「とりあえず…、今日は一旦お家に帰って、ゆっくり考えてみるのはどうかな…?…今日のは"お試しペンペン"だったけど、もし本当にお仕置きになったら、拓っくん、痛くて泣いちゃうかもよ?」
「……。」
「…それでも…、もし拓っくんが、おばさんにお仕置きされてもいいと思うなら…、その時はおばさん、もう止めないよ?嫌だ嫌だって泣いても、お尻がパンパンに腫れるまで沢山沢山ぶってあげる。」
その時は、覚悟してね?
奈津子は表情こそ笑っているが、今は本音で喋っている。
その意思は、拓也にも伝わったようで…、
「…うん。…おばさん、本当にごめんなさい…。」
「…ううん…。…いいのよ…、拓っくん。…もう、おばさんにウソついたりしないよね…。」
奈津子は優しく拓也のズボンを上げてやると、ぎゅっと抱きしめて背中をぽんぽんと叩く。
「…拓っくん。最後に確認ね?お尻ペンペンは、今日で終わりにするか、ずっと続けるか。2つに1つよ。一度本当にお仕置きしたら、おばさんは責任持って、勇太と同じ歳までずぅ〜っと続けるからね?」
「…ず、ずっと…?」
「…そ。ずぅ〜っと。お尻ペンペンが必要な時は、本当に毎回するからね?…もしかしたら遊びに来るたびに、おばさんにお尻ペンペンされちゃうかもしれないよ?」
それでもいいの?
奈津子は拓也を思いとどまらせるつもりで言ったのだが…、逆効果だった。
(…遊びに来るたびにおばさんからのお尻ペンペン…!?…それって…、)
最っ高じゃん…!!
…拓也はまだ、奈津子のお尻ペンペンを少し甘く見ていた。
今回少ししか叩かれなかったおかげで、お尻に手形が残るほどの威力だったこともすでに忘れている。
「…とにかく拓っくん…、…あらっ…?」
「…?」
「…ちょうど良かった。…拓っくん、まだ時間は大丈夫…?」
「…えっ?…あっ、はい…。」
「…それなら良かった。…ふふっ。じゃあ、見てもらった方が早いかな?」
「…え?…見る?」
ガチャ…、ドアが開くと、そこに居たのは友達の勇太。
「ただいま〜…って、え…?何で、拓也君が…?」
「……。」
「……おかえり、勇太…。」
「……た、ただいま…?」
勇太はまだ何が起こったのかは理解出来ていないが、その場の妙な空気には気付いたらしい。
「…勇太。」
「…な…、なに…?」
「…今さっきね、拓っくんに…、お尻ペンペンしたの。」
「……は、はぁっ…!?」
奈津子の言葉に、勇太が絶句する。
母親は、親戚以外の友達の尻を叩くなんて今まで一度もしたことがない。
まして拓也は、母親がずっと可愛がっている、一番のお気に入りのはずである。
「…えっ?…な…、何で……?」
「…さぁ…?…勇太、何でだと思う?」
「……っ。」
ずるい言い回しだった。
母親の口からそんな聞き方をされたら、子供は正直に答えるしかない。
「…もしかして…、宿題…?」
「……。」
「…でっ、でも…っ、何で、拓也君まで…!?」
「……勇太?」
お母さん、全部知っているわよ?
奈津子が発した言葉はそれだけだった。
たったそれだけで、勇太は動揺のあまり、額から滝のような汗が溢れ出していた。
「…お、お母さん…、ごめんなさい…。…昨日、宿題終わったって言ったの、…ウソ、です…。」
「…うん、…それで?」
「…本当は、1つもやってなくて…。休み時間にやればばれないと思ってて…、でも全然、間に合わなくって…、先生に怒られて…。」
「…うん、…うん…。」
「居残りさせられて…、いま帰ってきたところ…。」
「…まぁ、それを一旦置いても…。勇太昨日、ゲームして遊んでたわよね?お母さんとの約束、忘れちゃった?」
「……。」
「…お返事もできないの?勇太。」
奈津子は勇太を叱り慣れている。
拓也は間近で見ていて、そう思った。
自分の時とは全然違う…母親特有の圧みたいなものが、そばで聞いているだけで縮み上がるほどの迫力だった。
「…ともかく、勇太にもお尻ペンペンしないとね?」
「……た、拓也君が、いるのに…?」
「当たり前でしょう。…拓っくんはさっき終わったの。勇太は、お母さんとの約束破ったうえに、ウソまでついたんだから…。…簡単に許してもらえるとは思ってないわよね?」
「…お、思ってない…、でも…っ!」
「でもも何も聞きません。お母さんは怒っているんです。…さ、勇太。お尻を出しなさい。」
「……はい…。」
有無を言わさぬ、一方的な指示。
指示と言うより、もはや命令だった。
勇太は観念したのか、素直にズボンに指をかけ、下着ごと膝まで下ろす。
友達が居るから恥ずかしい、などと言える空気ではなかった。
「反省するまで、叩きますよ。」
「…っ!…はい…。」
それは奈津子の罰において、何回叩けば終わり、と敢えて決めない、最高刑の宣告であった。