(…ぜっ…、絶対に駄目だ…!!このおばさんの家に行くのだけは…っ!?)
お尻の左と右に1発ずつ、"モミジ"の平手打ちを貰った拓也は…、自宅での学の母親のお尻ペンペンを想像し、首をぶんぶんと横に振った。
…ご飯の時、ちょっと姿勢が悪いだけで"これ"をやられるとしたら…、"本格的なお尻ペンペン"になったら、一体どれほどの…。
「…まぁ、"拓也君"がお家まで行くのは、もう先約が居ますからね…。」
「…あっ、そう言えば…、"2年生の卓哉君"の目の前で、"拓也君"のお尻をペンペンするって話でしたっけ?」
(…えっ…!?…あ、あの話…っ、もしかして、みんな本気で言ってたの…!?)
それは"10人の母親"全員から拓也がお尻ペンペンされると告げられたあと…、2年生の"卓哉"の母親だけが、自分もそれに参加しなくてはいけないのかと、罰に否定的だった時の話である。
…結局、今から順番に母親達のお尻ペンペンが始まるということで、その話はうやむやになったのだが…、学の母親のお尻ペンペンで9人目が終わり、残るは1人。
そろそろ終わりが近付いてきたからと、2年生の"卓哉"の話が再燃していた。
「…う、家の卓哉もヤンチャですから…、私としては助かるんですけど…、その…、拓也君の気持ちを考えると…。」
「…な~に言ってるの~、元はと言えば…、拓也君の自業自得なんだから…、その延長として、このくらいの罰は必要でしょう?」
「…で、ですけど…っ。」
「…それなら…、拓也君本人に聞いてみる?…ねぇ拓也君、"2年生の卓哉君"のお家でお尻ペンペンされる話…、拓也君はどう思う?」
「…えっ?」
「…そんなの絶対に嫌だって思う?…それとも…、今回の件、とっても反省しているから…、"2年生の卓哉君"のお家で沢山お尻ペンペンされても、仕方ないって思う?」
(…そっ、その聞き方はズルいよぉぉぉ~っ!!?)
そんな聞き方をされては、「仕方ない」と答えないと、また"反省していない"と見なされてしまう…。
ただ、拓也の中では…、"万が一、学の家に行かされるよりは、2年生の卓哉の家の方がマシ"という考えも多少あった。
(…も、もし…、反省してないって言われて、学君のお母さんに叱られるよりは…、卓哉君のお母さんの方がまだ良いよね…?)
2年生の"卓哉"の母親のお尻ペンペンも…、正直、思っていたよりはかなり痛かった。
…しかし、児童会長である学の母親が本気で怒った時のお尻ペンペンに比べれば…、おそらく遥かにマシだろう。
"モミジ"の手形を左右のお尻に付けたまま…、拓也は少し悩んだフリをして、神妙そうに答える。
「…ぼ、僕…、悪戯しちゃった事はもう消せないから、"卓哉君"のお母さんに協力してあげられるなら、協力してあげたい…。」
「…た、拓也君…。」
「…決まりね。…"卓哉君"のお母さん、本人もこう言っているわけですから…。」
「…わ、わかり…ました。…拓也君には後日、私の家に来てもらって…、息子の目の前で、私のお尻ペンペンを受けてもらう事にします…。」
(…う、うぅ~っ…!?…"卓哉君"の事をよく知ってるぶん…、そうやって言われると恥ずかしすぎるよォォ~ッ!!?)
拓也は…、2年生の"卓哉"にとっては、"遊んでくれる憧れのお兄ちゃん"なのだ。
…そんな自分が、わざわざ"卓哉"本人の家まで出向き、"卓哉のお母さん"にお尻ペンペンされてしまう…。
…ほんの少し考えただけでも、顔から火が出そうだった。
「…じゃあ、2年生の"卓哉君"のお家に行く話はこれで決定。…あとは、今日最後になるお尻ペンペンだけれど…。」
どうしますか、佐々木さん。
勇太の母親である奈津子が、不意に声を掛けたその女性こそ…、まだ拓也にお尻ペンペンしていない、"最後の1人"。
「…どうって…、ペンペンしてあげないと、お家に帰れないんでしょ?この子…。」
「…えぇ、まぁ…。」
「…だったら、早くしてあげた方が良いかしら…、ほら、おいで?」
「…わわっ!?」
"佐々木さん"と呼ばれた女性は、軽々と拓也を持ち上げ…、正座した自らの膝に寝かせた。
「"痛くない"ってのがどの程度かわからないけど…、もし痛かったらごめんね?」
…パァンッ!!
「…ぎゃあっ!?」
…バチィッ!!…バチンッ!!…パァァン!!
「…ヒッ!?…ヒィィッ!!?…くぅぅぅ~っ!!?」
…普通に、痛い…。
手加減はしてくれているのだろうが…、元々の力が強すぎるのか、今の拓也にとっては悲鳴をあげずにはいられない威力だ。
…バッチィィンッ!!!
「…ヒィィィィ~ッ!!?」
さすがに周りの母親達も気付いたのか、思わず止めに入る。
「…ちょ、ちょっと佐々木さんっ!?…"痛くないお尻ペンペン"のはずじゃ…!?」
…バチンッ!!!
「…えっ、これでも強いですかね?…すいません、ちょっと力が入ってたかも…?」
「…拓也君…、だ…、大丈夫…?」
「…ひぃぃ…っ、…はぁっ、…はぁ…っ…。」
(…こっ…、このお母さんも…、手加減ありでこの強さなのぉ~っ!!?)
…一体、どういう基準で集まったメンバーなのかと疑ってしまうほど、"10人目の母親"もお尻ペンペンをやり慣れている…。
たったの数発でそう感じた拓也は、"この人も、絶対に怒らせないようにしよう…"と、"佐々木"という名字しかわからない女性を恐れていた。
「…はぁ…、"お尻ペンペン"って、家では本当に最後の手段なので…。手加減して叩くのって、こんなに難しいんですね~…。」
「…あら、いつもはそんなに思いっきり…?」
「…えぇ。…3回言っても聞かなかった時とかにやるので、つい感情的になってしまって…。」
「…わかります~。…ただ、今の拓也君は、もうすっかりお尻が腫れちゃってるので…。」
「えぇ、えぇ…。すいません、もう少し配慮すべきでしたね…。」
ごめんね、拓也君。
"佐々木さん"の謝罪の言葉は、膝にのせられてお尻ペンペンされる格好のまま、頭の上から聞こえてきた。
…そのあと、残りは"痛くないお尻ペンペン"であるべきだと、10人の母親達全員が納得し、罰は続行される。
…パンッ!
「…ぐっ!?」
…パシンッ!
「…ひっ!?」
…パンッ!…パァンッ!
「…ひぃぃっ!?…あぅっ!?」
…尻の痛みがもう限界の拓也は、軽くはたかれる程度のお尻ペンペンでも悲鳴を上げているが…、周りの母親達は、これならば妥当だろうと、もう"佐々木さん"を止めなかった。
…そして"痛くないお尻ペンペン"は…、いよいよ30回目を迎える。
…パシィッ!
「…うぁぁっ!?」
「…はい拓也君、おしまいよ?頑張ったねぇ?」
「…はぁっ、…はぁっ…、はぁっ……、お…、おわり…?」
「…えぇ。今日のお尻ペンペン、全部おわり。…痛かったねぇ~?」
「…うぅっ…、…ひっぐ…、ぐずっ…!!」
「…あらあら拓也君…、安心して泣いちゃったかな?」
「…はいはい、おばさん達、もうみんな怒ってないわよ~?良い子、良い子…。」