投稿がものすごく開いてしまい申し訳ありません。
「ああ……痛みすらねぇ……乾きしか感じねぇ……」
俺に体を貫かれたアヒルがそう呟くとアヒルの体は光の粒子になり、それが一つに集まって一冊の本になる。
それにより俺の体には戦いの緊張感が解けた事による疲労が一気に来て、それによってその場へと座り込んでしまう。
(疲れた……)
ヘルカイザーに続いてアヒルと連続で強敵と戦ったせいか、上位者でありながら全身に疲労感を感じており、思えばこの砦に来てから全く休憩する暇も無かったな。
この砦を一通り調べたら一度聖森に戻って休む事も考えた方がいいか……
「大丈夫ですか?」
俺が突然座り込んだからか、アイリスは心配した様子で俺に話かけてくる。
さっきまでは一瞬の隙が命取りの相手だったから彼女の様子を気にしている暇はなかった。
座り込んでいる為、アイリスを見上げる形で彼女をみると爆弾の爆風などの影響で少し傷があったり、汚れなどがついてしまっているが、大怪我はしてはいないようだ。
様子を伺う際に一瞬だけ彼女の服の上からでも分かるほどの豊満な胸に目が行ってしまったが。
「いや、少し疲れてな……」
「そう言えば全然休憩が取れていませんでしたね……」
いくら俺が上位者になったとは言え、ヤーナムにいた奴らと同じく不滅の存在になった訳じゃないので傷つけられたらダメージを受けるし、力を使えば疲れも感じる。
上位者は超常的存在ではあっても神ではないのだ。
それにアイリスも肉体的な疲れは無くても精神的なストレスは感じているだろうから、ここらで休憩を取ってもいいだろう。
(それにしても……)
俺はさっきまで戦っていたアヒルが変化した本を見つめる。
その表紙には「醜いアヒルの子」と書かれており、それがあのアヒルの事を刺しているのかは分からないが、あれの何処が醜いのかこの本を作った奴に問いただしたい。
それよりも……
(此処まで来ると本には何かの意味がありそうだな……)
法則性は分からないが、特定の奴らから手に入る本には何かしらの秘密があり、もしかしたらこの世界の秘密を知るには必要な物なのかもしれない。
とは言え、現状それを確かめられる方法が分からないので今は気にしないでおこう。
「おい、お前ら……」
俺がそんな事を考えていると突然部屋の奥から声を掛けられ、それが敵かと思った俺はすぐに立ち上がり、剣を構えてアイリスを庇うように立ち塞がる。
もしかしたらさっきの戦いの様子を見ていた奴がおり、消耗した所を狙ってきたのかもしれない。
「ま、待て!俺は敵じゃない!」
すると、部屋の奥から武器を構えず両手を広げて敵意が無い事をアピールするかのように鎧の人物が俺達に近づいて来た。
鎧で表情は分からないが、相手の言葉や雰囲気から焦りを感じとった俺はいきなり襲い掛かって来る事は無いと感じたが、それでも警戒を解かずに目の前の相手を見つめる。
「何者だ?」
「俺はルミラージ、アンドールから来た」
アンドール……確か、以前に捨てられの森に居た奴もそこから来たって言ってたな。
まぁ、狩人の中にはヤーナム以外から来ていた奴もいたし、別におかしい事ではないが……
「そのアンドールから来た奴が俺達に何のようだ?」
「さっきまで派手に爆発音が聞こえてたからな。その様子を見に来たんだが……」
どうやらこいつはさっきまで俺が醜いアヒルと戦っていた音を聞いてやってきたようだ。
まぁ、あれだけの爆音を聞いたら人によっては様子を見に来るだろうな。
「ああ、さっきまで派手に殺りあっていたんでな」
「だろうな。この部屋の状態を見れば誰でも分かる」
俺がさっきまでアヒルと戦っていた部屋は奴の爆弾の影響で瓦礫だらけになっており、あのまま戦いが長引けばこの部屋は崩落していたかもしれない。
