「いらっ…何でいるんですか」
休日。俺は遠坂さんに誘拐され小鳥遊君の家に来ていた。
「私が犬塚さんを連れて来たのに?」
遠坂さんがそう言うと小鳥遊君は物凄い勢いで頭を下げて両手を合わせた。
「ありがとうございます遠坂様」
ははぁ〜と言って手をすりすりする小鳥遊君に俺を抱き上げたまま威張る遠坂さん。なんだこれ。
「ささっ。お入り下さい」
小鳥遊君は俺たちが通るために横にずれて道を譲る。遠坂さんはくるしゅうないと言って俺を連れたまま中へと入る。
玄関で俺の靴を奪い靴を揃えて置き、遠坂さん自身もまた靴を脱ぐ。
というか降ろしてくれ。
「ご案内します」
小鳥遊君に付いていき、二階にある部屋へと入る。
部屋は清潔感があって良い匂いがする部屋だ。
そして今現在も抱き抱えられたままなので俺は遠坂さんの腕を一度優しく叩くとゆっくりと降ろしてくれた。
その間小鳥遊君はテレビをつけてゲームの準備をしていた。
「少し古いですがミィーなんてどうですか?」
確かに最新とは言わないが、それでも皆んなで楽しめるゲーム機なのは間違いないだろう。
画面にはミィーパーティーが表示されていて、俺も何度か楽しんだやつだ。
「いいでしょう。コテンパンにして差し上げます」
遠坂さんは何故かやる気満々で小鳥遊君からリモコンを貰うとクッションの上に座った。
「犬塚さんも」
俺も小鳥遊君からリモコンを受け取りクッションの上に座った。
「勝負です!」
ーーー
「それはダメです!やめ、ああー!」
「これが勝負ですよ!遠坂さん!」
「……」
ゲーム開始から一時間。かなり白熱した戦いなのは間違いないのだが、俺は終始無言で二人が楽しくプレイしているような状況だ。
楽しくプレイできているようで何よりだ。ところで地味に俺をリンチにするのやめない?
「ごめんなさい!これ勝負だから!」
遠坂さんはちらりとこちらを見た後俺を蹴落とし小鳥遊君とタイマンする形になる。
「犬塚さん仇は取りますから!」
いや、仇というほどではないと思うのだが。パーティーゲームだし蹴落としとか普通だから。
「好きな人を手にかけるのも一興ですよね!」
遠坂さん。テンションおかしくなってないか?さらりととんでもないこと言ってるんよ。そう言えば小鳥遊君の両親はいるのだろうか。
だいぶ騒いでいるが近所迷惑にならないだろうか。
「うおー!」
「いけぇー!」
よくある戦車のミニゲームで今も対決中の二人。遮蔽物を使いながら被弾しないように戦っている。
だが小鳥遊君の方が戦況はいい。遠坂さんはどちらかといえば守りの方が得意なように見える。
お互い一歩も引かずに積極的に戦っているが、被弾はない。
これは長期戦になりそうだなと思っているとスマホが揺れたのでチェックしてみる。
スマホを開き通知を確認する。
「………」
内容を簡潔に説明すると遊びに誘われた。しかも今日。
緑髪さんが作ったグループラインで突発ではあるがボウリングでも行かないかと言う話だ。
突発的ではあるものの、俺以外全員が参加を表明している。
俺は現在目の前の二人と遊んでいるので無理と伝える。
メッセージを打つとすぐさま既読が付き、全員が残念と言ってまた誘うねと緑髪さんが言ってくれる。
今もなお二人は戦車で撃ち合いをしていて、膠着状態にある。
しばらくは決着はつきそうにない。
「おりゃー!」
「くらえー!」
彼らのように俺はゲームを楽しめているだろうか。……暴言、死体撃ちが当たり前の世界ではあまり楽しめていないかもな。ランクポイントを気にしながら戦うのは何気に疲れる。
俺はゆっくりと立ち上がり部屋を後にした。
ーーー
人の家を散策するつもりはないが、トイレを探して俺は二階をウロチョロしている。とは言っても勝手に部屋を開けるのも気が引ける。
そしてさらに接戦の状態で俺が声をかけて勝敗が決まってしまうというのもあり得ない話ではないだろう。つまり小鳥遊君以外の住人に接触し、トイレの場所を聞き出さないといけないわけだ。
一階に降りてリビングらしきところを覗いてみる。ガラス越しでは誰も居なさそうだが、少し中を覗いてみるか。
扉を開けると中からはテレビの音声らしきものが流れているではないか。
これは賭けに勝ったなと思いつつ、中へと入る。
リビングも清潔で綺麗にしてあるのが見てわかる。俺は音を立てずにそろりそろりと音声がする方へ歩みを進める。
「誰かな」
背後から声がして思わず叫びそうになってしまう。いつの間に背後を取られていたのか。いや、それよりも誰だろうか。声からして男性なのは間違いないのだが、父親?それともお兄さん?それとも弟さん?
ゆっくりと振り返るとそこにはイケメンがいた。
「………」
「………」
お互い無言で見つめ合う。いや、何か言ってくれ。俺から言うのも何故か気が引けるんだ。
「君…由華の友達かい?」
がっしりと肩を掴まれて身動き出来なくなった俺は静かに頷く。本当は友達ではなくクラスメイトなのだが、ここは友達と言うことにしておいた方が無難だろう。
「由華のこと好きかい?」
突然何を言い出すのかと思えば、そんなことを言い出すではないか。これまた話が飛びすぎだろう。
「いえ」
知り合っても間もない人を好きになるのはそれこそ運命の出会いか何かくらいじゃないだろうか。
「由華は見た目は女の子っぽいけどアソコは僕より大きいよ」
突然何を言い出すのだろうか。出会って早々いきなり息子情報をぶっ込むとは。この人頭のネジ飛んでるのか?
「大丈夫。由華は優しい子だからきっと好きになれるよ」
いや、それよりも小鳥遊君の息子情報が全てを持って行ったよ。
「それとも僕にしておく?」
いや、何をだ。
「僕それなりに経験してるから任せて」
いや、だから何を。
「可愛い女の子をアンアン言わせるの好きなんだ」
爽やかフェイスで何言ってんだこいつ。
「由華はまだ童貞だけどきっと好きな女の子のためなら頑張って腰を振ってくれると思うよ」
この人残念系だ。間違いない。
「バカアニィー!!!」
突然横から小鳥遊君が来て俺とお兄さんの間に割り込んだ。
「由華。丁度いいところに来たね。今からこの子を犯してだな…」
「バカー!」
「ぶべらっ」
小鳥遊君がグーパンでお兄さんと思しき人をぶん殴る。
「犬塚さんに何言ったの!!」
「そんなに怒ることないじゃないか。ただ由華のアソコの大きさの話をしただけさ」
小鳥遊君はお兄さんをポカポカと殴り続けていて、お兄さんは腕ガードしながら笑っている。
どうやら兄弟仲は悪くないみたいだ。