母親達は…、本音では、今の状態の拓也にこれ以上お尻ペンペンしたくはなかった。
…しかし、自分1人がそれを口にするわけにはいかず…、各々が、"拓也君をきちんと叱らなくては"という、使命感にも似た集団心理に囚われている。
そして、その中心にいるのはやはり奈津子だった。
「…はい"拓也君"…、よく出来ました。ちゃんとここに居るお母さん達全員からお尻ペンペンされたら…、きっと良い子に戻れるからね?」
「…ひっぐ…、ぐずっ…!」
「…それじゃあ、次は…、麻希ちゃんのお母さん、お願い出来ますか?」
「…あっ…、私ですか…?…う〜ん、そろそろ来るだろうなとは思ってましたけど…。」
指名されたのは、またしても拓也の同級生女子である、麻希の母親だ。
「…でも最近、家の麻希にもあんまりやってないんですけど…、大丈夫ですかね…?」
「…大丈夫ですよ、大切なのは愛情です。…きちんと気持ちをこめて叱ってあげれば、"拓也君"にもきっと伝わりますわ。」
「…は〜い…。じゃあ拓也君、今度はおばさんの膝へおいで?」
「…ひっぐ、…ずずっ…。」
拓也はまだ鼻をすすりながらも、素直に麻希の母親の太腿へ寝転ぶ。
「…良い子ね?…おばさん、男の子にお尻ペンペンするのって初めてだから…、あんまり痛くないかもしれないけど、その時は正直に言ってね?」
「…ずずっ…、…はい…。」
「…じゃあ…、いくわよ?30回ね?」
そう言って麻希の母親は、右手を振り上げる。
…バッチィィィィィ〜ンッ!!!
「…ぎゃあああっ!!?」
…ピッシャァァ〜ンッ!!!
「…ああああっ!?」
…バチィィィィッ!!!
「…ヒィッ、ヒィィ〜ッ!!?」
"痛くないかもしれない"などと前置きしていた麻希の母親の平手打ちは…、他の母親達のものと比べても、何ら遜色ない威力だった。
…最初の数発でそれを悟った拓也は、手加減されることを心配していた先程までの自分が、滑稽過ぎて泣けてくる。
(…ひぃぃ〜っ、痛すぎるよォォ〜っ!!?…なんで、みんな揃って…、こんなにお尻ペンペンやり慣れてるのォォ〜っ!!?)
周りで見ている母親達も、同じことを思った様子だ。
「…麻希ちゃんのお母さんも、ずいぶん手慣れてますよね…?…さっきは、最近あんまりやってないって言ってましたけど…、それって本当なんですか?」
それを聞いた麻希の母親は、不意に拓也の尻を叩く手を止める。
「…えぇ。最近は本当に少ないんですよ?…ただ一時期、ほぼ毎日のようにやってましたから…、その名残りというか、昔とった何とかってやつですかね…?」
「…あはは、ウチも同じだわ〜。…ちなみに…、その減ったきっかけってやっぱり…、綾子ちゃんのお母さんにお尻ペンペンをお願いしてからじゃない?」
「そうそう…、そうなんですよ〜。…私がやる時と比べて、よっぽど痛かったみたいで…、あの日から突然手が掛からなくなって、綾子ちゃんのお母さんには感謝してもしきれませんわ。」
「…ふふ、私はただ…、綾子と同じように、愛情をたっぷり込めてお尻ペンペンしただけですよ〜?」
「…その愛が、抜群に効いたんですね…。」
「…まぁ、さっきの拓也君へのお尻ペンペンを見ただけでも…、綾子ちゃんのお母さんにだけは絶対にお尻ペンペンされたくないって思っちゃうわよね…。」
「…音が違ってましたもんね、1人だけ…。」
周りの母親達は、それぞれがお尻ペンペンに慣れてはいるが…、やはり綾子の母親のそれを見ると、"レベルが違う"と感じてしまうようだ。
「…う〜ん、そんなに強いかしら?私のお尻ペンペン…。」
「…絶対強いですって…。…私だったら、最初の3発でもう泣いてますよ…。」
「…1発って言わないところが、何だかリアルね…?」
「…真剣に、想像しちゃったんだ…?」
「…だって〜、あんなにお尻ペンペンされる拓也君を見てたら…、自分も子供の頃、お母さんにされてた時を思いだしちゃって…。」
「…わかります、本当にわかりますよ〜…、その気持ち…。」
母親達は、自分の幼少期を重ねて、綾子の母親によるお尻ペンペンの恐ろしさをその身で想像している。
「…あっはっは〜、良かったですね〜皆さん、もうすっかり"叩く側"で…。」
「…本当にそうですよ。…もしも娘と立場が逆だったら…、うぅ〜っ、考えたくもないです…。」
「…あら、今よりずいぶん若くなれるわよ?…お尻ペンペンは毎日のようにされるでしょうけど…。」
「…若返るのは良いですけど、子供に戻ってお尻ペンペンはもう勘弁ですよ…。家の母親も、昔は本当に容赦ありませんでしたから…。」
それぞれ母親達が、思い出を語りながら、すっかりお尻を腫らした拓也を見守っている。
しばらく手を休めていた麻希の母親も、ここで動いた。