(…こっ、こんな…、こんなの……!?)
…バシィィィィンッ!!!!…パァァァァン!!!!…バッチィィィィ〜ン!!!!
「…じゅ〜し、…じゅ〜ご、…じゅ〜ろ〜く…。」
「…もっ…、もぅ…っ、…もぅ…っ!」
「…"もう"何?…もう許してほしいって?…お母さんがそんなことで許すと思う?」
「…だ、だっで…、もぅ…!!」
「…拓也。…お母さんは今日、この場所に来て…、最初に拓也のお尻を叩いた時にね、これからは心を鬼にするって決めたの。…中途半端には絶対しないわ。お尻を30回叩くって言ったら、何があっても30回叩きます。良いわね?」
「…う…っ、…うぇぇぇぇ〜ん…。」
「…泣いたって駄目よ。」
…バシィィィィィッ!!!!…パァァァァ〜ン!!!!…バシィィィィッ!!!!…バシィィィィィ〜ンッ!!!!
「…じゅ〜なな、…じゅ〜はち、…じゅ〜きゅう、に〜じゅっ…。…ほら拓也君、あともうたった10回だよ〜?」
一見、優しそうな奈津子の声が、拓也を無理やり現実へと引き戻す。
…まだ、あと10回も残っている。
本当はもう終わりにして欲しいのに、それを口にすることさえ許されない拓也は、泣きながら謝罪の言葉を叫び続けるしかなかった。
「…ひっぐ…、…おがあざん…、ごべんなざいぃ〜…っ!!」
「…はいはい。…少しは反省したのかしら?」
…バッシィィィィ〜ン!!!!…バシィィィィッ!!!!…パァァァンッ!!!!…パァァァァ〜ンッ!!!!
「…あいぃっ…!!?…しでるぅ!…しでるよぉぉ〜!?」
「…にじゅいち、…にじゅに、…にじゅさん、…にじゅし…、…ふふっ、拓也君?…もうお尻、痛くてたまらないんじゃない…?」
「…いだい…、いだいよぉ…!!」
「そうよね、今は痛いだろうけど…。それは全部、拓也君のお母さんの"愛"だからね?…沢山痛くして貰ったぶんだけ、どんどん良い子になれるの。だから拓也君も、頑張ってね…?」
「…うぅ〜…っ。」
拓也を甘やかすような口調にも関わらず、"絶対に途中では許して貰えない"ことをさらに強調する奈津子。
拓也は自分が今、どんな感情でいるのかさえわからないほど…、すっかり心を掻き乱されていた。
「…うっ、ううう〜っ…!!」
「…ほら拓也、残り6回よ?頑張りなさい。」
…ピシャァァァァンッ!!!!…パァァァンッ!!!!…パァァァァ〜ン!!!!
「…あああああ〜っ!!?」
「…にじゅご〜、…にじゅろく、…にじゅなな…、ほら拓也君、もう少しだよ?」
「…ひっ…、…ひっ…、…ひぃぃ〜…っ…!!」
…バッシィィィィィ〜ンッ!!!!…パァァァァァ〜ンッ!!!!…バシィィィィィ〜ッ!!!!
