「…相談…?」
…突然、声のトーンを落としてそう持ち掛けてきた秋仁。
拓也は少し警戒したが…、ここで不自然に振舞っては、全てが台無しになる。
…お尻を腫らしたまま、裸にバスタオルという情けない格好だが…、あくまで下級生を相手にするように、「…相談って、何?」と聞き返した。
「…そ、その…っ、…僕もよく、お母さんにお尻ペンペンされるんですけど…、」
「…えっ?」
…さっきの"お漏らしのお尻ペンペン"について、深く掘り下げられることを最も警戒していた拓也は…、秋仁の前置きに少し安堵する。
…どうやら拓也のことは何も関係ない、"個人的な相談"のようだ。
「…僕、お兄さんに比べたら、全然叩かれていないとは思うんですけど…、毎回、お尻が痛すぎるって言うか…。…お兄さん、いつもどうやって我慢してますか?」
「…ど、どうやって…、って言われても…。」
…"痛すぎるお尻ペンペン"だと考えるならば…、拓也に置き換えると、勇太の母親である奈津子や、綾子の母親の手による"本気で怒った時のお尻ペンペン"を想像すればよいだろう。
…しかしそんなもの…、「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きじゃくりながら謝り…、相手の気が済むまで耐え抜くしか無い。
「…お兄さん、いまお尻腫れてるけど、あんまり痛くないんでしょう…?」
「…う、うん…、まぁ…、ね…。」
…先ほど、「慣れてるからあまり痛くない」と口にしてしまった手前…、「やっぱり痛い」とは言い辛い。
…拓也は少し考えた末…、ぼんやりとはぐらかして、逃げることにした。
「…う、う〜ん…、でも、叩かれる強さにもよるからねぇ〜…。僕は、秋仁君のお母さんのこと全然知らないから…、どのくらいの強さで、何回ぐらい叩かれるのかも全然わからないし…。」
「…そ、そっかぁ…、回数はたぶん、卓哉君の倍くらいだと思うんですけど…。」
"2年生の卓哉"はつい先刻、"2階の窓からオシッコをしたお仕置き"で、母親からお尻を30発程度ぶたれていた。
…それを基準とするならば、秋仁は日頃から、"お尻ペンペン60発"を受けている事になってしまうが…?
「…えっ…、秋仁君ってまだ2年生だよね…?厳し過ぎない…?」
「…はい…。…う〜ん…、他の友達はよくわからないですけど…、卓哉君ちのお仕置きは、『結構軽めだな』っていつも思ってました…。」
「…そっ、そうなんだ…。」
…2年生の子を相手に、お尻ペンペン60発…?
…もちろん、何をやらかした時のお尻ペンペンなのかもわからないし…、叩く強さも見ていないので、何とも言えないが…、もしかしたら、メチャクチャ怖いお母さんかもしれないぞ…?
「…た、大変なんだね…、秋仁君も…。」
「…はい。…でも…、今のお兄さんみたいに、お尻が手形だらけの真っ赤っかになってた事は一度も無いから…、一体どうやって我慢してるんだろうと思って…。」
「…あ、あはは…。」
…ある意味で子供らしい、"お母さんのお尻ペンペンが痛すぎる"という悩み。
…拓也にも、その気持ちは痛いほどわかってしまうが…、さすがに、会った事すらない下級生のお母さんのお尻ペンペンについて、的確なアドバイスなど出来るはずもない。
「…う、う〜ん…、やっぱり、会った事が無いとねぇ〜…。」
「…そ、そう…ですよね…。」
ガックリと肩を落とす秋仁。
…それを見て可哀想になったのか…、拓也はせめてもの改善策として、こんな提案をする。
「…が、我慢するのが無理ならさ…、例えば、叩かれる頻度が減るように頑張ってみるとか?」
「…えっ?」
「…ほら、秋仁君が何か悪い事をして、お母さんにお尻ペンペンされるんでしょ?…だから、怒られないように気をつけてさえいれば…。」
「…あっ、あぁ…、…えっとぉ…、う〜ん…。」
「…ダメなの…?」
「…ダメって言うか…、…うぅ〜ん…、あぁ〜…、これ…、言っちゃってもいいのかなぁ〜…?」
チラチラと、"2年生の卓哉"の方を気にし始める秋仁。
…それを見て、何かを察した拓也は…、卓哉に対して、席を外すよう促した。
「…卓哉君?…秋仁君がさ、僕に"内緒話"があるみたいだから…、ちょっとだけ、違う部屋に行っててくれない?」
「…う…、うんっ!わかったっ!!」
"2年生の卓哉"は何も聞かず…、バタバタと隣の部屋に走って行く。
…本当に、純粋で良い子だ…。
「…あ、ありがと…、お兄さん…。」
「…うん、それで?」
「…うん。…お兄さんも…、ゼッタイ誰にも言わないでね…?」
「…うん、言わないよ。」
「……えっとね…、僕がお母さんにお尻ペンペンされる時って…、じつは…、ほとんど全部、お姉ちゃんの"身代わり"なんだ…。」
「…えっ…!?…そ、それって…、どういうこと…っ!?」