そうなると、俺は兎も角アイリスは無事で済まなかっただろうからその前に決着を付けられて本当に良かった。
「それで、お前は何でこんな所にいるんだ?」
「俺はこの国に幻の秘宝があると聞いてやってきて、途中で同じ騎士と行動していたんだが奴は俺を裏切ってこんな所に置き去りにして行きやがったんだ」
「そんな……」
なるほど、こいつはこの国のお宝を手に入れる為にそのアンドールとか言う国からやってきたらしい。
こう言うかつては繫栄していた国にはすごいお宝があると言う噂を何処かで聞いてそれを手に入れようとする奴は何処にでもおり、それらを手に入れるならば多少の危険が待っているとしてもその場所へ行く、そしてそれを自分が必ず手に入れると言う目的があるからこそ目の前にいる騎士と同じようにこの国へやってくる奴がいるのだろう。
だが、その道のりには様々な困難が待っている事が多く、それは限りない戦だったり、自分がお宝を手に入れようと協力するふりをして他人を利用したり、途中で裏切ったりなど他の奴には絶対に渡さないと言った理由から手を汚す事も厭わない奴も存在する。
こいつもそう言う事があったからこんな所に居たって所か。
「あんたらも気を付けろよ。そいつはアダマンって奴だ」
(アダマン……)
確かそいつは前に捨てられの森で会った騎士が名乗っていた名前だな。
あいつもアンドールって所から来たって言ってたからこいつと出身地は同じという事か。
あの時は初対面の俺に対してやたらと親切にしてくれていたが、恐らくあれは次のターゲットを決めていたんだろう。
初対面とは言え、威圧的に話すよりも親切に接すれば多少なりと警戒心は薄れるから相手によっては結構有効な手ではある。
「その人はどんな人なんですか?」
「そうだな、そいつは緑色の甲冑を来ていたから見たらすぐに分かるはずだ。それにあの野郎は殺しが趣味って感じがビンビン伝わって来ていやがった」
どうやら、あのアダマンって騎士は相当なシリアルキラーだったらしく、あの時感じた嫌な気配は間違いじゃなかったようだ。
とは言え、こいつもそいつと長い付き合いがあるならまだしも、知り合って間もない奴と組んで何処かで裏切る事を予想をしなかったのだろうか?
まぁ、あいつは初めて会った俺に対してアイテムを無償で譲ったり情報を教えたりなどしていたから、そうやって相手の警戒心を薄れさせて頃合いを見て裏切ると言った感じなのかもしれない。
「あんな奴は殺したほうが、世の為ってものだ。次に会った時は必ず……」
「……っ!」
ルミラージはアダマンに裏切られたことにかなり腹を立てているようで殺気を発しながらかなり物騒な事を口にする。
その殺気に当てられたアイリスはルミラージに怯えて体を縮こませてしまう。
いくらアダマンが許せないからって殺すとかそういう言葉を彼女の前で使うのはあまりして欲しくはないな。
「いくらお前がそいつの事が許せないからって言って女の前で物騒な事を言うのは辞めた方がいいぞ」
「うっ……すまない。あいつの事を思い出すと怒りが沸いてきて……」
「気持ちは分からんでもないが、もう少し冷静になったほうがいいだろう」
もし、本当にアダマンに裏切られたとしたのならこいつは次に会った時には殺す為に襲い掛かるだろう。
アダマンの実力がどれほどなのかは分からないが、冷静さを欠いていると下手をしたら返り討ちにされる可能性だってある。
さっきの様子からすると、こいつはちょっと煽られただけで冷静さを失い相手に襲い掛かりかねない。
それこそアダマンみたいな奴にとって恰好の餌食だろう。
(とは言え……)
ルミラージの言う通りアダマンが本当に殺しを楽しんでいるシリアルキラーなら何故こいつは死んでいないのだろうか?
