奈津子は悪戯っぽく笑いながら…、拓也の"お尻ペンペン候補"を見回す。
「…まだ"拓也ちゃん"にお尻ペンペンしていない人は、手を挙げて頂けますか〜?」
その指示で、4人の母親が手を挙げる。
これから拓也は…、いま挙手している4人の母親達からも、順番に"お尻ペンペン"されなくてはならない…。
(…うぅ…、や、やっぱり…、顔を見ただけじゃ、誰のお母さんなのか全然わからないよ…。…でも僕、このあと4人全員から…。)
想像し、内心恥ずかしさで悶絶する拓也。
…しかし、奈津子の"声かけ"はまだ終わらない。
「…そうだ、今度は…、"拓也ちゃん"に、自分で選んで貰いましょうか?」
「…えっ…!?」
「…さぁ〜、悪戯っ子の"拓也ちゃん"…、どのお母さんにお尻ペンペンされたい?」
「…ど、どの…って…!?」
なんと奈津子は、次に拓也がどの母親にお尻ペンペンされるか、自分自身で選べと言う。
「…うふふ…、誰にされたい…、なんて言われてもねぇ?…もうお尻ペンペンなんて嫌よねぇ〜?」
「…あはは、じゃあ見た目で"優しそうな人"が選ばれちゃいますね〜?」
「…ちょっとぉ…、それはそれで、選ばれなかったらショックじゃないの〜。」
「…私を選んでくれたら、ちょっ〜とだけ手加減してあげよっかな〜?うふふ…っ。」
それはズルいですよ〜、…母親達の"お仕置き談議"は、終始和やかな様子だ。
"痛いお尻ペンペン"から"ままごと遊び"へ移行したからなのか…、「真剣に拓也を叱る」というよりも、少しずつ「拓也への罰ゲーム」のような様相を呈してきている。
…拓也は4人を見比べ、一瞬悩んだものの…、どうせ4人全員からお尻ペンペンされるまで奈津子は許してくれない。
そう考え、直感的に少し気の強そうな女性を選んだ。
「…へっ?私…?」
自分が先に選ばれるとは思っていなかったのか、驚いた表情を浮かべ…、直後、嬉しそうに笑う女性。
「…そっか〜、拓也君ったら、そんなにおばさんが優しそうに見えちゃった〜?うふふ…っ。」
「…ちょっとちょっと…、拓也君がそういう基準で選んでくれたとは限らないでしょ〜?」
「…そうですよ、それに…、今は拓也君じゃなくて"拓也ちゃん"…、おばさんじゃなくて"お母さん"ですよ?」
「…あぁ、そうだったわね…。…うん、"拓也ちゃん"にとって、"怖〜いお母さん"になりきらないとね。」
そう言うと女性は正座し、他の母親達に倣って拓也を呼びつける。
「…それじゃあ"拓也ちゃん"…、"お母さん"がお尻ペンペンしてあげるから、こっちにいらっしゃい。」
(…う、うぅ……、やっぱり今回も、拓也"ちゃん"って呼ばれるんだ…。)
拓也は先ほどの、謙太の母親から受けた死ぬほど恥ずかしいお尻ペンペンを思い出し…、行くのを少しだけ躊躇った。
そんな拓也の"一瞬の迷い"を、周囲の母親達は見逃さない。
「…あらぁ〜、"拓也ちゃん"ったら…、"お母さん"にお尻ペンペンされるのが怖くて、動けないのかな〜?」
「…うふふ…、"拓也ちゃん"、早く行かないと…、"お母さん"のお尻ペンペン、とっても痛い痛いされちゃうよ〜?」
「…今度は"拓也ちゃん"…、どんな悪戯をしたのかな〜?…"お母さん"がこんなに怒ってるところ…、おばさん達も初めて見るわよ〜?」
周囲の母親達もノリノリで、今回の"ままごと"に協力している。
そして拓也はここでようやく…、女性の正体を知ることとなった。
「…まったく、"拓也ちゃん"ったら…。幾らお姉ちゃんのお人形さんが欲しいからって、噛んで千切ったりしちゃ駄目でしょう?」
「…えっ…?…あ…、は、はい…っ。」
「…遥香お姉ちゃんのウサギさん、痛い、痛い、って泣いちゃったよ〜?…"拓也ちゃん"も…、お尻痛い痛いしないとわかんないかな?」
…バチィッ!!
(…痛ぅっ!?…そっ…、それより今…、このおばさんが呼んだ名前って…、まさか…っ!?)
…バシッ!!…パァンッ!…バチィッ!!…パァンッ!
(…きょ、教室で僕の隣の席の…、遥香ちゃんのお母さんだったの〜っ!!?)
拓也が驚くのも無理はない。
遥香はどちらかと言えば口数の少ない…、あまり自分からはクラスメイトともほぼ会話しない、物静かな女の子だった。
席が隣になったことで、ようやく拓也も挨拶ぐらいは交わすようになったのだが…、まさか今日お尻ペンペンしている母親達の中に、その遥香の母親まで混じっていようとは想像もしていなかった。
(…ヒィィ〜ッ!?…し、しかも…、恥ずかしいだけじゃ無くって…、かなり強い…っ!?)
…ピシャアァッ!!!
「…あぐぅぅっ!!?」
「…あら、遥香ちゃん…ううん、"拓也ちゃん"のお母さん。…"5歳の拓也ちゃん"には少し、強過ぎないかしら?」