母親達は次々と拓也に、"きつくお尻ペンペンする意思がある"ことを伝える。
…そんな中、1人だけ浮かない表情をした女性がいた。
「…あ、あのぅ…?」
「…あら、どうしました?」
「…その…、必要だとは思うんですけど…、本当に…、全員がお仕置きしなくちゃ駄目なんでしょうか…?」
「…と、言いますと?」
「…ウチの子が…、拓也君にはすごくお世話になっていて…、普段は、本当に良い子だと思うんです…。今回は、ちょっと魔が差して、いけない悪戯をしちゃっただけで…。」
「…えぇ。それは私も良くわかっていますわ。…"拓也君"って、普段はとっても良い子ですものね…。」
(…か、庇ってくれてる…?…でも、誰だろう…?)
拓也は、これから自分にお尻ペンペンするであろう8人の母親達の中で唯一、罰に否定的らしいその女性が、一体誰なのかがわからなかった。
「…一度目なら、それで許しても良いと思うんです。…ただ今回"拓也君"は、全く同じ悪戯を、綾子ちゃんのお母さんにもしていました…。」
「…はい…。」
「…ここで癖になってしまう前に、心を鬼にして厳しく叱ってあげることも…、"拓也君"にとってきっと必要なことだと思いますわ。」
「…それは…、そうなんですけど…。」
「…あれっ、そういえば…、お宅の息子さんって、確か…、拓也君と同じ、"タクヤ君"じゃなかった?」
「…えっ、えぇ…。漢字は違いますけど…、"卓哉"です…。」
(…タクヤ…、卓哉…?…卓哉ってまさか、あの新入生の卓哉君…?)
拓也は、自分と同じ読みであるその名前に聞き覚えがあった。
…昨年、新一年生を歓迎する行事で初めて出会い、懐かれて休み時間に何度も遊んであげた…、当時一年生の"卓哉君"だ。
もちろん拓也は上級生として、面倒を見てあげていた立場である。
「…そんな上級生のお兄ちゃんが、こんな悪戯しちゃったら…、下の子に示しがつかないわよねぇ〜?」
「…うぅ…。」
「…それが去年ってことは…今は二年生?そっちの卓哉君には、普段からお尻ペンペンしてるの?」
「…は、はい、しょっちゅう…。…なにせ、ヤンチャなもので…。」
「…だったら、"拓也お兄ちゃん"にも…、同じ感じでお尻ペンペンしてあげたら?」
「そうよね、同じ"タクヤ君"なわけだし…。…そうだわ、ここでするより…、いっそ、その"卓哉君"の前でお尻ペンペンしてあげる方が良いんじゃない?」
母親達の会話は少し脱線し、なぜか、この場に居ない"卓哉君"の話題で盛り上がりを見せる。
「…それは名案かもね?目の前で、こ〜んな大っきなお兄ちゃんがお尻ペンペンされてたら…、その卓哉君だって、きっと怖がるだろうし…。」
「…そ、そうでしょうか…?」
「…えぇ。…両方の"タクヤ君"にとって、すごく良い薬になると思うわ。」
「…あっはっは、確かに…、"タクヤ〜!!"って叱りながらお尻ペンペンしたら…、どっちも、自分が叱られてるみたいに思っちゃうかもね〜?」
母親達の出す案は、どんどん過激になっていく。
しかも、具体的に何をするかまで次々と意見が出ていた。
…傍で聞かされている拓也は、気が気ではない。
(…て、低学年の子の家まで行って…、その子のお母さんから、お尻ペンペン…!?…じょ、冗談だよね…?)
拓也はさすがに、"低学年の子の母親"にまでお尻ペンペンされるとは思っておらず…、想像しただけで、全身が熱くなるのを感じていた。
「…はいはい皆さん…、脱線は一旦ここまでにしましょう。…"卓哉君"のお母さんが、お家で"拓也君"のお尻をペンペンする案…、私も、とっても良いと思いますけれど…、そのお話はまた後で。…まだ、ここでの"拓也君"のお尻ペンペンが済んでいませんので…。」
「…おっと、そうだったわね。」
「…1人30発ずつでしたっけ?誰からいきます〜?」
「…さっきの話の流れもあるし…、ここは卓哉君のお母さんからで良いんじゃない?」
「…えっ!?…わ、私からですか…!?」
「…だって、後になればなるほど、拓也君のお尻…、可哀想なくらい腫れちゃうわよ?…そうなってからだと叩きづらいでしょう?」
「…た、確かに…、そうですね…。」
拓也の尻はすでに、勇太の母親である奈津子と、綾子の母親の平手打ちによってかなりの赤みを帯びている。
このまま8人の母親が、交代で30回ずつ尻を叩くとなれば…、たとえそれほど強く叩かなくても、拓也の尻は今と比べ物にならないほど腫れてしまうはずだ。
「…普段やり慣れてるお母さんなら良いけれど…、まだ2年生だと、しょっちゅうって言ってもそんなに強くは叩いてないんでしょ?」
「…は、はい…。結構、手加減はしてます…。」
「…だったら、皆さんのお言葉に甘えて…先にやらせて貰った方が良いんじゃない?…拓也君のお尻が完全に真っ赤っ赤になっちゃったら、叩く方も辛いと思うわよ〜?」