※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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10人の母5

拓也は、お尻ペンペンそのものよりも、自分が今置かれている状況に絶望していた。

勇太の母親である奈津子や、綾子の母親だけではなく…、下級生の"卓哉"の母親にまでお尻ペンペンされ、それを大勢の母親達に見られてしまった。

…仮に、10人の母親達全員から30発ずつのお尻ペンペンが無事に終わり、何とか耐えきったとしても…、叩いた10人全員がそのことを誰にも話さず、内緒にしておいてくれる保証などどこにもない。

…ここにいた母親達が色々な人に喋ってしまい、拓也の知らない相手にまで"お尻ペンペンの子"として伝わってしまう可能性だって十分にあり得る。

それぞれ学年や住んでいる地域がバラバラというのも…、拓也にとっては都合の悪いことばかりだった。

 

(…も、もし…、他の学年の子達にまで知られたら…。)

 

学校内での噂なんて、あっという間に広がってしまう。

他の教室から"お尻ペンペンの子"の噂を聞きつけて見に来てしまうかもしれないし…、騒ぎになれば当然、学校の先生にだってばれるだろう。

…もしそうなれば…、今日ここで10人の母親達にお尻ペンペンされてしまった詳しい経緯を、拓也の口から学校の先生に説明しなくてはならない…。

 

(…うわぁぁぁっ…!!?…駄目だ…、絶対にそれだけは駄目だぁ〜っ!!?)

 

拓也の通う学校にも、"お尻ペンペンの罰"が無いわけではない。

宿題を忘れたり、授業態度が良くなかったりすると…、ズボンやスカートの上から1〜2発程度、バシバシッと叩く先生は意外と多かった。

家で母親からお尻ペンペンされている勇太や綾子からすれば、本当に子供騙しのような軽い罰ではあるのだが…、学校で尻を叩かれる、という恥ずかしさもあり、子供達の間ではそれなりに恐れられていた。

…つまり、お尻ペンペン自体は"あり"だという考え方が、学校全体に浸透しているのだ。

そんな環境で、"わざとお尻ペンペンされる悪戯をした"などと知られたら…。

 

「…拓也君っ!?」

「…は…、はいぃっ!?」

「なにぼ〜っとしてるの?ごめんなさいは?」

「…あっ!!?…ご…、ごめんなさ────、」

 

…バチィィィィィッ!!!!

 

「…ぎゃああああっ!!?」

「…皆さんすいません、どうやら本当に全然効いていなかったみたいで…。」

「…あ、あの強さで…?」

「とっても参考になるわね…。子供の嘘って見抜くのが本当に大変だから…。」

「ぼ〜っとしてる余裕があるくらいだし、もっと痛くしても大丈夫じゃないですか?卓哉君のお母さん。」

「…で、でも…。」

「…"拓也君"のためです、みんなで叱ってあげないと。…ねっ?」

「…わ、わかりました。」

 

…バッチィィィィィッ!!!!

 

「…ひぎぃぃぃぃっ!!?」

 

…ピシャァァァァァ〜ンッ!!!!

 

「…ああああっ!!?」

 

…パァァァァァァンッ!!!!

 

「…ひぃぃっ!!?…ひぃぃぃぃぃ〜っ!!?」

 

低学年の息子をもつ"卓哉の母親"は容赦無く、膝に寝かせた拓也の尻を滅多打ちにしている。

もちろん自分の息子の"卓哉"にもまだここまで厳しくお仕置きをした事はなく…、我が子よりも先に"お世話になっている上級生"にそれを執行する彼女の心境は複雑だった。

 

(…拓也君、ごめんね…?全部終わったら、一杯ナデナデしてあげるからね…?)

 

甘い言葉を掛けてやりたくなる気持ちを必死に抑えながら、"卓哉の母親"は次々に平手打ちをお見舞いする。

 

…バチィィィィィッ!!!!

 

「…ううううう〜っ!!?」

「…うわっ…、すっごく赤い手形…。」

「…本当ね。勇太君のお母さんや、綾子ちゃんのお母さんのお尻ペンペンも凄かったけど…、"卓哉君"のお母さんも負けていないわね…。」

「…これに比べたら、いつも私がやってるお尻ペンペンなんて、遊びみたいなものだわ…。」

「…本当にそうよね、…あ〜あ…、もしかして家の子も、今までずっと痛いフリしてたのかしら…?」

「…家も同じかも。…よ〜く考えたら、体も大きくなってるのに、昔と痛みが全然変わらないなんてあり得ないわよね…?」

「…本当に勉強になるわ、今日の"集会"…。」

 

…ピッシャァァァァァ〜ンッ!!!!

 

「…ああああ〜っ!!?…ぐずっ…、ひっぐ…!」

 

拓也はついに痛みのあまり再び泣き始めたが、周りの母親は動じない。

 

「…ああして泣いたら、今まではつい手加減しちゃってたけど…、もうそれじゃ駄目ってことよね?」

「…家もそうでした。…お尻ペンペンが痛いのも知ってるから、つい甘くしちゃうんですよね…。」

「…そうそう。自分が子供の時にされてると、尚更ね…。…でも…、私達のお母さんだって、心を鬼にして叩いてくれてたんだと思うわ。」

「…親になるまではわからなかったですよね、そんな気持ちも…。」

「…ほんとそう。…お尻を叩く鬼ババだと思ってた。」

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