※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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ままごと2

(…こ、これって…、もしかして…、このまま許してもらえる流れ…?)

 

拓也も一瞬、喜びかけたが…、勇太の母親である奈津子が、一度口にしたお仕置きをそう簡単に軽くしてくれるとも思えない。

…まだ、きっと何かがある…。

…その拓也の予感は、悪い方面で的中してしまうのだった。

 

「…ですが…、ウソをついたらお尻ペンペン300回の刑。これはもう変更出来ません。…"拓也君"とも約束していますから…。」

「…えっ…、じゃあどうするんですか…?…このまま、最後まで続けるんですか…?」

「…えぇ。…でも、"痛いほう"のお仕置きは、今日はもう終わりにしましょう。…今から叩くお母さん達は、"恥ずかしいほう"重視でお願いしますわ。」

「…は、恥ずかしいほう…?」

 

多くの母親達の頭には、疑問符が浮かんでいる。

…そんな中、最初から理解を示していたのは綾子の母親だった。

 

「…つまり…、これ以上、普通にお尻ペンペンしたら痣になっちゃうけれど…、かと言って、手加減して叩くだけだと、拓也君は反省してくれない…って事よね?」

「…ふふ、そういうことです。」

「…うふふ…、家の綾子も、"痛い"より"恥ずかしい"ほうが効き目があったりするから…、拓也君にもそっちの方が良いかもしれないわね?」

 

そう言いながらこちらを見る綾子の母親と、目が合った。

…その瞬間、拓也はあの時の出来事を思いだしてしまう。

 

"綾子の真後ろからお仕置きを見ていて貰える?"

 

…そう言って拓也に呼びかけた綾子の母親は…、本当に、尻を叩かれている綾子のすぐ後ろへ拓也を呼び寄せ…、お仕置きで綾子の尻が真っ赤になっていくさまを、すぐ近くで見学させたのだ。

…もし、"10人の母親達"が集まっているこの場所で、それに似たことなど命じられたら…。

 

(…はっ…、恥ずかしすぎて死んじゃう…!!)

 

そんな拓也の心情を見透かしてか…、綾子の母親は、拓也の方へ視線を送りつつ、ほんの一瞬だけ立てた人差し指を、自らの口元に当てた。

"今日のところは、内緒にしといてあげる"。

…そう言ってくれているようだ。

もし綾子の母親が、あの時のことを公にすれば…、勇太の母親である奈津子は、その案を"採用"してしまいかねない。

…さすがに、この人数の母親達から寄ってたかってそんな目に遭わされるのは、可哀想だと思ってくれたのだろうか…?

 

 

 

「…でも、恥ずかしさ重視、って言われてもねぇ…?」

「…そもそも、こんなに大勢のお母さん達の前でお尻ペンペンされてる時点で…、相当恥ずかしいわよね…?」

「…ちょっと!…拓也君に聞こえちゃうでしょっ!?」

「…あっ…!!?…ごっ、ごめんね拓也君っ!?…そういう意味じゃなくって…っ!!」

 

母親の1人が自らの失言を、慌てて訂正しようとする。

しかし…、フォローされればされるほど、気を遣われていることが伝わってきて…、拓也は猛烈に恥ずかしくなってしまうのだった。

 

(…うぅ…っ、これから僕…、一体何をされるんだろう…?)

 

不安でたまらない様子の拓也を見て…、奈津子は先程までの厳しい雰囲気を感じさせないよう、普段通りの笑顔で拓也に語りかける。

 

「…"拓也君"?」

「…はっ…、はい…っ!!」

「…今日は、一杯お尻ペンペンされたね?」

「…うぅっ…、はい…。」

「…本当ならもう許してあげたいところだけど…、"ウソをついたらお尻ペンペン300回の刑"。…覚えているわよね?」

「…はい…。」

「…あと5人。…ちゃんと最後まで頑張れる?」

 

