俺達の前に降りたった存在。
それはこの世界で初めて出会い仲間になれたかもしれない少女ジャンヌを容赦なく屠り、俺が聖森で目覚める事になった俺にとって忘れたくても忘れられないヤーナムでは確実にいるはずのなかった存在の化け物であるドラゴン。
そいつがまた俺の前に現れ、俺達の行く手を塞いでいる。
グオオオオオオオオオオオオオッ!!
「ひぃ!」
ドラゴンと言う圧倒的な存在と、そいつからの咆哮を聞いた事でアイリスは悲鳴を上げ、俺は臨戦態勢を取る。
直後、ドラゴンはあの時と同じように口からブレスを吐いて俺達を焼き尽くそうとして来るが、俺はとっさにアイリスをブレスの範囲外へと突き飛ばし、すぐ傍に落ちていた盾を拾ってブレスを何とか防ぐ。
「ぐっ……ああああ……」
「ゼロさん!」
ドラゴンからのブレスを盾で防いだとは言え、その威力から全てのダメージを防ぐ事は出来ず、ブレスによって鎧が熱されてしまい、高温となった所から肌が焼かれてしまう。
その痛みに歯を食いしばりながら耐えていると、やがてブレスの勢いが弱まっていき、どうやらドラゴンはずっとブレスを吐く事は出来ないらしく俺はそれを好機と判断し、持っていた盾を投げ捨てて今度は剣を構えてドラゴンへと突っ込む。
「アーマーブレ……ぐぁっ!!」
しかし、俺が近づくと同時にドラゴンはその巨大な体を回転させ、長い尻尾で俺を薙ぎ払い、それをもろに受けた俺は急な事で受け身を取れず地面を転がる。
(くっそ……いてぇ……)
悪態をつきつつ、あの時のようにまたブレスでトドメを刺されない為にも無理矢理体の体制を立て直すが、それよりも先に奴の方が早く動き、再び俺に向かってブレスを放ってきた。
しかし、俺はその攻撃が直撃する前に何とか体を動かすことができ、ドラゴンに飛び込む形でローリングしてブレスを回避する。
しかし、とっさの行動だったのでそれを完全に避ける事は出来ず、ブレスが当たってしまった鎧の箇所がまた熱くなって俺の肌を焼くが、その痛みに耐えながら再びドラゴンとの距離を詰める。
するとドラゴンは今度は尻尾ではなく鋭い爪をふるってきたが、俺はそれを剣を使って弾いた。
グオォ!?
俺に攻撃を弾かれた事で言葉は理解できなくともドラゴンは明らかに驚いており、俺はその隙をついて体制を崩した体にアーマーブレイクを放つ。
その体格差故にドラゴンに攻撃を当ててもビクともしなかったが、それでも手応えはあったので、こっちの攻撃は確かに効いている事を確信した俺はそのまま一気に攻めようとした。
ガアアアッ!!
だが、相手もただでやられるつもりは無いらしく、俺が再び攻撃しようとすると同時に今度はその巨体で押し潰してこようとしてくる。
流石にこれは避けないと不味いと判断した俺は何とかその場から離れて押し潰しを回避したが、ドラゴンが倒れこんだ際に発生した衝撃によって体がよろけてしまう。
「くっ……!」
俺はすぐに体制を立て直そうとするも、そうはさせまいと言わんばかりにドラゴンは自分の羽を羽ばたかせて突風をお越し、衝撃によって既に体制が崩れていた俺はその風圧によって倒れてしまった。
このままではドラゴンにまたブレスを吐かれてしまい、直撃を免れたとしてもさっきよりも大きなダメージをうけてしまう。
そう考えている間にも、ドラゴンは羽を羽ばたかせながら大きく息を吸い込んでおり、ブレスをしようとしてきている。
「くっ……!」
このままではドラゴンのブレスが容赦なく放たれ、あの時のように俺はその炎によって灰塵と化す。
だが、防御をしようにも近くに盾は落ちていないし、避けようにも羽からの風圧によって上手く動けない。
「させない!」
グォオ!?
万事休すかと思われたその時、さっきまでドラゴンの圧によって動けなくなっていたと思われるアイリスが自らの魔法をドラゴンに放ち、突然の不意打ちを受けた事によりドラゴンは一瞬怯み、それによってブレスが放たれる事は無くなった。
その隙をついて体制を立て直した俺はアイリスが作ってくれたチャンスを無駄にしない為にもドラゴンの元に向かって行く。
ガァアア!!
