「…あら、拓っくん。こんにちは。」
「…こ、こんにちは…。」
3日後。
奈津子による尻叩きがどうしても忘れられない拓也は、覚悟を決めて、再び勇太の家を訪ねていた。
「…勇太が居ない時間、ということは…、おばさんに用事があるってことで良いのかしら?」
「…。」
勇太の母親である奈津子は、拓也が何をしに来たのかは既に察しがついている様子で…、「どうぞ、上がって」と拓也を客間へ促した。
…先日、拓也が初めてお尻をぶたれた日と同じ部屋である。
「…拓っくん。覚悟は出来てるわね?」
もう奈津子は先日のように、「本当に叩いて良い?」などと確認したりはしてくれなかった。
拓也には今まで通り、口調こそ優しく話しかけるように喋ってはくれているが…、確実に、"叩くことを前提に"話を進めている。
「…この前も言ったと思うけれど…、お尻がパンパンに腫れて、しばらくは座れなくなると思うから…、もし帰りが辛かったら、しばらく勇太の部屋で休んでいって頂戴ね?」
「…は…っ、はい…。」
…やっぱり、自分もそのくらい叩かれるんだ…。
…怖い反面、少し楽しみにしていた部分もある拓也は、複雑な心境でこの瞬間を迎えていた。
「…それじゃあ拓っくん、お尻を出して?」
「…はい…。」
正座した奈津子の太腿へ、拓也は腹這いに寝転んで素直に尻を出す。
ここまでなら前回と同じだが…、今日は"お試し"ではない。
そう奈津子と約束していた拓也は、これから自分の身に降りかかる罰への恐怖で、少し縮こまってしまった。
「…勇太と同じで…、良いわね?」
「…は、はい…。」
「…はい。わかりました。」
奈津子はそのまま右の手を振り上げ、渾身の力をこめて拓也の尻へ叩き付ける。
…バッチィィィィンッ!!
「…あがっ…!!?」
痛いっ、とすら口に出来ないほど、衝撃的な痛さの罰が拓也の尻を襲う。
「……っ…、たぁぁぁぁ〜〜っ!?」
次いで、ようやく"痛い"と認識出来た頃には…、奈津子は次なる平手を振りかぶっていた。
「…なるべく動かないで。無理かもしれないけど…。」
…バチィィィンッ!!
「……あぐぁっ…!?」
…ピシャァァァァンッ!!
「…ああああ〜〜っ!?」
痛い、痛い、痛い…。
気付いてしまったら終わりだ。
痛みの洪水に、どんどん呑み込まれていく拓也。
「…も、もうしません〜っ!!?」
「えぇそうね、もうしませんは当たり前よ?」
…バッチィィィ〜ンッ!!
「…ああああっ!?」
「出来たらおばさん…、もうしませんの前に、嘘ついてごめんなさいが聞きたかったな?」
…パッシィィィィンッ!!
「…あっ!!?…あっ!?…あっ…!?」
「ほら拓っくん…、ごめんなさいも言えないの?」
…ピシャァァァァンッ!!
「…ひっ…!!?…まっ、待っ…!?」
「…もうっ。…そんな子は、しばらく膝から下ろしませんからね。」
…バッチィィィィンッ!!!
「…ああああああ〜〜っ!!?」
拓也は痛みと焦りのあまり、謝罪の言葉さえ口に出来ず、勇太の母親からの尻叩きにただ悶え苦しんでいた。
奈津子はもちろん、全てわかった上でそうしている。
息子の勇太に"お尻ペンペン"する際にも、こんな風に、罰の時は決して思い通りにはならず、主導権は圧倒的に母親の方にあるのだと体で覚えさせてきた。
それは無駄に抵抗する時間を減らし、"お仕置き"の効率化を諮るとともに…、可能な限り、少ない回数で反省させてあげたいという矛盾した親心でもあった。
それは拓也が相手でも同じだったようで…。
…バッシィィィィンッ!!
