「…ぼっ…、僕はぁ…!!…勇太ぐんのお母さんに…、"わざと"お尻ペンペンされるっていう悪戯をしでぇ…!!」
「…はい、その通りね?…続けて?」
「…沢山お尻ペンペンされたのに…、綾子ぢゃんのお母ざんにも"わざと"お尻ペンペンざれでぇ…!!…ぐずっ…。」
「…うん、…それで終わりだった?」
「…ぐずっ…!…綾子ぢゃんのおがあざんに…、そのことをずっど黙ってまじたぁ…!!」
「…はい。…それじゃあ拓也君は、どうされるべきだと思う?」
「…も…、もっど、たぐざん…、お尻ペンペン…!…ぐずっ…!」
泣きながら、必死にそう答える拓也を見て…、ようやく綾子の母親にも少し笑顔が戻った。
「…ですって、皆さん。…どう思います?」
「…何だか、少し可哀想になってきちゃった…。」
「…同感。綾子ちゃんのお母さんのお尻ペンペンをあれだけ受けたら…、そりゃあ泣いちゃうわよね。…私なんて、今されても泣きそうだもの。」
「…あら、試してみます?」
「…ちょっと、やめて下さいよ…。」
「…きゃはは、陰で旦那の悪口言ってるお仕置きですか〜?」
「…それだったら、全員叩かれなきゃいけないじゃないの。」
「…あっはっは、なら私達も順番待ちで、一緒に一列に並んじゃいます〜?」
場を和ませようとしてくれているのか、母親達はそう言って拓也を笑わせようとしている。
「…ちょっと皆さん、まだお仕置きの最中ですよ?」
「…おっと、そうだったわね…。」
「…これじゃあ、本当に私達までお仕置きされちゃいますね。」
「…20年ぶりにお尻ペンペンなんて、勘弁だわ…。」
「…ですね。する方はもう家の子で慣れましたけど…、されたら、拓也君みたいに泣いちゃうかも…。」
「…綾子ちゃんのお母さんのお尻ペンペン…、本当に痛そうですもんね…。」
周りで見ている母親達の中にも、何人かは子供の頃に"お尻ペンペン"された経験があるらしく…、尻を腫らした拓也を自分と置き換え、怯えている様子だった。
「…はいはい皆さん、冗談はそれぐらいにして…、ようやく拓也君が反省したがっているんですから、どうぞ応援してあげて下さいね?」
「…うふふ…、拓也君、頑張って〜。」
「ぜ〜んぶ終わったら、おばさんが優しくお尻さすってあげるからね〜?」
「…あっ、ずる〜い。私もその役がいい〜。」
周りの母親達は相変わらず、どこか和やかな雰囲気だ。
お尻ペンペン"される"側の拓也と違い…、母親として、"する"側の立場で今回のことを見守っているからだろう。
"拓也君は、きつくお尻ペンペンされても仕方のない子だ"。
それは今、この場にいる母親達10人の総意だった。
「…それじゃあ拓也君、あと少しだから…、続きいくわよ?」
「…お…、おばざ…、ごめ…、なざ…、もう…っ!」
「…駄〜目。…せっかく反省する気になったんだから、その気持ちが変わらないうちに…ねっ?」
「…うぅ…。」
…バッチィィィィィンッ!!!!!
「…ひぎぃぃぃ〜っ!!?」
綾子の母親が言う"あと少し"には全く期待できないことを、拓也は昨日すでに思い知っていた。
…もしかしたらあと数回で終わりかもしれないが…、ずっと終わらないかもしれない。
…そんなの、何もわからないのと同じだ。
…ピッシャァァァァァ〜ン!!!!!
「…ぐぅぅぅっ…!!?……ひっぐ…、ひっぐ…。」
拓也は痛みのあまり涙をこらえることが出来なかったが…、周りの母親達は、それを見てももう何も言わない。
…バシィィィィィッ!!!!!…パァァァァァンッ!!!!!…ピシャァァァァ〜ンッ!!!!!