しかし、俺がドラゴンの元にたどり着く前に相手は翼を羽ばたかせて空中へと飛ばれてしまい、こっちの攻撃が届かなくなってしまった。
(くそっ!俺にも遠距離攻撃があれば……)
アイリスと違って一切の遠距離攻撃手段を持たない俺はどうする事も出来ず、アイリスもドラゴンを撃ち落とそうと懸命に魔法を撃っているが、ドラゴンにとってその攻撃は蚊に刺された程度にしか感じていないのか、命中しても全く効いていないように見える。
それどころか、向こうは纏めて俺達を始末しようと思ったらしく、ドラゴンは再び大きく息を吸い込み始めた。
(まずい!)
こんな動ける範囲が多くない所で広範囲にブレスを吐かれると、確実に二人共やられてしまう。
俺は兎も角、アイリスがあれを受けてしまうとまず助からない。
(だったら……!)
このままだとアイリスが危険に晒される、そう思った俺はすぐに彼女の元へと走り、彼女を庇うように目の前に立った。
それと同時に俺の身体を焼き尽くすほどの炎がドラゴンから放たれ、それを見たアイリスの悲鳴が背後から聞こえたが、それでも俺はその場でドラゴンからの攻撃を必死に耐える。
やがて、段々と炎の勢いが衰えていき、あの時と違ってドラゴンのブレスに耐える事は出来たものの、アイリスを守る為にその身でブレスを受けてしまったので意識が朦朧としてしまう。
「ぐっ……あっ……がっ……」
「ゼロさんっ!!ゼロさんっ!!!」
全身を焼かれた痛みで意識を失いそうになる俺をアイリスは必死に叫びながら回復魔法を使い、さっきのダメージを何とか回復しようとしている。
そのおかげで倒れそうになっていた俺の身体の痛みはすぐに引いて行くが、体が思うように動かない。
恐らくだが、さっき受けたダメージが大きすぎた為、体の処理が追いついていないのだろう。
ガァアアアア!!
「っ!」
俺が思うように動けない間にもドラゴンは攻撃を仕掛けて来て、今度はブレスではなく空中から突っ込んでくる。
それを見た俺は咄嗟にアイリスを突き飛ばして攻撃を受け流そうとするが、勢いよく突っ込んできたその巨体の衝撃を全て受け流す事は出来ず、また体制を崩してしまう。
その隙をついてドラゴンは再び俺に爪を使って攻撃してきたが、攻撃が当たる寸前の所で何とか防御の姿勢をとってダメージを防ぐことは出来たものの、その攻撃によって俺は背後の壁までふっとばされてしまった。
「くぅ……っ!」
ドラゴンからの攻撃によって壁に叩きつけられた俺は衝撃による激痛に耐えながら立ち上がり、次の攻撃が来てもすぐに対処できるようになんとか体制を整える。
その直後にドラゴンの尻尾が俺を薙ぎ払おうとしてきたが、それをギリギリの所で回避するとドラゴンがこっちを向く前にアイリスが魔法を撃ち、それに気を取られた瞬間に俺は再びドラゴンへと近づく。
「こいつで……っ!」
ドラゴンに近づいた俺はその体に剣で攻撃をするものの、硬い甲殻に覆われているせいでこっちの攻撃は効果が薄い。
それでも少しでもダメージを与えようともう一度攻撃しようとするが、それを防ぐようにドラゴンはその巨体で俺を押し潰そうとしてきたので、攻撃するのを中断して回避に専念する。
ドラゴンの巨体が倒れこんで来ると同時に再び周囲に衝撃が走るが、今度はそれに足を取られないように動き、一度ドラゴンから距離をとった。
(くそっ!これじゃあ……)
さっきから相手の隙を見て攻撃を仕掛けてはいるが、どれもドラゴンに有効になっているとは言いづらく、このままではジリ貧だ。
とは言え、俺もアイリスもドラゴンに対して有効打を持っておらず、アイリスの魔法も無限に使える訳でもないだろうから、長期戦になればなるほどこっちが不利になっていく。
だからと言って此処で撤退なんか出来ないし、それを許してくれる相手ではない。
もし、俺が再びドラゴンに敗北して再び死を向かえたら何処かで生き返られるかもしれないが、アイリスもそうだとは限らないし、彼女を置いて先に死ぬなんて事はごめんだ。
(こうなったら……)
ドラゴンに唯一対抗できる手段、それは上位者の力を使うことだが、あの時以来この力を解放したことはない。
確かにこの力を使えば今までの戦いを簡単に制すことが出来たかもしれなかったが、乱用すればこの世界にどんな影響が出るのか分からなかったし、使い続けた場合のリスクも不明だったから今まで使ってこなかった。
「だが、今は違う!」
あの時とは状況も俺自身も違う事の証明をする為、そしてドラゴンを倒す為に俺は上位者の力を解放したのだった。
次回、上位者の力を再び解放