※この作品はR-18です。

転生狩人箱庭世界へ   作:髑髏丸

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第二十六話 助太刀

アイリスの元から駆け出した俺は一体の鎧の人物に襲い掛かっている亡者の元へ向かい、そのがら空きの背中にさっき拾ったドラゴンの剣で切り付ける。

すると、切り付けた亡者の体が一瞬燃え上がり、体制を崩す。

その隙を突く形で俺は右腕を獣の腕に変化させて背中を鎧ごと貫き、体を引き裂くとそれだけで亡者は倒れて動かなくなる。

もう一体の亡者はアイリスが仕留めたようだ。

 

「あんた無事か?」

 

「あ、貴方達は?」

 

亡者を始末し、襲われていた鎧の人物に話しかけると、相手は突然の事で戸惑った様子を見せている。

まぁ、助けたとは言えこっちは初対面だし、特に理由もなく助けたからな。戸惑うのも無理はない。

 

「俺はゼロ、彼女はアイリス。訳会ってこの城に来た」

 

「なるほど、貴方達もロストエンパイアを目指してきたんですね。申し遅れました、私は武者修行をしている騎士のイズ。先ほどは助かりました、良ければこれを」

 

そう言ってイズと名乗った騎士は俺に結晶のようなものを渡してくる。

俺としては別にお礼を言われるような事をした訳じゃないんだが、まぁ相手の好意を無下にするのもどうかと思うし、素直に受け取る事にしよう。

 

「そう言えば、君たちはあのヘルカイザーをどうやって突破してきたんだ?あいつは此処を守る存在だから、そう簡単には来れない筈だが」

 

ヘルカイザー、恐らくあのドラゴンの名前なのだろう。

確かにあの巨体や戦闘力からすればこう言った重要な場所を守るのには適している。

ヤーナムでもアメンドーズがメンシス学派の奴らと取引でもしたのか、ヤハグルのあちこちにいたしな。

 

「あいつか、あいつなら俺が倒した」

 

「なんと!あのヘルカイザーを倒したと言うのか!」

 

兜を被っているせいでイズの表情は分からないが、声からして相当驚いているのが分かる。

そりゃあ、あんな奴を倒したとなれば驚くか信じられないと思うのが普通だろう。

まぁ、上位者の力って言う反則技を使って勝ったからあんまり誇れる事じゃないが。

 

「そう言うお前はどうなんだ?此処にいるって事はあのヘルカイザーって奴と遭遇している筈だが」

 

ヘルカイザーを倒した俺達ならばともかく、イズは俺達よりも先にこの場所に来ていると言う事はヘルカイザーは健在だった筈。

俺がヘルカイザーと戦った時は誰かと戦闘をした形跡はなかったし、傷を癒していたと言う様子もなかった。

 

「いやはやお恥ずかしい限りだが、私は見えざる粉を使ってやり過ごしましてな」

 

「ああ……」

 

どうやらイズの方はあの姿を消せる粉を使ってヘルカイザーをやり過ごしたようだ。

確かにあれを使えば奴をやり過ごせたかもしれない。

俺は兎も角、アイリスの安全を確保するのならばせめて彼女だけには使っておいた方が良かったかもしれないが、終わった事を今更悔いてもしょうがないか。

 

「イズさんもこの霧を調べる為にロストエンパイアに来たんですか?」

 

「ええ、そんな所です。ですが先程城門の方へ見上げる程巨大な騎士が通って行ったのを見ました。もしかしたらあれも魔獣だったのかもしれない。先へ進むのであればどうかお気をつけて」

 

「お前はどうするんだ?」

 

「……残念ながら今の私ではこの先へ進むには実力不足。他の所へ赴いて修行をしようかと」

 

「そうか……」

 

確かにイズは俺とアイリスだと問題ない亡者相手に苦戦していて、ヘルカイザーも見えざる粉を使ってやり過ごしていたと言っていたから俺達より戦闘能力は劣っているかもしれない。

勿論、実際にやりあった訳じゃないからそれが正しい評価になっているとは言えないが、この先は霧の発生源になってる場所の中心地なのだから敵も更に強い奴がいてもおかしくないだろう。

ならば他の所で修行をすると言うのは間違ってはいない。

特にこの先へ進むのならばなおさらだ。

 

「なら、生きていたらまたどこかで会うかもな」

 

「そうですな。お互いに生きていたらまた会いましょう」

 

「……ああ」

 

お互いに生きていたらと言ったものの、今の俺は不死者と言う存在になっているので死んでも復活できるらしいから一応生きて会う事はできる。

だが、恐らくイズは一度死んでしまうと復活できない存在だろう、どちらかと言えばそっちが正しいと言えば正しいのだが。

俺も死んだら復活できると言うのは最初にヘルカイザーに襲われたときにしか経験していないが、それでも進んでデスベホマをしたいなんて上位者になってからも思っていない。

死ぬまでの苦痛を感じた後に復活するなんて事を何度も繰り返していたら精神がおかしくなるのが普通だ。

 

「それでは、お二人とも御無事で」

 

そう言ってイズは俺達の元から立ち去り、ヘルカイザーがいた方へと歩いて行くのを二人で見送った。

この場所から戻ったとしても待っているのは魔獣が蔓延る街なのだが、大丈夫だろうか……。

 

(気にしてもしょうがないのは分かるが……)

 

