「さぁ、此処は戦場だ!迷えば死ぬぞ!」
そう言ってアヒルは再び爆弾を俺達に向かって投げてきたので、俺は咄嗟にアイリスを突き飛ばすと同時に爆風が起きてそれによって俺は壁までふっとばされてしまう。
「ゼロさん!」
アイリスは爆風でふっとばされた俺を見て悲鳴を上げるが、俺はすぐに体制を立て直してそこら辺に落ちている瓦礫を拾うとそれをアヒルに向かって投げつける。
当然俺達よりも小さいアヒルに投げた瓦礫があたる事はなかったが、それでもアイリスから意識を逸らせることはできた。
そのまま一気にアヒルに近づいて剣で攻撃するが、アヒルはその身のこなしで俺の攻撃を回避してお返しとばかりに爆弾を投げようとする。
だが、俺はそれを投げられる前にウェポンブレイクを放つことでアヒルの攻撃を無理矢理中断させてから更に追撃を行う。
「ほう……貴様、かなりの修羅場をくぐってきたようだな」
「まあな」
修羅場なんてこれまで何度も……それこそ数えきれないほど潜ってきた。
もう昔の俺には戻れないほどには……。
なんて感傷に浸っている暇はない、相手は見た目こそアヒルだが雰囲気は正に幾多の戦場を潜り抜けてきた兵士そのものなので一瞬の隙や油断を見せれば一撃で俺達を葬りかねない。
俺は兎も角、アイリスは俺と一緒に居たからと言って戦いに慣れてる訳ではないので、どうにか彼女を守りながら戦わないといけないだろう。
「そこっ!」
「むっ!」
それでもアイリスは懸命にアヒルに苦戦している俺に対して援護攻撃を行ってくれており、彼女の攻撃はアヒルには命中してはいないが、その僅かな隙をついて俺は攻撃を仕掛けていく。
しかし、相手もやられっぱなしと言う訳ではなくこっちが攻撃を行おうとしている瞬間に爆弾を投げたりして反撃をしてくる。
当然、それを無視する訳にもいかず、彼女を守る為に攻撃を中断して爆弾を叩き落とすと同時に爆風が俺を襲った。
「きゃあ!」
「ぐぅ……!」
アイリスを守る為とは言え咄嗟に爆弾を叩き落したがそれでも爆風自体は防ぐ事は出来ず、それによって俺達は体制を崩れてしまい、その隙をついてアヒルはアイリスに攻撃をしようとしていたがそうはさせまいと俺はアヒルに向かって一気に近づいてウェポンブレイクを放った。
「ぬぅ!」
ほぼやぶれかぶれ気味に出した攻撃だったが、俺のウェポンブレイクをアヒルは避ける事は出来ないと判断したのか咄嗟に防御されてしまった。
だが、俺は反撃の隙を与えないように追撃として今度はアーマーブレイクを放つ。
そのまま一気に攻めようとするが、その前にアヒルは反撃として今度は爆弾ではなく手に持った銃を撃ってくる。
俺はそれを剣で何とか防ぐが、それによってアヒルに攻撃のチャンスを与えてしまう。
「いいぞ!この沸き立つ感覚!これこそ戦い!これこそ戦場!」
まるでこれを求めていたと言わんばかりにアヒルが歓喜の声を上げると、そのまま銃と爆弾を使って俺に攻撃してくる。
アヒルのくせにこいつはとんだバーサーカーだぜ……。
だが、俺が積極的に攻撃を仕掛けていたおかげか、奴はアイリスには意識を向けていない。
彼女は俺と共に行動して巨大な敵と何度も遭遇していたがそれだけであり、俺と違い戦闘経験は浅いほうだ。
そんな奴が見た目があれだが歴戦の戦士に戦いを挑んだりしたらどうなるかは考えなくても分かる。
だからこそ俺は兎に角アヒルの意識がアイリスに向かないように戦うしかない。
「さぁ!もっとお前の力を見せてみろ!」
「くっ!」
そう考えている間もアヒルからの猛攻は続き、俺はそれを何とか捌いて行くが、攻撃の手数は向こうの方が上なので徐々に追い込まれてしまう。
(あの妖精を呼ぶか?いや……)
あいつを呼んだ所で余計に戦いに集中できなくなりそうだし、何よりあいつの存在はアヒルにとって地雷の可能性がある。
そんな奴を参加させるくらいならこのまま戦った方がマシだ。
(だが、どうする?)
