2人のやり取りを見ていて、拓也は思った。
もしかして…、この"50回"は手加減をしてくれるのか…?
「…さ、いくわよ?拓也君。…あと50回だから、我慢しなさいね?」
「…はっ、はい…!」
(…きっとそうだよね…。…って言うか、手加減してくれなきゃもう、お尻が…。)
…バッチィィィィィィ〜ンッ!!!!!
「…いぃぃぃ〜っ…、痛ぅ…!?」
…ピシャァァァァァ〜ン!!!!!
「…ちょっ…、待っ……!!?」
…バチィィィィィ〜ンッ!!!!!
「…あああああっ!!?…はぁっ…、…はぁ〜っ…!?」
(…ウ…、ウソでしょ…!?手加減どころか…!?)
それまでのお仕置きと何ら変わりなく…、くっきりと手形の残る勢いで拓也の尻を打ち据える、綾子の母親。
お尻ペンペン50回と聞いて、「それくらいだったら…」と安堵していた綾子の態度は何だったのか…。
「…ほら拓也君。あと47回よ?しっかりしなさい。」
「…お、おばざん…、あの…っ!!」
「…綾子のお尻ペンペンもしないといけないから…、後でね?…終わったら、ゆっくり聞いてあげるから。」
「…ひっ…!?」
「…いくわよ?」
…バチィィィィィッ!!!!!
「…ぎゃあああああ〜っ!!?」
…パァァァァァ〜ンッ!!!!!
「…ひっ!?…ひぃぃぃぃ〜っ!!?」
…バッチィィィィィィンッ!!!!!
「…いだぁいっ!!?…ぐずっ、…うぇぇぇぇ〜ん…。」
拓也は再び泣き出してしまった。
…しかし綾子の母親は、そんなことぐらいは想定済みとばかりに、顔色ひとつ変えず、また平手を振りおろす。
…バチィィィィィ〜ンッ!!!!!
「…うわぁぁぁぁ〜ん!!…いだいっ、…いだいよぉぉ〜っ!!?」
「…はいはい痛いわね〜?…拓也君、あとちょっとよ〜?」
…ピシャァァァァァンッ!!!!!
…まだ40発以上も残っているのに、何の気休めにもならない「あとちょっと…」に拓也の気持ちは振り回され続けている。
(…い…、痛すぎるよぉぉ〜っ!!?…綾子ちゃんのお母さんって…、いつもこんな強さで、綾子ちゃんにもお尻ペンペンしてるのぉ〜…っ!!?)
それは勇太の母親である奈津子以上に、情け容赦のない尻叩きだった。
"男の子のお母さんと、女の子のお母さんって…、どっちが怖いと思う?"
あの時、そう聞かれた言葉が…、今になって頭の中に蘇る。
「…ほら拓也君っ、反省しなさいっ!」
…バシィィィィィンッ!!!!!…パァァァァァ〜ンッ!!!!!…パァァァァァン〜ッ!!!!!……、
「…ひっ!!?…ひっ!!?…ひぃぃぃぃ〜っ!!?」
「…泣いてちゃわからないわよ?…おばさんあと50回って言ったけど…、反省する気が全く無いなら、いくらでも増やしてあげますからね?」
「…ぐずっ、…ひっぐ…、うぇぇぇぇん…、ごべんなざいぃぃ〜っ…。」
「拓也君、家のお母さんは本当に増やす人だから…、もっとちゃんと"ごめんなさい"しないと駄目だよ?」
隣に居る、同じクラスの女子からアドバイスを貰い、その母親から尻を叩かれ続ける拓也。
…肉体的にも精神的にも、傍目で見ていてわかるくらいボロボロだ。
「…ひっく…、…えっく…、ご…、ごべんなざい…、おばざん…。」
「…はい、良く言えました。…もうお尻痛いよね?…あと少しだから、頑張って?」
「…ぐずっ…、…はい…。」
綾子の母親は、優しい雰囲気こそ出してはいるが、決して叩く数を減らしたり手加減したりはしてくれない。
そう思った拓也は、素直に全部受け切るのが一番だと、自分から、無惨に腫れた尻を前へ差し出す。
「…あらまぁ。…さすが男の子。とっても潔いのね?」
そう言いつつ綾子の母親は、腫れた部分めがけてとびきりの平手を叩きつける。
…バッチィィィィィィ〜ンッ!!!!!