どうも俺は敵対していない相手に対しては変に情をかけてしまいそうになってしまう癖があるようだ。

ヤーナムでもそうだったが、生前プレイしていてそいつがどんな奴なのかは理解していてもゲームと現実は違いと言わんばかりに実際に話してみると友好的に話してくれたり、意外と話せる人物だったと言う事もあった。

だが、結局誰一人として救う事も出来なかったし、そう言った経験があるからこう言った心情になってしまっているのかもしれない。

勿論、上位者の力を全開放出来れば救える人物もいるかもしれないが、それを下手にやってしまっては未だに俺を見ている存在がどんな事をするのか分からないし、この世界への影響も図りしれないので今はまだ俺の戦闘能力の底上げ位しかやな来訪がいいだろう。

 

「これからどうします?」

 

「ん?ああ、そうだな……」

 

俺が余計な事を考えていると、アイリスが話しかけてきてこれからどう行動するか聞いて来た。

このまま進むか、一度聖森に戻って体制を立て直すか……。

イズの話によるとロストエンパイアの方に巨大な騎士が歩いて行ったらしいが、もしかしたらそいつは城前の門番的な存在なのかもしれない。

だとしたらそいつとは確実に戦うかもしれないし、ヘルカイザーとの戦いで消耗もしている状態で行くのはどう考えても無謀だ。

それにそろそろアイリスを休ませたいしな。

 

「このまま進んでも仕方ないし、一度聖森に戻って体制を立て直そう」

 

「分かりました」

 

このまま進んで再び戦闘になると流石に俺でも辛い戦いになるし、アイリスも休ませた方が良いと思い此処は一度聖森に戻る事にした。

とは言え、此処から街にある篝火の所まで戻るのも一苦労なのでこのあたりに無いか探す事になるだろうが。

 

(確か……)

 

ロストエンパイアへ進む道の他に俺がこの世界で最初に目覚めた場所がこの近くにあったはず。

あの時はジャンヌと出会った後、すぐに脱出する事を優先していたからあまり探索をしていなかった。

まぁ、牢屋なんて碌な物が無いのは確かだろうが、篝火を探すついでに使えそうな物があったら回収しておくか。

 

「この近くに牢屋になっている所があった筈だからまずはそこに行こう。もしかしたらそこに篝火があるかもしれない」

 

「えっ、ゼロさんは一度此処に来た事があるんですか?」

 

(あっ……)

 

そう言えばアイリスには俺がこの世界で最初に目覚めた場所については何も言って無かったな……。

まぁ、色々あって説明する暇も無かったし、それを説明する理由も無かったから今更聞かれてもどう答えればいいのか……。

 

「……信じられないと思うが、俺はこの先の牢屋の中に入れられた事があってな。それで知っているんだ」

 

「そうなんですか……でもどうやって聖森に?」

 

確かに此処までの道中を考えるとどうやって聖森にたどり着いたのか疑問に思うだろう。

よくよく考えれば淫婦街の裸の王様やヘルカイザーを倒さないと来れない筈なのにイズやジャンヌはどうやってこの場所に来たのだろうか。

もしかしたら淫婦街を通らない別ルートもあったのかもしれないが、それを確認する方法もないし、今はそんな事を気にしてもしょうがないな。

 

「実は此処を脱出する時にヘルカイザーに襲われてな。奴にやられた後、次に目を覚ましたらあの森に居たって所さ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「なに、俺も説明していなかったしな。気にしていない」

 

あの時はこの世界で目覚めて間もなかったし、一人で行動するものだと思っていたから説明しなくてもいいと言う考えもあった。

話すタイミングが無かったと言えばそれまでだが、全く説明をしていないって言うのも問題だったしな。

 

「それよりも篝火を探そう。ついてきてくれ」

 

「分かりました」

 

話を少々強引に終わらせた俺達は当初の目的の為に牢屋のある方向へ向かう。

その先に下の階層へ下る階段にたどり着くとアイリスを少しだけ下がらせて警戒しながら階段を降りていく。

牢屋で目を覚ました時はジャンヌが全て倒していたのか俺が脱出するまでの道中には敵はいなかったが、その時とは状況が変わっている可能性を考えての事である。

ある程度攻略が進めば今までの場所の状況が変化すると言うのは既に経験しているしな。

 

(さて、奇襲は無かったが……)

 

階段を降り切り、死角からの奇襲を警戒したが特にそう言った気配は感じられなかったものの、気を抜いた瞬間に襲って来ると言うのは良くあったので警戒を怠らずにいつでも戦闘態勢を取れるようにしながらゆっくりと進む。

やがて少し広い場所へたどり着いたその時だった……。

 

 

「っ!?」

 

「きゃ!」

 

警戒を怠っていたら確実に感じられなかった僅かな殺気に気づいた俺はとっさにアイリスを庇うように彼女に覆いかぶさると同時に俺の背後で爆発が起きる。

その衝撃からアイリスを守る事は出来たが、まさかこんな所で爆発物を使う奴がいるとは……。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……」

 

爆発から咄嗟に庇った事でアイリスとの顔が近くなり彼女の顔が赤くなるが、一先ずさっきの爆発による怪我はなさそうだ。

だが、このままでは再び攻撃を受けてしまう可能性があるので、俺はアイリスの上から離れると武器を構えて爆発が起きた方を見る。

 

「戦場の匂い……かぐわしい血の匂いだ。……素晴らしい」

 

そこには何やら硝煙の臭いを放つ一羽のアヒルがいた。




まだしばらくは戦闘が続くかも
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