拓也は今すぐにでもギブアップしたかったが…、ここで奈津子の機嫌を損ねてしまうと、後でどんな目に遭わせされるかわからない。

笑顔の奥に怖ろしいものを感じながら…、「…はい」と答えるしかなかった。

 

「…はい、よろしい。…では皆さん、先ほどまでとは少しお仕置きのやり方を変えましょう。…一旦、近くに寄って頂けますか?」

 

奈津子の声掛けで、集合する母親達。

中心にいる拓也は尻を出したままなので、恥ずかしくてたまらないのだが…、今さら不満を口にできる立場ではない。

 

(…ううう…っ、は…、早く終わってほしい…。)

 

ただこの場に居るだけでもう、顔の熱で溶けてしまいそうだ。

拓也は母親達の視線を気にしながらも…、奈津子がこれから罰の説明を始めるということで必死に耳を傾ける。

…そんな中、奈津子はくすっと笑みをこぼしながら、母親達にこう告げた。

 

「…皆さん。…やり方が少し変わると言いましたが…、基本的には同じです。1人30回ずつ、"拓也君"にお尻ペンペンしてあげて下さい。」

「…えっ?…で、でも…、それじゃあ一体、何を…?」

「…えぇ。ですから…、なるべく"痛いお尻ペンペン"は禁止です。…痣にならないよう、どうか優しくぶってあげて下さいね?」

 

拓也の尻がもう腫れすぎていることを心配していた母親達は…、奈津子の指示に安堵の表情を見せた。

…しかし…、ここで当然の疑問が生まれる。

 

「…でも、それって…お仕置きになるの?今度は拓也君が反省出来ないんじゃ…?」

 

元々、"わざとお尻ペンペンされた悪戯"に対するお仕置きだと聞かされている母親達は…、拓也の体を心配する一方で、手加減して叩くとお仕置きの意味が全く無いのでは…?と、逆のことも心配していた。

 

「…えぇ。…ですから…、"拓也君"には、少し恥ずかしい思いをしてもらいます。」

「…って言うと…?」

「…ふふっ…、ここから先は…、皆さんが、本当に"拓也君"のお母さんになったつもりで叩いてあげて下さい。」

「…えっ…?」

 

奈津子の言葉に、周りの母親達は戸惑う。

拓也を自分の子供のように想いながら叱れと言うのならば…、先ほどまで叩いていた5人にも、それぐらいの気構えがあったはずだ。

…今までと、何が違うというのか…?

 

「…うふふ。…皆さんのお子さん…、そうですね…、例えば、幼稚園生くらいの時…、どんな事で叱ってましたか?」

「…えっ、よ、幼稚園…?」

「…き、急に言われても…、昔過ぎて覚えてないわね…?」

 

奈津子が唐突に、そんな質問を投げかけたので…、ほとんどの母親はすぐには答えられない。

…しかし、中にはすぐに浮かんだ母親もいるようで、「…野菜の好き嫌いとかですかね…?」と小声で発言する。

 

「…野菜の好き嫌い。…良くありましたよね?…じゃあ…"拓也君"、苦手な野菜はある?」

「…えっ…?」

「…無ければ、昔はあんまり好きじゃなかった…、とかでも良いわよ?」

「…え…、ええっと…、ピーマン…とか…?」

 

拓也は質問の意図も良くわからないまま、正直に苦手な野菜を答える。

 

「…ピーマンが苦手。…なるほど。」

 

奈津子はポツリとそれだけ言うと、今日まだ拓也にお尻ペンペンしていない母親の1人に声をかける。

 

「…謙太君のお母さん、"拓也君"ったら…、ピーマンがどうしても食べられないみたいですよ?」

「…あっ、えっ…?」

「…あっ、今は"拓也君"じゃなくて…、5歳になったばかりの"拓也ちゃん"かな…?…嫌いなお野菜が、どうしても食べられないんですって。…どうしましょう?謙太君のお母さん…、いえ、"拓也ちゃん"のお母さん。」

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