「…うわぁぁぁぁ〜ん!!…ごべんなざいぃぃ〜っ!?…もっ…、もういだずらじばぜぇぇ〜んっ!!?」
…バッシィィィィィッ!!!!!
綾子の母親の"お尻ペンペン"は、その威力を事前に知っている者が見ても…、思わず息をのんでしまうほどに容赦がなかった。
回数だけを見れば、拓也はまだ数十発程度しか叩かれていないのだが…、さっきすでに数十発、同じように勇太の母親である奈津子からもお尻ペンペンを受けている。
いつも拓也が受けているお仕置きの半数以下にも関わらず…、その尻の腫れ具合は、母親の"200叩き"など軽く超えていた。
「…あらら…、お尻真っ赤っ赤になっちゃったわねぇ…。」
「…自業自得ですけど、やっぱり可哀想…。」
「…母親誰もが通る道よね、心を鬼にしなきゃ…。」
「…頭ではわかっていても、辛いですね…。」
母親達がそれぞれ思い思いの言葉を述べている最中、綾子の母親だけは拓也と"2人きり"の会話を続ける。
「…拓也君…、反省してる?」
「…ひっぐ…、…はい…っ!!」
「…おばさんだって、お尻ペンペンしたくてしてる訳じゃないのよ?」
「…ひゃぃぃ…っ!!」
涙声ながら、一生懸命に大きな声で返事をしようと必死の拓也に、周りの母親達は母性本能をくすぐられ続けていた。
(…うわぁ〜、可愛い〜っ、…こんなこと考えてちゃ駄目なんだろうけど…、泣いてる拓也君…、このまま持って帰りたい…っ!)
(…男の子って、こんなに可愛いんだぁ…。…家は娘しか居ないけど…、もう1人欲しくなるほどの破壊力だわ…。)
(…はぁ…っ。怖いおばさんを演じないと、拓也君のためにならないのはわかっているけど…、あんな風に泣かれたら、ぎゅうっと抱き締めたくなっちゃうわよね…。)
"拓也には、痛いお尻ペンペンが必要である"と母親達全員が理解しつつも、その一方で甘やかしたくなる気持ちが溢れてしまい…、それぞれが顔に出さないよう、必死に努めていた。
「…ほら、本当にあともう少しだからね?」
…バッチィィィィィィ〜ンッ!!!!!
「…いだいぃぃぃ〜っ…!!?…えっく…、…えっく…!」
拓也はすっかり泣いてしまっているが…、そうやって泣けば泣くほど、周りの母親達は拓也を優しく抱き締めてあげたい衝動に駆られるのだった。
…しかし、拓也が過ぎた悪戯をしてお尻ペンペンされている以上…、自分だけが抜け駆けして優しくする訳にもいかない。
「…ほらほら拓也君…、あと少しみたいよ〜?」
「綾子ちゃんのお母さんのお尻ペンペン…、とっても痛いでしょう〜?」
「…悪い事したらこうなるのよ、わかった〜?」
…ピッシャァァァァァ〜ンッ!!!!!
「…あああああ〜っ!!?…わ…っ…、わがりまじだぁぁ〜っ!!!…ぐずっ!」
綾子の母親の膝の上で尻を叩かれながらも…、拓也は周囲の母親達の問い掛けに必死で答える。
…その姿に、ようやく綾子の母親も納得したようだった。
「…はぁ…。もう良いかしら?…ちょっと足りない気もするけど…。」
「…いいえ、ちゃんと数えていましたから大丈夫ですわ。"拓也君"、お疲れ様。」
「…ひっぐ、…えっぐ、……えっ…?」
…もしかして、もう終わり…?
勇太の母親と綾子の母親…、その両方から3ケタのお尻ペンペンもあり得るのでは…と覚悟していた拓也にとって、明らかに甘すぎる裁量だった。
確かに拓也の尻はもう真っ赤に腫れているが…、この2人を本気で怒らせてしまった罰としては、どう考えても不自然なほど軽い。