それは…、10人の母親達の中でも、拓也と会う頻度のとくに高い…、"同級生"の家族に対する懸念だった。
勇太や綾子の場合、拓也はそれぞれの母親からお尻ペンペンされている姿を本人達にも見られているので…、そういった意味では、秘密はすでに"共有"されている。
…しかし今回…、晶や麻希の母親にお尻ペンペンされてしまったことに関しては、その意味合いがまるで違う。
拓也は…、彼女達の母親が、普段から家でお尻ペンペンのお仕置きをしている事実を一方的に知ってしまった上に…、その母親達がこの先、今日のことを誰にどこまで話すのか、見当すらつけられない。
…つまり、学校で会う同級生に対しては…、"誰が、どこまで知っているか"も一切わからないまま…、探り探り、かつ自然な態度で接する必要がある…。
(…うぅ〜…っ、…か、考えるだけで頭がこんがらがってきた…。)
仮に、晶や麻希の母親が、今日ここで拓也にお尻ペンペンしたことをずっと内緒にしておいてくれるとしても…、拓也自身がボロを出してしまえば、そこから全てバレてしまう可能性もある。
…そうなれば…、拓也がお仕置きに公民館で、10人もの母親達からお尻をペンペンされてしまった、という恥ずかしすぎる事実も…、全て明るみに出てしまうのだ。
(…ヒィィ〜ッ!?…も、もし…、そんなことになったら…!!?)
遠くない未来…、それは拓也の母親である美由紀の耳にも入り…、当然ながら、いつものお尻ペンペン200発…だけでは済まないだろう。
勇太の母親である奈津子にも再びお尻ペンペンの依頼が出され…、奈津子が快諾する光景も容易に目に浮かぶ。
…さらに今回、拓也のお尻ペンペンに"協力"した母親達も…、奈津子が一声かければ、再び拓也をお仕置きするために集まってしまうに違いない。
…彼女達は、一度拓也に"お尻ペンペン"したことで、明らかにそれを行うハードルが下がってしまっている。
拓也へのお尻ペンペンを終えた母親はまだ半数であるものの…、その反応や言動を見る限り、頼まれれば、断る母親はおそらく1人も居ないはずだ。
(…うう〜っ…、勇太君のお母さんや、綾子ちゃんのお母さんの時と違って…、僕がされてみたかったわけじゃないのに~…!!)
全ては拓也の自業自得だが…、今回に限っては、拓也の側が好奇心を満たしたかったわけではなく…、本当に、それぞれの母親達が、普段から我が子に行っているお尻ペンペンのお仕置きを、同じように受けさせられているのだ。
叩く相手が拓也ということで、初めは多少、戸惑いの声もあったが…、今回の中では最も幼い、低学年の"卓哉"の母親でさえ…、お尻ペンペンをすること自体は非常に手慣れており、予想外の痛みに拓也も涙を流したほどである。
(…うぅっ…、あれも…、痛かったんだよなぁ〜…。…低学年の子のお母さんなら、絶対にましだと思ったのに…。)
拓也は腫れた尻をいたわるように擦り続けている。
…それは無意識下の行動だったのだが…、何人かの母親はそれに気付き、お仕置きに耐える拓也をどうにか守ってあげたいという母心が芽生え始めていた。
(…うわぁ〜、拓也君…、もうあんなに真っ赤なお尻なのに、必死に我慢してる…。…うぅ…、撫でてあげたい…。)
(…あ〜あ…、あんなに腫れちゃって…。…私1人だったらもう許してあげるところだけど…、そういう訳にもいかないのよね…。)
(…うぅ〜…、こんなに可愛い拓也君に、私もこれからお尻ペンペンするの…?…確かに、悪戯が過ぎちゃった部分はあるんでしょうけど…。)
母親達はどちらかと言えば、"もう拓也を許してあげたい"という気持ちのほうが強くなってきていた。
…しかし、先ほど奈津子が実践してみせた、"もし痛くなかったら、自分が代理で叩く"という厳しすぎるペナルティのことを考えると…、母親達が普段、自分の子供に行っているお尻ペンペンの方が、遥かにマシなのである。
…拓也のことを想ってやるのならば…、手加減せずに叩いてあげるのが最善だと、ほとんどの母親が理解していた。
「…あっ…、あの…。」
そんな中、1人の母親が声をあげようとする。
「…やっぱり、みんな…そろそろ───、」
皆が注目しかけたその発言を待っていたかのように…、気付けば奈津子が口を挟んでいた。
「…そろそろ、この位で良いかしらね?」
「…えっ…?」
「…これ以上、思いっきり叩いたら痣になっちゃうし…。…お仕置きは必要だけれど、怪我をさせるのは絶対に避けなきゃいけないから…。」
皆もその言葉を待ち望んでいたのか、「…そうよ、その通りだわ」と1人、また1人と奈津子に賛同の意思を示していく。