※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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実行4

「…えっ?…れ、連絡帳…?家のお母さんに、見せてって言われたの?」

「…う、うん…。」

 

奈津子の尻叩きからようやく解放された拓也は、奈津子の息子である友達の勇太と先ほどの件について会話をしていた。

 

「う〜ん、何だろう…?多分、学校でどのくらい忘れ物をしてるか見たいだけだと思うけど…。」

「…ど、どういうこと…?」

「…家のお母さんって、忘れ物にすごく厳しくってさ。この前の宿題忘れもそうだけど…、例えば消しゴム1つ忘れただけでも、絶対にお尻ペンペンなんだ。」

「…う、うわぁ〜…。」

 

(…そ、そういえば、あの時…。)

 

"うっかり忘れ物しただけなら、軽めのお尻ペンペンで許してあげる…"。

確かにそう言っていた。

しかし先ほど、泣くまで叩かれてしまった身としては…、"軽め"というのがどこまで本当なのか、まだ信じられない気もする。

 

「…本当にそうなんだよ。実際に、消しゴム1つ忘れた時もさ…、それだけで、お尻30発とか40発も叩かれるんだから。」

「…そ、そんなに…っ!?」

「…そうだよ?…だからたまに…、嘘ついて後でバレて、酷い目に遭っちゃうんだ…。」

 

確かに、消しゴム1つでそこまで叱られるとわかっていたら…、嘘をつきたくなる気持ちはわからないでもない。

しかし…、嘘をつけばどうなるか、その身をもって思い知らされたばかりの拓也は、そうなった時のことを想像して首をぶんぶんと横に振る。

 

「…駄目だよ…。僕だったら、正直に言う方がまだ良いかな…。」

「…うん、もちろん、僕だってそうだよ?…ただ…、たまに、頭ではわかってても…、家のお母さんのお尻ペンペンはもう勘弁して欲しいって日があるんだぁ…。」

 

拓也と違い、同じ家にずっと母親として奈津子が居る、という状況は、勇太にとってうんざりなのかもしれない。

 

「…あ〜あ、お尻ペンペンなんて…。学校の先生達もたまにやってるけどさ…、家のお母さんみたいに、パンツまで下ろして、真っ赤になるまで叩く先生って居ないでしょ?」

「…う、うん…。」

「…絶対あっちの方がいいよ〜、…拓也君も、そう思わない?」

「…そ、そう…、だね…。」

 

尻叩きを"しない"先生ではなく、"するけどさほど痛くない"先生を希望しているあたり…、勇太君も少しズレているのでは…、と拓也は感じるのだった。

「…とりあえず、忘れ物をしただけだったら、お尻がヒリヒリするくらいで許して貰えるから…、絶対に、嘘はつかない方が良いと思うよ。」

「…わ、わかった…。」

 

勇太に奈津子の"お尻ペンペン"について詳しく聞き、アドバイスを貰う拓也。

既に知っていることも多かったが…、長年、この家で息子として暮らし、誰よりも奈津子から"お尻ペンペン"を受け続けているのはやはり勇太なのだ。

さすがに、昔の連絡帳については曖昧なところもあったが…、知りたい情報は概ね引き出すことができた。

 

「…拓也君も、家のお母さんに目を付けられるなんて、大変だね…。」

「…う、うん…。…でも、悪いことをしたのは僕だから、おばさんにお尻ペンペンされるのはもう仕方がないと思ってて…。」

「…本当に?…拓也君って、やっぱり凄いなぁ…。他の友達なんて、家のお母さんからお尻を叩かれた時点で、もう絶対遊びに来てくれないよ…。」

「…はは…。」

 

最初は、それが目的で遊びに来ていたなんて口が裂けても言えない。

実際におばさんから叩かれてみると、痛さのあまり後悔に変わったのだが…。

 

「…それより、どうだった?家のお母さんのお尻ペンペン。宿題で嘘ついたんだったら…、ものすごく叩かれたんでしょ?」

「…もう、痛いなんてものじゃなかったよ…。痛くてすぐ泣いちゃったもん。」

「…うんうん、やっぱりそうだよね〜?僕も何度も食らってるから、気持ちはわかるよ〜。」

 

奈津子の"お尻ペンペン"について、勇太と盛り上がる。

思えば、こんなに腹を割って話したことも、じつは初めてなのかもしれない。

同じ"お尻ペンペン"を食らっている者同士、奇妙な友情が生まれた日だった。

 

「…拓也君、…これからも、家のお母さんからお尻ペンペンされるかもしれないけど…、また遊びに来てくれる…?」

「…もちろんだよ。…って言うか、それで友達やめるなんて言い出したら…、その時点でおばさんからもの凄く沢山お尻叩かれそうだし…。」

「…あははは、それって名案だね?もう逃げられないように、お母さんにそうしてって頼んでおくよ。」

「…もう、冗談ばっかり…。」

 

2人は"お尻ペンペン"を通じて、今まで以上に仲良く話ができるようになったのだった。

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