苦手な方はご注意ください
「邪魔だ」
「ギャ!」
アダマンと別れて魔女の家を探している俺は何体目になるか分からない敵をたたき伏せる。
あれからだいぶ長く森の中を歩いているが、目的の家は一向に見つからない。
「はぁ、流石に疲れてきたな……」
あれから休むこと無く歩き回りその度に森の魔獣どもの相手をしていたせいで俺の体には少しずつではあるが、疲れが溜まって来ていた。
だからと言って適当な所で休めばまた襲われるかもしれないし、気が抜けないのも事実である。
「どうしたものか……」
そう俺がどうやって休もうか考えていたその時だった……。
「キャアアアアアアアッ!!!」
「っ!?」
突然、少女の物と思われる悲鳴が聞こえたので、俺はその方へ急いで向かう。
すると、そこには腰を抜かして座り込んでいるボロボロの布を着た黒髪の少女と……
「な、なんだこいつ!?」
人間の体を歪につなぎ合わせたような魔獣が居た。
「あ、ああ……」
(マズい!)
少女は目の前の魔獣から動く事が出来ず、完全に恐怖に取り込まれてしまっている。
このままでは彼女はあの魔獣に成す術もなく殺されてしまう。
そんな事、絶対にさせる訳にはいかない。
「立てっ!」
「えっ!?あ、貴方は……?」
「いいから立ってこっちに来い!」
「は、はいっ!」
動けなくなっている少女に向かって大声で声をかけると、彼女は俺の存在に一瞬戸惑っていたが、何とか立ち上がってこちらへと向かって来て俺の後ろに隠れる。
(さて……)
少女を何とか魔獣から離す事は出来たが、魔獣は俺達を逃がすつもりは無いらしく、明らかな敵意を俺達に向けている。
その様子から少女を連れて一緒に逃げる事は出来なさそうだ。
(にしても、嫌な見た目してやがるぜ……)
俺の目の前にいる魔獣はかつて秘匿を破った後の隠し街ヤハグルにいた人間の体で構築された奴らを思い出すような容姿をしている為、その見た目だけで不快感を感じる。
とは言え、今は俺の背後にいる少女を何とかしないといけない。
「おい、お前」
「え?あっ!は、はい!」
「俺が奴を引き付けるから、その間にお前は逃げろ」
「わ、分かりました!」
少女にそう言うと、俺は剣を構えて魔獣に突っ込んでいく。
それと同時に背後で少女が離れていく気配を感じ、なんとか俺の言葉を聞いてくれたようだ。
そして俺は勢いを乗せて魔獣に剣をその体に突き刺そうとした。
だが……。
「ば、馬鹿な……」
剣先は怪物の体を傷つける事が出来なかったどころか、その柔らかそうな皮膚を貫通する事すら出来ず、その事に俺は思わず驚いて動きを止めてしまった。
「しまっ!……がっ!?」
予想外の出来事に俺は魔獣の反撃を回避する事が出来ず、腹部に受けた一撃によって吹っ飛ばされてそのまま地面を転がる。
見た目の割りになんて重い一撃だ……。
「くっそがぁ……」
体の痛みに耐えて何とか立ち上がるが、さっきの一撃で殴られた部分が凹んでおり、もし鎧を着ていなければ間違いなく死んでいただろう。
だが、さっきの攻撃で魔獣はこっちに敵意を向けており、俺を無視してさっきの少女を追いかける様子はなかった。
(このまま俺が注意を引いていれば……)
目の前の魔獣に対して俺に勝ち目はほとんどないだろうが、それでも少女を逃がすまでの時間は稼げた。
後は俺も相手の隙をついてこの場から離脱すればいいのだが……。
「ちっ!」
どうやら魔獣はそれを許してくれないらしく、見た目に反して素早い動きで俺に襲い掛かってくる。
とは言え、俺は不死者になっているのでこのまま敗北して死んだとしてもまた何処かで生き返れるだろう。
だからと言ってワザと負けたり自殺なんて手段は取りたくはない。
(何とかしてこいつを引き剝がせればいいんだが……)
そうやって俺がどうにか魔獣から逃げようと考えていた時だった……。
「えええい!」
「!?」
突然、逃がした筈の少女の声が聞こえるのと同時に何かが魔獣に向かって飛んで行って魔獣に当たったが全く効果が無かった。
俺は思わず物が飛んできた方を見ると、なんと少女がその手に幾つものガラクタを持ってそれを投げようと構えているが、その表情は怯えている。
「馬鹿野郎っ!何故戻ってきた!」
少女が戻ってくるなんて思って居なかった俺は思わず叫んでしまうが、その声を聞いても少女はその場から動く様子は無い所か、彼女が物を投げつけた事で魔獣は少女を標的にしてしまった。
「このっ!!このっ!その人から離れなさいっ!」
少女は懸命にガラクタを魔獣に投げつけているが、さっきと同じく命中はするものの全く効いている様子はない。
このままではマズいと感じた俺はすぐに魔獣へと接近し、今度はウェポンブレイクを試みるがこちらもダメージを与えられなかった。
「がっ!?」
魔獣はまるで目の前の羽虫を払いのけるかのように腕を振り、それによって俺は近くにあった大きなガラクタまで吹っ飛ばされ、頭を強く打ってしまう。
不味い……意識が……。
「あ……ああ……こ、こないで……」
魔獣が少女に近づいて……いく……。
また……おれは……守れないのか?
