ここから先はオリジナル展開が続くぞ……
「二人とも随分と楽しんだみたいだね~♪」
「……」
「あううぅ……」
アイリスにソウルを供給した後、地下牢を出て地上に戻ると二人してリィフにからかわれていた。
まぁ確かに俺は楽しめたが、アイリスはさっきの事を思い出したのか、顔を手で覆って恥ずかしそうにしている。
「……はぁ、もうそれ位にしておけ」
「はぁい」
俺はリィフを窘めるが、当の本人は全く悪びれた様子は無く、むしろ面白そうな物を見つけたような表情をしており、これは間違いなく暫くからかいそうだ。
とにかくアイリスにソウルを供給する事は出来たので、彼女が魔獣になる事はなくなっただろう。
「そう言えばアイリス。なんでお前はあそこにいたんだ?」
魔獣と戦っている時やソウルを供給している時はそんな事を効く余裕もなかったが、よくよく考えてみればアイリスは俺やあの森で出会ったアダマンとは違って戦えるような力を持っているようには見えない。
もちろん見た目だけの判断ではあるが、魔獣と戦っている時は武器では無くガラクタを投げつけていたし、戦いに関しては全くの素人に見えた。
「あっ、えっと……」
「確かに彼が君を襲っていた魔獣は塵海の付近だし、あそこは毒沼が広がっているし、危険な魔獣もいるから間違っても普通の人が近づいていい場所じゃないよ」
「えっ、そうなんですか?」
いつの間にかやって来ていた黒兎がそう言うと、アイリスは何だが戸惑った様子を見せる。
どうやら彼女を襲っていたあの魔獣はその塵海と言う場所に居たらしく、それをしつこく追いかけて捨てられの森までやってきたらしい。
もし、その場所に行く事になるのなら、気を付けた方がよさそうだ。
「その、信じてもらえるか分かりませんが……実は私、記憶がないんです……」
「なんだと?」
此処に来てアイリスは自分が記憶喪失と言う事をカミングアウトするが、にわかには信じがたい。
「へぇ~本当に?」
「は、はい……気が付いたらとても暗い森の中で倒れていたので……」
リィフはアイリスに本当に記憶喪失なのかと疑問を投げかけるが、その表情は嘘でも本当でもどっちでもいいような顔をしている。
こいつ、本当に俺以外はどうでもいいみたいだな。
「……もしかして塵海の先にある森かい?」
「た、多分そうです。その……とにかく人のいそうな所を目指していましたので」
「そんな所があるのか?」
「うん、そこは霧もかなり濃いし、普通の人間が入り込んだからすぐにソウルを失って魔獣になってしまうほど危険な所なんだ」
つまり、アイリスはそんな所から来たと言う事になり、本来魔獣になるの筈が記憶喪失で済んだと言う事になったのだろう。
「だとしたら、アイリスは名前以外の事はほとんど覚えていないと言う事になるのか」
「……ごめんなさい。実はこの名前は私の本当の名前じゃないんです」
「なんだと?」
アイリスは自分の名前に関しては覚えていると思っていたが、まさかそれも忘れてしまっていたとは。
俺も過去の自分の記憶を失ってしまっているが、アレはどっちかと言うと徐々に消えて逝ったようなものだし、その全てを忘れてた訳じゃないが。
「でも、ソウルをビュ~ってして貰えれば良いって言う事は覚えていたんだよね~」
「あぅ……」
アイリスが重大な事を言ったと言うのに、リィフはまるでそんな事は知らないと言わんばかりにソウルを受けれる方法を知っていた事を掘り返し、それを指摘されたアイリスはまた顔を赤くなってしまう。
「なら、今の名前はどうやって決めたんだ?」
自分の名前も忘れているのだったら、彼女がアイリスと名乗る事になったのはどういう経緯なのか気になり、尋ねてみる。
こう言うのは大体誰かに助けて貰って、その人物に名付けて貰ったと言う事が多いと思うが。
「……この名前は私が気が付いた時に、近くに落ちていた指輪に書かれていた物を使わせて貰っているんです」
「そうか……」
どうやらアイリスと言う名はかつてその名前だった誰かから借りた名前のようで、本人は少し申し訳なく思っているらしく、あまり聞いてはいけない内容だったので俺達はまたしても気まずくなってしまう。
「ま、まぁ……それはともかく、君はこれからどうするんだい?」
気まずい雰囲気をどうにかしようと、黒兎がアイリスに対してそう問いかける。
確かにアイリスは俺と違って何か目的があって行動をしていた訳じゃなく、安全な場所を探していたと言う感じだった。
一応、この聖森は霧の届かない場所で魔獣も入って来れない所ではあるので、安全自体は保障されている。
だとしたら、彼女はこれからどうするのだろうか?