「…ああああっ!?」
…バチィィィィンッ!!
「…はっ、…はっ、…はぁっ…!!!」
…ピッシャァァァァンッ!!!
「…ひいっ!?…ひぃ…、ひぃ〜…っ!!!」
拓也はまともに喋れないほど、繰り返す尻の激痛と闘っていた。
(…こっ…、こんなの…!こんなのって…!!?)
"お尻ペンペン"という言葉の響きからは似ても似つかぬほどの痛みの嵐。
加えて、友達の母親からこれだけ尻を叩かれて泣きそうになっている自分が、やがて、耐えられないほどの羞恥を生み出していた。
…バチィィィィンッ!!
「…あああ〜っ!!」
…ピシャァァァァンッ!!
「…つっ!?…あっ!?…あぁ〜っ!?」
…パッシィィィィンッ!!!
「…うあぁぁぁぁ〜っ…!!?…ひっぐ…、ひっぐ……。」
遂に拓也が啜り泣きを始めると、奈津子の平手は一瞬、戸惑い…、手心を加えるように、ポンッと拓也の腫れた尻に優しく伸びる。
…しかし、どうやら許したわけではないようで…。
「…泣くくらいなら、最初からお家で宿題をきちんとやるの。拓っくんも分かってたんでしょう?」
「…ぐずっ、…ひっく…、……はい…。」
「…今日からは、一緒におばさんがその怠け癖を治してあげるから…。…もちろん、嘘をついちゃう癖もね?…さぁ、頑張りましょう?」
「…ぐすっ…。」
「…いくわよ?」
"一度本当にお仕置きをしたら、勇太と同じ歳までずっと続ける"。
あの時、確かにおばさんはそう言った。
…だとしたら本当に、悪い癖が抜けるまで、ずっと…。
拓也は、最悪の未来を想像する。
今の状況が、"一度くらい、おばさんにお尻を叩かれてみたい"という願望を叶えたくて自ら生み出してしまった悪夢であることを、改めて思い知らされていた。
「…はいっ、拓っくん。"宿題はちゃんとやります"。」
…バッチィィィィンッ!!
「…あああ〜っ…!?……ぐずっ…、…しゅ、しゅぐだいはちゃんとやりまずぅ…っ!」
…ピシャァァァンッ!!
「…あぁっ!?…あっ、…あっ…!!」
「はい、"もうおばさんに嘘はつきません"。」
…バチィィィィンッ!!
「…あうっ…!?…も、もう…、おばざんに…、うぞはつぎま…せん……。」
…パッシィィィィンッ!!!
「…ああああ〜っ!!?」
「…もう1回?大きな声で。…"もう、おばさんに嘘はつきません"。」
「…も…、もうっ!おばざんにっ、うぞは…、つぎませんっ…!」
「はい…、そうね?」
…ピシャァァァァンッ!!
「…うわぁぁぁ〜ん!!…ぐずっ、…ぐずっ…。」
「…これからは、嘘をつくたびに毎回お尻ペンペンしますからね〜?」
…バッチィィィィィンッ!!
拓也の大きな悲鳴と、普段と変わらないトーンの奈津子の説教。
勇太の時のように、強い口調で叱りつけたりはしないが…、そんな普段通りの奈津子が、鬼のような尻叩きをひたすら続けていることが拓也の精神状態をよりかき乱していく。
(…いっ、痛い!!痛すぎる!?……でも…!)
なぜか、終わってほしくはない。
子供人生でまだ味わったことのないほどの痛みをその尻に何度も受けながら…、拓也は、奈津子が初めて"本当の顔"を自分にも見せてくれたような気がして…、喜びに奮えていた。
…今までは単なる"お客さん"扱いで、息子の友達として特別扱いされてきた。
それはそれで悪くなかったのだが…、ようやく息子の勇太と同じく、"お尻ペンペン"で奈津子から叱ってもらえる。
その事実が、拓也はこれまでに無いほど嬉しかったのだ。