「…ああああああっ!!?」
「…おばさん嬉しい…。拓也君が自分から、おばさんに叱られても良いって思ってくれたのよね。…おばさん、愛情たっぷり込めてお仕置きするからね〜?」
…ピッシャァァァァァン!!!!!
「…ひぎぃぃぃぃ〜っ!!?」
「…ほら、悪〜い気持ちがどんどん出ていくわよ〜?…それっ!」
バチィィィィィ〜ッ!!!!!
「…あああっ!!?…あぐっ…、えぐっ…!!」
「…ほらほら拓也君、どんどん良い子になってきたねぇ〜?」
綾子の母親は、まるで泣いている幼児をあやすような口調で拓也に語りかける。
強烈な尻叩きをただ続けながら、その表情は微笑みすら浮かべていた。
(…あ〜、家のお母さん、完全に"スイッチ"入っちゃってるなぁ…。…拓也君、大丈夫かな…?)
綾子の母親は、悪さをした子供の"悪い心を追い出す"ことに至上の悦びを感じていた。
もちろん"子供の為に"と第一に考えてはいるのだが…、自分が尻を叩くことによって、"良い子になる"きっかけを与えてやれることが心から嬉しいらしく…、拓也が泣けば泣くほど気持ちが昂ぶり、平手打ちにも力がこもっているのだった。
…バシィィィィィィッ!!!!!
「…ぎゃぁぁぁぁぁ〜っ!!?」
…パァァァァァァンッ!!!!!…パァァァァァ〜ンッ!!!!!
「…うわぁぁぁぁ〜んっ!!!…ぐすっ…、…ぐすっ…!!」
拓也の尻は無惨に赤く腫れあがり、痣にならないかどうかを気にしていた奈津子の時と比べ、明らかに濃い色に染まっている。
(…ああなったら、本当に痛いんだよね…。…ごめんね、拓也君…。)
綾子は、自分の母親の膝の上で大泣きしているクラスメイトを見ながら、申し訳なさそうに縮こまっている。
慣れている自分はともかく、拓也君は可哀想だよ…。
拓也が自宅だけでなく、勇太の家でもたびたび尻叩きを受けていることを知らない綾子は、母親の平手打ちを"やり過ぎ"だと感じるのだった。
「…お、お母さん…。」
「…ん?…どうしたの、綾子?」
「…わ、私が拓也君のぶんも罰を受けるから…、もう、拓也君は許してあげて…?」
「…あら珍しい。綾子が自分からそんなことを言うなんて…。」
「……。」
「…良いわよ?…でも…、他の子の罰の肩代わりをするっていうことが、どういうことかわかってる?」
「…う、うん…。」
「…拓也君がこのまま我慢すれば、あと20回くらいで終わりだけど…、綾子が代わりに受けるなら、100回以上は覚悟して貰うわよ…?」
先程"50回で許す"と言われたばかりの綾子だが、そのくらいの処罰は覚悟の上だった。
「…わ、わかってる…。…100回でも何でも良いから、拓也君を離してあげて…。」
「…わかったわ。…本当に良いのね?」
「…うん…。」
「…ぐずっ…、…あ…、綾子、ぢゃん…!?」
拓也は、自分が軽い気持ちで罰を受けに来たことがそもそも原因で、綾子が身代わりになると言い始めたことにかなり焦っていた。
「…ち、違うんだ綾子ぢゃん…、本当は…っ!」
「…えっ…?」
ただの出来心で…、とつい本音を吐露してしまった拓也は、綾子とその母親の前で、洗いざらい白状せざるを得なくなってしまった。