奈津子は最初から全てを看破していながらも…、それ以上は口出しせず、成り行きを見守る。
「…で、どうします?奈津子おばさん。…"拓也君"のお尻…、もうこんなに真っ赤よ?」
言いながら、ぐい、と奈津子の目の前に、拓也の腫れた尻を強調させる"桃ちゃん"。
突然、母親達の前で、散々お尻ペンペンされ続けたばかりの尻を突き出す格好にさせられた拓也は…、驚きと恥ずかしさのあまり、いつの間にか泣きやんでいた。
(…~っっ!!?…ちょっ、ちょっと待ってぇ〜…っ!?)
母親達の膝の上でお尻ペンペンされている時から、すでにお尻は丸出しであったため、今さら母親達は誰も気にしてはいないだろう。
…しかし拓也にしてみれば…、"悪気なく、腫れた尻をただ見世物にされる"という行為は、痛みを伴わず、ただ尻を突き出して周りに観察されるだけであっても…、やはり恥ずかしくてたまらないのだ。
「…どうする…、って"桃ちゃん"、知ってるだろうけど、おばさん家のルールは絶対よ?…今日は、お尻ペンペン合計300回。…あと2人、残っているはずでしょう?」
「…そ、そうだけど…。…これじゃ、"拓也君"があまりにも可哀想、って言うか…。…ほら見て…、このパンパンに腫れたお尻…。」
「…えぇ、そうねぇ。"桃ちゃん"の指のあとまで、くっきりと赤く見えてるわねぇ~?」
(…もっ…、もういい加減にやめてぇぇ~っ…!!?)
拓也は尻を突き出した格好のまま、動かないよう言われ…、自分の尻肌に残る"お尻ペンペンの痕"を、叩いた本人でもある"桃ちゃん"と奈津子の2人から、至近距離で観察され続けている。
…そして、出された結論は…。
「…まぁ確かにね。思った以上に腫れているから…、"痛いお尻ペンペン"は、今日はもう本当に終わりにしましょうか?」
「…さっすが奈津子おばさん、話がわかるぅ〜。」
「…おだてても何も出ませんよ。…それじゃあ後2人の"お母さん"には、"痛くないお尻ペンペン"を30回ずつお願いしようかしらね…。」
「…あぁ~っ、良かったぁ〜…。今の"桃ちゃんお母さん"みたいに、思いっきりきつ〜く叩いちゃったら…、私達も"5歳の拓也ちゃん"に嫌われちゃうところだったわよぉ〜。」
「…もぉ~っ、止めてくださいよぉ~、ママさん達までぇ〜っ…。」
「…さてと。そろそろ私の出番かしら?」
"桃ちゃん"と奈津子の脇からひょっこりと、落ち着いた雰囲気の女性が姿を現す。
世間話のようなトーンで話をしている周囲の母親達とは少し違い…、育ちの良さそうな話し口調だった。
「…えっと、"拓也君"…、じゃなくて、"5歳の拓也ちゃん"…だったかしら?…お母さんがお尻ペンペンしてあげるから…、いらっしゃい?」
「…えっ…、はっ…、はい…。」
…拓也も、何となくその雰囲気に呑まれてしまう。
(…なっ、何でだろう…、ほかのお母さん達と比べて、ものすごく緊張しちゃう…。)
拓也にもその原因がわからないまま、目の前に正座した"9人目の母親"の膝の上へ、吸い込まれるように腹這いになった。
「…さぁ"拓也ちゃん"、お仕置きですよ?…悪戯をして黙っているなんて…、お母さん、"拓也ちゃん"をそんな子に育てた覚えはありませんよ?」
…パンッ!
「…うっ!?」
…パンッ!…パシッ!…パァンッ!
(…よ…、良かったぁ…、ちゃんと"痛くないお尻ペンペン"だ…!)
拓也は、遥香の母親による"お人形さんを噛んだお尻ペンペン"や、"桃ちゃん"の"ごめんなさいを忘れたお尻ペンペン"を思い出し…、また普通に"痛いお尻ペンペン"をされるのではないかとビクビクしていた。
…しかし、どうやらその心配はなかったようで…。
「…"拓也ちゃん"?…こんなにお母さんに怒られてばっかりだと、幼稚園のお友達にも笑われちゃうわよ?」
…ピシャッ!
(…うぅっ…!?)
「…一緒にお風呂入った時に、お母さんもう、ちゃんと洗ってあげないわよ?…"拓也ちゃん"だって、そんなの困るでしょう?」
…パァンッ!…パシィッ!…パンッ!
(…いっ…、痛くはないけど…、このおばさん…、今までで一番僕を幼稚園児扱いしてる…っ!?)
拓也の尻肌はもう、厳しい罰を終えた直後のような腫れ方をしている。
もちろん、"痛くないお尻ペンペン"であった事に不満はないし…、その代償として、こんな恥ずかしい扱いを受けるのは仕方がないだろう。
…しかし何だろう、この"違和感"は…。
…ピシィッ!
「…うっ…!?」
「…"拓也ちゃん"、また今度悪戯したら、幼稚園の先生にも見てもらいますからね?」
…パンッ!!
じつは拓也にも、"違和感"の正体が何なのか、薄々わかってきていた。
…この母親…、育ちの良さそうな雰囲気に反して、お尻ペンペンが"上手すぎる"のだ。
…パシンッ!
「…聞いてる?…"拓也ちゃん"。」
勇太の母親である奈津子や、綾子の母親を筆頭に…、今日この"集会"に来ている母親達は、普段から自分の子供にもお仕置きでお尻ペンペンをしている。
"最近はあまりしていない"と言う母親も居たが…、経験は豊富で、お尻ペンペンに"手慣れている"人ばかりである。
…拓也の感じた"違和感"は、まさにそれだった。
…ピシッ!…パンッ!…パシィッ!
…そんな母親達と比較しても…、この母親の行うお尻ペンペンは、あまりにも自然な所作で…。
まるで武道の達人に、わざと手を抜かれているような…奇妙な感覚があった。
…パァンッ!!
(…うっ!?)
「…はいおしまい。…痛かったかな?"拓也ちゃん"…。」
「…うぅっ…、は、はい…っ。」
いつの間にか"お尻ペンペン30発"は終わっており…、"9人目の母親"は、優しく拓也を抱き起こす。
「ごめんね…?幼稚園の子だって本気で思い込まないと、おばさんつい、やり過ぎちゃうから…。」
「…は、はい…っ。」
…どうやら、過剰に拓也を幼児扱いしてしまった自覚はあるらしい。
その理由も含めて、"9人目の母親"は自身の身元を明かす。
「…おばさん家の子って、もう6年生だから…、お仕置きの時に、こんなに優しく叩くことなんてもう無いのよ…。」
「…あ…。」
「…ふふ…、拓也君も、息子さんの顔ぐらいは見た事あるんじゃない?…ほら、児童会長をやってる学君。」
「…まなぶくん…って…、ええっ!?…あの、運動会で宣誓とかしてた、6年生の…!?」
「そうそう、その学君のお母さんよ。」
「えぇ~っ!!?」