「あの、それなんですが……ゼロさんと一緒について行っていいでしょうか?」
「えっ?」
「なんだと?」
アイリスの意外な答えに俺は目を丸くし、黒兎も思わず驚いた声を出す。
「駄目でしょうか?」
「いや、俺は構わないが……いいのか?俺と一緒に来ても、安全は保障出来ないぞ?」
アイリスの件で少々ゴタついてしまったが、俺の目的はロストエンパイア城へ向かう事なので、アイリスが付いて来てくれるのは嬉しいが、その道中で何があるのか分からないし、俺も守り切れるかと言われると自信がない。
そう考えていると、黒兎が何か思いついたらしく、俺にある提案をしてきた。
「だったら、契約してみたらどうだい?それなら彼女は此処に居れるし、君は彼女を必要な時だけ呼び出せればいい」
「ふむ、確かにそのほうが安全ではあるか」
まだ試した事はないが、リィフの言葉が正しければ俺と契約した奴は呼び出せるとの事。
危険な場所に一緒に来るのだったら、契約して安全な所に居てもらう方がいい。
「契約ですか?」
「うん、彼に手を出してみて」
「は、はぁ……」
アイリスはなんだか信じられないと言う顔をして俺に手を差し出して来て、俺は彼女の手を取る。
だが、リィフの時と違ってアイリスからは何も感じなかった。
(これはまさか……)
「どうかしたのかい?」
「どうやら、アイリスとは契約が出来ないらしい」
「えっ!?」
俺がアイリスと契約できない事を伝えると、黒兎は驚いた声を上げる。
どうやら俺がアイリスと契約できないとは思って居なかったようだ。
「あの、これからどうすれば?」
「あ~……取り合えず手を離してもいいぞ」
「はぁ……」
言われた通りに手を差出して何も起きなかったアイリスはどうすれば良いのかわかないようだったので、取り合えず手を離させる。
しかし、アイリスと契約できないとなると、さっきあんな事を言ってしまったし、やっぱり置いていくなんて事は出来ない。
(仕方ないか……)
「ゼロさん?」
「……契約が出来なかった以上、俺について来る事には反対しない。だが、さっきも言った通り安全は保障出来ないぞ」
俺がそう言うと、アイリスは一瞬だけ不安な顔をするが、すぐに決意を固めたようで俺の顔にしっかりと目線を合わせてきた。
「構いません。それに……」
「それに?」
「さ、さっきゼロさんにソウルを分けて頂いた時に私の中で何かが目覚めた感じがあったので、恐らくですが私も戦えます」
「そ、そうか……」
俺との性行為を思い出したのか、アイリスは顔を赤くしながらそう教えてくれたが、俺もその時の事を思い出してしまい、思わず目を伏せて答えてしまう。
「なるほど、どうやら彼女にソウルを与えた事で彼女に力が宿ったみたいだね」
「……ああ」
そう言えばリィフがそんな事を言ってたな。
だが、あれは契約した者とだけだったような気がするが、何か違いはあるのだろうか?
いや、あんまりこの事について深く考えないようにしよう。
「つまり、もっとえっちな事をすれば君は更に強くなれるって事だね~」
「うう……」
こいつは一々アイリスをからかわないと気がすまないのか。
とは言え、アイリス自信は自分が戦えるようになった事は自覚しているようで、ひとまず自衛の手段は持てたと言う事になる。
とは言え、極力危険な目に合わせたく無いのは間違いないが……。
「……分かった。そこまで言うなら、一緒に来い」
「はい!」
俺が動向を認めると、アイリスの表情はパッと明るくなり、笑顔で返事をする。
(いいのかい?)
(まぁ、見えない所で何かをしでかすよりかはずっといいさ)
まだ会って間もないが、アイリスは俺でも予想出来ない行動を取る事があり、俺の中では放って置けなくなってしまっている。
昔の俺だったら恐らくこんな事は考えなかっただろうが、それぐらいにアイリスから目を離せなくなっていると言う事だろう。
(それにしても……)
最初に会ってから色々あって気づかなかったが、よく見ると体つきは全然違うと言うのにアイリスの顔立ちはどことなくリィフに似ている気がした。
リィフは妖精であり、アイリスは人間なので二人の間の関係性はないはずなのだが、彼女の目はリィフと同じくエメラルドのような緑色の目をしており、パッと見では姉妹のような感じに見える。
だからと言って何故似たような顔なのかを今追及するつもりは無い。
「ゼロさん。これからよろしくお願いします!」
「ああ」
こうして俺はアイリスと言う新たな仲間と共に行動するのだった。
アイリスが契約できない理由は彼女がある存在ではないと言う事です