未だに続くアヒルからの銃撃と爆撃、この二つを掻い潜ったとしても相手との体格差とこっちの攻撃の隙の大きさから回避されやすく、当てるのも難しい。
遠距離手段も俺はアイリスのような魔法は使えないし、当たり前だが銃なんて持ち合わせていないので出来る事と言えばそこら辺に落ちている物を投げるくらいであるがそんなものは不意打ち位にはなるものの役に立たないのは分かり切っている。
かと言って防戦一方のままではいつかは追い詰められてしまう。
上位者の力を使えば一気に勝負を決められるかもしれないが、あれは一度使った後、次に使えるようになるまでクールタイムがあるらしく、今は使えないようだ。
(後は……)
残った手段と言えばさっきイズを助けた際に使った剣だが、これは所謂火属性がデフォでついていると言う事しか分かっておらず、使った所でどうにかなるとは思えない。
しかし、今の俺に残された手段はそれしかなく毎度のごとく行き当たりばったりなやり方にはなるが、試してみる価値はあるだろう。
「……!」
ヘルカイザーから手に入れた剣を握った瞬間、俺の頭の中にこの剣で使える技が浮かび上がり、それならこの状況を打開できると理解し、早速それを使った。
「竜の……衝撃波ぁ!」
「ぬおっ!?」
「きゃ!?」
俺が剣を振るった瞬間、そこからまるでヘルカイザーが吠えたかのような凄まじい衝撃波が発生し、その衝撃波によってアヒルは吹き飛ばされ、離れていたアイリスもその余波によって体制を崩してしまう。
その威力を把握していなかった俺の腕にも衝撃波による反動が重くかかり、それによって剣を手放しそうになる。
だが、おかげでさっきまで猛攻を仕掛けていたアヒルの攻撃を止める事には成功した。
「もらった!」
衝撃波によってできた隙を逃さないようにアヒルが体制を立て直す前に攻撃を仕掛けようとしたが、アヒルは銃を使って牽制してくる。
その的確な射撃に俺は一瞬だけ足を止めてしまい、その一瞬の隙でアヒルに体制を立て直されそうになるが、そこへ光の弾が奴に命中した。
それによってアヒルの意識がアイリスに向いてしまうが、彼女のおかげでこっちに攻撃できるチャンスが生まれたので、すかさずアヒルに向かって剣を振るう。
「甘いッ!」
だが、その攻撃は難なく回避されてしまい、さっきのお返しとばかりに銃を乱射してくる。
さっきの攻撃を回避された事でアヒルからの反撃に対応出来なかった俺は咄嗟に防ぐ事ができず、銃弾を受けてしまうが、鎧のおかげで大したダメージは受けなかったものの相手が立て直すには十分だった。
しかし、こっちには状況を有利に進められる方法を見つけたため、すぐにそれで対処しようと思ったがさっきの衝撃波の威力を考えるとまたアイリスを巻き込みかねない。
だったら……。
「アイリス、さがってろ!」
「は、はい!」
俺が何をしようとしているのか理解したのか、彼女はアヒルの行動に注意しながら衝撃派の範囲外へと移動する。
それを見たアヒルもこっちの攻撃を妨害しようと爆弾を取り出したが、その前に俺の方が先に動いた。
「くらえ!」
「ぐぅあ!」
俺の放った衝撃波によってアヒルは再び吹っ飛び、おまけに先程投げつけようとしていた爆弾も誘爆を引き起こしてそれがアヒルに更なるダメージを与える事になり、それによってアヒルが体制を崩す。
チャンスは今しかないと感じた俺はこの戦いに決着をつける為に剣を構えながら一気に奴との距離を詰めて行く。
それを見たアヒルは銃を使って妨害しようとしてきたが、アイリスの光の弾によって銃を弾き飛ばされてしまう。
そして俺は渾身の力を込めて一気に剣を突出し、それは深々とアヒルの体を貫いた。
「がはっ……!」
自分の体を貫かれたアヒルは最後に血を吐き、力なく項垂れる。
それはこの戦いの決着を意味していた。
正直な所、今回の戦闘はかなり書くのが大変でした…