まだ始まったばかりの小説ですが、今年も頑張って投稿していきたいと思うます!
「ったく、本当にゴミが多いな」
聖森でリィフと別れた俺は青年が言っていた魔女を探す為に色んな物が捨てられている森を歩き廻っていた。
あの青年は此処を捨てられの森と言っていたが、確かにこれだけの量のゴミが有れば捨てられの森と呼ばれても仕方ないな。
中にはまだ使えそうな物もあるが、今はそんな物を回収する気はない。
と言うか、持って行ったら確実に邪魔になる。
おまけにこの森には聖森にいた妖精とはまた違った妖精がおり、そいつらは会話する事無く俺に襲い掛かってくる。
「キャハハ!」
「おっと」
ガラクタの影から飛び出してきて俺に向かって突撃してきた妖精の攻撃を回避し、そのまま剣で反撃するが相手は小さく、攻撃を当てようとしても避けられてしまう。
「ギャハハハ!」
「ちっ」
俺が妖精に手間取っていると、今度は口が付いた植物のような魔獣が現れ、俺に向かってその口を開けて飛び掛かってくる。
俺はそれを左腕で払い落とすと怪物は地面に落ちて体制を崩すが、その間に妖精が再び攻撃を仕掛けてくる。
それに対して俺はある技を放つ。
「ウェポンブレイク!」
「ギャッ!」
妖精の攻撃に合わせて剣を振るうと、妖精は俺の攻撃を避ける事が出来ずそのまま体が真っ二つになった。
そのまま植物の怪物を倒そうとするが、そいつは既に体制を立て直しており、俺に向かって再び噛み付こうとして来る。
だが、俺は再び攻撃に合わせてウェポンブレイクを放ち、植物の怪物も妖精と同じ運命を辿ることになった。
「やれやれ……」
邪魔者を片付けた俺は周りに他の敵が居ないか確認し、特に気配を感じなかったので周囲に警戒しながら再び歩き始める。
(それにしても……)
この森に入りってから何度か妖精や植物、さっきは現れなかったが少女ような姿をした植物の敵と遭遇し、その度にそれらを撃破してきた。
また、兜によって視界が狭められ、何度も死角から襲われていたのでカインの鎧の兜は脱いでいる。
そしてその度に俺の中へ何かが溜まっていくのを感じており、その感覚はヤーナムで集めていた血の遺志と似たような物だった。
もしかしたらこれが俺の力となって更なる力を得る事も出来るのかもしれない。
(戻った時にあの兎に聞いてみるか)
「ごほっ……ごほっ……」
「んっ?」
俺がそんな事を考えていると誰かが咳き込む声が聞こえたのでそっちへ行ってみると、そこには破棄された長椅子に座っている緑色の甲冑を纏った奴がいた。
「おや、冒険者ですな。こんなゴミだらけの森でよく息が吸えますなぁ」
いきなりそんな事を言われたが、この森はゴミの影響で異臭がするもののヤーナムほど酷い物じゃないから俺としてはこれ位は平気だが、普通の人間ならこの森の臭いはキツいだろうな。
「俺にとってこれ位の臭いは平気なんでな」
「なんと、随分とたくましいお方だ」
「それで?お前は誰だ」
「申し遅れた。拙者はアンドールのアダマンと申す」
アンドール、さっき青年が言っていた所だったか。
どうやらこいつはそこから来た奴らしい。
「これはお近づきの印に……」
そう言ってアダマンと名乗った騎士は水晶のような物を取り出し、俺に差し出してきた。
見た所、売ればそれなりの価値は有りそうな代物である。
それを初対面の奴になんの見返りもなく、いきなり渡すか普通。
「いいのか?随分と値打ち物のようだが」
「ええ、構いませんよ。拙者には無用の代物なので」
「そうか」
どうやらアダマンは水晶に対して何かを要求する訳ではなく、無償で譲ってくれるらしい。
(まぁ、取り合えず受け取っておくか)
一体何が目的なのか分からないが、特に断る理由も無いし此処は素直に受け取っておこう。
水晶事態にも何かを仕掛けていると言う様子もないし、後々に何かの役に立つかもしれない。
「そうそう。この森には何やら喋る花がいるとか……とてつもなく凶暴で鎧も溶かしてしまう粘液を持ってるよう。貴殿も気をつけた方がいいですぞ」
俺が受け取った水晶を道具入れとして拾っておいた袋に詰め込むと、今度はこの森にいる喋る花に対してアダマンは警告してきた。
どうやら、さっき相手した襲い掛かってくる花とはまた違う存在がいるらしく、そいつに気をつけろとの事。
「何故初対面の俺にそこまで教える?」
流石に此処まで親切にされるとリィフと同じくこいつも警戒しなくてはいけないと言う考えが過り、俺はそれについて尋ねる。
するとアダマンは俺の質問に対して少し考えるような様子をみせ、やがて俺の方へと顔を向けた。
「そうですなぁ、お節介という物でしょうか。貴殿のような若者にはついつい親切にしたくなってしまうのでな」
それが本心かは分からないが、アダマンはそう答える。
「ふうん……」
アダマンがどれどれ位の年齢かは鎧を纏っているせいで把握できないが、一応年齢だけ見れば俺の方がずっと年上の筈である。
まぁ、今の俺の姿を見てもそんな事は信じられないだろうが。
「じゃあ、あんた。ロストエンパイアについて何か知ってるか?」
俺がそう尋ねると、アダマンの雰囲気が変わり何やら真剣な様子になった。
「ロストエンパイア……聞いたことはありますな。昔は活気溢れる城でしたが、
女王のご乱心により今はもう魔獣の城だとか」
(女王だと?)
