拓也は、小学校を卒業するまでずっと奈津子にお尻ペンペンされるという事実に、不安と安心感が同時に押し寄せていた。
「…お、おばさん…?」
「…んっ?」
「…ううん、何でもない。」
「…そう。」
拓也は先ほど叩かれ終わったばかりの尻にヒリヒリ痛みを感じながら、この時間がずっと続けば良いのに…、と奈津子の膝の上で腹這いに寝転び、痛みがひくまで、時が過ぎるのをただ待っていた。
「…ね、拓っくん。」
「…え?」
「…おばさんの膝の上、そんなに居心地良い?」
「…うん…。」
拓也は泣き疲れたせいなのか、うっかり気を抜くと、ウトウト眠ってしまいそうになっていた。
大好きな奈津子の匂いで幸せな気持ちになっている拓也は…、いま自分が、尻を真っ赤に腫らした状態で奈津子の膝の上に居ることをつい忘れそうになる。
「…ふふっ…、拓っくん?そのまま寝ちゃったら…、さっきまでおばさんがお尻ペンペンしてたこと…、勇太にもバレちゃうわよ?」
「…あっ!?」
拓也は慌てて起き上がり、ズボンとパンツを引き上げた。
「あっはっは…。そんなに慌てなくても…。…でも嬉しいわ?勇太だったら、おばさんの膝の上で寝そうになるなんて絶対に無いから…。」
「…ど、どうして?」
「…うふふ、勇太にとってここは昔から、"お尻ペンペンされる場所"だからよ。…拓っくんは、それでも居てくれるのね?」
「…ぼ、僕…。」
痛いけど、おばさんにお尻ペンペンされるのは嫌いじゃない…。
そんなことを、口が裂けても言うわけにはいかないが…、勇太の母親である奈津子の膝の上が心地良いのは本心だった。
「…お尻ペンペンされるのは、僕が悪いことをしたからだし…、…しょうがないと思ってる…。痛いのは嫌だけど…。」
「…拓っくん…。」
「…わふっ!?」
思わず抱きつく奈津子に、拓也はまた赤面する。
…だが、振り解こうとはしなかった。
「良い子。本当に良い子…。」
「…お、おばさん…、ちょっと苦しい…。」
「…わっ、ごめんね!?」
息の出来ない拓也は、奈津子の胸から顔を外し、ようやく自由になる。
「…拓っくん。…拓っくんは、おばさんの子供みたいなものだから…、膝の上が好きなら、いつでも甘えて良いのよ?」
「…えっ?…で、でも…。」
「…ただし、悪いことをした時は、ここでしっかりお尻ペンペンするからね?うふふっ…。」
奈津子はそう言って、拓也を膝の上へ促す。
今度はお仕置きではなく、ただ甘えるだけというのも…、よく考えたら友達の母親を相手にそれをするのはかなりハードルが高い。
「…お、おばさん…、僕、やっぱり…。」
「…ん〜、拓っくん〜?…女の人に恥をかかせるのは、良くないと思うわよ〜?」
「…は、恥って…。」
「…それとも、まだもう少しお尻ペンペンする?」
「…えっ!?」
奈津子はいたずらっぽくニヤニヤ笑っているが…、ここで甘えるのを拒否したら、本当にお尻ペンペンが始まりかねない。
「…どうするの〜?拓っくん。おばさんは、どっちでも良いけど…。」
「…わ、わかったよ…、もう、おばさんってば…。」
拓也はさすがにこれ以上、尻を叩かれるのは御免だと、恥ずかしさを我慢しながら奈津子に抱きつく。
「…おばさんごめんなさい。…もう今日は、お尻ペンペンしないで…。」
「…あらあら拓っくん、甘えん坊さんねぇ〜。…ふふっ、わかったわ…。今日はもう、お尻ペンペンしないわよ〜…。」
そう言って奈津子は、ズボン越しに拓也のお尻を労るように優しく撫でる。
「…ふわっ!?」
「…うふふ、気持ち良いでしょう?お尻が腫れている時は、少しの間こうしていたら楽になるからね…。」
(…うっ、…き…、気持ち良い…、…でも…、くすぐったい…。)
拓也は初めての感覚に戸惑っていたが、やがて心地良さが勝ってくると素直に身を任せた。
(…ふふっ…、拓っくん可愛い…。そうよね…、今日は一杯お尻叩いたもんね…。)
奈津子は昔、息子の勇太にもよくお仕置きの後、同じように尻を撫でてやっていた時のことを思い出していた。
最近は、つい息子だからと勇太に厳しくしてしまうが…、たまにはこうして甘やかしてあげることも必要ね…と、拓也の尻叩きを介して考えるのだった。
「…すぅ…、…すぅ…。」
「…あれ…?…拓っくん、…本当に寝ちゃったの?」
拓也は安心しきったのか、奈津子の膝の上で寝息をたて始める。
「…もう、本当に可愛い子…。…さっきまであんなにえんえん泣いていたのにね…。」
呟くと、奈津子は拓也を起こさないようゆっくり体勢を整えながら、ソファーへ優しく寝かせた。
毛布をかけてやり、掛け時計に目をやる。
「…甘やかしたいけど、そういう訳にもいかなさそうね…。」
間もなく、勇太の帰宅する時間帯だった。