「…な〜んて、そんなわけ……、」
「お、おばさんっ…!」
「…ん?」
「…ぼ、僕のお尻も…、叩いて…!?」
「…えっ…!?…たっ…、拓っくん…!?」
どうしたの、拓也が突然口にした願いに奈津子は動揺したが、悟らせて不安にさせまいと平静を装う。
「…居残りしてる"かも"、って言ったの…、ウソなんだ。」
「えっ…?」
「本当は僕たち、2人とも…、先生に居残りさせられてて…。たまたま僕が早く終わって…、それで…。」
「…うん。」
「……ごめんなさい…。」
「…何に、ごめんなさい?」
「…えっ?」
「ウソついたこと?…告げ口したこと?…それとも…?」
「…え、えっと…。」
まるで息子の勇太を叱責する時のような、奈津子の言い回し。
拓也は驚きを隠せなかった。
今までただの一度だって、奈津子からこんな風に問い詰められたことなどない。
「…ごめんね拓っくん、おばさん怒ってるんじゃないの。…ただ、どういう意味のごめんなさいなのかは知っておきたいかなって。」
「……。」
まるで幼児でも諭すように、奈津子は穏やかな口調で拓也の本心を引き出す。
「…あ、あの……!」
「…うん。」
「…全部…。…勇太君にも、おばさんにも…、それから…。」
「…うん…。…うん…、そうだね……。」
奈津子は拓也の吐き出す心の内を一度も否定せず、拓也が自ら過ちを告白し終えるのを待つ。
そして…、
「じゃあ拓っくんにも、お尻ペンペン必要?自分でそう思う?」
「…思う…。」
「何回、必要?」
「…勇太君が100回なら…、僕はもっと…。」
「…う〜ん…。…そうね、じゃあ…。」
奈津子は少し考えたあと、
「…拓っくん、お尻出してみて?」
「…えっ、い、今…!?」
「今じゃなきゃいつなの。ほらっ、脱いだ脱いだ。」
自ら望んだ事とはいえ、友達の母親からお尻ペンペンされる状況というのは、やはり恥ずかしさが勝ってしまうのか、なかなか拓也は素直に応じられない。
「…拓っくん〜?」
「…だ、だって…、お尻を出す…、なんて…。」
「出さなきゃ、ペンペンしたって痛くないでしょう?それに…、さっきも言ったけど、お尻がひりひり赤くなってきたかどうかも見なきゃいけないし。」
「…だってぇ〜…。」
「……拓っくん〜…?」
素直にしないと、おばさん本当に怒るわよ〜?
奈津子に叱られるのは初めてだった。
「お、おばさん…、ごめんなさい…。」
「"ごめんなさい"は後。…それより、お尻は出せるの?出せないの?」
「…うぅ…っ。」
拓也は顔を真っ赤にしながら、ズボンと下着に指をかけ、くるりと後ろに向き直ってから、奈津子の目の前へ尻肌を露出した。
友達の母親に裸のお尻を見られる、というのはもちろん恥ずかしいが…、性器よりマシだ。
「は〜い、よくできましたぁ…。それじゃ拓っくん、少しペンペンしてあげるから、おばさんの膝へおいで〜?」
(……えっ、少し…??)
100回…じゃないの?
拓也は疑問を覚えたが、正直今はそれどころではない。
友達の家で、友達の母親の手の平で、お仕置きとして、今から裸のお尻をぶたれてしまうのだ。
そんな状況で、頭なんて回るはずがない。
「…拓っくんは、こういうの初めて?」
「…えっ?」
「悪いコトして…、お尻ペンペンされるのって。」
「…う、うん…。」
「…そっか。」
じゃあ…、我慢できないかもね?