この世界で蔓延している人が魔獣化する霧の発生源はロストエンパイアだと言う事は知っていたが、その力を使っている奴はてっきり王だと勝手に思っていたんだが、どうやら違ったらしい。
「いやはや、拙者はまた違う目的地ですが、同じ冒険者の身、協力し合えるといいですな」
「……そうだな」
俺に対して水晶を無償でくれたり情報を教えてくれているアダマンだが、こいつ自身も何処か信用できないと言う印象を感じており、下手したらあっさりと裏切る気がした。
もちろんこれには根拠なんて全く無いから、俺の思い過ごしであればいいんだが……。
「そうそう、霧を見つけたら用心なされ。霧は警戒を表すサインですからな、その先に強敵が待ち受けているかもしれませんぞ」
「強敵ねぇ……」
ヤーナムでも一度強敵との戦いで敗北して再び目覚めると、そう言った存在のいる場所の前には霧が発生するようになっていたが、それと同じような物なのかもしれない。
つまり、そういう霧の先には強敵がいると思っていたほうが良いという事だろう。
「それでは、拙者はこれで失礼させていただきます」
「そうか、色々教えてくれてありがとうよ」
「いえいえ、拙者のお節介みたいなものですので」
一応の形だけではあるが俺はアダマンに対して礼を言うと、彼は長椅子から立ち上がり、そのまま聖森の方へと歩いて行った。
(やっぱりあいつも信用できないな……)
俺の横を通り過ぎる時にアダマンから感じた嫌な気配、あれは明らかに俺を騙そうとしているようだった。
何が目的なのか分からないが、俺は奴の標的にされてしまったようだ。
(待て、何故俺はそう思える?)
いくら上位者になったとしても初対面の相手に対して俺を騙そうとしているなんて普通は考えない筈だ。
ましてや、先ほどのアダマンも優しく接していたので、初対面の人にも親切にしてくれる人だと感じるはずである。
これも俺が主人公として選ばれた影響なのだろうか?
(それとも……ん?)
ふと長椅子の側に手鏡が落ちているのに気が付き、そう言えば自分の顔はリィフには見せたが自分では見た事がなかったな、と思ったので手鏡を拾って自分の顔を見てみた。
(……懐かしい顔だ)
そこに映っていたのはボサボサの血のように朱く染まった髪と赤い瞳の青年、上位者になる前の狩人だった頃の俺だった。
だが、その顔には以前無かった物もあった。
「なんだこれ?」
額と頬の部分の丁度眼と同じ位の左右のそれぞれの位置に何やら閉じた眼のような模様がある事に気が付き思わずその一つに手で触れてみる。
「っ!?」
模様に触れるとそこには感覚があり、俺は思わず手をひっこめてしまう。
「今の感覚まさか……」
触れた所に感覚があったと言う事はこれは模様ではない、つまりそれは……。
自分の中でそれが外れて欲しいと思いながらその場所に意識を向けてみた瞬間……。
「うっ……」
それはゆっくりと閉じた瞼のように開いていき、そこには更なる瞳があった。
本来なら有る筈もない複数の眼、それが意味する答えは一つ。
「俺はやっぱり上位者なんだな」
この世界にくる過程で上位者の力は使えなくなっていてもこの複眼の顔を見た事で俺は上位者である事を理解してしまう。
とは言えリィフやアダマンは俺のこの顔を見て何も言わなかった所を見ると、もしかしたらこれは俺にしか見えない物なのかもしれない。
それはそれで有難いが……。
(だからと言って上位者の力を使うつもりは無いがな。これはこの世界の力じゃないんだ)
自分は別の次元から来たこの世界とは異なる存在。
俺はその事を改めて自覚し、捨てられの森の奥へと進んで行った。
今回登場した敵
妖精→ダークフェアリー
口が付いた植物→マンドラゴラ
少女ような姿をした植物→アルラウネ