…"桃ちゃん"は確実に、その幼児向けピアノ教室での経験に基づいて、"お尻ペンペン"している…。
「…あらまぁ〜、"拓也ちゃん"ったら…、桃ちゃんが幼児教室の先生だって聞いた途端、恥ずかしくて俯いちゃったわよぉ〜?」
「…うふふ…、そりゃあ…、実際にその歳の子達と比べられてるなんて…、すっごく恥ずかしいわよねぇ〜?」
「…あはは、"拓也ちゃん"はもうすっかり立派な…、"5歳の幼稚園生"だもんね〜?」
(…うっ、ううぅ〜っ…!!?)
"桃ちゃん"には優し〜く尻を叩かれながら…、周りの母親達には囃し立てられ、拓也は、"ままごと"のお尻ペンペンによる辱めの罰を受け続けている。
これがまだ当分の間続くと思うと…、いっそ、"痛すぎるお尻ペンペン"に戻して貰ったほうが早く済むのではないかと、ほんの一瞬…、拓也の頭をよぎった。
(…だっ、駄目だ…っ、確かに恥ずかしいけど…、あんなに痛いの、もう絶対に我慢できない…!!)
拓也の尻の腫れ具合は、もう1〜2時間程度で治まるような腫れ方ではない。
たとえ赤みが引いても、座るだけで内側からズキズキと痛むだろう。
こんな状態の尻を、もし本気で叩かれたら…、大勢の母親達の見ている前で、情けない声をあげながらわんわん号泣してしまう…。
(…耐えるんだ…、どれだけ恥ずかしくても…。…じゃ、じゃないと…、僕…。)
ここで下手に"ままごと"への異議を申し立て、奈津子から"物言い"でもつけられたら…、"痛すぎるお尻ペンペン"に戻す案が、本当に採用されてしまいかねない。
あまりきつく叩くと痣になるから…、という優しさも、もちろん本心なのだろうが…、奈津子を本気で怒らせてしまった場合、それも"仕方なし"だと判断されてしまうはずだ。
(…我慢だ、我慢…。…何も不満を言わなかったら、1人30回ずつで終わるんだから…。)
拓也は、"桃ちゃん"が"幼児向けピアノ教室"の先生だと聞かされ…、明らかに、そのことで頭が一杯になっている。
しかも、拓也はすでにその"桃ちゃん"のことを"お母さん"と呼んでしまっており…、まるで自分が幼稚園児よりさらに幼く扱われることを認めてしまったような錯覚に襲われていた。
「ほ〜ら"拓也ちゃん"、まだまだお尻ペンペンですよ〜?」
…パチッ!
(…ぐぅっ…!!?)
正直、"桃ちゃん"のお尻ペンペンはさほど痛くない。
…だが、今までより楽になったかと聞かれても…、はっきりとは答えられないだろう。
"痛み"だけが罰ではないのだと、拓也は"痛くないお尻ペンペン"によって思い知らされているのだった。
…パァン!
「…ひっ…!?」
「…あらあら…、"拓也ちゃん"、"お母さん"のお尻ペンペン、痛いかなぁ〜?」
「…はっ…、はい…。」
「…うふふ…、悪戯っ子はみんなこうされるのよ〜?…あ、そう言えば"桃ちゃん"、"拓也ちゃん"は今回、どうしてお尻ペンペンされているの?」
「…えっ?」
「…大事なことよ〜?ピーマン残したとか、お人形さんを噛んだとか…。」
「…え、あっ…、そういえば…!?」
「んもう〜、"桃ちゃん"ったら…。どうして叱られているのか、しっかり"拓也ちゃん"に教えてあげなきゃ駄目でしょう〜?」
周りの母親達もクスクスと笑う。
ままごとの"設定"を疎かにしたしたことで…、"桃ちゃん"まで奈津子にたしなめられているようだった。
「…ご、ごめんなさい…、じゃあ…。」
「…良いのよ〜?"桃ちゃん"。そんなに緊張しなくても…。…うふふっ、今は"拓也ちゃん"の"お母さん"なんだから…、凛とした態度でいなきゃね?」
「…はっ、はい…。」
(…な、何か…、この2人…、どういう関係なの…?)
この"集会"に来ている10人の母親達は、全員が拓也と同じ小学校に通う誰かの"お母さん"…。
拓也が知っている情報はほぼそれだけであり、母親同士の関係など知るよしもない。
…ただ、勇太の母親である奈津子と、"桃ちゃん"のやり取りには…、何だか、特別なものを感じてしまう…。
「…そうだ、ピアノ教室のお尻ペンペンって、実際どういう感じなの?…ほら、近頃そういうのに厳しいじゃない?」
「…あぁ…、ですね…、でもほら…、ピアノを習わせたがる親御さんって、躾に厳しい方も多いじゃないですか?」
「…あぁ〜…、何となく、言いたい事はわかるわね…。」
「…はい。…まぁ表向きは、何度も言って聞かせて…、それで素直に聞いてくれれば良いんですけど…。」
「…難しいわよねぇ〜、あのくらいの歳の子供は…。」
「…はい…、だから親御さんの了解を得て…、どうしても練習に身が入らない場合は…、って感じですかね…。」
「…なるほど…、確かに、あまり公には言えないものね…。」