああああっ!?」

 

剣を引き抜いた事によりその背中から噴き出した血によってカインの鎧を赤く染め上げる。

男は痛みに対して喚きながらのたうち回り、そんな状態の男に俺は剣を左手に持ち替えてから右手を獣の腕に変化させて男に内蔵攻撃を放つ。

 

「がふっ!?」

 

男の体を獣の腕で引き裂くと、男は短く痙攣するとそのままうつ伏せに倒れて動かなくなった。

どうやら、この男は霧の先にいた存在としては大したことのない奴だったらしく、男の側にいた鼠達も俺がひと睨みをかけると同時に蜘蛛の子を散らす勢いで逃げ始める。

恐らくだが、あの男が戦闘をする時は鼠達に指示を出して自分は何かしらのサポートをする指揮官系の相手だったのだろう。

 

(とは言え、もうどうでもいい事だが……ん?)

 

死体となった男の体を見下ろしていると、突然男のが淡く光出すと、その死体が光の粒子になると一つに集まって何かを形作り、やがてそこには一冊の本が現れた。

 

「これは……っ!?」

 

男がいた所に現れた本を拾い上げると、その表紙には「ハーメルンの笛吹きの男」と書かれており、それを見た瞬間にまたあの頭痛が起きたので、この本はヘンゼルとグレーテルの本と同じものだと確信する。

 

(つまり、あの男は魔獣だったのか?だが……)

 

ドロシーの家で戦ったヘンゼルとグレーテルはさっきのハーメルンの笛吹きの男とは違い、見た目は完全に異形の姿になっていた上、会話も全くできなかった。

しかし、さっきのハーメルンの笛吹の男は会話もあの二人とは違ってちゃんとできていたが、過去にヤーナムでも獣でありながら会話が出来る奴を知っているから、もしかしたら魔獣でもちゃんとした理性が残っている奴も居るかもしれない。

 

(とは言え、まだ判断材料が足りないな……)

 

人が魔獣化する霧と言い、この本の事と言い、目的の場所に向かっている筈なのに、これまで全くと言っていいほど情報が集まっていない。

もしかしたらこの世界の異変に対して原因を探す事自体なんて意味がないのかもしれないが……。

 

(それでも、見て見ぬフリは出来ないな……)

 

ヤーナムの時からそうだが、ブラッドボーンの世界に転生してその世界のキャラクターが最後にどうなるか分かってはいるとは言え、せめて安らかな最後を迎えさせようとした事があった。

その結果、何人かは最後に原作での悲惨な最後を何とか避けられはしたが、結局は俺の自己満足でしかなった。

他人からすれば俺の考えなんて間違いなく甘い考えであり、所詮、俺自身が最悪の結末を見たくないと言うエゴでしかない。

 

(全く、上位者とあろうと思う者が聞いて呆れる)

 

自分の考えに悪態を突きつつ、本を回収した俺はもう此処に居る必要が無くなったのでアイリスと合流しようと部屋から出た、その時だった。

 

「ゼロさん……」

 

「アイリス……」

 

なんとそこには待っているように言った筈のアイリスがおり、その顔は心配そうな表情をしている。

恐らく俺が戻ってくるのが遅いから様子を見に来たのかと思ったが、ハーメルンの笛吹の音が居た小部屋までの道のりは少し入り組んでいた筈なので、もしかしたら最初から付いて来ていたのかもしれない。

 

「付いて来ていたのか」

 

「はい……」

 

最初から付いて来ていたと言う事は、アイリスは間違いなく俺がハーメルンの笛吹の男と対峙してそこから不意打ちで奴を始末した所まで見ていたのだろう。

出なければ彼女がこんな顔をする筈がないし、付いて来ていたとはわないだろう。

 

「……悪いな。嫌な物を見せちまって」

 

「……」

 

俺がアイリスにハーメルンの笛吹の男にしていた事に対して謝ると、彼女は何も言わずにそっと俺に抱き着いてきた。

正直、今の俺はあの男の血で汚れているので、あまりこう言うことをして欲しくはないのだが。

 

「アイリス?」

 

「一人で無理をしないでください。私を心配をしてくれたのは嬉しいですけど、私も心配になってしまいます」

 

「……」

 

どうやら俺がアイリスの事を心配していたようにアイリスの方も俺の事を心配していたようだ。

考えてみれば、アイリスと別れようとしていた時の様子なんて誰がどう見ても気になってしまう事を言っていた気がする。

だからだろう、そんな俺を見た彼女はその場で待つのではなく、俺の後をついて来たのは。

 

(本当に俺って馬鹿だな)

 

俺がこうなったのはヤーナムでの行動が原因だろうが、だからと言って一緒に行動する女の子を普通一人にして置いて行かないだろう。

こんな所、アリアンナだったら女の子の扱いがなっていないって言うだろうし、アイリーンあたりにでも知られたら間違いなく慈悲の刃でぶった切られるだろうな。

 

「すまない。どうも一人での行動に慣れすぎてしまっていてな」

 

「それでも、もう少し私を信用してくれてもいいじゃないですか……」

 

「うっ……」

 

俺は少しでもアイリスを宥めようとするが、彼女は少し潤んだ瞳で俺を見上げてきて、その様子を見た俺は言葉を詰まらせてしまう。

本当は危険な目に会うかもしれないと言う気持ちも有ったから少しでもリスクを減らすために胡椒を渡したのだが、それが結果的に信頼されていないと判断されてしまったようだ。

 

「でも、私を危険な目に合わせたくないって気持ちは伝わりましたから、今回は許してあげます」

 

(こ、今回はか……)

 

こう言うのは大体、次やったら本気で怒ると言う事でもあるので、次はこんな事が無いようにしないとな……。

 

「くすっ♪ それじゃあ早く先に進みましょう。こんな所長くは居たくありませんから」

 

「……ふっ、そうだな。とっとと進んじまうか」

 

彼女は俺から離れて悪戯っぽく笑うと、その顔を見た俺も思わず笑ってしまい、今度はきちんと二人でこの場所まで来た道を戻り、先へ進んでいくのであった。




本当はハーメルンの笛吹きの男を撃破するだけだった筈が、なぜこんな長文に……

笛吹きの男「解せぬ」
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