奈津子はそう言うと、右手を振り上げ、拓也のお尻の丸みを鷲掴むように湾曲させたかと思えば、尻たぶ目がけて勢いよく叩きつける。
「……痛っ……、てぇぇ〜っ!?」
「…はいっ、もう1発〜。」
「…〜〜〜っ!?」
ビシャァァン、バチィィン…凄まじい音がしたあと、一瞬遅れて痛みがやってくる。
叩かれた箇所が、灼けるように熱い。
「…いっ、痛いぃ〜っ!?」
「うんうん…、そうね〜?…でも、もう何発かいこうね〜?」
「〜〜〜っ!?」
たった数発。
それは、10回にも満たない"お仕置き"だったのだが…、拓也の尻たぶには、叩かれた回数と同じ数だけ、奈津子の手の平マークがくっきりと残った。
「…拓っくん、聞いて?」
「…はっ、…はぁっ…、…はぁっ…!!」
「…おばさんがお尻ペンペンしたのってね、勇太と、親戚の子達と…、それから…、拓っくんが初めてなの。」
「…はっ…、…はっ…!」
「…おばさんのお尻ペンペン、すっごく痛かったでしょう?…親戚の子ならともかく、勇太のお友達にするのって、やっぱり少し遠慮しちゃうのよね…。…でも、拓っくんは特別。…おばさん、自分の子供みたいに思ってるから…。」
「…はぁっ、…お…、おば、さん……。」
「でも…、それはおばさんの一方的な気持ち。…お尻、痛かったでしょう?おばさんのこと、嫌いになった?」
「…き、嫌いに、なんて…。」
なるわけないよ…、と。
拓也は、はぁはぁ肩で息をしながら、必死に痛みをこらえつつ応じる。
そんな拓也を見て、奈津子は…。
「…嬉しい。…おばさん本当はね?…頑張って、心を鬼にしてお仕置きをしているのよ。」
「…。」
「…だって、大好きな拓っくんを叩くのはやっぱり辛いもの。…でもね、拓っくんがいけないことをした時に、何もしないで黙って見ているだけなのもおばさん辛いの。」
奈津子は膝の上にお尻を出した拓也を寝かせたまま、まるで我が子に言い聞かせるように話を続ける。
「例えば、いけないことをした時…、あぁ…今すぐお尻をぶってあげれば良い子に戻せるのになぁ…、なんて思っても、勇太以外だとなかなかね…。…親戚の子にする時だって、親御さんの許可はちゃんと取ってあるし…。」
「えっ…、きょ、許可…?」
「…うふふ、そのままの意味よ。…お母さんにお電話してね、…"3人とも、これから家でお尻ペンペンしますけど、いいですか?"って聞いちゃうの。」
「…ひぇぇ〜っ…。」
親戚の子は3人居るのか。
さぞかし腕白な3兄弟だろうと想像したが、よく考えたら、今の拓也も状況的にはさほど変わりない。
おばさん相手にウソをついて、お尻をぶたれているのだから。
「本当は、拓っくんのお母さんにもちゃんと了解を得てからお尻をぶつべきだったんだろうけど…。」
「……。」
拓っくん、そんなの嫌でしょう?
奈津子の質問に、拓也は「絶対に嫌だ…」と即答した。
「だよねぇ…。おばさんも、そこまでする必要はないかなぁと思って…。…ただ、本当にあのコたちと同じようにお仕置きをするなら、拓っくんにも、それ相応の覚悟はしてもらわなきゃいけないかな…。」
「…覚悟…?」
「…そう。…さっき言った、"お尻が真っ赤な風船みたいに腫れちゃう"とか、"お尻が痛くて座れない"…、とか…。あれって、ぜんぶ本当のことよ?…勇太なんて、本当にしょっちゅうだし…。…親戚の子たちだって、そうなったことは1度や2度じゃないから…。」
(…ゴクッ…。)
「…だから、それを踏まえて…、ねっ?」
奈津子は「…拓っくんにも、本当にしていいの?」、「…よく考えてね?」と、何度も拓也を説得しようと試みる。
本当は、可愛い拓っくんをこのまま特別扱いして甘やかし続けたい。
それは奈津子の本心でもあった。