※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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秋仁6

「…ふふっ…、拓也君…、危なかったね…?」

「…えっ…!?…う、うん…。」

「…でもどうして…、家の秋仁を庇ってくれたの?」

「…う…。」

 

…今ごろ秋仁は、きっと母親から"詰問"されている最中だ。

どうせ後で全部バレるのなら…、遥香にだけは、先に真実を話しておいた方が良いかもしれない。

 

「…じ、実は…。」

「うん。」

「…秋仁君が、お母さんのお尻ペンペンが痛くて我慢出来ないって、僕に相談をしてくれて…。」

「…えっ?」

 

…何で…、拓也君に?

…しまった。

拓也は直感的に…、"自分の学校でのイメージとかけ離れた説明"をしている事を察する。

 

「…拓也君って…、秋仁とお友達だったの?」

「…あ、いや…、それはね…。」

「…何で私じゃなくって…、拓也君に相談?…ねぇ拓也君、何か心当たりはある…?」

「…な、無いよ…。」

「…無いはず、無いよね…?だって拓也君、私に弟が居ることも、つい最近まで知らなかったし──、」

「…は…、遥香ちゃん…っ!?」

「…あ…っ、ご、ごめんなさい拓也君…、つい…。」

 

(…な、何だ今のは…?遥香ちゃんの表情が一瞬…、氷のように冷たくなったような…!?)

 

…拓也は、大人しいはずの遥香が見せた"一瞬の変化"に驚き…、見間違いではないのかと、自身の中で繰り返し問答する。

…しかし、あれは紛れもなく"怒り"…、いや…、"敵意"とさえ呼べるかもしれない、強過ぎる感情の表れだった。

 

(…あ…、あの遥香ちゃんがこんなにムキになってる所なんて、初めて見た…。)

 

遥香にとって…、やはり弟の秋仁は"特別"なのだろうか?

…しかし…、だとすると…、秋仁が言っていた"身代わり"の話がどうしても引っかかる。

…これほど弟のことを気にかけている"優しいお姉ちゃん"が…、自分が叱られたくないからといって、弟を"身代わり"にして…、母親から"お尻ペンペン"されるよう強要している…?

…そんな話、とても信じられない。

 

(…や、やっぱり何かの間違いだよね…?…カーペットの染みの話だって、どこまで本当なのかわからないし…。)

 

…そう考えながら、つい拓也は床のカーペットに目をやる。

…本当は、部屋に入った時からずっと気になっていた。

…テーブルの近くにある、こすって禿げたような跡が…、おそらく染みのあった場所だろう。

…拓也の視線の先に気付いたのか…、遥香が口を開く。

 

「…あぁ、これ…?…ふふっ…、前に、ジュースをこぼしちゃってね…?」

「…あっ…、そ、そうなんだ…?」

「…うん。…すぐ正直に言えば良かったんだけど…、拭いたり水吸ったりしてたら、そのまま染みになっちゃって…。」

 

…拓也は、遥香の"説明"にどこか違和感を覚えた。

 

「…もう、お母さんったらカンカンで…。…"お尻出しなさ〜い!!"って、鬼みたいな顔してたわ。」

「…は、はは…っ。」

 

…それって、"どっちが"、叩かれたの…?

…質問は喉まで出かかっているのに、聞くに聞けない。

…遥香はわざと主語を伏せているのか…、それとも、偶然か…?

疑心暗鬼に陥る拓也に、今度は遥香の方から質問が飛ぶ。

 

「…ねぇ拓也君…、2人きりの間に…、もう1つだけ聞いていい?」

「…えっ…、なっ、何…?」

「…"弟のことが大好きなお姉ちゃん"って…、やっぱり、気持ち悪いと思う…?」

「…えっ?」

 

…遥香が、どこか悲し気な目で拓也を見る。

 

「…そっ、そんな事は…、ないと思うけど…。」

「…ほんと?…拓也君、私のこと…気持ち悪くない?」

「…う、うん…。」

 

…何だ?遥香ちゃんは一体、何が言いたいんだ…?

本人の口ぶりからすれば、弟の秋仁が大好きでたまらないようだが…、もしそうならば、秋仁の言っていた"身代わり"の件は一体…?

…遥香がカーペットに染みを作って、なぜか秋仁が母親にお尻を叩かれたという、あの話は…?

 

「…あぁ〜、良かったぁ〜、…拓也君に引かれちゃったらどうしようかと思って、ずっと不安だったの…。」

「…ひ、引かないよ…。弟と仲が良いって、羨ましいぐらいだもん…。」

「…ほんと?…嬉しいなぁ…、拓也君がそう言ってくれて…。」

 

…どうやら、遥香が"弟大好き"なのは嘘ではないようだ。

…話し方、表情…、秋仁について語っている時の遥香は、学校の教室では見たことも無いぐらい生き生きとしている。

…やはり、"身代わり"なんて何かの間違いだろう。

そう安心した拓也だったが…。

 

「…たっ、拓也君になら…、全部言ってもいいかな…?」

「…えっ、何、何…?」

「…秋仁ってね、昔から本当に可愛くってぇ…、寝顔も、拗ねてる所も可愛いんだけど…、やっぱり一番はぁ…、」

 

…続く遥香の言葉が、拓也を凍り付かせる。

 

「…家のお母さんにお尻ペンペンされて、えんえん泣いてる秋仁が…、世界一可愛いんだぁ〜。」

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