「…ああああああ〜っ!!?」
「…にじゅはち、…にじゅきゅう、…さ〜んじゅっ、…ほら拓也君…、やっと終わったよ?…お母さんに、"ごめんなさい"は出来る?」
「…はっ、…はっ、…はっ…、ご…、ごべんな…ざい…、おがあざぁん…、もう…、…じまぜぇん……。」
「…はぁっ、…はぁっ…、…はい、わかりました。…これからはお母さんの言うことを、ちゃんと聞くんですよ…?」
「…はぁい…っ!」
「…それから、勇太君のお母さんの言うこともね。」
「…はぁいっ!…ずずっ…、ひっく…。」
「…お尻ペンペンって本当に凄いんですね…。まさか、ここまで素直になるなんて…。」
「…ふふっ…、それは拓也君が元々良い子なのと…、お母さんの愛情がはっきり伝わったからですわ。…やり方さえ間違えなければ、お尻くらいは叩くことも絶対必要でしょうし…。」
「…そうなんですよね…。…子供を育てるって、なかなか理想通りにはいきませんものね…。」
拓也の母親の気持ちも汲んで、2人が落ち着くまで話を聞いてやる奈津子。
いつもと違い、自分の母親に尻を叩かれたばかりの拓也は…、今後は、悪さをして家に帰れば、母親である美由紀のお尻ペンペンが待っているのだと、本気で憂鬱になっていた。
(…あぁ〜っ…、どうしよう…。よりによって、家のお母さんからお尻を叩かれるなんて…、本当に嫌だよ…。)
元々、拓也は勇太の母親である奈津子に叱られてみたかったというだけで…、お尻ペンペンそのものが好きなわけではない。
むしろ、昔からされているならともかく…、今の歳になって、自分の母親が急にお尻ペンペンするようになったというのは…、恥ずかしさで死にたいほどだった。
「…ね、ねぇ…、お母さん?…本当に…、これから家でもお尻ペンペンするの…?」
「…当たり前でしょう?そう言ってるじゃないの。」
「…他の罰じゃ、ダメ…?」
「…駄目です。勇太君のお母さんにも失礼でしょう?…こんなにご丁寧に教えて下さってるのに…。」
「…まぁまぁ、お母さん。拓也君の気持ちもわかりますよ。」
「…で、ですけど…。」
「…うふふ…、拓也君、恥ずかしいもんね?…お母さんに、お尻ペンペンされるのって…。」
「…う、うん…。」
「…でもね?悪いことさえしなかったら…、拓也君のお母さんもお尻ペンペンしないのよ?…拓也君のことが本当の本当に大好きで…、良い子になって欲しいからお尻ペンペンするの。…それは、わかる?」
「…うん…。」
「…そうよね。…もし拓也君がこの家で悪いことをしたら、おばさんだって沢山お尻ペンペンするからね?…お母さんの許可も出たことだし…、とっても痛いわよ〜?」
「…あ、はは…。」
拓也の母親の前では、一貫して"拓っくん"ではなく"拓也君"と呼び続ける奈津子。
元々、拓也はこの勇太の家によく遊びに来ていたのだが…、母親同士には深い繋がりはなく、顔と連絡先くらいは知っている程度だった。
それが今回のことで…、お互いの子供もお尻ペンペンで叱りましょう、という公約が結ばれてしまった。
今後は親公認で、友達の母親にお尻ペンペンされる…という恥ずかしすぎる未来を予見し、拓也と勇太は赤面して黙り込んでしまう。
「…あらあら。…勇太ったら、拓也君のお母さんにお尻ペンペンされるのがそんなに恥ずかしい?」
「…うぅ…っ。」
「…拓也も。お母さんが家でお尻ペンペンするだけじゃなくて、勇太君のお母さんにもお尻ペンペンして下さい…って、今お願いしたからね?」
「…わ、わかってる…。」
あらためてその事実を声に出して言われると、尚更どうして良いかわからない2人。
「…これで安心ですわ。…正直、誰か協力者がいないと、悪いことをした時すぐに叱れないんじゃないかって…。」
「…わかります。…これからは、手の空いているほうがお尻ペンペンを"代行"する…、なんて手段も取れますし。」
「…えぇ。…もし足りなかったら、お家に帰った後でもう一度お尻ペンペンすれば良いわけですし…。…2人共、ちゃんと聞こえてる?」
「…は…、はいっ!!」
「…ふふっ…、すっかり良い子になれたみたいね。まるで兄弟だわ。」
「…本当に…、私たち母親も、もっとしっかりしないとですね。」
今まで、母親の美由紀から家でお尻ペンペンなんてされたこともなかった拓也。
一方で、母親の奈津子からその美由紀に、今度からお尻を叩いてと依頼されてしまった勇太。
細かな事情は少し違えど、美由紀のお尻ペンペンが2人の憂鬱の種となってしまった。