※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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秋仁3

「…お、お兄さん…。…わざわざ、ごめんなさい…。」

「…ううん。頼ってくれて嬉しいよ。…それで、今日なの…?」

「…はい…。」

 

次にお尻ペンペンされそうになったら僕を呼んで、と秋仁に声を掛けていた拓也は…、休み時間に呼び止められ、その日の放課後、学校帰りに秋仁の家へ寄っていた。

 

「…お母さんは?」

「…た、たぶん夕飯の買い物…。」

「…例の…、"お姉ちゃん"は…?」

「…ま、まだ帰って来てない…。」

 

…これから"お尻ペンペン"が待っている事実に緊張しているのか、秋仁は自室に居るというのに落ち着きがない。

 

「…秋仁君、大丈夫…?」

「…えっ!?…はっ、はい…。」

「…そんなに緊張しなくても良いよ。僕がきっと、もうお尻ペンペンされないようにしてあげるから…。」

「……えっ?」

 

それを聞いて、秋仁の顔色が一変する。

 

「…ちょっと待ってよお兄さん…、何の話…っ!?」

「…え、だから僕が秋仁君のお母さんと話して、"身代わりのお尻ペンペン"をされないように…。」

「…ちがう…、ちがう、ちがうっ!?…僕、そんなこと頼んでないっ!!!」

「…あ…、秋仁君っ!?」

 

今まで大人しかった秋仁が、急に声を荒げて強く否定する。

 

「…僕、お尻ペンペンを止めて欲しいだなんて全然言ってない!!…痛みを我慢する方法を聞いただけなのにぃ…っ!!」

「…で、でも秋仁君さ…、」

「…絶対にダメだよ、お兄さん…っ!!…もし言ったら、僕もお母さん達に、"お漏らし"のこと全部言うからねっ!?」

「…う…!?」

「…卓哉君ちで、お兄さんが"お漏らし"をして…、卓哉君のお母さんにお尻ペンペンされたこと…、みんなに言うからねっ!?それでも良いのっ!!?」

「…まっ…、待って秋仁君っ!?それだけはっ!?」

 

…なんと拓也は、助けに来たはずの秋仁本人から…、弱みを握られ、脅されてしまう。

 

(…うぅ…っ、…な、何でなのぉ…!?…でも秋仁君は、2年生の小っちゃい子だし…、あんまり僕が刺激したら、本当に喋っちゃうかも…!!?)

 

「…もう黙っててよ…、僕がお尻ペンペンされた後で、あんまり痛くない方法を教えてくれればいいから…。」

「…わ、わかった…。」

 

…一体、何がどうなっているんだ…?

…秋仁は、母親のお尻ペンペンそのものを止められるのは嫌らしい。

…しかし、痛くて我慢出来ないというのも本音のようで…。

 

 

 

「…秋仁君…、もしかしてさ…、お姉ちゃんに仕返しされるのが怖いの…?」

「…えっ?」

「…僕がお母さんのお尻ペンペンを止めたら、秋仁君のお姉ちゃんの、今までの悪事がバレるかもしれないし…、その時に、仕返しされるのが怖くて────、」

「…ちがうよ、お兄さん…。全然ちがう。…お兄さんは、僕やお姉ちゃんのこと何にも知らないから、そんなことが言えるんだ…。」

「…あ、秋仁君…。」

 

秋仁は、寂しそうに俯き、そう呟いた。

…姉の仕返しを恐れて、強がりを言っているのかと思った拓也だが…、どうやらそうではないらしい。

…では一体、秋仁はなぜ"自分がお尻ペンペンを受ける"ことにこだわっているのか…?

 

(…う〜ん…、やっぱりこの子、"お姉ちゃん"からそうしなさいって命令されてるのかなぁ…?…でも、嫌ってる感じは全然しないんだよね…。)

 

…秋仁の言動からも、"お姉ちゃん"が大好きな事は伝わる。

…もしもその姉が…、秋仁の純粋な気持ちを利用して、自分が叱られまいと罰を押し付けているのなら…、拓也にもそれなりの"覚悟"がある。

 

(…どんなお姉ちゃんなのか知らないけど…、こんな良い子の気持ちを踏みにじっているのなら…、僕がハッキリ言ってあげないと…!)

 

鼻息を荒くして、秋仁の母と姉の帰りを待つ拓也。

…いつでも来い、と険しい顔で室内を見回していると…。

 

(…ん…?)

 

不意に、ある物が拓也の目にとまった。

…ずいぶん古そうな、ボロボロのぬいぐるみだ。

…元はウサギだったようだが…、耳の部分が、付け根から取れてしまっている。

 

(…ウサギの…、人形?…耳が取れて…?)

 

拓也はなぜか、それが無性に気になってしまう。

…何か、とんでもない物を見つけてしまったような胸騒ぎが…。

 

「…あ、秋仁君…、…この人形って…?」

「…あっ…、お兄さん、それ…お姉ちゃんのやつだから、絶対に触らないでよ?」

「…あ…、ご、ごめん…。」

 

…しかし、どうしても気になる拓也は、秋仁に直接尋ねてみた。

 

「…ねぇ秋仁君…、この人形ってさ…、何で耳が無いの?」

「…あっ…、え〜っと…、それはね…、」

 

…どうか、自分の思い過ごしであって欲しいと拓也は願う。

…だって、そんな偶然、あるわけが────、

 

「…僕が昔…、お姉ちゃんとケンカしててね?…そのウサギをガブッて噛んだら、耳が千切れちゃったんだ…。」

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