そこまで言われて、ようやく謙太の母親も、奈津子の意図を理解したようだった。
「…なるほど…、そういうことですか…。」
「…えぇ。…どうします?"拓也ちゃん"のお母さん…。」
「…そうですね…、ホントに"家の拓也ちゃん"ったら…、好き嫌いが多くて困りますわ。…今度ピーマンを残したら、絶対にお尻ペンペンしますよってお約束していたのに…。」
(…なっ、何だ…!?…一体、何が始まったの…!?)
拓也は訳がわからず、今の状況を理解するので必死の様子だが…、周りで見ている母親達は、奈津子と謙太の母親のやり取りを見て、「あぁ、そういうことか」と納得していた。
「…あ〜…、なるほどね…、確かに、これは恥ずかしいわ…。」
「…よくこんな罰を思いつきますね、勇太君のお母さん…。」
「…でもこれなら、拓也君のお尻も痣にならないし…、私達も、無理してきつく叩く必要が無くなるから、この状況ではベストなんじゃない?」
「…うふふっ、拓也君はきっと、恥ずかしくってたまらないでしょうけどね…。」
周りの母親達が一体何の話をしているのか、拓也はまださっぱり理解出来ない。
…そうして戸惑っている拓也に対して、奈津子はこう声をかけた。
「…"拓也君"。…今からしばらくの間…、あなたは"5歳の拓也ちゃん"よ?」
「…た、拓也…、ちゃん…?…ご、5歳って…!?」
「…そ。5歳になったばかりの…、可愛い可愛い"拓也ちゃん"…。…でもね?…お母さんの言うことが全然聞けないから、可哀想に…、今からお尻ペンペンされてしまうの。」
「…え?…え?」
「…さぁ、先ずは…、謙太君のお母さんのことを、"お母さん"って呼んでみて?」
「…え…、…えぇ〜っ!!?」
「…うふふ…、どうしたの…?"おばさん"って呼んじゃ駄目よ?…ちゃんと、"お母さん"って呼ばないと…。」
「…で、でも…っ。」
拓也は、10人もの母親達が見ている前で…、まだ学年すら知らない、謙太の母親のことを"お母さん"と呼ぶよう、奈津子に命じられてしまう。
「…どうしたの…?…ふふっ…、謙太君のお母さんは、もちろん"謙太君"のお母さんだけれど…、同時に、"拓也ちゃん"のお母さんでもあるんだから。…ちゃんと、"お母さん"って呼ばなきゃ駄目でしょう?」
「…う…、うぅ〜…っ。」
「…ほら…、あんまり"お母さん"を困らせないのよ?…"拓也ちゃん"…。」
拓也は…、先ほどまで"おばさん達の1人"としか認識していなかった、"同じ学校に通う誰か"である謙太の母親のことを…、"お母さん"と呼ぶよう強要されている。
…それは、大勢の母親の目の前で、順番にお尻ペンペンされているという今の状況も含めて…、容易に受け入れられるものではなかった。
「…あ、あの…?」
「…うふふ、…"痛〜いお尻ペンペン"の代わりに…、"恥ずかし〜いお尻ペンペン"にしてあげるからね?…そうしないと、可愛い"拓也ちゃん"のお尻が痣になっちゃうもの…。」
「…うぅ…。」
奈津子自身も、すでに拓也のことを"拓也ちゃん"と呼び始めており…、もう拓也が何を言っても却下されてしまうことは明らかだった。
…そうして拓也が恥ずかしさのあまり俯いてしまったのを見て、謙太の母親が声をかける。
「…さ、"拓也ちゃん"。…"お母さん"の言うことが聞けない子は…、何されるかわかってるわね?」
「…う、うぅ…っ。」
「…お尻ペンペンですよ、"拓也ちゃん"。お母さんの膝にいらっしゃい。」
拓也は、恥ずかしさのあまり固まってしまった。
お仕置きでお尻ペンペンされること自体はさっきまでと変わらないのに…、まだほとんど面識もない謙太の母親が、拓也のことを"ちゃん"付けで呼び、5歳の幼稚園児として扱っている…。
「…うふふっ…、何だか…、"おままごと"みたいですね?」
「…あぁ〜、この感じ…、言われてみればそうかも。…ふふっ、お母さん役はみんな"ホンモノ"だけどね…。」
「…あははっ。拓也君だけ、"5歳の息子役"って事ですか〜?…でも確かに、そんな感じかも…。」
母親達は、いま拓也が置かれている状況を"ままごと"のように喩え…、悪さをした子供役の拓也が、残りの母親達全員からお尻ペンペンされるまで終わらないであろうこの一幕を、すっかり愉しみ始めていた。
「…"拓也ちゃん"?…どうしたの?」
「…あ、あの…、おばさ──、」
「…"お母さん"、ね?…まぁ"拓也ちゃん"が…、どぉ〜しても"痛いお尻ペンペン"の方が良いって言うなら…、"お母さん"もそうしてあげるけど…?」
「…え…っ?」
「…でも…、痛いわよぉ〜?…痣になっちゃうだろうし…。…もちろん、他の"お母さん"達にも同じように痛くして貰うからね〜…?」
「…ひっ!?…ひぃぃぃ〜っ!!?」