「…えっ!?」
突然そんなことを聞かれて、困惑する拓也。
「…さっき、勇太に沢山ペンペンしたからかしら…?手がほんの少し痺れちゃっててね、力加減がいつもより難しいの。」
「はぁ…。」
「あんまり痛くないなら、もっと痛くしてあげるけど…、どうなの?…正直に言って頂戴?」
…これは…、どっちだ…?
痛いと答えるのが正解か、痛くないと答える方がいいのか…?
今でも、数を叩かれれば十分過ぎるほど痛いのは間違いない。
…ただ、それがおばさんの"いつも"の威力なのか…と聞かれれば、やや自信が無くなってくる。
…仮に、もしも…、十分痛いからこれ以上強くしないで、と答えて、それが"ウソ"だと見なされたら…。
(…ぼ、僕まで300叩き…!?)
それだけは、絶対に嫌だ…。
そう判断した拓也は、長く続けば泣いてしまいそうな威力のお尻ペンペンを、もっと強めて欲しいと自ら頼まざるを得なくなってしまった。
「…い、言われてみたら…、いつもよりちょっとだけ…、痛くない、かも…?」
「…うふふっ…、そう。拓っくんは正直者ね?…おばさん、そういうところが好きよ?」
…それじゃあ、もう少しだけ痛くしてあげるわね?
奈津子はそう言って、拓也を膝に抱え直し、再び腕を振りあげる。
…バッチィィィィ〜ンッ!!!
(…ひぃっ!!?)
…パッシィィィィ〜ンッ!!!…パァァァンッ!!!…パァァァァ〜ンッ!!!
(…す、"少しだけ"って言ったのにぃ…!?)
…バッチィィィ〜ンッ!!!…バチィィィッ!!!…バチィィィィ〜ンッ!!!
(…全然、少しじゃないよォォ〜っ!?)
拓也は奈津子に尻を叩かれながら、時折身をよじり、痛みに耐えようとする。
奈津子はそれを見て…、ようやく拓也が痛がり始めたと判断したのか、その強さを適正と定め、連絡帳の尻叩きを続ける。
「…拓っくん、12月11日っ!…お友達の教科書に落書きして、先生に叱られたのね?」
「…う…?」
拓也は1年生の時のことなどほとんど覚えていなかったが…、確かに連絡帳には、先生の字でそう書いてある。
「…お友達の持ってる物に落書きなんて…、悪い子ね?…そんな拓っくんには、おばさんが沢山お尻ペンペンしてあげますからね。」
…ピッシャァァァァン!!!
「…はうっ!!?」
「…そのお友達が許してくれるまで、お尻ペンペンです!」
許してくれるまで…と言っても、1年生の時の話である。
おそらくは被害者本人も今さら記憶に無いであろう悪事を理由に、拓也は奈津子から強烈なお尻ペンペンを何発も受けているのだった。
…バッチィィィィンッ!!!…パァァァ〜ン!!!…バシィィィィッ!!!
「…あああああ〜っ!!?…い…、痛いぃ〜っ!?」
「…そうね〜、痛いね〜?拓っくん。…でも、落書きされたお友達の心も痛かったのよ〜?」
…バッチィィィィ〜ンッ!!!
「…ひぃぃぃぃっ!!?…ご、ごめ…!?」
…ピシャァァァァ〜ンッ!!!
「…あああっ!!?」
「…ん〜、"ごめんなさい"はまだ少し早いかな〜?…だって拓っくん、まだあんまり反省してないみたいだし…。」
「…そっ、そんな…!?…反省…、してる…。」
「…ん〜ん、おばさん…、そういうのは何となくわかるのよ?…やっぱりもう少し沢山叩かなきゃ駄目かな〜?」
…バチィィィィ〜ンッ!!!…パァァァ〜ン!!!…ピシャァァァ〜ン………、
「…ひぐっ…、…ぐすっ…、うわぁぁぁ〜ん!?」
拓也が泣き始めても、奈津子は尻を叩く手を休めなかった。
それは息子の勇太と同じように、お仕置きの最中は甘やかさず、きちんと心から反省させるという母親としての方針であり、ようやく奈津子も拓也のことを"2人目の息子"として自然に扱うことが出来たのかもしれない。
「…さぁ拓っくん、どうする…?もう止めて欲しい?…それとも、ちゃんと反省出来るまで、もっと沢山叩いて欲しい…?」
「…ひっぐ…、ぐずっ…、もっど…、たぐざん…、ただいで…。」
「…そうね?…拓っくんは正直だもんね?…おばさんとっても嬉しいわ?」
…ピッシャァァァァ〜ンッ!!!
「…ぎゃああああ〜っ!!?」
「…うふふ…、そうよ…、すっごく痛いだろうけど、痛かったぶんだけ、良い子になれるからね…。」
忘れ物をした時とは違い、30回〜40回では到底終わらない奈津子のお尻ペンペンは、気付けば12月11日ぶんだけで100回を超えていた。
「…はぁっ…、…はぁっ…、…ぐすっ、…ずずっ…!」
「…こんなところかしら…?…少し、強く叩き過ぎちゃったかな…?」
いつもの"連絡帳"の時と比べ、かなり色濃く赤みがかった拓也の尻。
それが奈津子のある"試み"の始まりだとは、拓也はまだ全く気づいていなかった。