俺は専門家じゃないからこう言った事に詳しい訳じゃないが、標的にした相手を態々生かしておく必要はないはずだ……
それに置き去りにされた割にはルミラージ自身には目立った傷が無く、食事や飲み物に何か盛られたり、魔法を使われたとしても無傷と言うのは違和感がある。
殺すのが目的なのだったらこんな所に置き去りにするよりもさっきのアヒルやヘルカイザーの相手をさせた方が確実性は高い。
まぁ、これは俺の考えであり、アダマン自身がそれに対して何かしらの美学を持っている可能性だって捨てきれないが……
(こいつも怪しいな……)
ルミラージの言葉を何処か信用ならない俺はアダマンと同じくこいつも警戒する事にした。
「とにかく、奴は口が上手いからな、あんたらも騙されるんじゃないぞ」
「……覚えておこう」
「じゃあ、俺はもう行くぞ。こんな所でくたばりたく無いからな」
ルミラージがそう言うと、俺達が降りてきた階段がある方へ歩いて行く。
すると……
「あの野郎、必ず見つけ出して殺してやる……ヒヒヒッ……」
そう呟きながら俺の傍を通りすぎる時に呟いているのを俺は聞き逃さず、ルミラージの事も信用しないようにすることにした。
あいつはロストエンパイアの幻の秘宝を手に入れる為にやって来たと言っていたが、それならばアダマンの事なんて放っておいていたほうがいい筈なのに奴は必ず見つけ出すと言っていた。
確かに裏切られたことに対して報復したいと言う気持ちは分からないでもないが、本来の目的を考えるならばそれは後回しでも良いはずである。
だが、さっきのルミラージの目的はアダマンに裏切られた事に対しての報復になっており、秘法を手に入れるのであればそんなリスクを冒す必要はない。
勿論これはこれは俺の勝手な予想でしかないので完全に否定できる訳では無いが、それでもおかしいと思ってしまうのだ。
(まぁ、今の所俺達には関わりが無いから良いが)
ルミラージの目的は俺達の目的とは違っている為、この後の事はどうなるか分からないし、どう言った結末を迎えるかなんて予想する事なんで出来ない。
いずれにせよ今は放っておいても問題はないだろうが、一応次に会った時の事も考えておかないと……
「あのゼロさん……」
「分かってる」
どうやらアイリスも同じ事を考えていたらしく、その顔にはルミラージに対しての強い警戒心が現れていた。
彼女は優しい性格をしてはいるが、他人を疑う精神も持ち合わせているようだ。
「こっちに関わってこないならそれでいいが、もしもこの先で会う事になるなら警戒はしておこう」
「はい」
一先ずルミラージの事は頭の片隅に入れておくとして、俺達は牢屋の探索を始める。
あれからそれなりに時間が経ったが、この辺りは俺が最初に目を覚ました時とあまり変わっておらず、相変わらず埃っぽい場所だった。
まぁ、こんな所に何か変化があるとしたら俺以外の誰かが代わりに牢に入れられるか、ルミラージみたいに何かしらの理由があって訪れたかのどっちかだろう。
そんなのは基本的にゲームの中でしか起きないと思ってはいたが……
「あ、ゼロさんあそこに」
俺がそんな事を考えているとアイリスが何か発見したらしく、その方向を見てみるとそこには篝火と思われる物が牢の中にあった。
(あの時はあんな物無かったよな?)
俺が最初に此処を脱出した時はこの場所が牢屋だったこともあったから特に気にしていなかったが、その時には何もなかった筈である。
とは言え、あの時は脱出を優先して周りをちゃんと見ていなかったから、もしかしたら俺が見落としていただけかもしれないが……
(まぁ、気にしても仕方ないか……)
今は兎に角聖森に戻り、休息を取る事にしよう。
(確かあの兎が言うには)
聖森から出発する際に兎から聞いた説明によると俺が篝火に念じれば今まで火を灯した篝火に移動できるとの事で、その説明を聞いた俺は何処か既視感のような物を感じた。
もしかしたらヤーナムに転生する前の人生の中でプレイした事のあるゲームにそう言った物があったのかもしれないが、今はもう思い出せないし、思い出した所で意味の無い事だろう。
(それよりもさっさと戻るとしよう)
俺は篝火の前に座り聖森の事を思い浮かべると、目の前の炎が強くなると同時に俺の意識は段々と薄れて行った。
次はエロシーン予定