かのじょみたいに……?
『まだ死ねないっ……!死にたくないっ……!あづ……い……も……身体、が……っ……かっ……神よ……』
ふざけるな……!
「ふざけるなああアアアアアアアア!!!」
「えっ!?」
「はナれやガれええええエえエええ!!」
体の底から湧き上がる力を糧に立ち上がった俺はそのまま武器も拾わずに、勢いのまま魔獣を殴りつけると、魔獣はそのまま殴り飛ばされる。
(これは……一体……)
俺の体から湧き上がるこの力……。
それにこの感覚には覚えがある。
(まさか上位者の力が?……っ!?)
俺がこの力について考えていると、突然頭の中にある光景が浮かんでくる。
それは聖杯ダンジョンと呼ばれる場所の深部で対峙した女王ヤーナム。
それは狩人の悪夢と呼ばれる夢の中に存在した時計塔の中で戦った古い狩人マリア。
どちらもその手に持った得物を自らの腹部に突き刺し、それを引き抜くと同時に武器の刃には血の刃が付与されていた。
(何故ヤーナムの時の光景が?いや。それよりも)
突然頭に浮かんできた光景の事に関しては後回しにして、今は少女の安全を確保しないと。
「オい、お前」
「は、はい……あ、あの……」
俺が少女の元へ近づくと、少女は俺の顔を見て何か信じられない物を見たかのような表情をしている。
そう言えば、意識を失いそうになる前には感じられなかった力を今ははっきりと感じていて、もしやと思ってそっと頬に指を這わせて見ると、そこにある閉じていたはずの眼が開いていた。
確かに普通の人間は眼を六個も持ってはいないだろう。
「ああ、こレか。コれは昔に得た力ノ影響でこうナってるンだ」
「そ、そうなんですか……」
取り合えずその場しのぎで適当な理由をつけて答えるが、少女はそれは本当なのかどうか戸惑っている。
ちなみに嘘は言っていない。
すると背後からさっきの魔獣が立ち上がってこちらに向かって来る気配を感じ取り、少女の方もそれに気づいたようだ。
どうやらさっきの一撃で吹っ飛ばせはしたが、対してダメージは与えれていなかったらしい。
「あ、危ない!」
「ふっ!」
少女は背後の魔獣が襲い掛かって来る事を教えてくれ、俺は振り向くと同時に不意打ちをしようとしてきた魔獣の攻撃を受け流すと魔獣は体はよろめいて体制を崩す。
その隙をついてさっき吹っ飛ばされた時に手放してしまった剣を拾うと、また俺の脳内にさっきと同じ光景が浮かび上がってくる。
(そうか、これはもしかしたら……)
俺はカインの鎧の腹部の部分を金具を外して鎧を脱ぐと、そのまま剣を自分の腹部へ突き刺す。
結構痛い……。
「えっ!?」
俺の突然の切腹行為に当然少女は驚きの声を上げるが、それには気に留めず腹に突き刺した剣を思いっきり引き抜くと、さっき浮かんだ光景と同じように剣の刃には血の刃が付与されていた。
それはヤーナムで少しだけ使った事がある千景を思い出す。
「さぁ、いくぞ!」
俺はその剣を構えて体制を立て直した魔獣に向かって再び突撃してそれを振るうと、さっきは通らなかった魔獣の体をいともたやすく切り裂き、魔獣から鮮血が噴き出す。
「ひっ!?」
その光景に少女は悲鳴を上げるが、俺は構わずもう一撃加えようとして魔獣に突撃する。
魔獣はそんな俺の行動を見て回避をしようとするが、遅い!
「終わりだ!」
血の刃は魔獣の体を貫通し、魔獣は一瞬だけ体を大きく跳ねるとそのまま動かなくなった。
(何とか倒せたようだな……)
剣を魔獣の体から引き抜くとさっき付与した効果が切れたらしく、剣の刃は元に戻っていた。
それと同時に俺の体に凄まじい痛みと脱力感が現れ、さっきまで感じていた力を感じれなくなっており眼も閉じている。
どうやら、魔獣を倒した事で効果が無くなった影響だろう。
だが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「終わったぞ」
「あ、は……はい……」
痛みに対して瘦せ我慢しながら俺が少女の元へ近づくと、少女は恐る恐ると言った様子で俺を見ている。
まぁ、さっきの俺の状態を見た後だとどうしてもそうなるか。
「怪我はないか?」
「だい……丈夫です……」
「お、おいっ!」
俺が少女に怪我無いか確かめると、少女は突然糸の切れた人形のように崩れ、俺は慌てて少女の体を受け止める。
戦闘中は分からなかったが、よく見ると彼女の顔色はかなり悪い。
「……仕方ない。一度聖森に戻るとするか」
少女をこのままにする訳も行かず、さっきの戦闘で受けたダメージも有るので俺は一度聖森に戻る事にした。
今回戦った魔獣→ニンゲン
今回主人公がやったのはBloodborneで女王ヤーナムとマリアがやった血で武器のエンチャントをしていた奴です。